先生は汚い大人です 作:こうすけ増田劇場版
言うまでもないがキヴォトスは治安が悪い。
銃が当たり前のくせに殺傷能力が高いのは流石に発売は禁止されている……イカれているとしか言えない。
「先生、本日はありがとうございます」
シャーレに来た些細な依頼でトリニティにやって来た。
問題自体は思ったよりも根が深い感じだった……偽物の紅茶を流通させてるってそれってシャーレじゃなくて普通に警察沙汰の話じゃねえのかよ?シャーレってなんなの?組織の垣根を越えて色々と出来る組織ではあるけれども、限度があるぞとは思う。
「しかし流石はティーパーティーと言ったところですか、違いが分かる一流でしたね」
「あんまり本物とか高級志向とかそういうのをやり過ぎるのは無理だからな。本物に拘れば、生産者側の負担とかコストとか酷くなるし」
トリニティでの問題は高級な紅茶と偽って偽物の紅茶を売っているという話だ。
それに対して警察の様に摘発をすれば解決するのではないのか?となるが、それはその場しのぎの行動だ。俺はコーヒー派で日本人で紅茶と言えばミルクティーかレモンティーぐらいでそこまで詳しくない。
自らをティーパーティーと名乗りセレブな立ち位置の育ちをしているんだったら所謂本物を知っていて違いが分かる。桐藤を呼び出し……闘茶をした。どれがどの茶なのか、この紅茶は本物か偽物かと。
本物の紅茶は言うまでもなく高いし、扱いも大事だ。
沸騰したやかんの湯をただかければ美味い紅茶が生まれるほどにお茶は甘くはない。粗悪品な物を粗悪な作り方で売りつけようとしているインチキ商売を検挙してやり、正義実現委員会の支部で色々と後始末…………いやこれ、シャーレの仕事なのか?
ブルアカって外国が作ってるソシャゲなのになんで所々が日本基準なんだよとはツッコミを入れてはいけない。
ホットとコールドの自販機があるのは日本だけだぞ。
「羽川を桐藤の為に噛ませ犬として使ったことに関しては申し訳ないとは思ってる……でも、コレで逮捕をするだけじゃなくて偽物は偽物だとバレるという一例を作れて下手に動けない」
偽物の紅茶を売っている……コレが本物の紅茶なのだと思われたら色々と大変だ。
その為に桐藤に闘茶をしてもらうが……あえてその前に羽川に闘茶をさせた。結果だけで言えばボロ負けだ。どの紅茶がどれなのかを当てる事が出来ずにボロボロに負けた。
羽川はトリニティでもそれなりの立ち位置だ。
そんな人間でもどれがどれなのかを見抜くことが出来ない中で交代だと桐藤と選手交代をする。そこで闘茶をして騙すことに成功すれば偽の紅茶を売っている者としては色々と有利に動く。しかし、桐藤がズバッと銘柄を言い当てたので粗悪品は気付かれると威厳を示した。桐藤が輝く為の引き立て役として羽川を利用した。羽川が当てたら当てたで普通に事件解決で終わる。
正義実現委員会が無ければ放課後スイーツ部に入っていたと認めるぐらいには羽川は甘い物は好きだ。
甘い物のお供と言えば炭酸飲料等のケミカルな物でなく茶やコーヒーだ。こいつらはまだ未成年だから酒の快楽は知らねえが、お茶やコーヒーと甘い物を組み合わせた時の快楽は知っている。しかし闘茶にボロ負けしたので結構落ち込んでいる。
「安心しろ、俺も違いは分からなかった」
ものは試しにと俺も闘茶に挑んだが、普通に違いが分からなかった。
紅茶じゃなくてコーヒー派で無駄に高いコーヒー豆とかじゃなくてその辺のコンビニのコーヒーレベルで充分だ……美味い物は好きだが、違いが分かるかと聞かれれば話は別だ。
「つーか、怒らないのか?噛ませ犬にした事を」
俺はシャーレの先生であって特定の勢力の顧問じゃない。特定の勢力はそれぞれちゃんと頭の人間が居る。そいつがトップとしての威厳を示さなきゃ意味が無い。だから最初に桐藤を出さずに羽川を噛ませ犬にして桐藤を出して上の存在はレベルが違うぞと威厳を示した。普通ならば文句の1つも言いたいところだろうが羽川は文句を言わない。
「闘茶の際にズバッと当てられなかった、それをすればそこで今回の事件は終わりでした……紅茶には自信がありましたが伊達に相手はトリニティに粗悪品を売りつけようとしていません。闘茶は紛れもなく負けたのです」
茶の違いが分かっている筈が当てる事が出来なかった事を羽川は悔しそうにしている。
甘い物が好き、甘い物のお供でもある紅茶にも当然自信がある……それを利用してやった。勝てなかった自分が悪いと言うが……
「勝てないように仕組まれてたの気付いてないのか?」
「…………え?」
お茶を売りつける側も何の打算もなく金持ち勢力であるトリニティ相手に茶を売りに来ていない。ある程度の打算はあった。
勝てないように仕組まれていた事について気付いていないのか?と聞けば羽川は驚いている。
