先生は汚い大人です   作:こうすけ増田劇場版

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鬼方と筍の土佐煮とばくだん揚げ

 

「……先生、どうしてもダメなの?」

 

「ダメだ」

 

 アビドスの生徒は現在6人と言ったが、他の学区からアビドスに引っ張ってきた。

 それが鬼方カヨコだ……正確に言えば便利屋68全員をアビドスに引っ張る予定だった。

 

「俺はあの時に言った筈だ。陸八魔はアウトローに向いてねえし、なる覚悟も出来てないって」

 

「……先生がそれを言う?何人か人を経由して社長に自分を殺してくれって依頼させたんでしょ?」

 

「あのな……アイツは自らではみ出し者になろうとしてんだぞ?漫画とかで不良がカッコいいとかそういう描写は分かるけど、不良ははみ出しものだ。真面目にコツコツと頑張ってる人間に対して失礼だって考えたことはあるか?」

 

 陸八魔もとい便利屋68はアウトローには向いてないと判断した。

 陸八魔にアウトローがいいと思っているけど、陸八魔は優しすぎる。怒る時はしっかりと怒らないといけないし、緩いとこは組織的にはあっちゃいけない。他の2人も便利屋68を便利屋ごっことして楽しんでるだけで真面目に考えていなかった。

 

「俺はシャーレの人間、要は連邦生徒会の犬だ。勝手にどころか自らの意思ではみ出し者になった。そいつが時折正論を吐いたとしても俺は評価しない。そういうギャップ萌えは俺は嫌いだ。真面目にコツコツ頑張っている奴等に失礼だ……ゲヘナって環境がより人間としての腐敗を進ませている。自由にするならするでそれ相応の責任が生まれる、お前もそうだけど陸八魔には何度か注意はした。それでも無理だった……俺は見捨てるって権利を持ってもいいと思っているし実行する」

 

 便利屋68は全力で潰した……いや、違うな。全力じゃなきゃ潰せなかった。

 陸八魔は一応は実力者だが問題はONE PIECEのバギーみたいなところがある。こちら側が一手でもミスを犯せばその時点で捕まえる事は出来ない。ホントに便利屋68を全力で逮捕するのに力を使い、途中で離脱した鬼方以外は牢屋行きだ。

 

「現に見捨てた生徒が居るぐらいは知ってるだろ?」

 

「それは……」

 

 温泉と美食の奴等は仮釈放中だが後1回でも問題を起こせば退学にする様にしている。

 密告したらご褒美があるよと全学園の生徒に四六時中、常に監視されている状態にしている……それが怖いと精神的に病んだとしてもそれはそいつが悪い。俺はそいつらを許すつもりはないし救いの手は伸ばさない。勝手な真似をしていざ都合が悪くなれば謝罪すればなんて思っている奴は嫌いだ。罪の意識から逃れるために謝った事実を作りたいのならば俺は許さない。悪いことを悪いことと自覚して罪悪感が生まれたのならば一生、その罪で苦しんでいろ。

 

「人間、悪ノリする時はちゃんとあるが節度は守る……陸八魔達は幼いとか子供とかの言い訳はもう通用しない。いや、違うな。子供だからこそ教えないといけない、しっかりと罰を与えないといけないんだ……それが俺の役割でもある」

 

 陸八魔達は仮釈放中じゃない。今もしっかりと牢獄に居る……何時出所することが出来るか?その辺の司法手続きは俺の管轄外だ。

 仮に釈放が決まって刑期を終えたとしてもゲヘナには居させない。アレ以上居れば陸八魔達はダメな人間になってしまう。青春の1ページ(ブルーアーカイブ)?笑わせんな。それで被害受けてる奴や頑張って司法整備しようとしてる奴が居るんだぞ?

