ヒロイン矯正!   作:アールエー

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その33 襲撃

 

「以上が現在の状況となります」

 

ここはシリウス王太子殿下の執務室。

フレデリカ様にお嬢様への虐め問題を相談したら、ここへ連れられてきた。

メンバーは私とお嬢様、シリウス王太子殿下とフレデリカ様にローザ様、グレン様とミシェル様、そしてハドルド王子殿下。外ではアーサー様が控えている。

 

ここで、私が集めた虐めの実態と証拠を公表した。

首謀者はアリシア・ローランド伯爵令嬢。茶髪ストレートの一見地味な令嬢だが、学問では優秀な方だ。

実際に行われた、或いは未遂に終わった悪戯と、証拠…と言っても指紋や映像等の物理的証拠はほとんどなく、証言や犯行当日のアリバイ等の証拠だ。

更に証言も身分制度の中では私や下級貴族では意味がなく、侯爵令息のグレン様や同格のミシェル様に直接目撃して貰う様、調整をした。地味に苦労した。

 

ハドルド王子は頭を抱えていた。

 

「そうか、アリシアが…」

 

アリシア・ローランド伯爵令嬢は、王子殿下の婚約者「候補」として王宮に出入りしてたんだけど…。

不幸だったのが、10年ちょい前に流行り病が発生して、侯爵家以上の丁度良い年齢層の令嬢が亡くなった事だと思う。現状、侯爵、公爵家の御令嬢の年齢は、上は20代半ば、下は一桁だし。

唯一の年齢バランスの取れた令嬢がフレデリカ公爵令嬢。だけどこちらは王太子殿下の婚約者。

 

そして肝心の側妃殿下が、侯爵家以上でなければ他国の姫君と拘った為に、何時迄も候補のまま置き捨てられた形に。

他国の姫君も、簡単に見付かる筈もなく。このままでいけば、アリシア嬢が王子妃になる筈だった。

…トンビに油揚げをさらわれるが如く、聖女が持っていかなければ。

 

冷静に考えるなら、側妃殿下を説得して先に候補の文字を外して貰えたら、違ったのだろうけど。

 

「それは無理だな…。母上は、半狂乱になっていたから、冷静な判断など出来なかっただろう」

 

…騒ぎになるのは分かっていたのだから、王子様がもう少し隠れて付き合ってくれたら…。

愛に恋する年齢層だからなぁ…。今更、言っても仕様がない。

 

「ハドルド…お前がもう少し忍耐強くあればな」

 

「申し訳ありません、兄上…」

 

仕様がないのだけど、兄としては言うしかない。お労しや兄上。

 

 

その横では、今まであった伯爵令嬢の「やらかし」をリストアップしたものを見て、お嬢様とフレデリカ様がヒソヒソ話している。

 

「ちょっと、これ完全に乙女ゲームの悪役令嬢じゃないの」

「でしょ!?私も報告聞いてびっくりよ」

「権力を笠に文句や嫌味を言う事12件、物を壊したり隠す事5件、水をかけたり物を投げ付けられたりが3件、えっ!階段から落とされそうに!?」

「それ、未遂だけどね。後から押そうとした取巻きの令嬢を、レイナが首トンして止めたらしいけど」

「えっ!首トンとか出来るんだ?」

「あ〜、本人の言うには、首をへし折る瞬間に治療すれば、無傷で気絶が可能だって…」

「なんて力技…!こわっ!」

「そうよね、無傷とは一体…」

 

 

グレン様がトサッと報告書を置く。

 

「この報告で、伯爵令嬢の悪行の証拠は掴みました。とはいえ、実際は大した悪行ではないのですが…」

 

「ええ〜?レイナは何度も殴られたんだけど。教科書を破られた事も嫌だし。私には直接の害こそなかったけど、防いでくれたレイナのお陰なんだから!」

 

まあ、それでも加護の力で怪我とかしてないし、未遂の段階で阻止したのも多いし。私の手間は増えたけどね。私が殴られたのは、貴族が平民をって事で罪が非常に軽いんだよね。この貴族優先の身分制度の国じゃ、怪我してないから実質無罪じゃないかな。物を捨てたり破ったりした分の金銭補償で終わりかな?

