ヒロイン矯正!   作:アールエー

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その28 戦闘後の黄昏

 

山賊の集団を撃退してから数時間。ラクスが呼んだ街の警護団が漸く到着した。

村人の多くは治療できた。私の加護でも怪我の治療くらいはできる。しかしお嬢様の加護の様に手足の復活や増血までは無理なので、大怪我をした人達の半分は助からなかった。

それでも生き残った村人から、聖女様と拝まれているのは、少し辛かった。

 

「これで、貴女が聖女だと噂されるのも、時間の問題ですね」

 

グレン様が治療が終わり、休憩していた私に話し掛ける。

 

「それでも、私は自分の名を名乗ってないのですよ。もしかしたらお嬢様、本物の聖女と勘違いするかも。大体この手の噂は日付が曖昧になるので、お嬢様が移動したかどうかも有耶無耶になれば…。半分諦めてますが。それより、首尾はどうでした?」

 

「ああ、ありましたよ、王家の剣の鍵」

 

その手には赤く光る水晶が握られていた。

近くに寄ると感じるけど、これって炎の聖霊様の力だ。

という事は、もしかして四方に聖霊様の水晶があるのか…?

 

「村の裏手の洞窟にありました。謎解きが少しありましたが、フレデリカ様よりヒントも頂いていたので簡単でしたよ」

 

これで一安心。後は警護団に始末を任せて、街へ帰還するだけ。

 

その後、私達は話し合って街に向かう事となった。事情聴取もあったけど、グレン様が侯爵令息であるのが良く効いた様だ。

と言うか、あまり私達に関わって欲しくない?早く街へ引き返して欲しいと言ってる感じがする。まあ、他領の貴族に引っ掻き回されるのは嫌か。

山賊共の僅かな生き残りも引き渡し、山村から出発した。

 

 

 

宿は連泊で取っていた為、スムーズに宿泊できた。着てた侍女服は返り血で汚れていたので、代りの服を引き出して着ている。もう、汚れ取れないだろうな…。また服を貰えるかな?

ちなみに侍女服といっても制服として支給されたのではなく、お嬢様のお下がりだったりする。服は高いので、ご主人様の高級服を譲り受けるのが侍女の特権なのだ。

エプロンは自前だが。

 

 

グレン様が用意した宿だけあって、かなりの高級宿だ。美味しい夕飯の後(給仕しなくて良いのが最高)、私は部屋に付属しているベランダで飲み物を片手にぼーっとしていた。

 

思い出すのは今日の戦闘。

山賊を殺したのは…まあ仕方あるまい。前世も含めて初めてだったけど、この世界では何時かは経験する事だ。武術を使う以上は。

 

しかし、カッとなる癖は如何なものか。前世では、そこまで暴力的ではなかった。もしそうなら、人生の半分は刑務所暮らしだっただろう。

この身体のせいか?とも考えたが、どうも違う。とすれば、聖霊様の加護の影響とも考えられる。

 

何と言っても炎の聖霊様だからなぁ…。

 

つまり私は、あの燃え盛る感情を抱きつつ、冷静な判断を下さないと駄目なのか。相反する制御をしないと駄目かぁ~。

 

なんて事を考えていたら、後方から誰かがやって来た。この宿のベランダはロイヤルスイートルームの付属なのだが、スイートルームの各居室から直接出られるのだ。

首だけ振り向くと、アルベルトだった。

 

「いよう、レイナ。こんな所で黄昏れて、どうしたんだ?」

 

「んにゃ…。今日の戦闘を振り返っていただけ…」

 

「初めて、だったんだろ?人を殺ってしまったのは」

 

「…まあ、覚悟はしていたから…。本当の初めては、アルベルトの親父さんを殺せてたら良かったんだけど」

 

「そりゃ、俺でも無理だ」

 

はっはっはっと笑うアルベルトの横で、右手をニギニギとしてみる。

その前に人体を斬ったり、腕を飛ばしたりはしたが…。それとは違う、山賊を袈裟懸けに斬り殺した感じ。首を刎ねた手応え。

…確実に生命を刈り取った。あの時の手の感触は覚えているし、忘れてはならない気がする。

私は人を…生命を奪い取ったのだ。

 

ふと、アルベルトが動いて近付いたかと思うと、ふわっと私は浮き上がる。アルベルトが横抱きして、そのまま近くのソファに座ったのだ。私を膝の上に乗せて。

 

「え…ちょっと…」

 

「余り考え込まない方が良い。いずれ慣れるにしても、やはりキツいものだ。いつもの様に座っていろ」

 

落ち着くまで一緒にいてやると、アルベルトは言う。そうか、私でも精神的に負担が大きかったのかな。お嬢様もそうだったけど、辛い時に誰かと一緒だと、軽減されるのかな。

 

アルベルトの大きな胸板に頭を預けると、大きく深呼吸をした。彼の匂いが僅かにして…汗の香りが、何故かそんなに嫌じゃなくて…。

何だか心地良くて…。

 

…………。

 

 

………?……!?…………。

 

 

 

「いや、ちょっと待てぃ!!」

 

私はアルベルトの上から飛び降りた!

 

「いつ、私の定位置がアルベルトの膝の上になった!?」

 

「二日前から、ずっとそうじゃねーか」

 

「うが〜!明日はズボン履く!自分の馬に乗る!絶対に!!もうアルベルトの馬に乗らない!おやすみ!」

 

そう叫んだ後、私はズカズカと歩いて自分の部屋に戻った。後ろでニヤニヤしながら、私が残した飲み物を飲み干すアルベルトを置いて。

 

 

 

「はいっ!動いて!!動け!動けってば!!なんで進まないの!?」

 

次の日、宣言通りズボンを履いて皆の前に現れ、颯爽と自分の馬に乗った私だったけど…。

 

動かない!なんで!?この馬!馬鹿ぁ!!

 

いつの間にか、アルベルトの軍馬が皆の馬を支配してリーダーになっていて、私の言う事を聞かなくなったのだ。

 

「どうした、レイナちゃ〜ん?お馬さん、動かないね〜?俺の前は空いているぜ〜?」

 

「うぎぎぎぎぃ…………」

 

ニヤニヤ笑うアルベルトを、激しく歯軋りしながら睨み付けるが、泣けど叫べど動かないものは動かない。

 

 

 

私は……………………諦めた。ガクッ。

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