先生は汚い大人です 作:こうすけ増田劇場版
「先生、差し入れをしたいのです」
「そうか、頑張れ」
本日の当番である歌住が差し入れをしたいと言い出すので頑張れとだけ声援を送った。
どうせわっぴーなオチを迎える……陸八魔と違って悪意とかそういうのが無いだけに呪われてんじゃねえのかと思える。
「先生、真剣に聞いてください!」
「いやだから、差し入れをしたいのはお前であって俺じゃないわけだ。仮に料理だったとしてそこに俺の力が介入したとしてそれは果たしてお前の力なのか?と」
「うっ……確かに、そうですが……」
「大体な、飯の差し入れってある意味迷惑だからな?もうお前ぐらいの年齢になると食べ物の好き嫌いとかそういうのがハッキリと出ている。差し入れですと高確率で人気は出ないであろうゴーヤチャンプルー出されたらそれはそれでリアクションに困るだろ?」
食べ物の好き嫌いとかそういうのがあるわけで、下手に飯系の差し入れをするのは不味い。
幸いにもベジタリアンとかビーガンとか宗教的に料理酒が入ってたり発酵食品が入っていたりするとその時点で食べられないとかそういうのは居ない。
「気持ちが」
「好み云々があるんだからそれは善意の押し売りだ。ダイエットとかの栄養管理で食事制限してるならともかく普段食う飯を誰かに決められるって場合によっては一番の迷惑だからな……それでもって言うならば昆虫食を差し入れするか?」
「っひ!?そ、それは……」
「そういうこと、分かる?」
「……はい……すみませんでした……でも、先生はおにぎり等を配ってますよね?」
「ハズレる事が無いのがおにぎりだし……結局のところ、文句があるならばテメエが作れだからな」
料理を差し入れする云々について場合によっては迷惑行為と言えば俺が定期的に色々なとこに料理を差し入れしている事を指摘する。
ハズレる事が無いのがおにぎりだ……当番に来ている生徒達の好み?いや、気にしてないぞ。ニンニクとかの香辛料は気にしてるがそれ以外は大抵は己の好みで料理をしている。
「やはりそうですよね。自分で作るのが一番です!……先生、ヴァルキューレ警察の差し入れはなにがよろしいでしょうか?」
「……なんで俺も参加なノリなんだよ……」
「やはりカツ丼でしょうか?名前的に縁起が良いですし、警察ですし」
「いや、それだったらドーナツの方がいいだろ。カツ丼を差し入れは大量生産が難しいし、警察だし」
「……何故警察がドーナツなのですか?」
「……そう来たか」
ブルアカが韓国のゲームであり日本に近いので日本の文化とかが少し多目に入っている。
警察と言えばドーナツの差し入れだろうと言うことについて歌住はなぜ?と分かっていない……昔のアメリカの警察物とかやたらとドーナツ食ってるイメージでそれは間違いじゃねえ。
「別になんてことは無い話だ……治安がくっそ悪い地域じゃ警察はただそこに居てくれるだけでありがたい事で、24時間営業のドーナツ屋が警察が来てくれたらサービスしますよとサービスしたんだよ」
最近のは知らんが昔のアメリカの警察物で警察はハンバーガーとかホットドックじゃなくてやたらとドーナツを食べている。
それに関してはしっかりと理由がある。アメリカは外国なので治安は当然悪い。そして警察は居るだけで抑止力になる。だからドーナツ屋はお客が警察だったら色々とサービスをした。昔のアメリカの警察物でドーナツをよく食べているのはそういう所がある。
「まぁ、ただそこは外国のクオリティ……味はまぁ、高レベルじゃない」
今は外国で食べる飯のレベルは上がっているらしいから詳細は知らんが当時だからドーナツと言えどもアメリカンだから結構、雑だ。
味が高レベルじゃないことを言えば歌住はなにかを考える
「先生……高レベルなドーナツなどあるのですか?……いえ、その辺のドーナツでも美味しいのは理解していますが、飛び越える様なドーナツには生まれてから一度も出会った事はありません」
「そりゃあるに決まってんだろ」
日本のジャンクフード業界は割と難しいと言うか一強か競合の極端な偏りが酷い。
ハンバーガー店はざっと浮かぶだけで5つ以上はある。牛丼屋も3つある。ただコンビニのホットスナックやその辺の肉屋の揚げ物が異常なまでに美味いのもあってかフライドチキンの大手のチェーン店と言えばカーネル・サンダースの秘伝のレシピでお馴染みのあのフライドチキン一強だ。まぁ、カーネル・サンダースのあの店にとって一番の目の上のたんこぶは唐揚げだろうが。
