キャサリン視点
今日は公爵家の中で、フレディとのお茶会を昼に行う予定。気を使うパーティが続いたから、友人と気の置けないお茶会は楽しみね。
少しフレディから話したい事があると、前もってローザから聞いていた。何の話だろう?
振り返って考えると、不思議な感じがする。
フォーラヴの世界に転生して、自分がヒロインだと確信して、これで勝組だと思ったわ。
思い返せば、あの頃はかなり調子に乗っていたと思う。有頂天だったと思う。なんてったってヒロインだ、将来は約束された様なものだった。
そこに冷水を浴びせてきたのがレイナだったの。
最初は単なるモブだと思って馬鹿にしていたけど、一発殴って存在を示した後は、勉強やマナーの練習をさせられたわ。
今となったら分かる。何も学ばす、マナーも何もない、我儘なだけの令嬢は猿と変わらない。
レイナはそれを分からせてくれて、一緒に学んでくれた。
いきなり腹パンは、今でもおかしいと思うけどね!
まあ、あの後謝ってきたから、許してあげたけど。
そのレイナとは、出会ってから初めて長時間離ればなれになった。いつも、買い物へ行く数時間以外は私の近くにいて、お世話をしてくれた。私の話に付き合い、我儘を諌め、時には言う事を聞いてくれたわ。
そして眠れない夜は一緒に寝て、手を握って抱きしめてくれた。私はそれで、安心して眠る事ができた。
…私より遅く寝てる筈なのに、朝目が覚めると既に朝食の準備をしているのは不思議だったけど(お嬢様の寝相で蹴り起こされただけです!)。
「キャサリン様、フレデリカ様が準備ができましたと…」
自室にメイドが私を呼びにやって来た。同じ屋敷に住んでいるのだから、一緒に準備して良かったのだけど、これは主催者の義務だからと自分だけでしてたのよね。
それでは行きますか。
お茶会はテラス席で行われた。
フレディと私の、2人だけの小さなお茶会。
そこで聞いたのは…。
「ええっ!?ハドルド殿下が私を!?」
「そうなのよ。どうも聞いていると、一目惚れみたいね」
フレディがデビュタントのパーティで、ハドルド殿下が私を見初めたって話をし始めた。
その前にも会ってはいたけど、話とかしてなかったしな…。大勢の人と一緒だったし。
でも、そんな感じはしなかったけどなあ〜。
「うーん、顔は最推しのシリウス殿下の兄弟だけあって凄く良いし、性格は素直っぽいし…。ただ、貴族派閥だよね?派閥抗争はどうなの?後、側妃様がどうでるか」
「少なくとも、本人は派閥から抜け出す事を考えているみたい。貴女なら、爵位も気にしないだろうって」
うへっ!ちょっと驚くわ!あのハドルド様が!
でも派閥を抜け出すって、無理でしょ。その派閥の代表みたいなものなのに。
「本人も、変わろうとしているの。だから、原作とは少し目を離して貰えると嬉しいかな…」
まあ、原作とは既にかけ離れているしね。
あれは一つの見本ってだけで、実際は当てにならないのよね。
「分かったわ、フレディ。一先ず会ってみる。でも、会う前に一つだけ言って貰いたいの」
「ん?何かしら?」
「例え私と結婚しても、聖女としての活動、医療活動はやりたいの」
「…キャシー…」
あの日。私が未熟で、考えが足りずに失血死で大勢の人を救えなかったと気付いた日。
もう、こんな私は幸せになれない、なっちゃいけないって泣き喚いた夜。レイナは言ってくれたわ。
「お嬢様が幸せになる権利を捨てる必要はありません」
「未熟なのは罪ではありません。それが罪になるのなら、この世には罪人しかいません」
「彼等はお嬢様の未熟の犠牲になったのではありません。ただ、お嬢様に気付かせてくれただけです」
「さあ、泣く暇があれば立ち上がりましょう。腕が未熟だと思うなら、腕前を上げれば良いのです。そして、より多く人を救ってこそ、亡くなった方々も浮かばれると思います」
それはただ、私を励ますだけの言葉だったのかも知れない。でもレイナは、ひたすら私に寄り添ってくれた。前世の家族はもちろん今世の母よりも。辛い時にギュッと抱きしめてくれた、危ない時には命懸けで守ってくれた、決して裏切らない、私の一番の家族の言葉だ。
私は、聖霊様の奇跡を生涯果たすべきだ。
聖霊様も約束してくれた。私が行動するのなら、天に召される瞬間まで加護を授けると。
「…分かったわ、キャシー。殿下に必ず伝えるわ」
フレディは何かを察したのか、何も聞かずに頷いてくれた。ありがとう。
「あ、でも、ハドルド殿下に貴族位を捨てるとか言わせないでね!正直、苦労する日々が見えるわ…」
「ああ、王子殿下に平民生活は無理よね…」
「それもあるけど、多分大公くらいの地位と権力がないと、教会やバックの神国からの干渉に太刀打ちできないのよね」
「…それもそうね…」
結構、神官達からの圧も強いのよ。
最悪、今年の夏季休暇には神国に行かないと駄目な感じもするし。王太子殿下は止めてくれているけど…。
それに何となくだけど、向こうに行ったら枢機卿の息子とか孫とか出てきて、なし崩しに結婚までいきそうな予感がする!イケメンだったらヤバい!!
「それに、私は医療制度を整えたいの。それには大公や国王の力が必要だわ」
聖霊様の御加護の影響で、人体の身体の構造や病気の仕組みが、頭に浮かんでくるのよね。
レイナもツボや武術の技が浮かんでくるって言ってた。
ちなみに、願った事に対してしか浮かんでこないわ。怪我を治したいと願ったから、身体の構造が浮かんだけど、死なせたくないって願ったら、増血というヒントが浮かんだの。
…もっと…早く浮かんでよ…本当…お願いします…。
「…キャシー。本当に、聖女への道を進んでいるのね…」
「え?ううん、やりたい事ができただけよ。とりあえず今は、加護で頭に浮かんだ身体構造や病の仕組みを書き写しているの。でも対処や治療法が分からないから研究は必要ね。私の御加護の力で治るけど、私は1人だし何時かは亡くなるし。だから医療制度を…」
そこまで言うと、フレディは隣まで来て、私の手を握ってくれた。
「いいえ、貴女は紛れも無く聖女よ。それが加護の影響だとしても、その考えに行き着いて実行しようとするのは、どう見ても聖女よ。私はキャシーの友人である事を誇りに思うわ」
「フレディ…ありがとう!私頑張るから、応援してね!」
私は家族と友人と、目指したい夢をここで見付けた。それは、とても幸せな事だと思う。
早くレイナ、帰らないかな!話したい事がいっぱいだわ!!
お嬢様と一緒に寝ていると、ふと夜中に目を覚ました。
横から、お嬢様の寝息が聞こえてくる。
お嬢様?俺の横で寝ているぜ。なんてセリフを思い出す。
…おや?お嬢様の片足が高々と上に…。つま先から脚の付け根まで、真っ白なお御足が…。
ドゴン!「おボォッ!!」
油断した!踵落としが下腹部に炸裂した!!
お兄ちゃんだったらお姉ちゃんになってた!
うう…。外の明るさから、まだ少し早いけど…。起きるか…。いてて…。
(娘にされた実体験)