先生は汚い大人です   作:こうすけ増田劇場版

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錠前と手作りシャンプー&リンス

 

「先生、買い物をしたんだ。領収書があるから経費で落としてくれ」

 

 アリウスはどうなってるって?……ベアトリーチェのあのクソでしか無い演説を世間に公表してベアトリーチェから生徒の権限を奪ってそのままアリウスを1つの学校に認めさせた。と言うか俺が校長になった。

 錠前には1発撃ち抜かれたから2週間ほど獄中生活を送ってもらったが、それだけだ。それ以上はとやかく言わない、アリウスには同情の余地があると世間に公表し、その上で俺が校長になり俺が許すのでそれに不平不満があるのならば文句は言えばいいが俺の顔に泥を塗ることだと思えとあえて言ってやった。

 

「購入した物はコレだ」

 

 一応は表社会を歩けるが後ろ指を指される事はやっている……それを次の世代に負の遺産として託すのかそれとも自分の代で終わらせるのか、少なくとも俺はあのクソババアの教育を受けていないからなんとも言えん。ただ助けてと頼まれたから助けただけだ。

 錠前は1枚のレシートを持ってきた……生活に必要な物だからと経費で落としてくれというわけで錠前は買った物を見せる。

 

「……錠前」

 

「どうした、先生……色々な店を回ったがコレが一番安かったんだ」

 

「いや、確かに安いぞ。経費つっても無限に出るわけじゃないし安いのはいい……でも、わけわからんメーカーなのもどうかと思うぞ」

 

 錠前はリンスインシャンプーを購入したのだが……コレ、何処のメーカーだよと言いたくなるシャンプーとリンスだった。

 別に俺はそこまでオシャレに気を遣っているわけじゃねえ、シャンプーやリンスも大手のメーカーのを使っている……ただ、ホントにそれこそ100円ショップで売られてそうな何処のメーカーか分かったもんじゃねえのは信頼も信用も出来ない。

 

「リンスインシャンプーじゃなくてシャンプーとリンスは別々にしろよ」

 

「む、そうなのか?2つが1つになってお得だと思うのだが」

 

 リンスインシャンプーが悪いとは言わねえけども、シャンプーとリンスは別々なのが髪には良いものだ。

 錠前は2つが1つになってお得だと主張するが、逆の方が使い勝手が良い。折角サラッとした髪を持ってるのに勿体ねえだろ。

 

「買い直せ……とは言えねえか……行くぞ」

 

「何処に行くんだ?」

 

「トリニティ学区」

 

 購入してしまった以上は買い直せは無理だなと諦めて重い腰を上げてシャーレから出る。

 向かう先はトリニティ学区の雑貨店、トリニティ学区に行くと言えば錠前は嫌そうな顔は特にせず普通についてくる。

 

「ねぇ、あの人って」

 

「そうね」

 

 堂々とトリニティを歩いていればヒソヒソ話が聞こえる。

 視線の先には錠前がいる……俺を撃った張本人、トリニティの汚点であるアリウスの生徒、言えることは幾らでもあるだろう。錠前は特に気にしない。今更その辺の事で心が揺れ動く程に柔なメンタルはしてねえ。

 

「先生も物好きだよね、あんな奴等の校長になるなんて」

 

「先生って名乗ってるけど、めんどくさがり屋で態度も悪いしホントになんで先生してるんだろ」

 

「っ!!!」

 

「錠前……そこで手を出したらどうなるか分かってんだろ?」

 

 ヒソヒソ話の話題は俺に変われば錠前は殺意を抱いた瞳に切り替わる。

 俺がバカにされたから怒ってるんだろうが、バカにされて当然な日頃の行いみたいな事をしている自覚はある……だから言われた程度で特にまぁ、なんとも思わない。

 

「だが、先生……私は……」

 

「お前が撃った罪は消えないし、許すつもりは無い。だからと言って死んで詫びるのは話が違う……反省したのならばその罪を背負って一生を生きろ。許してもらうなんて甘えた考えを持つな」

 

 理由はなんにせよ俺の腹に穴を空けたのは錠前だ。

 そんな錠前をアリウス含めて1つの学校として認めさせた……錠前達にとっては恩人になるだろうから陰口を言われるのは嫌なんだろうが、そうなる原因を生み出しているのは事実だ。

 

