ヒロイン矯正!   作:アールエー

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その2 ヒロイン登場!

 

「レイナと言ったな。お前に頼みたいのは儂の娘の侍女として仕え、一緒に勉学に励む事だ。ありがたく思え」

 

男爵家に着いて、グラバス男爵に会って開口一番が上のセリフだ。

親父は頭を下げたって言ってたが…。

命令じゃなく「頼みたい」って言葉で頭を下げた事にしたのかな?…ありそう…。

村長の娘如きに頭は下げないだけかも知れないけど。

 

しかし、逆らう事ができない。とりあえず革命的な事にはしたくない。下剋上は戦国時代でないと当たりが厳しいのだ。

革命するなら、他国に逃げるぞ私は。

仕方なく、コンチクショウ今に見てろよ…と思いつつも、素直に頭を下げる。面従腹背ってやつだ。

私は大人だからな。御歳12歳だけど。

 

とりあえず、教師を付けてくれる事だけは有り難く頂戴しよう。いつの時代も教育は大切なのだ。

 

挨拶もそこそこに、娘さんと顔合わせをする事になった。まず自分の部屋に案内されて、サッと侍女服に着替えて男爵の元へ戻る。

今、娘は部屋にいるらしい。家庭教師が教育してる…筈なのだが、その家庭教師と一緒に向かった。なんか、勉強教えていたら発狂して部屋から追い出されたみたい。

うーん、どんな山猿なんだ…。

 

「ところで男爵様。お嬢様はかなり我儘…いえ、山猿だとお聞きしましたが、教育の為に何処まで許容範囲でしょうか?顔をぶん殴るまで大丈夫とか?」

 

「…おい、言い直した方が酷いぞ?それに教育の為にいきなり暴力とはどういう事だ!?」

 

「失礼しました。山猿を調教するのに、鞭の使用許可はおりますでしょうか?」

 

男爵は答えず、こちらをドン引きした目で見てた。

ふん、追い出すなら追い出せ!こちとら、そもそもやる気ゼロじゃ!

 

「…あ〜、武器は使うな。顔は避けろ」

 

…おや?答えてくれた。

うーん、疲れた顔してるから、余程娘の教育に手こずっているのか。私、相手ができるのか?

 

ひとまず、交戦規定(ROE )武器禁止(weapons hold )顔面攻撃禁止(military objective No face)と言う事か。

 

「村娘に任せたのは間違い…?いや、毒をもって毒を制すと…」

 

なんかブツブツ言ってるが、聞こえてますよ?

 

 

 

男爵の娘、キャサリン・グラバス嬢の第一印象。

見事なブロンドの髪は先の方でややカールし、シミ一つない顔を覆っている。琥珀色の瞳は真っ直ぐこちらを見つめ、私の方が恥ずかしくなりそうな輝きを秘めていた。特に化粧をしなくても健康的な赤い唇は、天使の大笑みを連想させる。

顔だけでもまるで丹精込めて創り上げた彫像が、血肉を持って生まれた様だ。

確かに顔は殴れない。

身体付きもくびれたウエスト、丸みのあるヒップ、そして12歳ながらも最低Dはありそうなバスト。男の理想を詰め込んだ様なスタイル。

 

…同じ12歳だよなぁ〜?私も自分の容姿が悪いとは思ってないけど、こりゃ比べようがない。容姿だけで言えば完敗である。

 

「あんたが新しい侍女!?大体、ゲームに侍女なんて出なかったんだから、超モブだよね~!」

 

ああ、うん、黙っていれば可愛らしいのに。

 

それでもまあ、大人な私は貴族の挨拶の作法であるカテーシーをしながら挨拶をする。実はこの国じゃ、侍女がカテーシーをする相手は上級貴族以上なんだけど、よいしょの為だ。

 

「お初に御目にかかります。新しく侍女として雇われましたレイナ・ターナーと申します。宜しくお願い致します」

 

「ああ、モブの名前なんて覚える必要はないわ」

 

…おう…香ばしいわ…。

隣で男爵が、引き攣った顔で眺めてる。

この男爵も酷いが、より上級クラス(さらに馬鹿 )と対面すると、こうなるのか…。

 

「男爵様…旦那様。後はこちらで…」

 

「お…あ、そうだな。後は若い者同士で…」

 

お見合いじゃねーんだから。

男爵はそそくさと退散して行った。

 

