ヒロイン矯正!【完結済】   作:アールエー

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その23 決闘

 

目が覚めると、目の前にアルベルトの顔があった。思わず鼻っ柱を引っ叩いた。

 

「痛っ、何するんだ!?」

 

「え…いや?なんか、何となく?」

 

「何となくで叩くな!」

 

寝ぼけた頭が徐々に働きだす。

うーん、乙女の寝顔を覗き込んでいたから、私は悪くない…よね?多分。

 

「え〜っと…。ここ、どこ?」

 

回りを見渡すと、森の中にいた。近くにグレン様とラクスの姿も見える。

 

「お前、どれだけ寝ていれば気が済むのだ?」

 

ギロッと睨み付けるラクス。余程お冠らしい。

まあ、うん、私が悪いしね。怒るのは当然…だと思うけど、コイツの場合何かムカつく。

 

「そう言うなって、よっぽど疲れてたんだって、涎まで垂らして爆睡してたからなぁ!」

 

アルベルトは、叩いたの謝らなくて良いな。

 

深呼吸を一つ、コイツらは15〜16歳、言わば高校生の悪ガキなんだ。大人な自分が許容してやらねば。

 

「所詮は侍女程度の簡単な仕事、疲れる方がどうかしている」

 

「その喧嘩、言い値で買った!!」

 

やった事もない癖に、ローザ様や仲間の仕事を馬鹿にする奴は許さん!私は即座に立ち上がり、戦闘体制に入る!

 

「ちょっと、ちょっと待て!ラクスは煽るな!レイナ嬢、何故にそう喧嘩腰なんだ!?もう少し淑女だと思っていたのだが!アルベルト殿も止めてくれ!」

 

大慌てでグレン様が仲裁に入る。私は瞬間湯沸器の気質のせいか、直ぐに冷静になった(つもり)。お嬢様の前ではできる侍女をやっていたが、離れた途端に本来の性格が滲み出てきたのか…。

しかし囃し立てる輩が1人。

 

「いいじゃねーか、グレンさんよう。そっちの男も、何か鬱屈した事があるみてーだし、ここは遣り合えばいいと思うぜぇ」

 

「なっ!しかし我々には使命が…」

 

「その使命が仲間割れで達成できない可能性があるって事さ。俺の婚約者は、多少の怪我なら治せるぜ」

 

グレン様は黙りこくる。多分、頭の中で高速回転させているのだろう。ちらっとラクスを見る。

 

「俺は、構わない。生意気な女が静かになるならな」

 

「…いいでしょう。双方がそう言うのなら。ルールは武器無しの試合形式で寸止め、どちらかが致命打を当てる判定で終了、急所への攻撃はなし。アルベルト殿、審判を任せても?」

 

「おうよ、任せておけ!レイナ、ガンといってやれ!」

 

「…あの、3人共、私の意見を聞かないのは(わざ )と?」

 

「あん?さっき豪快に喧嘩買ってたじゃねーか。それにお前が黙ってる性質か?」

 

くっ、反論ができん。身体の若さに引き摺られてる時もあるが、私の性格は文字通り死んでも治らんのか…。

しかし、その性質を速攻でアルベルトに看破されているのは癪だが。

 

ここでラクスと一戦交え、気持ち的にスッキリするなら構わない。

…スッキリするのかね、両者共に。昭和のガキじゃあるまいし、河原で殴り合って仲直りとかあるのか?

…あったわ、そういやガキだった、コイツら。しかも昭和より更に暴力が当たり前の時代の。

 

…いやそれでも、女と殴り合ってスッキリはおかしいだろ!!

 

そんな事を考えていると、ラクスが無防備な構えから、スッと動く。暗殺者は、初動が静かだ。スッと行ってドスッが基本だろう。

 

しかし、来ると分かっていれば、武術家にとって対処は難しくない。こちらも動く。

拳法の奥義は、歩法にある。歩行、体捌き、体重移動。ただ歩くだけではない、相手を惑わせ、間合いを誤らせる事も可能になるのだ。

 

奴の突きが、本来ならナイフで首を切る筈の突きが、私の首筋を狙ってくる。

たが、もう私は其処に居ない。真っ直ぐ行くと見せ掛けて斜め左に進む。ラクスの突き出した右手の外側を、滑る様に移動して空いた脇腹に鉤突きを…。

 

「待て!そこまでだ!」

 

アルベルトの号令が辺りに響く。ラクスの脇腹で、ピタリと拳を止めた。

ラクスが愕然とした顔でこちらを見る。明らかに勝負は着いた。

 

「ま、待て!まだ勝負は着いていない!」

 

ラクスは叫ぶが、アルベルトは首を振った。

 

「ラクス、お前、お前の突きと共に移動したレイナを、見失っていただろ?もし、レイナがナイフを持っていたら、今頃お前の胴体に風穴が開いていただろうな」

 

ググッと言葉が詰まるラクス。自分でも、分かっていたらしい。

 

「たが、その女より強くないと…俺はお嬢様の役に立てなくなる!」

 

この場合のお嬢様とは、フレデリカ様だろうな。叫ぶラクスの表情からは、焦り、不安、嫉妬の感情が…。少なくとも、怒りや憎しみとかではない。もしかして…。

 

「ラクス、貴方…もしかしたら自分の役割を、私に盗られると思ってる?」

 

ビクッとこちらを見るラクス。図星、か?

 

「もし違うなら聞き流して。貴方は私が自分に取って代わろうと思ってるなら…それは勘違いよ。貴方には貴方の、私には私の役目があるの。同じ食事を取る道具だからといって、フォークとスプーンを一緒にしては駄目。ある程度兼用できても、目的は違うのよ?」

 

黙り込むラクス。思う所はあるのだろうけど、ライバル視していた同年代の女の子に言われても、素直になれまい。年頃の男の子は。

アルベルトとグレン様が話し掛けている。後は任せた…。

 

しかし、私の性格も客観視すると、大概だな…。悪い所は変えないとなぁ…。

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