先生は汚い大人です   作:こうすけ増田劇場版

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生塩と調月とミルフィーユカツ

「あ……とんかつソースが切れてやがる」

 

 珍しくシャーレ付近が雨の日、今日はとんかつにするかと思い準備をしていれば気付く。

 とんかつソースが切れている事を……俺はとんかつはとんかつソースをかけて食べる派なのでとんかつソースが無いと困る。

 

「先生、どうしたの?」

 

「とんかつソースが切れてた……」

 

「珍しいですね。先生が調味料を切らすなんて」

 

「いや……ソース7種類ぐらいあるから」

 

 焼きそば用ソース、たこ焼き用ソース、お好み焼き用ソース、コーミソース、デミグラスソースと色々とあるから忘れる時は忘れる。

 生塩が珍しいというがソースを色々と買っているからな……他のソースと色々と味が違っていてとんかつはとんかつソースじゃないとしっくりと来ない。

 

「どれも同じソースじゃない……非合理よ」

 

 今あるソースを見せれば調月はどれも同じと言い切るが関西方面の人に言えば多分殴られるだろうな。

 ……え?調月なんで居るのかって?いや、逃がしてないから……天童の一件と言うか普通に横領していたわけで、その金額はアビドスの借金以上と言うか普通にやっていたら返済出来ない額だ。私が悪かったわとか言って何処かに姿を消すのは普通に迷惑だ。

 

 幸いと言うべきか調月は仕事はしっかりとしている。むしろ優秀な方だ。

 他のデカい勢力と比べてミレニアムのセミナーは金銭関係で主に早瀬が五月蝿いがクーデターを起こしてやるぜぇ!な派閥とかほぼ無い。調月に対して小言は言うところは多いけどもクーデターを!調月を追い出してやるぜ!ってのが居ない。権力争い云々はある意味一番平和なのがミレニアムだからな。

 

 借金返済の目処は無いどころか勝手に何処かに行くのは普通に迷惑だろ?

 生徒会長の椅子に縛り付けて横領していた金の返済させている……幸いにも調月には戦闘面以外の能力はある……まぁ、何やらかすか分からないから当番に呼ぶ時とかは生塩とかゲーム開発部とか早瀬もセットで呼んでるが。小言を言われたりして涙目なのは定期的に見るがそこは自業自得で。

 

「先生、ここは大根おろしはどうでしょうか?」

 

「いや、今日大根と人参の味噌汁の予定でもう切るのを終えて大根は…………………………っ!!」

 

 生塩が大根おろしはどうかと言ってくるのだが大根はさっき銀杏切りをしたから大根おろしには出来ない。

 味噌汁の具材になる予定だから無理だとなり……俺の体にあるものが走る……よりによって、このタイミングでか……

 

「……先生?」

 

 自分のデスクから薬を取り出して飲む。目の前で薬を飲んでいる姿を見るのははじめてだと生塩は困惑しているが俺は気にしない……はぁ……

 

「だっる……」

 

「え?」

 

「せ、先生?」

 

 多分とんかつソースが切れていたのと今日一日はシャーレ周りが豪雨だから買いに行くのがなと言うのがトリガーだ。

 生徒の前では滅多に見せないと言うかこの姿を知ってる生徒って別世界のシロコことクロコ以外に誰だっけなとどうでもいいことを考えながらもキッチンにある物を放置してエプロンを脱いだ。

 

「会長、ソースなんてどれも同じと言うから」

 

「私、なの?」

 

「……あ〜めんどくせ……お前等もう帰っていいよ……」

 

 今からご飯を作るところで調月が余計な事を言ったからと生塩は色々と言うがそんなんじゃねえ。

 シャーレのソファーにドガッと横になりスマホを取り出してくっそどうでもいい動画を見始める……それを見た2人は固まった。

 

「先、生……」

 

「……俺さぁ……頭の中にあるやる気オフスイッチみたいなのが稀に押される事があんだよ。いや、この場合はレバーか?とにかく頭の中がやる気オフになる。もうなんかめんどくせえって……今日は七神に怒られようが知ったことじゃない。もうめんどうだ。ああ、安心しろ。明日から本気出すから」