 

「……そっか…………」

 

「お前にとって便利屋68は居心地が良い環境で壊したことについては謝らない……独立して1つの組織になろうとしたんだから」

 

「ううん、怒らないよ……コレが責任ってやつだったら受け入れるよ。先生、社長達の仮釈放がダメでも差し入れはしたらダメかな?」

 

 色々とあるが陸八魔達を仮釈放するつもりは無い。

 鬼方も自分で選んだ道なのだからと感情的にならずに飲み込んだ。そして話題は切り替わって差し入れをしたいことを言ってくる。

 

「食べ物系の差し入れしかダメだぞ」

 

「うん。だから先生に言ってる……社長が事務所に見栄張ってたから食事がコンビニ弁当生活とかが多かったからさ、しっかりとした煮物とか送りたいかな」

 

 なにを使って脱獄するか分かったものじゃないので食べ物じゃなきゃダメだと伝えれば最初からそれで行くつもりだった。

 鬼方は煮物がいいと言う……煮物ね

 

「定番の肉じゃが以外が出来ればいいね……」

 

「じゃあ、定番と言えば定番のタケノコの煮物でいいか?」

 

「うん……じゃあ、筍を買いに行こうよ。水煮じゃなくて筍からがいいから」

 

「八百屋に行くか」

 

 シャーレの仕事も片付いたことだし、時間的にもセールをやっているだろう。

 八百屋に向かえば筍があったので筍を購入する。

 

「筍の先端部分を切り落として、縦に少し切れ目を入れる。切れ目を入れたら米糠カップ1杯、鷹の爪2つ、浸かるレベルの水を入れて沸騰するまで待つ……沸騰したら落とし蓋をして弱火にして煮込んでいく……水が減ったら足す。灰汁も取り除く」

 

 何時もならば筍の水煮から煮物をするが今回は筍の下処理から始まる。

 鬼方が俺のやり方を真似して筍の下処理をしていく

 

「これでいいの?」

 

「いや、まだだ……コレをコンクリートの上に乗せて1日放置する」

 

 2時間半煮込んで灰汁抜きを終えた様に見えるがまだ終わっていない。

 コンクリートの上に乗せて1日放置する……コレをするかしないかで筍のエグみが結構変わる。

 

「今の生活さ……結構楽しいって思ってるよ。アビドス生徒会が特になにか言ってくるわけじゃないし、普通に過ごせてる……でも、ふと思い出すんだ。社長達と過ごした時間……とっても楽しかったって。それを奪ったり否定した先生は許さないよ」

 

「だったら俺をクビにしてキヴォトスの外に追い出せよ。俺も喜んでキヴォトスの外の世界に出るから」

 

「……先生って何時もそうだね!何かあれば殺せとか追い出せとか……そんなこと、出来るわけないじゃん」

 

 火を入れたがまだ終わっていないとコンクリートの上に乗せれば鬼方は今の生活について語る。

 特に誰かに文句を言われたりするわけじゃないし悪くはないが、それでも便利屋68での生活も楽しかった。それを奪った俺を許さないが俺は許してほしいなんてこれっぽっちも思っていない。気に食わないならば追い出せばいい。ただそれだけだ。

 

 それを言えば鬼方は物凄く怒っている。何かあればその汚い大人のカードを出してくるので文句をいう。

 

「大人はズルいんだよ、ズルくなきゃ生きてけねえし……でも、だからこそ真面目にやっとかなきゃならねえんだ。お前等思春期のガキは無責任な発言に憧れるだろうが、俺はそういう事を言いたくないし……テメエが見たもの、感じたもの全てが正義、善、正しいなんて一度も思ってねえよ。自分達が正義とか悪は許さないとか思ったらその時点でおしまいだよ」

 

 この世で最も恐ろしいのは正しいと思って実行する確信犯だ。

 俺自身も確信犯に近い人間である事を自覚しているが、それでも比較的にはまだマシな方だ。

 

「先生って先生らしい信念とか無いね」

 

「当たり前だ。好きで先生やってねえよ……最小限の労力で最大限の成果を上げとけばそれでいい」

 

 だからこんな見た目になってんだ。

 筍を1日コンクリートに放置すれば筍のエグみは普通に下処理した時よりも取れている……理屈?多分、アルカリ性がなんかしてんだろう。

 

「……流石に多い気もするかな……」

 

「問題はねえよ。元々多目に作ってあるんだから」

 

