ヒロイン矯正!   作:アールエー

23 / 23
その23 決闘

 

目が覚めると、目の前にアルベルトの顔があった。思わず鼻っ柱を引っ叩いた。

 

「痛っ、何するんだ!?」

 

「え…いや?なんか、何となく?」

 

「何となくで叩くな!」

 

寝ぼけた頭が徐々に働きだす。

うーん、乙女の寝顔を覗き込んでいたから、私は悪くない…よね?多分。

 

「え〜っと…。ここ、どこ?」

 

回りを見渡すと、森の中にいた。近くにグレン様とラクスの姿も見える。

 

「お前、どれだけ寝ていれば気が済むのだ?」

 

ギロッと睨み付けるラクス。余程お冠らしい。

まあ、うん、私が悪いしね。怒るのは当然…だと思うけど、コイツの場合何かムカつく。

 

「そう言うなって、よっぽど疲れてたんだって、涎まで垂らして爆睡してたからなぁ!」

 

アルベルトは、叩いたの謝らなくて良いな。

 

深呼吸を一つ、コイツらは15〜16歳、言わば高校生の悪ガキなんだ。大人な自分が許容してやらねば。

 

「所詮は侍女程度の簡単な仕事、疲れる方がどうかしている」

 

「その喧嘩、言い値で買った!!」

 

やった事もない癖に、ローザ様や仲間の仕事を馬鹿にする奴は許さん!私は即座に立ち上がり、戦闘体制に入る!

 

「ちょっと、ちょっと待て!ラクスは煽るな!レイナ嬢、何故にそう喧嘩腰なんだ!?もう少し淑女だと思っていたのだが!アルベルト殿も止めてくれ!」

 

大慌てでグレン様が仲裁に入る。私は瞬間湯沸器の気質のせいか、直ぐに冷静になった(つもり)。お嬢様の前ではできる侍女をやっていたが、離れた途端に本来の性格が滲み出てきたのか…。

しかし囃し立てる輩が1人。

 

「いいじゃねーか、グレンさんよう。そっちの男も、何か鬱屈した事があるみてーだし、ここは遣り合えばいいと思うぜぇ」

 

「なっ!しかし我々には使命が…」

 

「その使命が仲間割れで達成できない可能性があるって事さ。俺の婚約者は、多少の怪我なら治せるぜ」

 

グレン様は黙りこくる。多分、頭の中で高速回転させているのだろう。ちらっとラクスを見る。

 

「俺は、構わない。生意気な女が静かになるならな」

 

「…いいでしょう。双方がそう言うのなら。ルールは武器無しの試合形式で寸止め、どちらかが致命打を当てる判定で終了、急所への攻撃はなし。アルベルト殿、審判を任せても?」

 

「おうよ、任せておけ!レイナ、ガンといってやれ!」

 

「…あの、3人共、私の意見を聞かないのは(わざ )と?」

 

「あん?さっき豪快に喧嘩買ってたじゃねーか。それにお前が黙ってる性質か?」

 

くっ、反論ができん。身体の若さに引き摺られてる時もあるが、私の性格は文字通り死んでも治らんのか…。

しかし、その性質を速攻でアルベルトに看破されているのは癪だが。

 

ここでラクスと一戦交え、気持ち的にスッキリするなら構わない。

…スッキリするのかね、両者共に。昭和のガキじゃあるまいし、河原で殴り合って仲直りとかあるのか?

…あったわ、そういやガキだった、コイツら。しかも昭和より更に暴力が当たり前の時代の。

 

…いやそれでも、女と殴り合ってスッキリはおかしいだろ!!

 

そんな事を考えていると、ラクスが無防備な構えから、スッと動く。暗殺者は、初動が静かだ。スッと行ってドスッが基本だろう。

 

しかし、来ると分かっていれば、武術家にとって対処は難しくない。こちらも動く。

拳法の奥義は、歩法にある。歩行、体捌き、体重移動。ただ歩くだけではない、相手を惑わせ、間合いを誤らせる事も可能になるのだ。

 

奴の突きが、本来ならナイフで首を切る筈の突きが、私の首筋を狙ってくる。

たが、もう私は其処に居ない。真っ直ぐ行くと見せ掛けて斜め左に進む。ラクスの突き出した右手の外側を、滑る様に移動して空いた脇腹に鉤突きを…。

 

「待て!そこまでだ!」

 

アルベルトの号令が辺りに響く。ラクスの脇腹で、ピタリと拳を止めた。

ラクスが愕然とした顔でこちらを見る。明らかに勝負は着いた。

 