一つそっと溜息をつくと、山猿…キャサリンお嬢様に向き合う。

 

「ところでお嬢様…。今の時間は勉学の時だとお聞きしましたが…?」

 

「あん?私はこの世界のヒロインなのよ!そんなカツカツ勉強しなくても」

 

何やらごちゃごちゃ言ってたが、スッと近づくと腰に溜めた拳を腹に打ち出した。

ドスン!という音が聞こえそうな感じでボディブローを喰らわせる。大陸拳法でいう、崩拳である。

あ、もちろん手加減はしてます。

本気でやったら内臓破裂するかも。

 

ボゲェっと声と共に蹲るお嬢様を、無理矢理立たせる。

 

「旦那様は言いました。人間の言葉が通じないなら、拳で分からせる(暴力最高! )しかないと。お分かり頂けましたでしょうか?」

 

「ゲホッゲホッ…。あ、あなた何す…」

 

拳をまた、腰に溜める。

 

「……い、いや、分かった、分かりました!な、何なのよ、こんなのシナリオにない…勉強するから許してぇ!?」

 

ギヌリと睨んだら、素直に机に向かいました。

いやぁ~素直な娘は好きですよ?

 

 

キャサリン視点

 

ううう…。

何なのよ、あの女!侍女なんてゲームに出なかったのに、突然登場して殴ってくるなんて、聞いてないわよ!まだお腹の中が痛いわ…!

と、とにかく勉強しなきゃ。後ろで見張っているし…。

大体、こんな英語みたいな言語なんて分からないわよ!日本語にしなさいよ!

私は攻略通りにやれば、お妃様になるんだから通訳を頼めば事足りるじゃない。

 

「そこの綴り、間違っていますよ。レイナさんは御学友との事ですが、先ずは文字くらい読めなくては一緒に勉学すらできませんよ」

 

うるさいわね、この家庭教師!

家庭教師の方をギロッて睨むと、いつの間にか家庭教師の横に立ってた侍女のレイナと目が合う。目にハイライトがないわ、こ、こわ!!

や、やるわよ。私はこのゲームの主人公なんだから、チート的に頭が良い筈なんだから、やればお茶の子サイサイよ!

 

このゲーム、「フォーリングラヴァーズ」、略してフォーラヴは、男爵家に引き取られた私生児の主人公が、学園に通う最中に5人(内、隠しキャラ1人)を攻略して成り上がる、王道ゲーム。

前世で虐められて学校も向こうの味方で、親も庇ってくれなかった私の唯一の心の拠り所だったスマホゲーム。

何度も何度も繰り返し解いて、全ての道順やセリフまで覚えているのよ。

その通りやれば逆ハーレムは勿論、初回では普通出ない隠しキャラすらモノにできる自信があるわ!

高校中退になって、無理矢理外に追い出されたらトラックと正面衝突して転生して。

フォーラヴの世界だと気付いた時は天に昇る気持ちだったわ。

 

思えば、辛い貧乏暮らしの母子家庭に育って苦労しながら、テンプレネームだった私の名前から調べて、国や王子様の名前を聞いて確信して以来、順調に進んでいたのに。

こっちのお母さんが馬車にはねられて死んで(言っとくけど、ゲームでの死因なんて知らなかったから、止めようがなかったわよ!)、いよいよゲームが始まるかと思いきや…。

まさか男爵家で勉強の毎日とは!

文字こそ読めないけど、算数や理科は小学校低学年レベルだし、地理はゲームがフィールドを歩くタイプだからある程度知っているわ。

隣国まで知らないけど、そんなの王妃になって覚えたら良いじゃん!

 

それなのに、あの新しい侍女!レイナとか言ったかしら、モブなのに腹パンとかして!

何者か聞いたら「自分が何者かとか哲学な話ですね。自分が自分を思うから自分ではないかと」とか変な事を言うし!

そんなに睨まないでよ!勉強するわよ!!

 

でもあれ?

文字は崩れたアルファベットみたいだけど、語順は今喋ってる日本語と同じだから、単語さえ覚えたら難しくない…?

多くはローマ字の様だし。

 

な~んだ、簡単じゃないの!

見てなさい!高校は中退したけど、義務教育は終わったんだから。ここの世界の人達とは、教育レベルが違うの!

 

やってやるわ!これ以上、私の世界の邪魔をさせるもんですか!!

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