残酷な表現があります。
駄目な方は念のため、後書きに今回の要約を書きますので、そちらを見て下さい。
王家の剣の鍵を求めてやって来たのは、西の街の、更に北にある山奥の村。
西の街は港町で、交易の為にかなり賑わっているのだが、そのせいもあって不埒な輩も集まってくる。街の酒場を中心に、荒くれ者や破落戸がウロウロしていて治安が悪い。
既に夕方で遅いので宿を取って食事をしたが、案の定絡まれた。私が。
顔がそこそこ良くて、侍女服着てるしね〜。しかしあんたら、横でアルベルトという厳つい大男と、ラクスという裏の人間っぽい男がいるのに、よく絡めるな。
私が何かする前に、アルベルトによって外に放り出された。
まあ、この時から嫌な予感はしてたけど。
山奥の村が山賊に襲われているって、どういう事よ!?
目的の山村に近付くと、明らかに火災っぽい煙が立ち始めた。遠くから悲鳴も微かに聞こえてくる。
「これは…何か不味い事が起こってますね。急ぎましょう!」
「グレン様、私とアルベルトで先行します!」
グレン様はそう言うが、山道は荷馬もいて早く進めない。ラクスを護衛に置いて、私とアルベルトだけで先行する。アルベルトの軍馬なら、平地とそんなに変わらない。
嘶きを上げると、アルベルトの軍馬は山道を駆け抜けた!
村に着くと、やはり山賊に襲われていた。数は見えているだけで20人、多分30人規模の山賊集団だ。
「…おい、レイナ」
「ん?何?」
「お前、まだ人を殺した事、ないだろ?」
そう言われると、アルベルトと目線が合う。
確かに、殺しはしてない。だが、お嬢様と戦場に出て以来、覚悟だけはしてきた。
「…覚悟はできてるって顔してるな。だが、できているのと実際は違う。後で俺を恨んでいい、今は何も考えず殺れ!」
「…分かった、ありがとう!」
馬から飛び降り、腰に括り付けた剣を抜く。
青色を基調としたワンピースと白い腰エプロンの侍女服を靡かせ、聖霊様の加護を体内で回転させて身体強化を起動!
アルベルトが軍馬で先行して手近な山賊を槍で突き上げるのを横目にしつつ、5人ほどの集団に向かう。
握り締めた業物の剣に、聖霊様の御加護の熱が籠る。このため、この剣の柄は木製でも革が巻いてもなく、鉄にへこみを付けた、刀身と柄が一体のワンピースブレードだ。手に反動の衝撃が激しくくるが、御加護の力で我慢。
「メイド!?何処から来やがった!」
「いいじゃねーか、楽しみが増えたぜ!」
斧で殴りかかる山賊に、僅かに軌道をずらして懐に飛び込み、剣を振るいながら次の山賊へ。
最初の山賊が脚の付け根から血を噴き出して倒れ、次の山賊の右腕が剣ごと飛ばされた時には、もう3人目の山賊を斬り伏せていた。
多対一の時は動き回って多人数に囲まれない事。一対一なら勝てるのだから、敵二人の直線上に立ち回って敵を盾にする事。
そして容赦しない事。
(駄目だ、まだ本当の意味で殺してない)
自分でも分かる、喉や胸を狙う時に躊躇している。前世では殺しなんてしなくて済んだ。手足を切り飛ばしたら、治療しないと失血死するかも知れないけど、逆に言えば間に合う切り方だ。
5人目の頭を肘で打ち抜いて昏倒させると、残心して辺りを見回す。
こちらが5人を相手にしている間、アルベルトは10人以上倒していた。…対戦ならともかく、戦場では経験が段違いだ。全く敵わない。
こんな事でお嬢様が護れるか?
考えるのは後だ、次の山賊は…?
向こうの家から、悲鳴が聞こえる。ドアは壊されている、罠かも知れないが飛び込んでみる!
そこには…3人の山賊と血塗れで倒れている男、組み伏せられて服を破られている女、そして髪の毛を掴まれている女の子と倒れてピクリともしてない小さな子…。
身体が瞬時に熱くなる。カッとなって頭が沸騰する。目の前が真っ赤になって、頭の片隅で冷静になれと言う意思が強制的に無視される。
子供に手を出しやがったな!?
ドンッと脚を踏み込み、女の子の髪を掴んでいた山賊に肉薄。
「チェエエエッ!!!!」
猿叫と共に袈裟懸けに一閃、骨から何から断った手応えあり!ついで横にいた男の首に、横一文字の太刀筋。どちらも骨を断つ時の衝撃が凄いが、無視する。
「て、てめぇ!!」
最後の山賊が漸く剣持つが、遅い。
震脚を鳴らし、
頸動脈を斬らなかったので派手な血飛沫は上がってないが、延髄まで貫通された山賊はバタリと倒れた。
実質、これが私の最後の戦闘だった。残りはアルベルトが尽く排除したらしい。
しかし落ち着く筈もなく、自分がした事を考える暇もなく、怪我人の手当をするべく村のあちこちを駆けずり回る事になった。
村に来たら山賊に襲われていた!
覚悟を決め、山賊を屠り、村を救った!