ヒロイン矯正!   作:アールエー

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その19 デビュタントへ向けて

 

ゴールデンウィーク、なんて日本的な感じで呼ばれているけど、こっちの国では一般的には社交休日期間と呼ばれている。

デビュタント後の社交界での動きで、今後の金の動きが決まるという事で、一部ではゴールデンウィークと呼ばれている、らしい。…こじつけが酷くない?

 

とにかく学園に入学して半月、4月中頃に学園全体で歓迎パーティが開催され、これが成人してからの初めてのパーティで実質上のデビュタントになると言う事だ。

デビュタントが終わってから2週間ほど調整をして、先ほどのゴールデンウィークならぬ社交休日期間で個別のパーティを開く。

 

もちろん村娘の私はデビュタントなんてない。

今回は公爵家待遇の聖女キャサリンお嬢様の専属侍女(レディースメイド)として朝からお世話をする事になっている。これは私だけでなく、侍女や侍従枠で入学しているクラスメイト全員に言える事だ。三分の一は裏方なので、この内幾人かの貴族子女は主人の手で別にデビュタントする。

 

さて、デビュタントするに当たり女性にはエスコート役の男性が必要なのだが…。

聖女であるお嬢様には、まだ婚約者は決まってない。と言うか本来は父親のグラバス男爵が決めるのだが、公爵家待遇の娘の相手を、男爵の父親が探す伝手など存在しない。

そして寄親の伯爵は王族派閥だけど後援しているのは公爵家で、多くの負傷者を助けて貰ったのは貴族派閥。それでいて所属は教会で。

三つ巴、四つ巴の取り合いは混迷を極め、今回は父親に任せるしか…とか思っていた所に娘のデビュタントを見学するため、田舎からやって来たグラバス男爵夫妻。

 

恐ろしいほどの装飾品で、二人共ゴタゴタ飾り付けていた。

一緒に着いてきたメイド(2年間、男爵家で働いてる間に出来た友達)に尋ねたら、戦場で助けて貰った御礼に貴族派閥等から贈られてきた品々らしい。

えっ!?お嬢様への謝礼品じゃないの!?って聞いたら、私達が死んだら遺品としてキャサリン様に行くのだから、私達が貰っても問題ないと答えた…らしい。しかも何品かは既に売っ払ったと。

 

………問題だらけなんですが。

 

寄親の伯爵様も、後援しているウォルフ公爵様も、王族の方も貴族派閥の方も教会の高位神官達も、皆様口をあんぐり開けていた。多分、皆様の意見は一致していると思います。

 

『駄目だこいつ…早く何とかしないと…』

 

一応、親なので子供の持ち物を自由にしても、王国の法的に大きな問題はないらしいけど(倫理的にはアウト)、売っ払った品は、贈った人に寄っては無茶苦茶問題がある。権力者が感謝の念で贈った品が、本人に届かず売り払われたとか、怒って当然でしょう。

旦那様の執事さんに確認しないと…。執事さんも、分かっていると思うけど…。

 

この日から、お嬢様は毒親に虐められても健気に皆の為に尽くす、『聖女の鑑』、『聖霊様の愛し子』と呼ばれる様になりました…。

 

私も評価が変わらないかな?『鬼神(アルベルト)も裸足で逃げ出す』とか『玉潰しの女王』とか、頭に要らないんですが。事実だから無理?

 

結局、公爵家の御長男、フレデリカ様のお兄様(結婚済)がエスコート役の男性(キャバリエ)に抜擢されました。話を聞いた御長男の奥様が、同情して泣きながら「あの()にエスコートして上げて」と懇願してきたとか。

 

そんなこんなでデビュタントの3日前。明日は土日で月曜日が当日なので、今日から明日にかけて必要な物を再度確認、買いに行くかと考えていた放課後。

アルベルトが私の所へやって来た。

 

「いよ!レイナ。小耳に聞いたんだが、お前はデビュタントとやらに出ないのか?」

 

「そうですよ、アルベルト様。私は単なる村娘なんで」

 

「だから様は要らねえって…。まあ良い、明日の土日は忙しいだろうから、来週!ちょっと俺に付き合って貰えねーか?」

 

あれから、正式に学園からアルベルト係に任命された私。他の生徒がビビっているので、仕方ないとはいえ、交流の為に来ているのに大丈夫なのか?

 

「お嬢様の許可は必要ですが、学園から頼まれているのもあります。1日くらいなら、構いません」

 

「よし!さっき聖女さんには許可貰ったんだ。来週の土曜日に頼むぜ!」

 

そう言って意気揚々と去って行きました。何だったのでしょ?

 

 

 

「ちょっとレイナ!これキツ過ぎるんだけど!」

 

ギューギューとコルセットを締め上げていると、お嬢様から情けない声が。

 

「あー最近、お菓子の食べ過ぎでは?隠れて食べているの、知ってますよ?」

 

前日から湯浴みとマッサージを行い、磨きあげたお嬢様。少しばかりお腹の下に蓄えをしているのは、分かってますよ?

 

「太ってないわよ!ちょっとケーキとフルーツとクッキー食べただけよ!」

 

「充分です。それにこの前、差し入れのケーキ、ホールで食っていたでしょ」

 

「げっ!何で知ってんのよ!」

 

差し入れを含めて、返礼の為に全て私に報告が来る様になっている事を、お嬢様は気付いていない。

 

「バレバレです。もうちょい締めますね〜」

 

「ちょ、ぐえっ、御加護使ってるでしょ…ぶふっ」

 

「使ってたら、満タンのマヨネーズ容器を踏み潰したみたいになりますよ?はい、ドレスを着ましょう!」

 

この国で聖女の色とされる、黄色を基調としたドレスを持ってくる。これ自体は教会が用意した物だが、装飾品は公爵家から頂いた。

それから飾り付けを行い、化粧もバチッと決める。

前世の自分に、お前は生まれ変わって化粧を覚えて美少女に施すんだって言っても、鼻で笑っただろうな…。

 

「さあ、準備はできました。私は専用の控室で待機しております。合図があれば直ぐに参りますから、楽しんで下さいね」

 

「…本当は、レイナも一緒に行きたかったんじゃ…」

 

「お嬢様は私の『前』をご存知でしょう?大丈夫、ハレの舞台にお嬢様が立つのを、楽しみにしておりますよ」

 

「…分かったわ。行ってきます!」

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