「ま、待て!まだ勝負は着いていない!」

 

ラクスは叫ぶが、アルベルトは首を振った。

 

「ラクス、お前、お前の突きと共に移動したレイナを、見失っていただろ?もし、レイナがナイフを持っていたら、今頃お前の胴体に風穴が開いていただろうな」

 

ググッと言葉が詰まるラクス。自分でも、分かっていたらしい。

 

「たが、その女より強くないと…俺はお嬢様の役に立てなくなる!」

 

この場合のお嬢様とは、フレデリカ様だろうな。叫ぶラクスの表情からは、焦り、不安、嫉妬の感情が…。少なくとも、怒りや憎しみとかではない。もしかして…。

 

「ラクス、貴方…もしかしたら自分の役割を、私に盗られると思ってる?」

 

ビクッとこちらを見るラクス。図星、か?

 

「もし違うなら聞き流して。貴方は私が自分に取って代わろうと思ってるなら…それは勘違いよ。貴方には貴方の、私には私の役目があるの。同じ食事を取る道具だからといって、フォークとスプーンを一緒にしては駄目。ある程度兼用できても、目的は違うのよ?」

 

黙り込むラクス。思う所はあるのだろうけど、ライバル視していた同年代の女の子に言われても、素直になれまい。年頃の男の子は。

アルベルトとグレン様が話し掛けている。後は任せた…。

 

しかし、私の性格も客観視すると、大概だな…。悪い所は変えないとなぁ…。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

英雄に殺された俺が聖女として転生したら、討伐対象が自分でした(作者:TSメス堕ちいいよね…)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

かつて勇者に討たれた魔王軍幹部。▼転生したら聖女になっていた。▼しかもコンビを組むのは、自分を殺した勇者アルフレッド。▼彼は知らない。▼隣で微笑む聖女が昔、自分に「おのれぇ!」とか叫んでいた魔族だということを。▼バレたら終わり。▼だがなぜか勇者からの好感度は上昇中。▼――待て。なんでだ。▼元ラスボス系幹部が、必死に聖女を演じながら世界を救う(?)話。


総合評価:432/評価:7.7/連載:6話/更新日時:2026年03月08日(日) 02:36 小説情報

TS転生美少女が男友達ムーブして幼馴染の情緒を破壊する話(作者:寿司鮓)(オリジナル現代/恋愛)

男友達だと思ってた幼馴染が実は女の子で再開したら美少女になってたムーブを自然にしてたTS転生者ちゃんさぁ。


総合評価:2150/評価:8.47/連載:6話/更新日時:2026年03月13日(金) 07:16 小説情報

TS転生アンドロイドはありふれた日常を送りたい(作者:異音)(オリジナル現代/冒険・バトル)

▼ 気づけば国とか一機で滅ぼせる少女型アンドロイドになってたけど、そんなことするよりもぼろっちい木造アパートで草むしりとかしながら過ごしたい。▼ 本人としてはそんなつもりでしかないんだけど、なんか周りの人は勝手に勘違いしてるっぽい。なんでさ。


総合評価:448/評価:7.47/連載:4話/更新日時:2026年05月27日(水) 20:16 小説情報

TS転生失敗作ちゃんが頑張る話(作者:cannolo)(オリジナル現代/冒険・バトル)

ブラック企業勤めの社畜、榊透也は、仕事を辞めて人生をやり直そうと決めたその日に事故で死亡する。▼……だが次に目を覚ました時、彼は謎の実験施設の中で銀髪美少女に転生していた。▼しかも転生した世界は、前世で読んでいた大好きなヒーロー漫画『アステリオン』の世界だった。▼企業ヒーロー、能力犯罪、人体実験。▼漫画の中では派手で格好良かった世界は、実際に来てみるとかなり…


総合評価:4367/評価:8.6/連載:18話/更新日時:2026年06月03日(水) 07:00 小説情報

ソシャゲの序盤で死ぬヒロインにTS転生したけど、とりあえず主人公くんをいじりたい(作者:あまぐりムリーパー)(オリジナル現代/ノンジャンル)

 明上ユーリは転生者。ソーシャルゲームであるラスト・インヘリタンス――通称ランヘリの世界にTS転生してしまった。▼ ランヘリでの役割は、序盤で死ぬタイプのヒロイン。そんな立場になったんだからどうしよう……とかではなく。▼ そんなことよりも、主人公くんをいじり倒したい!!!▼※カクヨム、小説家になろうにも投稿始めました▼一章完結済み▼二章完結済み


総合評価:4632/評価:8.72/完結:59話/更新日時:2026年05月18日(月) 19:03 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>