ヒロイン矯正!   作:アールエー

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その10 国境への招集

 

お茶会が終わって公爵家の馬車で、フレデリカ様も一緒に乗り込んで送って貰った。馬車の中でも話をしたいそうだ。その際、顎が割れている暗殺者の治療を、お嬢様にして頂いた。

暗殺者…名前はラクスは感謝をしていたけれど、私に対しては鋭い眼つきで睨んでくれた。おっ!やるかケツアゴ小僧!

 

男爵家に着いても、お嬢様二人が手を取り合ってはしゃいでいる光景を見て、旦那様は大変喜んでいた。ボーナスおくれ。

 

フレデリカ様は旦那様に、聖女の後見を公爵閣下にお願いすると約束して帰って行った。

 

それから2週間ほど過ぎた頃、漸く王都への召還状が届いた。何処で歓待するか、誰の屋敷に泊まるか揉めたらしい。王家の使者の家来の人達が噂してた。男って若い女にちょっとチヤホヤされると、すーぐ喋っちゃ駄目な事まで喋っちゃうの。やーね!

 

最終的に公爵家に泊まる事になったらしい。フレデリカ様のお友達宣言が効いたそうだ。私も一緒に呼んでくれた。

ついでに公爵家の侍女教育をして貰えたら助かる。より高度な作法を身に付けて、品位の良い侍女を目指すのだ!

 

王都まで普通は5日程だが、今回は教会を巡りながら1週間ほどかけて行く。クッションと板バネのサスペンションが効いた王家の馬車に乗れるので、お尻の皮は無事に済みそうだ。安物の馬車はバインバイン跳ねるんだよ。その度にケツを強打する。

町の神官様に、王都まで着いてきて貰える事になった。王都に顔が効く神官様に、間違いなく聖女だと証言して貰う為だ。神官様は、王都の息子に手紙を送ったら帰ってきそうとの報告があったとか、嬉しそうに言っていた。

息子もこれから、聖女発祥の地として故郷が良くなる気配を感じたのかな?

 

基本的に町から村へ、村から街へ宿代わりの教会がある所を経由して王都へ向かうので、夜に休む場所には困らない。馬も休憩しないと潰れるから、途中にある広場等で水を飲ませながらの移動だ。だから体力的には問題ない(お嬢様は教会で治療活動をさせられるが)。

 

新幹線なら1日なんだろうな…。落ち着いたら蒸気機関の開発に邁進するか?

…産業革命して間違ってハーバー・ボッシュ法なんかを産み出すと、戦争が悲惨な事にならないかなぁ…。

 

なんて阿呆な事を考えつつ、お嬢様の世話をしながら旅を続けたら、特に事件もなく王都に辿り着いた。王家の紋章があり騎士団が守る聖女の乗った馬車を襲う、無謀な山賊はいなかったよ…。

 

王都の門をくぐると、馬車数台が並べる程の大きな通りを通って王城へと向かう。一度も止められたり、下りて検査がないのは流石の王家の紋章だと思う。

 

「レイナ、レイナ!ほら、フレディ…んんっ、フレデリカ様と、隣にいるのは王太子殿下よ!」

 

この二人、いつの間にかフレディ、キャシーと愛称で呼び合う仲になってた。本当に、いつの間に。別に良いのだけど、私は仲間外れ。本当に良いんだけど。悔しくないし。オタク同士の謎の連携には勝てないよ。だから良いんだってば。グスッ。

 

それでも、お嬢様に友人ができた事は素晴らしい事だ。心の余裕が違うだろう。

王城の中で待っていたフレデリカ様との再開を、手を取り合って喜んでいるお嬢様を見ると自分も嬉しくなってくるのだった。

 

 

 

「えっ、次は国境まで移動するの!?」

 

王都に着いて数日が経った。王様との会見、教会本部での総主教との面談に正式な聖女認定、貴族達を相手に奇跡の披露とてんてこ舞いな毎日を過ごしていたのだが、やっと一息ついたと思ったら、突然の国境行きである。

 

「そこって、隣国との小競り合いがあってる場所でしょ!?戦場じゃないの!?」

 