「闘茶の茶菓子に出た月餅はお茶の繊細な味を惑わせる濃厚さがある……無論、お茶でその味を流し込むのが醍醐味だが、味が分からなくなる」
茶のお供だと闘茶の際に月餅が出された。
ちゃんとしたお店の月餅であり羽川はなんの疑いもなく食べていた。だが、月餅はお茶の味を惑わせる……東洋系のお菓子はあっさり系よりもねっとり系が多い。ちゃんとしたお店の月餅で甘い物好きで色々なと店のスイーツを食べている羽川基準でも美味いと言えるレベルの物だった。
「そんな事が……何時から気付いていたんですか!?」
「月餅が出た時から気付いてたぞ」
「だったら言ってくれれば」
「あのな、俺はお前を噛ませ犬にするつもりだったしお前自身は自分で正解すれば全てがその時点で解決するって思っていた。確かにその通りだ……けど、相手は悪人だ。ただ粗悪品の紅茶を高級品と偽って売っているのなら普通に検挙すればいい、でもそれだけじゃダメだ。相手の商売道具である茶を見抜いている、偽物を売ったとしても即座にバレるし裁けるとあえて相手の土俵の上を荒らす意味合いで闘茶をした。コレは戦術に言い換えるなら相手の得意な陣地やシチュエーションにあえて乗ってそれで勝利したのと同じだ」
食べさせた月餅が自身の味覚を乱す物だった事に気付いているのならばなんで言わなかったのかについて言うが最初から噛ませ犬にするつもりだったと答える。それと同時に相手の土俵の上に立たせている事も言った。
「相手の土俵の上にわざと立ったんだ、なにが出てくるかは分からん……ただ逮捕をすれば終わりなだけの案件をこうして何手も使っていて潰してんだ。少しは裏を読んだり疑うこともしろよ」
「……先生は汚い大人ですね」
「ありがとう、最高の褒め言葉だ」
早瀬が言っていた汚い大人とは異なる本当の意味での汚い大人だ。だが、大人ってのはそんなものであり最高の褒め言葉だ。
グヌヌと羽川は怒っているが手を出してこない……それに気付くことすら出来なかった自分はバカだと反省をしている。
「まぁ、そう怒るな。月餅とは違う甘い物を作ってきたから」
「先生……すみませんが、いただけません」
「なんかあんのか?」
一連の事件は逮捕で終わった事で羽川を利用したしと用意していた甘い物を持ってくるかと思っていれば羽川は悲しそうな顔をする。
甘い物と言われれば普通は喜ぶと思ったんだが……なんかあるのか?俺に対して怒ってるなら自分で処理するか他の人に食べさせるだけだ。
「いえ、その……闘茶の際に茶菓子として出た月餅を食べまして」
「それは見ていたけど?」
「先生……月餅のカロリーは恐ろしいんです!茶は偽物でしたがあの月餅は紛れもなくいいとこの月餅でしたのでカロリーは500を越えていて。先生の甘い物なので美味しいのは確かですが、それでも月餅が頭に入っているんです!」
甘い物を食べると言うか美味しいものを食べる人間と付き合わなきゃいけないのはカロリーだ。
絶対に栄養が乳に行ってんじゃねえの?と思えるスタイルをしている羽川は月餅のカロリーがおそろしくて俺が用意した甘い物が食べられないと言う。
「安心しろ、今日のはそういうのをあんまり気にしなくて良い物だ……はい」
「棒アイス……糖質の……あれ?」
「これ、葛アイスだ……砂糖は小さじ3杯にしていて中に入れているパイナップルで甘さを取ってるからカロリーは普通のアイスよりも低い」
棒アイスを渡せば脂質や糖質の塊で食べたいけれども!と苦しそうにしていた羽川だったが直ぐに気付いた。
俺が持ってきたアイスは分類上はアイスキャンディだけど、ジュースとかを凍らせた物じゃなくて葛を使ったアイスキャンディだ……ゼリーとアイスキャンディの良いとこ取りをしているとも言えるだろう。
「……月餅はねっとりとしていましたが、コレは爽やかな味ですね」
葛アイスだからカロリー低いと言えば羽川は食べた。
月餅のねっとりとした味とは真逆、さっぱりとして冷たくて爽やかな味をしていると嬉しそうな顔をする。
「不謹慎ですが、先生の護衛はコレがあるから堪りませんね」
さて、今更ながら話を戻すがキヴォトスは治安が悪い。
アロプラ?まぁ、居るには居るけどプラナはともかく俺はアロナが嫌いだったりするし、あんまり頼りたくはないなとは思っている。後、単純にシッテムの箱さえ奪えばと思われたらその時点で詰みだし毎回バリアは出来ない。
結果的に言えば、何処かで事件解決する際にはその地区に籍を置いている誰かに護衛役をしてもらっている。
ランダム?んなわけねえだろ。ある程度はチョイスしている。護衛役なのに明らかに向いてなかったりする奴は要らん。護衛をしたお礼に料理を作っている。大抵は軽く摘める物だ。
今回の護衛役も闘茶を使って桐藤に威厳を示させるかと思って噛ませ犬にする為に羽川をチョイスした。そうじゃなきゃ別に仲正でも良かった。