ヒロイン矯正!   作:アールエー

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今回の話は、この国での慣習と思って下さい。


その20 デビュタントの裏側

 

華やかなデビュタントのパーティ、お嬢様は公爵家の御長男様のエスコートで、その舞台に立った。

 

私は他の専属侍女の方々と、専用控室にてそれを見ていた。

お嬢様の専属侍女として恥ずかしくない様に、清楚な制服を着て白いエプロンを身に纏う。化粧も派手にならず、これも清楚系を心掛けている。

 

この部屋の窓には照明が外から当たり、部屋の中は暗くしている。マジックミラー効果で、裏方の控室の中は見えなくなっているのだ。

そこでお喋りしたり、遊んでいる暇はない。

全員窓側に控え、自分の主人が誰と会っているか、何を頂いたか、誰と踊ったか。全てメモに取り記録しなくてはならない。

上級者となれば、メモ無しで頭に叩き込むらしいが。

もちろん、貴族年鑑と肖像画でもって関係者の顔は記憶している。記憶させられた。地味に辛かった。

 

そう言えば、お嬢様も王宮で肖像画を書かれていたな…。

 

呼ばれたら即座に表に出て動くため、メモは小さく隠しやすくしてあり、またお嬢様からの合図や周囲の状況を見逃さない為、全く見ずに書けるようになっている。

公爵家の侍女教育で、その全てを叩き込まれた。拳法の修行の方が楽だった様に思える…。

 

王家への挨拶が済んだ後、公爵家待遇なので、今度はお嬢様が挨拶を受ける立場になる。

 

次々に挨拶にくる貴族達。中には、と言うかほぼ全員が贈り物を持って来ている。ヤメレ。

お嬢様に手荷物を持たせるわけにはいかないから、贈り物を頂いたお嬢様から即座に受け取り、そっと誰からの贈り物かメモを書きつつ個室へレッツゴー。優雅に急がずゆったりと超特急で舞い戻る。もう、次の貴族に変わってやがる!

 

そっとローザ様が近付いて来る。どうやら、フル回転の私を見兼ねて、フレデリカ様が送ってくれたみたいだ。た、助かる!

公爵家待遇な聖女様の、デビュタントでの専属侍女がたった1人と言うのは、かなり無理だったのだ…。

フレデリカ様は去年デビュタントを済ませているし、専属侍女も複数いるから問題ないのだ。

 

御長男様の侍従や秘書にも協力して貰い、捌き切る事に成功。正直、この時点でクタクタである。

もう、個室はプレゼントの山がそびえ立っていた。

しかし、ここまでくれば一息つける。

何故なら次はダンスの時間だ。お嬢様も、すっ転ぶスチルは回避したいと、ダンスは何より真剣に学んだだけあって、優雅に踊る事ができる。

最初はエスコートしてくれた御長男様、それから王太子殿下、王子殿下が誘ってくれる。

ちなみに、王子殿下には未だに婚約者がいない。本来なら聖女を狙うんだろうけど、そんな感じはしないから貴族派閥からの圧があるのか、本人の資質か。

ただ、最近は貴族派閥からも聖女は特別との話も出ているらしい。戦場での活躍が、段々と貴族内に浸透している結果なのだろう。

今回の贈り物も多くは貴族派閥からだし、直接でなくとも屋敷に届く贈り物は後を絶たない。

まして、男爵家に贈ったらどうなるか、バレてしまった後は。

 

ダンスパーティは進み、誰と踊ったかチェックしつつ、お嬢様の疲れ具合を観察。無理をして倒れると大変だ。

疲労が募っていると感じたら、そっと近付いて会話の合間を狙って飲み物を渡し、ついで休憩を促す。

ダンスで汗をかいて化粧が崩れてないか、ドレスに乱れがないか、その際にチェック。

同時に周囲も確認しておく。不埒な人間はいないか?妙な飲み物を勧める輩はいないか?

 

その内パーティも御開きに近付いてきた。少し足元がふらつくお嬢様をさり気なく個室へと誘導する。ローザ様にお願いして、御長男様に伝言を残すのも忘れない。

 

やがて楽しい時間も終わり(The party is over. )、お嬢様の身なりを調え、迎えの馬車へと誘導。多くの贈り物は既に使用人達に頼んで、荷物用の馬車へと積み込みをしている。

 

お嬢様と話をして今日の様子を伺う。楽しく踊れた事、挨拶で少し失敗した事、いきなりお付き合いとか言い出した男がいた事。要チェック!

次期公爵の御長男様が横に立っていたから、そこまで変な輩は居なかった様で良かった。概ね、楽しくデビュタントを過ごせた様だ。

 

住まわせて頂いている公爵家に到着。今日はフレデリカ様とお嬢様と二人もパーティ出席者がいるので、屋敷のメイド達も手伝って総出で片付けを行う。

荷物は素早く専用の部屋に運び込まれ、その間に私はお嬢様のお着替えを手伝い、コルセットを外す。お嬢様も漸く一息ついた。

ドレスを片付けたり装飾品を取り外したりしている間、屋敷のメイドが持ってきた軽食をお嬢様に食べて貰う。

大体、緊張とコルセットでろくに夕飯を食べる事ができないのだ。

 

湯浴みの準備が出来たらお嬢様に入って貰い、手早く化粧を落とす。今日はゆっくり浸かったら寝てしまいそうなので、身体を洗う程度にしておき、ナイトウェアに着替えさせたら寝室へ。

 

いつもは一緒に寝て、自分が手を握ったり抱きしめてあげないと、ろくに眠る事もできないお嬢様だが…。今日は疲れ切っているのか。

あっという間に眠りについた。

 

穏やかに寝息を立てているお嬢様をそのまま寝かせて置くと、大急ぎで贈り物をまとめた部屋へ。

既に始まっていたけど、贈り物の中身を確認するのだ。極稀に毒物とか贈られてくるらしい。

その前に、どれが誰からの贈り物かリストアップしないといけない。贈る人に寄って危険度が変わったりする。

大急ぎでリストを作成したら、荷物の確認を行う人達に渡した。公爵家ともなるとそれを専門に行う使用人も居たりする。

 

贈り物は一先ず任せて、記憶がある内に挨拶してきた人達のリストアップ作業をやらなくては。手が空いたら用意されていた軽食を片手に、食べながら進める。現場にいた他の侍女や執事にも聴き取る。特に執事さんはよく覚えていて、非常に助かる!

リストアップが済めば、私の今日の仕事は基本的に終わりだ。今日は学生のパーティだから夜半過ぎには終わったが、夜会となると早朝までかかる。

本当は危険かどうかの確認が終わった贈り物の、内容のリストアップも必要なんだけど屋敷の皆様のご好意で先に休ませて貰う事になった。有難い。

 

早朝起きて、ササッと賄いを食べリストの再確認。今日はパーティの次の日で、学園は休みだ。

贈り物を並べて準備したら、お嬢様を起こしに向かう。相変わらず、凄い寝相だ。何度蹴られた事か。

 

着替えを手伝い、朝食を取って貰ってから贈り物を見て貰った。

 

「こんなに貰ったのね…」

 

「読み上げますので、ご確認をお願いします。礼状はこちらで出しますので、誰から何を貰ったのかだけ覚えて下さい。会話に出た時に困りますので」

 

「こ、こんなに覚えられないわよ!?」

 

「大丈夫、覚える事はできます」

 

「な、何を根拠にそう言えるのよ!」

 

根拠は、目の前の私です。と言わんばかりに、ニッコリ笑うのであった。

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