「見つけました。ゴブリンです」
森を、歩いて行った先。気配を消し、目の前を見ると、数えきれないほどのゴブリンがいた。
「アレが、ゴブリンですか...」
低い身長、緑色の肌に醜悪な表情。まさしく、魔物と呼ぶにふさわしいだろう。
「それでは、先制は聖女様が」
「はい、任せてください」
一番槍を任された、アレティ。魔法を唱えていく。
「《私は光の代行者。世界に明かりを》光よ」
光が灯る。
「《光よ。実体と成し槍へと至れ》聖槍よ」
光が、槍へと変わりゴブリンへと襲いかかる。
「グギャャ...!?」
パーン!と、音を出し、10匹ほどのゴブリンの腹を貫き、身体を消し飛ばす。
「ええ...こんなに威力が出るんですか...?この魔法」
生物には、試したことがなかったため、威力などは知らなかったが、まさかここまでだとは思っていなかった。
「さすがです聖女様。では、参ります!」
今の魔法で、ゴブリンに完全にバレてしまったので、騎士達が駆けていく。
「はぁー!」ザン!「グギャー!」
「...順調ですね」
流石は、大聖堂を守る騎士達。襲いかかってくるゴブリン達を次々と断ち切っていく。戦い方に高い練度が見える。
「さて...私も仕事をしなくては...居ましたね」
辺りを見ると、弓を構えたゴブリンが見える。
「光よ」
「《光よ実体を成し槍へと至れ》聖槍よ」
パァン!と、騎士達を狙っていたゴブリンを、貫く。
「皆様!弓を持ったゴブリンは、私が相手をします!目の前に集中してください!」
「感謝します!聖女様」
10...20と、どんどんゴブリンを、殲滅していく。
「これで...終わりです!」
最後に残ったゴブリンを、騎士が倒し、見える範囲では、立っているゴブリンは居なくなった。
「これで終わりでしょうか...」
「ええ、おそらくは...周りにゴブリンの気配を感じませんし、これで終わりでしょう」
「そうですか...それにしても、なぜゴブリン達は、この森に来たのでしょうか?」
そう。村長が言っていたが、元々この森にはゴブリンはいなかった。だから今回、大量のゴブリンがいた理由がわからない。
「仮説は立てられます。一つは単純にこの森に移住してきたか。もう一つは...自分たちでは太刀打ちできない強力な者に追い立てられたかですね」
成る程...でもそれなら...
「でしたら、二番目の理由じゃないでしょうか?彼らには統率者が居ないので、移住なんて考えに至らないと思うんです。ですから、二番目の理由が妥当だと思うのですが...もしかすると、ゴブリンを追ってきた何者かがこの森にいるのかも...
ズン!ズン!と、何か大きな音がする。
「これは...!聖女様!何か来ます!」
ズン!!
「GAAA!」
「...!まさか、オーガか...!」
木々をなぎ倒し、現れたのは、3mはある巨大なオーガだった。
「GURAA!」ブン!
「ぐぁ...!」
持っていた棍棒を、騎士に振るい吹き飛ばす。バキ!と、木を折りながら騎士が吹き飛ぶ。
「...!よくも...!はぁ!」
オーガに剣を振る。だが...
「GA...!?GRAAA!」
「なに!がぁ...!」
お腹に向けて、放った剣は突き刺さり、切れることなく止まった。痛みに叫び、お返しとばかりに、棍棒を振るうオーガ。間一髪で、ガードは間に合ったが、先ほどと同じように木をなぎ倒し吹き飛ぶ。
「こいつか、ゴブリンがこの森に来た原因!」
「っ...!聖槍よ!」
アレティは、オーガが出た瞬間から詠唱していた魔法を放つ。
「GA!?」ブォン!
聖なる槍がオークを穿つかと思われたが。その前に、魔法を叩き落された。
「っ...!魔法が」
「ええ、叩き落されました...ですが、そうしたというならあの魔法は、致命傷になりえるということでしょう。聖女様、その魔法はまだ打てますか」
「まだまだ打てます」
「分かりました。でしたら、我々があなたの詠唱する時間を稼ぎます。その間にご準備を」
「GAA!」
「来ます!」
「《私は光の代行者》」
詠唱する。
ドン!ドン!と、こちらに走ってきて、ブン!と棍棒を振るう。
ガン!「ぐぅ...!なんという怪力...だが!耐えれるぞ」
盾でオークの攻撃を防ぐ。
「《世界に明かりを》光よ!」
「!?GAAA!」
「まずい!聖女様のもとに行かせるな!」
発生した光を見たオーガが、アレティのもとに走りこんでいく。先ほどの光の槍が、よほど怖かったのだろう。
走り出したオーガを止めるために、騎士達も走っていく。
「止まれ!」ザン!