 俺は錠前が俺を撃った事は許すつもりは無い。死んで詫びるなんて甘えた考えを持っているのならばその甘えを捨てさせる。

 死んで終わらせるなんて楽な道を歩むことは絶対に許さない……罪の最後は涙じゃない。ずっと苦しく背負って生きることだ。

 

「なーに、ヒソヒソと話してるんすか?」

 

「っひ!?」

 

「あ、いえ……その、先生がいらっしゃっているな〜と。トリニティになにをしに来たのかと」

 

「へぇ〜そうなんすか……先生が、ねぇ」

 

「し、失礼します!」

 

「用事を思い出しました!」

 

 正義実現委員会の仲正が現れてニコニコしながらもヒソヒソ話をしていた奴等に声をかける。

 声をかけられたトリニティの生徒達はビクッとして俺を名指しにするが、そこで仲正が目を開けば……逃げて行った。

 

「ったく……これでビビるならヒソヒソするなっての……」

 

「別に構わねえぞ、悪口言われる原因はあるから」

 

「そういう問題じゃないっすよ!先生はもう少しシャキッとしてほしいっす」

 

「はぁ……あのな、俺はコレでいいんだよコレで。教師なんざ生徒に嫌われる時は普通に嫌われるんだし、それ覚悟の上だ。何でもかんでも笑顔で愛想よくするとは限らねえんだよ」

 

 仲正は言葉に怒りを込めながら呟きそのまま俺に説教をかまそうとするが俺はコレで構わねえ。

 俺に理想の先生像を押し付けるなよ。俺だってこんな仕事を辞めれるなら何時だって辞めてシャーレの外の世界に逃げる……

 

「防衛室長が先生から先生を奪ったら、1週間ぶっ通しで暴動が起きまくったの……忘れたとは言わせないっすよ。そんな先生だから皆、大好きだって思ってるんすから……まぁ、私含めて好きの意味が異なること多いっすけど

 

「安心しろ、生徒はその時点で恋愛対象外だ」

 

「……」

 

 パカっと開眼、やめてくんない?

 お前は抑えてる方だけども、爆発する時は正義実現委員会と同じだなと思えるぐらいには悪魔的というか暴動起こすとんでもない奴だから。不知火のクーデターを受け入れてシャーレをクビになって出て行こうとした際に起こした暴動の主犯格なの知らないと思ったら大間違いだぞ。

 

「それで、なんでわざわざトリニティに来たんすか?……先生がなにも言わないからまぁ、それ以上は言及しないっすけど正直トリニティに連れてくるのはあんま良く思われないっすよ」

 

「俺の受け持つ生徒だから俺が連れ回してもなにも問題は無い……なにをしに来たかと言えば買い物に来た。トリニティの方が質が良いらしいからな」

 

 トリニティに来た理由を聞かれるので買い物に来たと答えてそのまま歩き出す。

 金持ち学校のトリニティなので当然高級な食材……ではなく、向かったのは香油の店だ。

 

「錠前、なにが良いのかは俺には分からないから匂いを嗅いで気に入ったのなら1個言え」

 

「ああ、わかった」

 

 香油の店に足を運んだがこの手の店は野郎にとっては未知の領域だ……錠前もなんでここに来ているのかがイマイチわかっていない。

 仲正はピクッっと額に血管を浮かび上がらせながらも俺に聞いてきた。

 

「先生、これ、どういうことすか?」

 

「錠前が安さが売りでわけわからんメーカーのリンスインシャンプーを購入したから流石にそれはマズいと思ったから香油を買いに来た。気に入った香油があったらそれからシャンプーとリンスを作る」

 

「へぇ〜そうすか……先生って女の子にそんなプレゼントをするんすね。流石は無駄に女子力が高いっすねぇ!」

 

「お前さ、なに怒ってんの?俺、シャンプーとかは大手のを買ってる素人だぞ?シャンプー手作りとか貴女不衛生ですって言ってるも同然だからな。むしろ合わなかった時とか責任取りたくねえよ」

 

 錠前にシャンプーとリンスを作る、それを聞いた仲正は物凄く怒っているが、怒られる理由なんかあるわけねえだろ。

 合わなかった時とかそういう責任を取りたくねえ。

 