ドーナツと言えばパッと何店かは浮かぶが勢力図だけで言えばあのドーナツ屋が多いと言うか一強のイメージ。外国から日本に進出!とかで日本に来る店はあるが高確率で潰れる。個人経営の製菓店とかでついでにドーナツも作ってるとかあり、ドーナツメインはあんま見ない。ただドーナツは高度にも作れるし簡単にも作れる甘い物で……大手のチェーン店だから高度に作るドーナツは手間とかコストとかの都合上で作れない。
「でしたらそれを是非!」
「……」
結局はこういう流れになるんだなと思う……グルマンの正しい導き方?それはそう。
仕事はあっという間に終わったのでこの後にドーナツを作ると言う事が決まった。
「しかし先生、高レベルなドーナツがあると言いますが具体的には?粉から拘るイメージしか湧かないのですが」
「それプラス調理に手間を加えるんだ……ドーナツって言ってもベーキングパウダーで膨らませるケーキドーナツと酵母を使って膨らませつパンドーナツがある……と言うかこの辺は結構曖昧だ」
「曖昧?」
「放課後スイーツ部の奴等に同じことを聞いたが、パン屋とケーキ屋の違いについて答えれるかと聞いたらパン屋はパンを売っていてケーキ屋はケーキを売っていると答えた。じゃあケーキとパンの違いについて答えられるかと聞けばイーストかベーキングパウダーが入ってるか入ってないかとか砂糖の量が違うと答えた……だから両方を置いている店に連れて行った」
パン屋の中にはショートケーキみたいなシンプルのなら置いている所がある。
あいつら、食べることについては強いけどもそっち系の知識が意外と少ないことについて驚いた。食うなら少しの学は必要だぞ。
「そもそもが何処からがスイーツで何処からが食事なのか分からねえからな」
「アンパンがなければケーキを食べればいいと言うやつですね」
それ違う。色々な意味で違う。
「まぁ、とにかく素材に関して拘る……コレに関しては極々普通の事だ。ホットケーキミックスでやれば大体は片付くんだがな」
「いえ、ここは素材にしっかりと拘ります」
「シャーレの経費じゃ落ちないからな」
「大丈夫です!コレは私の純粋な好意でやっていることです……何故かは分かりませんが、シスターフッドの子達ですら私を疑いの眼差しを向けるのです。幸いにも誤解なのは分かりましたが……他にもイメージアップの為にもヴァルキューレ警察に」
ヴァルキューレ警察に対してドーナツを差し入れしたらそれはもう賄賂では?
他の勢力ならばほのぼのな差し入れだけどもヴァルキューレ警察は一応は逮捕権的なのを持っていて、ドーナツを差し入れに送ることでヴァルキューレ警察への遠回しの賄賂とかそういう風に……いやもういいか。
「ドーナツだから拘るのは油と砂糖だな」
「油と砂糖?また随分と初歩的なものですね」
「コイツが意外と重要だ……スイーツじゃない主食としてのドーナツなら幾つかはあるがスイーツとしてのドーナツは当然、スイーツとしての役割、甘いかどうかが重要だ。普通のドーナツにジャムやあんこを乗せるって手段はあるにはあるがジャムもあんこも意外と技術と時間がいる」
ジャムに関しては季節の果物を選ばないといけなくてそこから色々と加工しないいけないから時間がかかる。
あんこに関してはちゃんと作るにしても砂糖の量とかある……和菓子の必需品のあんこだが、アレは美味しいあんこはホントに美味しいが変なのだとクドい。
「なるほど、確かにそうですね!甘いものを食べた時の天にも昇る様な幸福……しかし油もですか……では、オリーブオイルを買いに」
「いや、市販品より油も手作りの方がいい。市販の油は大抵は衛生管理の殺菌消毒だなんだで揚げ物が出来るレベルの高温に加熱してる。オリーブオイルがいい油って浮かんでるが、手を加えてない生のオリーブオイルはキツいぞ」
「しかし……サラダ油と胡麻油と米油以外に油と言えばオリーブオイルが一番で……流石に胡麻油で揚げればおかしな味に」
「なるぞ……胡麻油は美味いと言うか濃いから今回は割る感じで……え〜っと、あ、ここか」
油から拘らないといけないとなれば色々とややこしいが、特別に美味しいドーナツを作る以上はそういう所には妥協したら負けだ。
油を入手しなければならないという事で油を手に入れる為にこの前視察と買い物に行った農業科の高校の住所を確認して電話を入れて購入するのとなにに使うのかを伝えて歌住に値段を言えばその値段で問題ないと文句は出なかった。