「GU...!?GURA!!」ブン!
足を切った騎士が、吹き飛ばされる。
「《光よ。実体を成し槍へと至れ》」
光が槍の形をとる。
「止...まれ!」
ガン!と、盾で脛を殴る。
「《逃れる者はおらず》」
「GAA」ブン
「ぐ...!聖女様、後は頼みました」
盾を持っていた騎士が殴られ、地面に倒れる。
「GUAAA!」
障害がなくなったオーガは、アレティに向かって一直線に走っていく。
「今度は、外しません。聖槍よ!」
光の槍が放たれる。だが...
「GUU」
ヒョイと、槍は簡単に避けらてしまう。そして、オーガが目の前まで来て、棍棒を振り下ろす。
「GURAAA!」
「...」
棍棒がアレティを、ミンチにするだろう、その瞬間...
パァン!と、オーガの頭が吹き飛んだ。
「...あなたに少しでも知能があれば、立っていたのはあなただったかもしれませんね」
「せ、聖女様!ご無事ですか!」
先ほど吹き飛ばされて、体から血を流している騎士が、こちらに向かってきた。
「ええ、私は傷などもありません。それより、少しですが傷を治します。こちらに来てください」
騎士を呼び、回復魔法を唱える。
「《私は奇跡の代行者。世界に癒しを与える者。》癒しよ」
すると、身体にあった軽い切り傷や擦り傷などが、治っていく。
「すみません。私の練度が低く、かすり傷程度しか治せませんが...」
「い、いえ...!すごいですよこれは...!ポーションでしか回復しなかった傷が、こうも治るとは...ほかの騎士達にも施してくれないでしょうか」
「ええ、私もそのつもりでした。行きましょう」
吹き飛ばされた騎士達のもとに行き、一人、一人に回復魔法を掛けていく。幸い、死者もおらず、死に至る傷を負ったものもいない。
「ありがとうございます、聖女様。それにしても...まさか、オーガが現れるとは...」
「ゴブリンを追っていていたのでしょうね」
「申し訳ありません。我々が居ながら、聖女様を危険にさらしてしまいました」
騎士の一人が、そう謝罪してきた。
「い、いえ!仕方がないですよ。情報が何もなかったですし...それにこうして私を守ってくれましたし」
「感謝します...」
「そ、それじゃあ、村に戻りましょう。」
「はい、分かりました」
ゴブリンの死骸や、オーガの死骸を処理し、村に戻っていく。
「村長。いますか」
「はい、何かありましたか?」
「ゴブリンの討伐が完了しましたので、報告を」
「も、もう終わったんですか...!」
村長に報告をすると、とても驚いていた。
「はい、ゴブリン自体は、脅威ではなかったですね」
「ゴブリン自体はと言いますと...?」
事の詳細を話していく。
「オーガですか...この森になぜ、ゴブリンが来たのかと思いましたが...」
村長は、納得したかのような表情を見せた。
「ありがとうございます、騎士様方。あなた方が来なければ、この村は無くなっていたかもしれません」
「いえ、お礼は聖女様に。とどめを刺したのは、聖女様ですから」
「な、なんと...聖女様が倒されたとは。村を代表して感謝を」
村長はアレティに向け、深々と礼をする。
「い、いえ...!頭を上げてください。私は本当に、とどめを刺しただけですから...その間、体を張ってくれていたのは、騎士様方ですから」
「謙虚ですね...聖女様は。では、皆様方に感謝を。村を救っていただき、ありがとうございます」
もう一度、頭を下げる。
「ええ、あなた方が無事でよかったです」
アレティはそう、微笑む。それを見た村長は...
(――ああ...まるで女神様のようだ)
「それでは、聖女様。帰りましょう」
村長に報告を終えた後、 村の一画で騎士が言い出した。
「えっと...皆さまは大丈夫なのですか...?傷の深い方などもいますが...」
「大丈夫です。その者たちは傷が癒え次第、迎えを出します」
どうやら、傷が深い者たちは、この村に残るらしい。
「それに一度、報告をしに行かないと、いけませんので」
「成る程...分かりました」
アレティは、そう言い馬車まで戻っていく。
「それではすみません、先に帰ります。皆様も、お大事になされて下さい」
馬車に乗り、村を離れる。これで、初めての聖女としての務めが終わった。
備考:オーガ。脅威度としてはBランク。大きな巨体と、それに伴う怪力が特徴。だが欠点として、知能が低い。
聖槍:アギオ・ロンヒ。階級でいうと中級魔法。聖属性の魔法には、魔に属する者に対する特効があり、人にこの魔法を使うと威力がかなり下がる。それでも、かなりの威力なのは間違いない。