 思ったよりも筍が多いなと鬼方が感じるが元々多目に作っている。

 筍を水、鰹出汁、みりん、醤油を混ぜたものに入れて落とし蓋をしてじっくりと煮込む……そして少し多いかなと思った筍はみじん切りにし、鯖味噌の缶詰、納豆、長ネギと一緒に混ぜ合わせる。そしてそれを油揚げに詰め込んで軽く揚げる。

 

「先生、なにそれ?」

 

「山形県名物のばくだん揚げみたいなものだ……ばくだん揚げって名前の料理多すぎるからコレが正確なばくだん揚げかどうかは分からねえ。まぁ、味はそこそこ」

 

 見たことが無い料理が出来上がったので鬼方が聞いてきた。

 ばくだん揚げだと教えるがコレが正しいかどうかは分からない。少なくとも山形県にはこういう料理があるぐらいの認識で鬼方はパクリと食べた。

 

「うん、美味しい」

 

「陸八魔達に食べさせる分だぞ」

 

「いいじゃん。私が食べても……先生も、あ〜ん」

 

「1人で食えるからやめろ!」

 

 隙あればこういうことをしてくるからこの女はホントに油断する事が出来ねえよ!

 鬼方が食べさせようとするばくだん揚げじゃなくて他のばくだん揚げを食べるが子供向けじゃないつまみの味だが、コレはコレで美味しいなと感じ、筍の煮物も完成した。

 

「面会時間は30分、余計なことをしたら幾ら貴方でも分かってますね?」

 

「ああ、構わねえよ」

 

 そんなこんなで面会時間の確保に成功し陸八魔を待つ。

 便利屋68は危険な存在だとヴァルキューレ警察学校に認識されているから、入念なチェック等もあった。特に問題は無く……面会室で陸八魔が来るのを待てば陸八魔が……なんか肌艶がいい状態で来た。

 

「あ、先生!カヨコ!」

 

「……普通さ、こういう時って窶れたりするもんじゃねえの?」

 

「なんで便利屋時代よりも元気なの?」

 

「ここの暮らしが思ったよりもホントによくて……今まで3食を規則正しく食べれなかったじゃない。薄味で温いけど3食をしっかりと食べる事が出来てその上で最近は野球対決が盛り上がってね……私、今エースで4番よ!暫くしたらバスケに切替わるけど、先生、左手は添えるだけだったかしら?」

 

 暗い気持ちになってるだろうなと思っていればなんか…………思った以上に陸八魔が元気だった。

 獄中生活でいじめとか惨めとか心配していたんだが、刑務所のご飯は美味しいし栄養価もしっかりと考えられてて受刑者に労働をさせていると野球で活躍をしてることを満面の笑みで報告した。

 

「先生、なにか美味しい物の話とか無いかしら?今度、ワイルドハントの演劇があるんだけどその時にケーキが配られるのよ。そのケーキを誰が食べるのか争奪戦の飯話をしないといけないのだけれど……美味しい物の話ってどうすればいいかしら?」

 

「何時もの様に見栄でも貼っとけ!」

 

「先生」

 

「ああ」

 

 なんか……予想以上に元気だった。他の奴等よりも陸八魔が心配だったから来てみたけれども圧倒的に損をした気分だ。

 陸八魔が予想以上に獄中生活をエンジョイしているのを見て鬼方がプッツンと切れた。タッパーに入れている筍の煮物とパックの鰹節を取り出した。俺もタッパーに入っているばくだん揚げを取り出した。

 

「わざわざ作ってきてくれたのね!」

 

「はぁ……先生、なんかごめんね……もぐ……美味しい」

 

「いや、別にこういうオチも迎えるだろうなとは思っていた」

 

「え、あの、先生?カヨコ?……なんで食べてるの?それって私の差し入れじゃ」

 

「気が変わったよ。社長って何処まで行っても社長なんだなって」

 

「お前の目の前で食ってやるよ」

 

「……先生は汚い大人よぉおおおおお!!」

 

 見るからにと言うか普通に美味しいものをゆっくりとマイペースに30分時間をかけて陸八魔の前で食べてやった。

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