『身近な人を助けられる人になりなさい』
そんな母の言葉を胸に、神崎 聖は18年間生きてきた。だが聖の人生は唐突に終わりを迎えた。
――キキィィー!!! ドン!!
おい、誰か轢かれたぞ! 誰かが車に向かって、全速力で走っていったんだ! 車の車線上に、子供がいたんだ! 救急車!救急車を呼べ!
(ああ...ここまでですか。お父様、お母様今そちらに向かいます)
子供を、暴走した車から庇い自らは、轢かれてしまった。
だがこれまでの行いを誰かが見ていたのか。聖は異世界に転生し新たな人生を歩むこととなる。
――これは、ある一人の聖女の物語
初投稿です。小説を書くのも初めてで、衝動で書いたのでおそらく続かないと思います。拙い文章ですがお楽しみいただけたら幸いです。誤字、脱字などあれば報告していただけたらうれしいです。
プロローグ
「おぎゃー!」「おぎゃー!」「おぎゃー!」
なんでしょう、何か聞こえますね...
これは...泣き声でしょうか....?
僕は確か.......死んだはずでは....?
ならこの声は一体....
暗い....何も見えませんね....
――ぼやーー
!だんだん視界が開けて...
「ああ!なんで女の子なの!!」
暗闇から光が差し込み、目が見えるようになった前では10代後半くらいの女性がヒステリックに叫んでいる場面だった。
いったいどういう... いえ、それよりも、まさか僕。
「オギァーー!!!(赤ちゃんになっていませか!!!???)」
―――――拝啓、お母さま、お父様、僕はどうやら転生したみたいです。
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ちゅん ちゅん ちゅん
「ん...ふぁぁ」
(久しぶりにあの時の夢を見ましたね)
早朝、小鳥のさえずりとともに起床しあくびをしながらベットから出る。
「もう10年ですか。時が過ぎるのも早いですね」
10年。僕が転生してからもう10年がたった。あの後、僕が転生を自覚しパニックになってるとき、ヒステリックに叫んでいた女性(母親)が正気を取り戻し「男でないなら子などいりません。この子をどこかに捨ててきなさい」なんて言葉が聞こえ僕は捨てられた。
転生して早々、死ぬかに思えたが、捨てる神あれば拾う神あり。院長、ミテラ様が僕を拾って、ミテラ様が経営している孤児院に入ることとなった。
「それにしても...」
部屋に立ててある鏡をのぞき込んでみる。顔は小さく、大きくぱっちりとしていて宝石のような赤色の瞳、ふっくらした唇に、整った鼻立ち。髪は光を放っているかのような錯覚が起きる銀髪。まるでお人形のような
「どうして僕は、女の子になっているのでしょうか?」
前世は男だったのに、今世は、女の子になっていることにあまり納得がいかない。
「どうせ転生するなら、前と同じ性別が良かったです」
最初は、女性の長い髪や体の洗い方など全然勝手がわからず、慣れるまでに相応の時間を費やした。
「まあ...もう嘆いても仕方がないですが」
「さて、いい時間ですし祈りを捧げましょうか」
......この世界はアクロポリシアといい、前の世界とは違い、共通の神様を信仰している。その神の名前はヘーメラー。
転生し、死を経験してから神を信じ、神を信仰することとなった。一度死に、この世界に生まれた時点で神はいると確信したから。
―――自らの祈りが届いていることを願って。
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一時間ほど祈祷に時間をかけた後、次は朝食の準備がある。まだ10歳の身ではあるが養ってもらっている以上、自分が働かないという事情は存在しないのだ。
「おはようございます、ミテラ様」
「おはよう。アレティ、いつも言ってるけど私に様はいらないのよ?」
「いえ...申し訳ございません。これは癖みたいなものなんです」
「ええ、そうね。残念」
金の髪を腰まで靡かせ少し残念そうな笑顔を見せる女性。院長であるミテラ様がいた。他愛もない話をしつつ朝ご飯を作っていく二人。
「アレティいつもありがとうね、手伝ってくれて」
「いえ、構いませんよ。むしろ私が何か手伝わないと嫌なんです」
「ふふ、あなたはそういう子よね」
こうして、朝食の準備も終わり、後は。
「アレティ、子供たちを呼んできてくれる?」
「はい。呼んできますね」
「おねがいね」
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「わーい!あさごはんだー」「やった!」「おなかすいたよー!」「わー!きょうはいつもよりおおいね!」「たべよ!たべよ!」
「まったく...朝から元気ね」
「いいじゃないですか賑やかで」
「そうね」
アレティが子供たちを呼び食卓にたくさん集まってきた。ミテラは全員が集まり座ったのを見計らい音頭を取った。
「それじゃあ、食べましょうか」
「ヘーメラーの祝福に感謝を。いただきます」
「「「「いただきます!!」」」」
こうして孤児院の1日が始まっていく。
―――今日、この日までは。
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少し月日が遡り。ソフィア大聖堂にて......