 

 人にはやる気のスイッチがあると言うのならばオンになる時はオンになるが逆を言えばオフになる時はオフになる。

 転生云々よりの昔からなので別になんてことはない。やる気がどうしても出なくてオフになってしまうことが普通にある。そういう時は仮病を使うことも普通にある。

 

 こんな姿は見たことがないと生塩は困惑しているので俺はため息を吐いた。

 

「生塩さ、あんまり理想像押し付けるのやめてくんない?」

 

「え、あの」

 

「お前が忘れない体質でこんな先生は知らないって今、脳がバグってる状態だろうけど俺、一応は先生を演じてるわけよ。誰に対しても八方美人じゃないがそれでもある程度は納得出来る答えが出る先生を……今、それをするのが嫌になるぐらいにやる気出ねえ。薬飲んだけどマジで無理……今もどっかで盗聴とかしている馬鹿達は先生はきっとこういう人だなんだと理想像でもあんだろ。ある程度は頑張ってやってるけど、俺は成功の番人じゃねえんだ。成功して成功して成功しまくってこの人ならばって妄想されて特にお前等ミレニアムには常に見られていて些細な失敗すら許されない不自由な状況に追い込んでる自覚ある?」

 

「あ、あの……ごめ、ごめんなさ……」

 

 盗聴とかそういうの利用してるの知ってて黒崎に対する全力の嫌がらせに協力するのを引き換えに見逃してると言うか我慢してるけど限度はあるから。怒られたり嫌われたりする原因について生塩は一応は心当たりがあるから震えて謝ってる。

 

「まぁ、とにかく飯も仕事もどうでもいいやとなるから……あ〜でも、腹減ってるから調月がご飯を作ってよ」

 

「え!?」

 

「なに?出来ないの?」

 

「その、アバンギャルドくんを置いてきたから……」

 

「とんかつの材料も味噌汁の材料もあるんだからパッと作れんだろ?」

 

「……とんかつソースが無いんじゃなかったかしら?」

 

「卵にめんつゆ突っ込んで肉を放置してその間に米研いで大根と人参の下茹でしとけ……生塩、ゲームあるからやるぞ」

 

「あ、はい……」

 

 こんな先生は見たことはないと困惑しつつもなんとか生塩は飲み込んだ。

 ゲームをやるぞと言えばゲームを一緒にする……シャーレの仕事?どうでもいい。毎日毎日仕事だ付き合いだでフリータイムが無いからオーバーヒートしてんだよ。たまには怠けさせろ

 

「先生、わざとですか?」

 

「いや、マジでめんどくせえ……診断書とか持ってこいっつーなら持ってくんぞ?」

 

 昔からある頭のやる気のレバーがガクンと落ちることはちゃんと精神疾患の一種だと診断書は貰える。

 生塩は調月に先生らしく試練を与えていると思ってるがそんなわけねえだろ。マジでやる気出ねえんだよ。

 

「先生……めんつゆってどれだけ入れたらいいのかしら?後、とんかつ用の肉が見当たらないけど」

 

「薄切りのロースあんだろ。それをめんつゆにつける。とんかつはとんかつでもミルフィーユカツだ。後、めんつゆはもうざっくりでいいんだよ」

 

「ざっくり……ざっくりってどのくらいなの……」

 

 ざっくりと言われれば分からない、匙で教えてくれと言う視線を向けるがガン無視した。

 ゲームをやっていればフフフと生塩は笑っている……

 

「先生ってやっぱり私達の事をしっかりと見ていますよね?」

 

「それが仕事だ。事務処理なら連邦生徒会の人間にでも押しつければいい」

 

「……先生、覚えていますか?アリスちゃんの一件を……先生は会長に対して間違いなんて言わずに賭けを出したのを」

 

「賭けじゃねえよ。最初から勝てる簡単なゲームだ」

 

「今考えればそうですが当時の私には到底そうは思えませんでした」

 

