先生は汚い大人です 作:こうすけ増田劇場版
異世界転生……と言えば確かにそうだろう。既存の原作転生と言えば二次創作だろう。
結論から言えば転生させられた。漫画の主人公の様なお人好しが過ぎる善性を持っているわけでもない。ダークヒーローと呼べる悲しき過去なんてものも無い。面白いエピソードの1つや2つならばあるがその程度だ。善性を持っているわけではないし信念を持っているわけじゃない。
「先生、おはようございます……連邦生徒会宛に届いていたのですが、現住居が家賃を払っているだけで寝にすら帰っていないなら契約を解除してほしいと大家から通告が来ていました」
「シャーレに住み込みしたいけどお前等が五月蝿いから登録手続き上はそこにしてるだけって言っといて」
「シャーレに住み込みは認めません!……そんな事をしたら先生が仕事を即座に終わらせて当番廃止になって会う口実が減っちゃうじゃない」
「早瀬、ここは仕事で来てるんだ……そういう考えなら他を」
「ち、違います!と言うかなんでそこで聞こえるんですか!?普通はそこはクソボケにならないと!」
俺が転生した世界はブルーアーカイブの世界だ……内容は知っているかどうか聞かれれば怪しい。性癖を歪ませるのと曇らせるものぐらいの認識だ。ただ言えることはソシャゲの世界なのは知っているから……何処か1つでも歯車が狂えばそれで起こるバタフライエフェクトが酷くなる。
原作知識があっても逆に意味が無い時もある。むしろそれでこの人はこんなことはしないと思ってしまうこともある。
下手に答えを知っていたら推理力や観察眼に優れた人間が君は未来を知ってるんじゃないのかとかそういう事を言い出してややこしい。
「いいか、お前は単純に勘違いをしているだけだ。お前より歳上で優れている能力を持ってた調月は色々と残念な人間だった。俺がそれっぽい正論を言っているカッコいい大人とかそういう風に見えるだけ、ただのまやかしだ……ここが必然と女子校みたいな所があるから男性に対する免疫が少ないだけだ」
ブルーアーカイブとはアメリカレベルにデカい架空の世界の大陸にある無数の学校が集まって生まれた学園都市の連邦生徒会の特別捜査部のシャーレで各学校の様々なトラブルを解決する……と聞こえは良いが銃弾飛び交う普通にイカれている世界だ。
まぁ、答えだけ言ってしまえば俺には無理だなと……なにが無理か?それは人付き合いだ……個性豊かな美女JKが沢山出てくる。主人公である先生はそんな生徒達と向き合って青春を過ごす物語だ。
個性的な奴が居るのは仕方ない……個性が無ければ物語が成立しないから。それは否定しない、だが今の俺にとっては現実だ。
例えば飯が不味いけれども一生懸命作ったアピールがあったからだからそれを完食して美味しかったよと笑みを見せるのはホントに正しいか?そいつは料理が下手くそなんだ。下手くそなら下手くそとハッキリと言う、そしてその上でちゃんと1から料理を覚えようと言うのが場合によっては正しい。しかし主人公という奴はそれが許されない。ソシャゲならば尚更だろう。
ソシャゲの主人公はキャラの個性を否定しない。
ただし俺はソシャゲの主人公じゃないのでそれが出来ない。まぁ、ソシャゲの主人公は主人公自身が物凄く強いんじゃなくてガチャで出てくるキャラが強く、それを上手く話し合いでどうにかして動かす管理職みたいなものもあるから。
でも、俺には無理だろうなとは直ぐに思う……特に銃社会はまだしも平然と爆撃系の道具がその辺で売っているイカれた社会で、生徒達のご機嫌を取ろうなんざ俺には無理だ。
俺を転生させた奴が夢を見つけてくださいとか、救われればとか思っているのならば余計なことすんなやボケ。
テメエは異世界に人を転生させる便利な力を持っているがこちとら便利な力なんてなんにも持ってねえんだよ。テメエみたいな便利な力を持っている奴ならばそれは上から物を言えるよなとは思う。お前が1回こっちの身にもなれ、地上に堕ちろとは思う。
特に前もった準備もなくいきなりのブルーアーカイブの世界だから渋々先生をしている。
人間の好き嫌いはハッキリとしているし、それに関してはハッキリと言う。なにせこの世界は人の善性を利用するロクでなしが多いから。原作は嫌でもやってくるけど、それに対して原作よりも更に正しい答えで返すこともあるが逆に最悪な時もある。
「違います!私の完璧な計算ではコレは心理学における吊り橋効果ではないと証明されてます!」
「そうか……けど、俺はなにを言われようが俺で変わるつもりも変えるつもりも無い」