「...先ほど、信託が降った」
荘厳な建物の中で、円卓を囲む法衣を着た集団、その中で一人の男性がそう発した。
「信託ですか!一体どのような」
「うむ、どうやら聖女が生まれたらしい」
「聖女ですか!!本当に!?」
「事実である」
「信託にはこう書かれてある。『白銀の髪と他者を慈しむ心を持ったものが生まれ、孤児院へと預けられた。そのもの聖女である。』と」
「なるほど」
「しかし、どうするのですか?」
「どう、とは?」
「孤児院にいるのでしょう。そのまま孤児院で育てるか、我々で引き取り育てるか、決めたほうがよろしいのではないでしょうか?」
「なるほど、一利ある」
「では、皆のものどちらが賢明だと思う?」
「私は引き取るのがよろしいかと」「同じく」「でしたら私も」「引き取るべきかと」
「ふむ、満場一致か」
「ならば、今すぐ聖国にある孤児院に人を向かわせろ」
「は、かしこまりました」
話が終わったのか皆、円卓から離れ聖堂から出ていった。しばらくして、全員が出ていき、一人だけ話の中心にいた男だけが残った。男は、期待しているかのような、不安を感じているかのような声を出した。
「聖女か...果たしてどうなることか」
―――夜が明ける。
//////////
「それではミテラ様、私は行きますね」
「アレティ、気をつけてね」
アレティは朝食を終えたあと、ミテラに見送られ孤児院を出発し勤務先へ向かった。
孤児院は公営で、運営費用などが出るが、それだけでは足りるはずもなく誰かが出稼ぎに行くしかなかった。
そこでアレティは、ある程度動けるような年齢になったら、ミテラに相談し、出稼ぎに出るようになった。
(えっと今日の予定は、午前は、冒険者ギルドに行って薬草採取の依頼と、午後は、昼日亭でのウェイトレスですか)
(では、冒険者ギルドに行きましょうか)
冒険者ギルド。いわゆる何でも屋。階級による区別があり下から、E、一番上がSになっている。Eは誰でもなれるが収入としては微々たるもの。
だが、アレティはまだ10歳で子供、働ける場所など限られていて誰でもなれる冒険者は都合が良かった。
ギルドにつき、早速、薬草採取の依頼を取り受け付けのほうに向かった。
「おはようございます。ソフィア様」
「あら、おはようございます。アレティさん。、今日も依頼ですか?」
「はい、薬草採取の依頼をお願いします」
「ん...はい受理しますね。道中お気おつけて」
「ありがとうございます」
受け付け嬢のソフィアから、依頼を受理してもらい依頼に向かう。
(手早く済ませましょう。お昼から忙しくなりますからね)
そんな思いを抱きながら、アレティは城門まで駆けていく。
//////////
「はい...薬草。規定の量を確認しました。報酬の銀貨10枚ですご確認ください」
「はい。ありがとうございます」
お昼前には依頼もおわり。報酬を受け取り少し早足に次の勤務場所まで向かう。ちなみにお金の単位は、銅貨一枚で1円。銀貨一枚で100円。金貨1枚で1万円。白金貨1枚100万円である。
「トリア様。すみません、今来ました」
「おおー!アレティかい!!」
昼日亭。冒険者などが多く利用する食事処、その女将であるトリアが、大勢の冒険者の中から声を響かせる。
「今日もよろしく頼むよ!着替えはいつものところにあるから!!」
「はい。ありがとうございます」
そんなやりとりをしつつアレティは、店の奥にある部屋に入り。従業員服に着替えていく。
「ふぅ...よし、頑張りましょうか」
着替えが終わり、ドアを開け、冒険者の宴にに入っていく。
「いらっしゃいませ!」
「ご注文お伺いいたします」
「おー!アレティの嬢ちゃんじゃねえか!!」「あー... 今日だったのか」「はい!はい!!はい!!俺、エールで!」「俺もそれで!」「俺は生姜焼きね!」
「はい...はい...ご注文承りました。少々お待ちくださね」
「あんたら!アレティに迷惑かけんじゃないよ!!」
「へいへい...分かってますって。なあ!お前ら」
「「「おう!!」」」
「ったく、調子のいいやつらだね」
「ふふ、私は好きですよ。」
「はー、あんまり甘やかさないでおくれよ」
「ええ、分かっていますよ」
私は甘やかしている自覚は無いのですが。そう思いながらも一応、頷いておく。
こうして昼の時間は喧騒とともに過ぎていく。
――運命の時間まであと.......