 天童を殺すか殺さないか、それに関する一件について……出る杭は出る前に処理する、トロッコ問題が起きたのならば少ない方を見捨てると調月は決めていて、天童の存在を認めようとしなかった。

 それに対してエンジニアなら空想を現実にするのが仕事だろとか色々と言って……ただ1つの賭けをした。俺からすればそれは賭けじゃなくて、原作知識とかそういうのを除いても絶対に勝てる勝負だった。

 

「ゲーム開発部とリオ会長、両者が作ったゲームのどちらがより良い賞を受賞するのか……今もそうですがゲーム開発部は……」

 

「怠け者だったり金食い虫の問題児だろ?……どのレベルの距離感で接すればいいのか分からないコミュ症部長の花岡、ノリと勢いに身を任せてゲーム好きな才羽姉妹、そしてゲームで心を作った天童……戦闘以外の殆どの能力で調月の方が優れている。俺は調月の判断は間違いじゃねえが横槍を入れた責任として調月が勝ったらシャーレの顧問を演じつつミレニアムを依怙贔屓しまくる顧問になるか天童を利用してキヴォトスにクーデターを起こそうとした主犯として死ぬかのどっちか……生殺与奪の権利をチップインした」

 

「結果はまさかのゲーム開発部が最優秀賞受賞で、会長はなにも掠りませんでした……今までのデータを洗いざらいしてもおかしい。それなのに先生はまるでそうなると分かってると言う顔をしていました」

 

 生塩は自分はそうなることは予測することが全くと言って出来ない……多分、今も理解するのが難しいだろう。

 まぁ、そりゃそうだ。

 

「ゲーム開発部は理解とか合理とかそういうのの外にあるめんどくせえ理不尽な存在だから」

 

 才羽モモイは問題児で評価は低いがそれは普段の行いが原因で平常点が物凄く低いだけでそれだけだ。それ以外なら評価するとこはしてる。

 才羽モモイっつーか、ゲーム開発部全体を……ゲーム開発部は油断すると怠けるダメな奴等だが、それでも力は持っている。

 

「普通に人材を選ぶのなら、生塩や早瀬は引く手数多だ。お前等はセミナーに相応しい能力をしっかりと持っている、何時かは募集するかもしれないシャーレの常駐生徒に面接に来たのなら採用している……ただ、それは既存の枠組みで採用だ。ムカつく事に真面目にコツコツと努力していても、周りに意識を割いて気を遣ったりしても、どうしても絶対に突破する事が出来ない壁みたいなのが存在してんだ」

 

 ホントに世の中は理不尽な事に調月の様な人間じゃ絶対に突破する事が出来ない壁が存在している。

 当時の調月にとって百害あって一利無しなゲーム開発部じゃないと突破する事が出来ない、それこそ早瀬や生塩でも突破出来ない壁が。

 

「先生……どうすればいいの?」

 

「米の研ぎ汁で大根と人参の灰汁抜きして、その間に米を30分ぐらい水につける……米が真っ白になったら水を入れ替えて炊飯器に炭と一緒に入れて炊飯、シャーレの炊飯器は1時間ぐらいかかるからその間にキャベツの千切り。スライサーあるから使え。3人前の分が出来れば灰汁抜きした米の研ぎ汁を捨てて味噌汁、お玉で味噌を一杯掬って顆粒出汁を入れる」

 

「……ノア」

 

「会長、頑張ってください」

 

「ぅ……」

 

 手伝ってと言いたいが手伝うことを笑顔で断る生塩。涙目になる調月

 慣れていない動きをして米の研ぎ汁を何とか確保して大根と人参を湯でて灰汁抜きしている内にスライサーでキャベツを千切りにしている。

 

「バカと天才は紙一重、と言うやつですね……でも、先生はその割にゲーム開発部に厳しいですよね?」

 

「当たり前だ……ハッキリと言うけど、ゲーム開発部みたいなのはありがたいと同時に迷惑な存在でもある」

 

「普段の行いが悪い、と言う意味ではないですね……具体的には何処が迷惑でしょうか」

 