 

「そうだな。こちらから勧告して、損害賠償を支払わせよう」

 

シリウス王太子殿下は小さな溜息と共に結論付けた。それで、終わりの筈だった。

 

 

 

学園が終わると、私とお嬢様は公爵家の馬車に乗って、公爵家へ帰る。

フレデリカ様が一緒に乗る事もあるけれど、王宮に向かう事が多いので大体は二人で帰る。

異変に気付いたのは、私の気配探知だった。

誰かが馬車の後をつけて、こちらを見ている。人数は3人。殺気らしきモノは感じない。

3人だったら、ただ見ているだけかも知れない。

その日は、それ以上の事はなかった。だが、手を打つに越した事はない。

 

 

数日後、再び馬車での帰り道。

 

「…お嬢様」

 

「ん?どうしたのレイナ…あっ、もしかして前に言ってた…」

 

「はい。数は15名。こちらの護衛は3名と私ですので、かなり不利ですね」

 

「だ、大丈夫なの!?そんな人数で」

 

私はにこりと笑う。実の所、これは想定範囲内だ。愛用のワンピースブレードを取り出すと、馬車の窓を開ける。

 

「お嬢様は念の為、バリアで身を守って下さい。外の破落戸は私が倒します」

 

そう言って、馬車の上に乗った。

周りの騎士達は、公爵家の騎士だ。何度か手合わせをして、私の実力は身に染みて分かっている。そして公爵家の命で、私の指示に従う様に言い渡されていた。

こういう時の対処法は、既に全員に周知済みだ。

 

「敵襲、後方より15、前と左右の三方を守れ!御者は前方に障害物の可能性、留意して馬車を止めるな!」

 

私は後方を注意しながら、掌に灯した炎を打ち上げた。炎は上空へ飛び、ボフッと音を立てて消え去る。それと同時に馬車の速度が落ちた。

どうやら、予想通り馬車を止める障害物があったようだ。

だが、ここは郊外とはいえ街の中、メインの道を完全に塞ぐのは無理がある。

 

それでもスピードの落ちた馬車に向かい、複数の抜き身の剣を持った騎馬達が襲い掛かる。

既に射程圏内に入って来ている騎馬に対し、懐にあるワンピースナイフに加護の力を全力で込めて投擲!

1本目が先頭の馬に刺さった。可哀想だけどごめん!全力の加護を使ったから、ナイフは凄まじい熱気を放っていて、馬の肉を焼き鬣まで火が着いた。

背中の騎手を振り落とし、大暴れする馬。あ、後方の別の騎馬も暴れて騎手が落ちた。

慌てて迂回する後方の騎馬に再度投擲!命中!

 

「ちくしょう!弓だ、弓を出せ!まずはあのメイドを殺すぞ!」

 

賊の1人が叫ぶが、それが彼の遺言になった。

 

「誰を殺すって?」

 

横合いから飛び出してきたのは、愛馬に乗ったアルベルトだった。持っていた槍を一閃すると、賊の首が飛んでいく。その後には舎弟が二人、姐さん加勢します!とばかりに槍を振るう。

こんな事もあろうかと、アルベルトに影の護衛を頼んでいたのだ。先ほどの炎は、その合図だった。

 

隣国の兵士は、こちらの兵士三人分だと言う。破落戸では何人いても相手にならなかった。

 

「アルベルト、1人は生かして!全員、お嬢様の安全を優先、先に公爵家に避難します!」

 

馬車は障害物を避けると、猛然と走り出す。前方にはもう、敵の気配はない。

そのまま、公爵家の敷地に飛び込むのだった。

 

「レイナ!報酬のほっぺにチューを忘れるなよ!!」

 

そんなアルベルトの言葉を背中に受けながら。

公然と、そんな事を叫ぶな!馬鹿ぁ!!





アルベルト君を好意的に見て頂いて、有難い事です。
なるっべく、好青年をイメージして書いております。
…最後の文章で、崩れそうですが。
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