//////////
「お疲れさん。アレティ」
日が沈み、夜の帳が下りようとしている時間帯に営業が終わり、服を着替え部屋から出てきたアレティにトリアがそう話しかけてきた。
「トリア様もお疲れさまです」
「あたしはいいんだよ、慣れてるから」
「私も、問題ありません」
「そうかい? あんたまだ10歳だろう?そのぐらいの娘にはきついと思うけどね〜」
前世で労働は慣れてますから。なんてことは言えず
「あはは...体が丈夫なんです。それに鍛えてますから」
体が丈夫なのは本当。昔からこの体は疲れが来ず、同年代の子供たちと比べても身体能力が高かった。それにアレティは、薬草採取の依頼のために、一人で魔物などが出る城門の外に出ないといけないので、ある程度鍛えている。
「まあ、あんたが言うならそうなんだろうね」
「ええ、この体には助けられますよ」
「疲れてないんならいいんだよ。それよりほら、今日の御駄賃と賄いだよ、受けどんな。」
「ええ、ありがとうございます。ありがたく受け取らせていただきます」
アレティは、駄賃の入った麻袋と容器に入った賄いを受け取った。
そして、駄賃の入った麻袋の中を見てみると。
「これ...いつもより多くないですか?」
見れば、何時もの3倍近くのお金が入っていた。
「ん...ああこれかい。あんたのおかげでうちに来る客が増えてねそれの礼みたいなもんさ」
「お礼...ですか。そうですね、ありがとうございます」
「ああ!またうちに働きに来なよ!」
「ええ...近いうちにまた。それでは」
「気をつけて帰んなよ!!」
昼日亭を背に、手を振りながら去ってゆく。
(こんなにお金があれば、暫くは朝食を今日のように少し豪華に出来そうですね。)
そのような思考をしながら帰宅し、段々と孤児院に近づいて来た。
「そろそろ孤児院が見えますね。おや?あれは...見知らぬ馬車が止まっていますね。それに、ミテラ様と」
(ミテラ様と喋っている、2組はどなたでしょうか)
孤児院が見え、その入り口にてミテラと見知らぬ2人組が何やら会話をしていた。
「ただいま帰りました。ミテラ様、そちらのお二人はお客様でしょうか」
「アレティ...ええ。お帰り」
「おお...!この方がもしや...!」
「ええ...!この神々しく光り輝くかのような銀の髪。間違いありません!」
「ええと...どう言ったご要件でしょうか?」
アレティはこの奇妙な光景に居心地が悪かった。
おかしいですね...ミテラ様の様子も何かおかしいですし。このおふた方も私をみた瞬間、興奮しだしましたし。
「これは...これは申し訳ない。少し取り乱しました。そうですね...単刀直入に言いましょう。」
「『信託』により貴方は
思ってもいない事を言われてしまい、思考がフリーズしてしまった。
「??聖女ですか?ええと...どうゆうことでしょうか?...」
「そうですね...では、まずは聖女について語りましょう。」
「聖女とは神に祝福され。聖属性の魔法を使い、民に癒しを与える存在のことを指します。」
「ですが私は聖属性の魔法は使えないのですが...」
「それは5歳の時の属性鑑定の時ですね。おそらく今見ると聖属性が使えるようになっているはずですよ」
「なぜ...私なのでしょうか。ほかにもたくさんいるでしょうに」
「それは我々にもわかりません。ですが少なくとも神はあなたを選びました。」
「.....わかりました。でしたら保護とは何でしょうか?」
「もしあなたが犯罪者などに誘拐などをされぬように警備が厳重な我々の教会で保護をとういうことです。それに失礼ですがこの孤児院では知識を得るのは難しそうですから」