「いいか、最近は美容男子とかは増えているが増えているだけで当たり前とかじゃねえ。俺は歯磨き粉、シャンプー、リンス、洗顔剤、保湿液の5つは普通に市販の物だ。そんな野郎にいざ美容系の道具を渡されて好みじゃないし分かってない、でもプレゼントだし笑顔で返さない手とかそういうリアクション取られるのが一番めんどくせえんだよ」

 

「言いたいことは分かるけど、怒ってるのはそうじゃないんすよ……当番に選ばれたはもう古くて、先生に作って貰った料理が今じゃステータスなのに、先生特製のシャンプーとかズルい」

 

「お前それで髪の毛傷めてどうすんだよ……後、ステータス扱いはやめろ」

 

 才羽モモイも言っていたけど、俺に作って貰った物がステータスの時代ってなんなの?なんでそうもマウントを取りたいの?

 言っとくけど俺はお前等に対して恋愛感情持ってないからな。なんだったらそういう事を起きないようにわざと左手の薬指に指輪をつけてたから。黒崎がアレは偽物なんですよ〜と世間に公表したから迷いなく拳骨を叩き込んだからな。あの後の暴動は大変だったから。

 

「先生、コレがいい」

 

 そんなこんなで錠前は1つの香油を持ってきた。

 匂いを嗅いでクセが強いわけでもないのでコレでいいかと購入すればシャーレに戻った。

 

 手作りシャンプーはそこまで難しくない。

 ぬるま湯、蜂蜜、錠前が選んだ香油、摩り下ろした固形石鹸……摩り下ろした固形石鹸をぬるま湯で溶かす。クリーム状になるまでに混ぜ続けて練っていき、蜂蜜、錠前が選んだ香油を入れて混ぜて混ぜて混ぜ続けて石鹸の様な物になれば完成だ。

 

 所謂石鹸シャンプーの1つだから髪の毛の汚れは落とせるが髪の毛を綺麗に整える事は出来ない。

 酸性のリンスが必要になるから酸性のリンスも作る……水、クエン酸、グリセリン、ローズマリー精油、ペパーミント精油、錠前が購入した香油。

 

「気持ち悪いところは無いか?」

 

 シャンプーとリンスが完成したので使う。

 オーガニックなシャンプーとリンスだが髪の毛や頭皮に合わない可能性があるので念のための確認、何処でしてるかって?風呂だ。錠前も俺も当然水着は着ているぞ。そんなエロなイベントなんざあるわけねえだろう。

 

「気持ちいい……スゴくスッキリする……何時もと違う気がする」

 

「ブラッシングしてからぬるま湯で軽く洗う、そこからシャンプーを泡立てて髪を洗って頭皮をマッサージ、その後に髪の毛を洗っていた倍の時間、お湯を掛けて髪の毛から汚れを落とした……そこからのリンスだ」

 

 どうやら錠前の髪には合っていた様で何時も以上にフワッとしている。

 何時もとは違うのか若干だが錠前は戸惑っているが俺は特に気にせずにドライヤーを当てて髪の毛を乾かした。

 

「……」

 

「どうした?」

 

「……いいのだろうか……こんな事をしてもらって」

 

 錠前は綺麗に髪の毛が仕上がったことを喜んだが直ぐに浮かない顔をする。

 理由は……罪悪感、自分達が今幸せな道を歩んでいる事に対しての罪悪感とその道を舗装している俺に対しての申し訳ない気持ち。

 

「私は先生を撃った、コレだけは紛れもない事実だ……例えどうあれ私は」

 

「錠前……先に言っとくぞ、俺はお前を許さない。あの時は冗談抜きで死にたいと思った……俺がお前等アリウスを吸収したのは使える駒が欲しかったからだ。仲正や早瀬はなにをトチ狂ったのか俺を気に入っているが俺はそこまで人間は出来てねえ。毎日死ぬんじゃないのかと怯えている所もある」

 

「……だったら尚更だろう」

 

「だろうな……だが俺は何時までも先生のつもりは無いし、先生と呼ばれているだけの人だ。俺のやり方は何処かで間違うだろう……もし間違いを起こした時、魂が老い聞く耳を持たない老害と成り果てて間違っていると判断したのならば錠前……俺を迷いなく殺せ。それがお前がするべきこと。お前が背負った罪から許される唯一の手段だ」

 

「……先生は汚い大人だ」

 

「ああ、よく分かってんじゃねえか」

 

 願わくばそんな日は来ないで欲しいと錠前は深く願っていた。

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