「油は向こうで取るからな」
「シャーレで出来ないのですか?」
「そうしたいのは山々だけど……下手な事をしてやらかすとお互いに損なんだよ。特に今回の場合は普通の油じゃないからそのままポンって受け取ってシャーレでやったら場合によっては法律に触れるとか色々とある。農業科の高校でやりましたってしておけば安全も安心も守れる」
物が物だけにシャーレで勝手にやったら下手したら逮捕されるからな。
法律に触れるとかそういうのがあるので歌住と一緒に農業科の高校に向かい油を確保し、ついでの黒糖も確保した。
後はまぁ、パン生地を作ってドーナツを作る……が、流石にシャーレの仕事が終わってからだから1日で終わらなかった。材料の確保に時間がかかったから翌日に持ち越しになり、翌日には仲正が当番に来たので即座にシャーレの仕事を終わらせて事情を話せば歌住に関しては色々と誤解があるからなぁ、と遠い目をしていた。
「先生、砂糖と油だけでいいんすか?」
「いや、ちゃんと調理にも手を加えるぞ」
「後、揚げるだけですが?」
砂糖と油に拘っているドーナツを作っているんだなと軽く流しているが、それ以外には特に目立ったところはないパンドーナツ作りをしている。もう後は揚げるだけ、ドーナツと聞いたらイメージする輪っかのあの形になっている。歌住が揚げるだけと言うがそうじゃない。
「焼くんだよ、これを」
「なるほど、焼きドーナツですね!」
「いや、それが終わったら揚げるぞ」
「焼いたのに揚げるんすか?」
「手間とかそういうのがかかるからやってる所は基本的には見ねえけど、ドーナツは焼いてから揚げた方が美味い……で、揚げ終えたらもう1回焼く。その時にはきな粉をかけてだ」
「……なんか色々と手間かけてるけど、よくよく考えれば最終的に辿り着くの揚げパンっすね……」
「揚げパンはコッペパンを焼いて揚げてだけどコレは焼いて揚げて焼いているからスゴく手間が掛かるんだ」
最終的に辿り着いたのは揚げパンじゃね?と仲正から指摘されるが、小麦粉を使ってる料理だからそりゃ被るに決まっている。
手間がかかってる事について言えば確かにここまで手間が掛かっているドーナツは見たことはないなと仲正は特に批判とかそういうことはしない。
「昨日の油ときな粉の代金の領収書だ。お前名義で取ってるから後で口座に入れといてくれ」
「あ、はい」
「油ときな粉……どれだけの値段なんす……っ!?」
「意外と高いですが、こういうところで妥協をしてしまうのはよくありません」
昨日渡していなかった領収書を歌住に渡した。
仲正は手作り油ときな粉がどれぐらいの値段なのかについて領収書をコッソリと覗けば目を見開いた……歌住は油ときな粉だけでこんなにも値段が張るものなのかと驚かれているのだと思ったのだが多分、仲正は別のことに気付いている。
「先生が……そんな……でも、先生は……いや、でも……」
「ふふ、後は焼くだけです」
ぶつぶつと呟いている仲正は多分色々と勘違いをしてるんだろうが歌住は気付いていない。
オーブンにパンドーナツを入れて焼いている間に仲正は何処かに行った……この後のオチが何となくで読めているが、まぁ、いいだろう。
「きな粉は基本的には完成系しか見ないですが……焼くと香ばしいのですね」
「そりゃ粉系は火を通せば香ばしさが増すのが多いからな」
「フフ……っと、いけません。コレはあくまでも美味しそうなきな粉ドーナツであって美味しいかどうかはまだ分かっていません。ここはしっかりと味見をしなければ」
そんなこんなで焼き終えれば香ばしいきな粉ドーナツが完成した。
見るからに美味そうであって本当に美味いかどうかは分からない。味見をすることの重要性は分かっていると歌住がきな粉ドーナツを食べようとしたその時だった。仲正が戻ってきて銃口をこちらに向けてきた。
「仲正、なんのつもりだ?」
「……それはこっちのセリフっすよ……先生」
「い、幾ら見た目が美味しそうだからと言えども銃を使ってまで奪うのはよくありません!匂いからして美味しいのは確実でしょうが、最初に食べるのは作った人でなければ」
「そんな危険な物を食べさせるわけにはいかないっすよ……見損なったっすよ先生。捻くれてるけどなんだかんだで私達と向き合ってるのに……そんな危ない物をよりにもよってヴァルキューレ警察に食べさせようなんて考えるなんて。最低とかそれ以前の問題、あんたを先生って慕った自分がバカだった」