少し気まずそうに言う男を尻目になるほどと、アレティはそう思った。つまり彼らは、こんな危なくて、教育環境も整ってないところなんかに居らず、環境が整っていて自分達の目がとどく場所に居てくださいと言っているのだ。
「アレティ...」
ミテラが、不安や心配を孕んだ声でアレティを呼んでいる。おそらくミテラは、アレティが出ていくことを止めるのだろう。そこに葛藤があるようだが。だがアレティとしては、行くという選択のほうが強い。これは――
「おふた方、申し訳ありません。返答まで少し、時間をとってもらえますでしょうか?」
「ええ、大丈夫ですよ。我々は、あなた様の答えを何時までもお待ちしております。」
――語り合いましょう。本音で。ミテラ様
//////////
アレティとミテラは孤児院の中に移動した。2人きりで、話がしたかったからだ。そして、周りに人がいないことを確認して、アレティが話しかけようとしたとき。
「アレティ...貴女は...行きたいのよね?」
「そうですね...私は行きたいと思っています」
「そう...そうよね。貴女はそういう子よね」
ミテラそう、少し困ったように笑いながら、言った。
「昔からそうよね。自分の事は後回し、それに、行きたいって言ってるけど、私達のためでしょう?聖女という存在には地位があるから、貴女が聖女になったら孤児院にお金を〜とか言うのでしょう?」
「ええ、それも理由の一つですね」
――本当に私のことをよく見ていますね。
「一つ?」
「はい、一つです。それも大いに私の考えに含まれてますが、私が本当に行きたいと思ったのは――多くの人を救うことができるかもしれないと思ったからですね」
そう言った時、ミテラの顔が、ポカーンとなった。
「貴女が、そんな事考えてるとは思わなかったわ。てっきり私は、自分の見知っている人を助けられればいいと、思ってると思ったから」
「間違いではありませんよ。実際、今もそう、思っていますから。
「じゃあ...どうして...」
「一人、一人、聖女となったら今と違い多くの出会いがあるでしょう。その、一度出会った方々は、知り合いでしょう?そしたらどんどん私の救える範囲が増えていく。そう...そうなんです。私は、薄情な人間なんです。全てを救いたいとか救えるなんて思えません。自分の、手の範囲くらいしか救えませんから。手のひらからこぼれたものは、どうしようもないんですよ。ですから、その手の範囲をどんどん増やしていくんです。10人、100人、さすがに限度はありますが。」
『ねぇ、聖』『はい!どうされましたかお母様!』
『突然です申し訳ないけど。あなたは、人は好きですか?』 『?えっと...はい!』『そう、いい子ね。ならよく聞いてね、身近な人を、助けられられる人になりなさい。全ての人を救えとは言わないわ。あなたはそれができる子だと思えるから』
『はい!分かりました!じゃあまずは、お母様を救います!』『ふふ、ほんとに...いい子ね』
「貴女は.....」
自分の思いを告げ、ミテラの顔を見ると悲しそうな顔をしていた。
「決意は...硬いのね」
「ええ、このチャンスを逃すとおそらく、私の手の範囲は広がりませんから。」
「...本当なら行かせたくはないわ。聖女なんだから。さまざまな場所に行くと思うの。魔物や、野盗との戦闘になることもあるわ。そこで貴女は一生癒えない傷を負うかもしれない、命を落とすかもしれない。私はそれが、たまらなく怖いの。貴女が、いなくなってしまうことが、たまらなく。私だけじゃない子供たちだって、悲しむと思うの。でも、私じゃ貴女の決意を変えることなんかできないわ。ほかでもない、貴女が決めたことですもの」
そう言い、ミテラは、一度息を吸い吐き出し、アレティにしっかりと向かい合った。