「俺は先生でキヴォトスは学園都市だ……学校側が用意した評価基準とは違うところで力を発揮してそれをスゴいって言って大きな評価に繋げるのは少し違う。仮にゲーム開発部を持ち上げれば他がゲーム開発部を目指す……組織として特例を作って、その特例に自分もなるんだと他の生徒達が真似をしようとして本来求めている事が出来ない奴が多く生まれる。それは組織として失格だ……だがムカつく事にその特例が居なくちゃ越えられない壁がある」

 

 陸八魔、才羽モモイ、砂狼、阿慈谷……他にも可能性を持っている生徒は居るが現段階でハッキリと断言出来るのはこの4人、底辺ではあるがそれと同時に早瀬や生塩の様なエリートじゃどうしても越えられない壁を越えることが出来る存在だ。

 調月、桐藤、空崎、浦和も壁を越えられない。誰かが作った道や誰かが壊した壁の先、新しい壁にぶつかるまで物凄い速さで駆け抜ける事は出来るが、ただそれだけだ……

 

「俺はシャーレの先生だ……ミレニアムの先生じゃねえ。それを踏まえた上で特例の枠はどうしても必要になるし、そうじゃないと扱いきれない存在が世の中には居るのは理解している。だがそれでもそういう特例は本来はあってはならない、個人的に好きじゃねえ」

 

 その特例のせいで貧乏くじを引いている人間を色々と見てきたからな。

 

「先生はしっかりと私達を見ているんですね……」

 

「先生、ミルフィーユカツってどう作るの!?」

 

「米が炊けるまで肉は溶き卵とめんつゆを合わせた物につけて放置!米が炊けたら炭を抜いて炊飯器かき混ぜる、薄切りロース肉を重ねて叩いて伸ばして塩、コショウ塗して小麦粉と卵とパン粉付けて揚げろ。揚げるタイミングは箸を入れたら泡が出る頃だ」

 

 ミルフィーユカツってスゴく簡単な料理なのになんで苦戦してんだよ。

 人に助けてと助けを求める事が出来る様になっているが生塩は嫌ですと断っている……そんなこんなでミルフィーユカツが出来た。

 

「あ……ソースが無しでも食べれますね」

 

 1時間以上卵を混ぜためんつゆに浸けていたこともありミルフィーユカツはソース無しでも普通に食べれる味になっている。ソースが無いからと心配していたが生塩は美味しいと満足してる。調月はミルフィーユカツを揚げた際の油ハネを気にしているが俺のエプロンを使わなかったのが悪い。

 

「先生はシャーレの先生をしっかりと遂行しているのね」

 

「聞いていたのか……しっかりとかどうかは知らねえがな」

 

「もし……もしシャーレの先生じゃなかったらどうしますか?」

 

「不知火がそれをやっただろ」

 

 調月は料理に集中していて話を聞いていなかったかと思ったが聞いていた。

 しっかりとシャーレの先生をしているかは知らねえ……生塩の言うようにシャーレの先生じゃなかったらと言うのでその場合は既に実行済みだ。1週間以上の暴動が起きてキヴォトスの外の世界に繋がる便を三大勢力が爆破テロしようとしたりする。

 

「アレに関しては論外です……先生はシャーレの先生じゃなくなったら、私の名前を……ノアって呼んでくれますか?」

 

「その場合だと一之瀬を口説いて籍を入れる」

 

「……え?」

 

 小悪魔的な笑みを浮かび上げる卑しい女だが舐めんなよと即答してやった。

 生塩と調月の目から生気が一瞬にして失われるが俺はミルフィーユカツを食べ進める。汚い大人って?そりゃそうだ。




シャーレの先生としてはモモイと言うかゲーム開発部はあんまりよくない存在だけど、そのフィルターが無いなら別に自分側が折れればいいんだからぐらいの感覚である。

ノアは小悪魔的に言って挑発しましたが、先生は迷いなくアスナを口説き落とすとカウンターしてノアの脳を焼いています。
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