「……まぁ、なんだ……食うか?」
「っ!食べるな!!それだけは、それだけは越えたら」
「動くな!!ヴァルキューレだ!!」
そこそこ作ったきな粉ドーナツを食べるかと仲正に勧めて俺も食べるかと思っていれば仲正は興奮する。
その一線を越えたのならば今までの日常が壊れてしまう。銃口を向けているが感情に左右されて撃つことが出来ていない状態でヴァルキューレ警察の尾刃が現れた。
「先生……なんで、なんでそんなことを……」
「なんでもなにも歌住に頼まれたからやっただけだ」
「っ!!お前か……お前が先生を!!」
信じていた人に裏切られたと言わんばかりの尾刃が苦しそうにしながらも質問をするが歌住に頼まれた事を伝えれば歌住を睨む。
仲正もパカっと開眼をしていて歌住を見つめる。歌住はビクッとする。
「あ、あのこのきな粉ドーナツは」
「ああ、ヴァルキューレが責任を持って処理する……歌住サクラコ、お前を麻薬所持の現行犯で逮捕する」
「…………え?な、なな、なんでぇ!?」
「先生、貴方も共犯者だ……それ相応の覚悟はしてもらいますよ」
「そうか……取りあえず誤認逮捕だから歌住の手錠は外せ」
ガチャンと歌住に手錠をかけ終えれば尾刃が手錠を俺にチラつかせる。
取りあえずそろそろ言うべきだなと誤認逮捕である事を伝えればビシッときな粉について指をさす。
「先生、なにを言おうがあそこに言い逃れが出来ない証拠がある!」
「先生、やめましょうよ……きな粉ドーナツのきな粉に大麻を使ったの知ってるんすよ……私達を依存させるつもりでしたか?」
「まぁ、間違いではないな」
「なんで……なんでそんなことを……」
「……いや、普通に問題無いからな」
「「………え?」」
物凄くしんみりとした空気が流れている中で流石にそろそろ言わなきゃ大ごとになるなと判断したので指摘をする。
尾刃も仲正も俺と歌住が大麻を使ったドーナツを作ったと認識していて大麻は実際に使ってはいるが……種は問題は無いぞ。
「ご存じないのですか?大麻と呼ばれる植物は確かに違法ですが、発芽していない種は普通に流通していて食べれる物なのですよ?」
「え……そうなんすか?」
「七味唐辛子に麻の種って入ってるだろ。あれは大麻の種だぞ」
「通報を受けた際に昨日先生達があんぱんや粉や依存と発言をしていたタレコミが、あんぱんは主にドラッグの隠語じゃ」
「それはホントにあんぱんの会話だから……油は発芽していない生の大麻を絞ったし、きな粉に使ったのはちゃんと加熱処理してるやつでなんだったら購入した農業高校はちゃんと大麻栽培の許可は連邦生徒会とか農協とかに貰ってんぞ?」
大麻を使ってるけれども法律的に特に問題は無い種を使っているという事について指摘すれば驚かれる。
仕方ねえなとスマホを取り出して大麻関係の法律、種は合法とかそういうのについて見せた。
「昨日、農業高校で大麻油を採取して終わりにしたのはシャーレに生の種を持ち帰ってなにかの拍子に発芽したら終わりだからだぞ」
「…………」
「……中途半端な知識で通報して誤認逮捕か……コレはスクープだな」
「「っ!?」」
「冗談だよ。とにかくちゃんとセーフだから、歌住の手錠を外してやれよ」
歌住や俺が黒でなく白である事を伝えて軽く煽れば顔を青ざめる仲正と尾刃。
冗談だと軽く流して歌住の手錠を解錠してやれと言えば……尾刃が気まずそうな顔をしている。
「いえ、その……我々の不手際でその恐縮なのですが……暴れられる事を想定してヴァルキューレの支部に手錠を」
「え?」
「車はあるのでその、ご同行を……」
「あの、先生……こうなるんじゃないのかと途中で気付いてたりは?」
「手錠に関しては予想外だけど仲正の顔が変わった辺りから勘違いされてるだろうな〜とは思っていた……まぁ、コレも人生経験だ」
「せ、先生は汚い大人です!!」
そんなこんなで手錠から解放される為についでにヴァルキューレ警察に差し入れの為にきな粉ドーナツを持った歌住は連行されていった。当然と言うべきか見ている奴は見ていると手錠をつけた歌住が連行されていると勘違いして最終的にはヴァルキューレ警察に山吹色のお菓子を送って釈放された極悪犯という噂が流れた。
「あ、めっちゃ美味いっす」
「手に入れるのが難しい黒糖を使ったからな」
尚、歌住の金で作ったきな粉ドーナツはとても美味しかった。特に人の金で食うタダ飯だったから美味い。
その内にポケモンの二次創作書くかもね