「うぅ……ユウカって呼んでくださいよ」
何時死んでもおかしくない世界で戦う術すら持っていない。死にたくないとは思うが、俺を転生させた存在が居る以上は神仏の存在は証明されたも同然であの世みたいな世界は多分ある。
取りあえずは俺は生徒達とのコミュニケーションは一線を引いている。シャーレの仕事を手伝いに来るシステムである当番の生徒達は慎重に選んでいる。その上で名字で呼んでいる。あくまでも先生ですよアピールをする為にだ。
不幸なヒロインは普通に居る。様々な問題が起きる……そうなれば、嫌でも吊り橋効果みたいな事が起こる。
一般的な倫理観とかで正論とかを言っている大人がいればそれを正しいとは思うのが大半、俺はシャーレの先生って事だからそれだけで特別視される。そうなりゃ堕ちる奴は堕ちるだろうが、それでも俺はこのスタイルで行く。
「早瀬はそんなに俺を殺したいんだな」
「っ、違います!!」
早瀬は自分のことをユウカと呼んでほしいが、俺は徹底して生徒達を名字で呼んでいる。
生徒達を名前で呼ぶことになにがダメなのか?決まってる、俺は先生、生徒達は生徒達だ。調月の様にふしだらな家元の様な見た目をしている奴でもJKだ……絶対に越えてはいけない一線はある。
「そ、そうです先生。全員を名前呼びしましょう。ゲーム開発部はモモイとミドリと言う姉妹が居ますし名字呼びは」
「さて、仕事をするぞ」
意地でも名前で呼んでほしいと思っているが、呼ばない。
コレで冷たい人と思われて嫌われるならばそれはそれで構わない……めんどくせえ人付き合いをしたくない。人類最古の敵であるめんどくさいとは戦って勝ちたいとは思わない。
仕事を黙々とする……その瞬間の早瀬はなにも言わない。
仕事中の雑談はしないタイプ……それは普通にありがたい。仕事中に雑談をするタイプはハッキリと言って苦手だ。金を貰っている以上はそれ相応の責任が発生しているのだから余計な事はしたらいけない。特に今回みたいな事務処理仕事ならばだ。
「あ、お昼ですね」
「そうだな……ちょっと待ってろ」
そんなこんなでお昼の時間帯になった。
無駄に広いシャーレには厨房や業務用の冷蔵庫等があり俺は冷蔵庫に入れている昨日錠前達と作ったたこ焼きの残りを取り出した。
それをレンチンして食べる?違う。小麦粉とバターを炒めた後に牛乳を入れてホワイトソースを作り、東海地方で名物の濃口ソースを多めにたこ焼きに掛けてその上にホワイトソース、チーズ、パン粉を眩してオーブンで焼いた。
「今日はグラタン……いい匂い」
「昨日の余り物の処理も兼ねてこうなった」
俺は自炊をしている……と言えば聞こえは良いが、それ以外にやることが無いとも言える。
ゲームや漫画が嫌いなわけではない。むしろ好きな方だが余計な事をすれば俺は色々な意味で死ぬので下手な事が出来ない。腹立つ事に俺を転生させた奴はそれを見越してか俺にクッキングパパの荒岩一味レベルの女子力を寄越しやがった。家事関係になれば必然と閃き自転車を漕げるようになった子供が当たり前の如くペダルを漕いでるかの様に身体が動かせる。
「グラタンで余り物ってシチューでもしたんですか?」
自炊していて調理場がシャーレなので嫌でも当番の生徒と付き合わないといけない。
結論から言えばシャーレの当番として来ている生徒達やちゃんと交流をしている生徒達に料理を作ったりする機会がある。
「いや、たこ焼きだ。昨日錠前達とたこ焼きを作った」
「……なんでたこパに呼んでくれないんですか!?」
「たこパしてるんじゃねえんだよ。屋台の出店でたこ焼きのバイトがあるから覚えたいって……意外と難しいんだよ」
錠前をはじめとするアリウスの生徒達とたこ焼きを作った。
それを聞けば早瀬は額に青筋を浮かべる。呼び出されていないことについて……たこパしてるんじゃねえんだから呼び出すわけねえだろうが。たこ焼きをひっくり返すのコツを掴めばあっさりと出来るが逆を言えばコツを掴まないと出来ねえんだよ。
「っぐ……このたこ焼きグラタンが美味しいからたこパに呼ばなかった件については文句は言いません。ですが、やはり一部の生徒に依怙贔屓は良くないと思います」
「そうか……じゃあ、明日から各々で食事を用意する。アレルギーや味の好みの問題もあるから他の人になにかを奢ることはしても作った物を食べさせるとかは禁止にする。次からは弁当を持ってくるようにしてくれ」
「……先生は汚い大人です」
「よく分かってんじゃねえか、最高の褒め言葉だ」
綺麗な立派な大人なんて俺には無理だっての。