「分かったわ...許可します。そのかわり!無茶だけはしないでね、無事帰ってくること、これが条件よ」
「はい、無事帰ってみせます。私も死ぬ気はありませんからね」
「ん...ならいいわ。じゃあ、外にいきましょう。貴女の『答え』を言いに行くわよ」
//////////
「お戻りになられましたか」
「ええ、お待たせいたしました」
「では、答えをお聞かせいただきたく」
「私は...――聖女になりましょう」
「おお!では」
「ええ、教育にいきます」
「その決断をしてもらえた事に、感謝致します。それでは、我々は一度ここで帰ります。少し日を空け、迎えを向かわせます。色々、準備するものがあると思いますので。っとそうでした。」
「はい?まだ何か?」
「お名前を聞くのを、忘れていました。貴女様のお名前を、お聞かせ願えますでしょうか。」
「そうでしたね。では...自己紹介を、私の名前はアレティ。今は、ただのアレティです。よろしくお願いしますね」
「アレティ様ですか。とても良い名前ですね。」
「ええ、私もとても気に入っています。」
「それでは我々は、このくらいで帰らせて頂きます。また、お会いする機会があれば」
そう言いながら2人組は馬車に乗り帰っていった。
「帰られましたね」「ええ、そうね」
「少し疲れましたね、今日は」
「急な話だったからね。当然よ。さ、中に入りましょ、あの子たちにもいろいろ説明しないといけないしね?」
「はい、そうですね」
(聖女ですか。私に務まるかは分かりませんが、全力でやりましょう)
こうして激動の1日が過ぎていく。アレティの行く先はどうなるのか、それは神のみぞ知る。
「えーー!!お姉ちゃん居なくなるのーー!ヤダーー!」
そんな声が、孤児院から聞こえてきたが...
――気のせいだろう
//////////
数日後....
「申し訳ございません!聖女アレティ様はいらっしゃいますでしょうか!お迎えにあがりました!」
孤児院の外から、そのような声が聞こえてきた。どうやら迎えが来たようだ。
「いよいよですね。アレティ...準備はいいですか?」
「ええ、ミテラ様。私は大丈夫ですよ。ですが...」
チラッ。後ろを見てみると大勢の子供たちがアレティたちを凝視していた。
「おねえちゃん、ほんとうにいっちゃうの?」
意を決したのか、一人の女の子がアレティにそう、話しかけてきた。
「すみません。お姉ちゃん、行かないといけないんです」
「うー...いっちゃいやだよ....」
引き留めようとしてる子に対し、アレティは、少し屈み目線を合わせ。
「心配しないでください。これが今生の別れというわけではないんですから。向こうでの暮らしに慣れてきたらこちらの方に、帰ってきますよ。ずっとは、居れませんけど」
「ほんとう?」
「ええ、本当ですよ」
「むー...わかった!じゃあ、おねえちゃん。おわかれのぎゅー!ってして!」
「分かりました。はい、ぎゅー」
「ぎゅー!えへへ、ありがとう!おねえちゃん。またね!」
「ふふ。はい、また」
こうして、子どもたちとの会話も終わり、名残惜しそうに手を振りながら見送っている子供たちを尻目に、アレティは孤児院の外に出た。
「アレティ様!準備の方は整っておいでですか?」
「ええ、大丈夫です」
「では、出発しましょう。お手を、お乗りください」
「ありがとうございます」
アレティは手を引かれながら馬車に乗って行く。
「それでは参ります」
そう御者が言い、馬の手綱を走らせた。
「アレティ!」
「どうされましたか、ミテラ様?」
「いってらっしゃい!」
「!はい!行ってきます!」
―これが序章。後に、天与の聖女と呼ばれる、女性の始まりの一歩。物語は続いていく......