「お嬢様は甲種合格され赤紙を頂き、即前線送りとなった訳ですね。醤油を一気飲みさせとくべきでしたか…」

 

「意味不明なんだけど!赤紙って何よ!醤油なんて無いわよ!」

 

「臨時召集令状ですね。身体的に合格でも、ろくに訓練してない兵士を前線に送って役に立つのか不思議ですけど」

 

等と会話してますが、私も結構混乱しております。正直、この国の一般常識としても非常識な命令だからです。

 

「ただいま、フレデリカ様が公爵閣下と一緒に、決定はおかしいと抗議をされております。そもそも下級とは言え貴族の男爵令嬢、それも聖霊の儀式が終わったばかりの未成年を、何かの訓練すらなく前線送りとは、非常識極まりないのですから」

 

「そ、そうよね、戦場なんて行かないよね…」

 

お嬢様は大丈夫、大丈夫よね…と自分に言い聞かせているけど、実際問題として貴族、女性、未成年のトリプルコンボなのに戦場送りとか、本当に非常識なのだ。

 

やがて、抗議に行っていたフレデリカ様が帰宅された。その青い顔を見ると、最悪の結果が出たんだとゲンナリしてきた。

 

何でも、隣国が聖女は我が国が保有するべきだ、神の名の元に寄越せ!とか何とか宣言。別の戦線に出撃していた隣国の将軍がこちらに来て、大暴れしたそうだ。

どうやら隣国は王国だけでなく、他の蛮族からの侵攻も受けており、主な戦場は蛮族侵攻地で、英雄級に強い戦士もそちらに居るらしい。

普通は二正面戦争を回避して王国とは和解し、逆に援助して貰う方が良いんじゃないかと思うけど。援助なんて受けなくても奪えば良いじゃんと、お気楽な気持ちで王国に略奪にくるそうだ。何だ、それ。何処の匈奴や烏丸なんだ!?

 

蛮族は蛮族同士で、延々と好きに戦争してくれ…。こっち見るな!

 

実際、比較的平和な王国の兵士は、隣国の兵士1人と戦うのに3人は必要とか言われている弱兵らしいし…。戦闘民族には勝てないよ。

で、その将軍が大暴れしたせいで、国境を守っている貴族派閥の上級貴族達が大損害を被り、聖女が産まれたせいで受けた被害だ、聖女に治療させろと大合唱。現実的に国境から押し込まれてかなり略奪もされているし、早急に兵の回復を図るには聖女の力が必要なのも事実。

とうとう王家も貴族派閥に対抗する事が出来ず、聖女を派遣する事を決定したそうだ。

 

「ごめんなさい…。お父様とかなり抵抗したのですけど…」

 

謝罪するフレデリカ様の顔は真っ青だが、お嬢様の顔色は青を通り越して真っ白だ。

 

「レ…レイナ…。た、助けて…」

 

「大丈夫ですよ、お嬢様。私が、必ず、生命を賭けて守って差し上げます。無理そうなら、連れて逃げますので」

 

「そ、そうは言ってもレイナさん…。相手は聞く限り、出てくるゲームを間違えた様な蛮族よ…。いくら貴女が強くても無理なんじゃ…」

 

フレデリカ様は震える手で私を抑えようとする。

 

「確かに敵は強大で数も多い。英雄級の将軍は、一振りで数名の兵士を吹き飛したそうです。それでも」

 

私はグッと右手に力を入れる。聖霊様の加護が、炎となって立ち昇る!そして自然と不敵な笑みが浮かび上がる!!

 

「必ずお嬢様を守ってみせます。ふふっ、ちょっと燃えてきた」

 

 

 

「ちょ、ちょっとキャシー!手から炎が!何なのよ、あれ!」

 

「あ、そう言えばレイナも聖霊様の加護を貰ったって言ってた。驚き過ぎて、頭から飛んでた」

 

「な、な、何なのよ、本当に!!」

 

 






ゲーム原作では、攻略対象の暗殺者が前線の隊長に雇われており、敵国の将軍暗殺に成功(毒殺)した為この事件はなかった、という裏設定あり。
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