ヒロイン矯正!   作:アールエー

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誤字修正、ありがとうございます。


その34 噂話

 

「それでは、アリシア・ローランド伯爵令嬢は、今回の襲撃には無関係と」

 

「はい。令嬢はもちろん、伯爵家にも金の流れが確認出来ず…」

 

あの襲撃から翌日、王宮に前と同じメンバーが集められ、対策が検討された。

アルベルトが生け捕りした賊も、大した情報は持ってなく、金で雇われた傭兵崩れという事しか分からなかった。

 

「まあ、犯人は分かっているんだかな」

 

そう、シリウス王太子殿下は呟く。

あれだけの数の傭兵を雇い、大きな金の流れを掴ませず、かつ平気で公爵家の馬車にいる聖女を狙うとなれば、伯爵令嬢やその親程度ではあり得なかった。余りに大胆過ぎる。

 

「つまり、母上か…」

 

ハドルド王子殿下が項垂れる。犯人は側妃殿下と筆頭侯爵家だと、ほぼ断定できた。

 

「この件は、我々の力の範疇を超えている。ひとまず父上、国王陛下に報告をしておくから、まずは各自の防衛策を取って欲しい。一度失敗しているから、直ぐに次を仕掛けてくるとは思えないがな」

 

相手は強大な権力者だからね。

出来る事となれば、ハドルド王子殿下が若さと可能性を武器に、派閥の切り崩しを試みるくらいしかないのかな?

それで側妃殿下の力を削ぐ事が出来るなら…。

 

 

 

そのまま何事もなく月日が流れ、間もなく夏季休暇に突入する季節となる。

その間も、お嬢様は神官達の勧めで教会で、又は自ら出向いて治療を行った。自ら行く事は、神官達は良い顔をしなかったが。

アリシア嬢も大人しくなり、平穏無事な生活が戻っきた…と思ったんだけど。

 

「ハドルド王子殿下とアリシア・ローランド伯爵令嬢が、婚約!?」

 

明日から夏季休暇という日に、寝耳に水な噂が流れ込んできた。それも、学園中に。

 

「噂が流れるのが早い!前もって準備して、今日流したのか!?」

 

ハドルド王子が否定しようと躍起になったが、噂はあっという間に広まった。

夏季休暇は、生徒も社交シーズンが終わる両親と一緒に、領地に帰る事がほとんどだ。噂も一緒に持って帰る事になる。

 

「つまりハドルドとの婚約話を持ち出して、既成事実化しようとしているのか。狡いやり方だが、今までハドルドの近くにいたのは事実。信じる者も少なくない」

 

ドスンと椅子に座ったシリウス王太子が、腕を組んで天を仰ぐ。噂とはいえ、他にゴシップがない世界では容易に真実となって渡り歩くものだ。

恐らく、アリシア嬢はこの事を知っていたのだろう。もちろん正式に国王陛下からの発表ではないが、その段階であると貴族社会では定着してしまう。これが意外と馬鹿にできない。

 

横で聞いてたお嬢様も不安になっているのか、落ち着かない表情だ。このままでは王子を盗られるのではないか?

 

「レ、レイナ〜。何とかならないの〜?」

 

「そうは言いましてもお嬢様。アンチゴシップは難しゅう御座います。まあ例えば噂を冷静に否定するとか、別の噂で塗り替えるとか」

 

「べ、別の噂?どんなの?」

 

「王太子殿下が東側の国境周辺へ視察に行く時に、お嬢様も行かれますよね?一緒にハドルド殿下にも来てもらうと、国境付近の貴族派閥に二人の仲をアピールできます」

 

「そっか、国境には貴族派閥の軍がいるもんね」

 

「その後の神国訪問も、王子殿下と一緒に行って、二人で祝福して頂くと教会から婚約認定された様なものです。それが全国に繋がる教会ネットワークに載ると…」

 

「こっちも効果ありそうね」

 

「結局、教会とは縁が切れないなら、とことん利用すれば良いのですよ。どうせ向こうも利用してきます」

 

 

私達の会話を聞いていた王子二人。

 

「…兄上、夏季休暇に旅立ちたく…」

 

「いや、ちょっと待て。簡単に王族が出歩けるものか。お前も公務があっただろう」

 

「全て王宮での母上関連です。それもパーティとかばかり。キャンセルで」

 

「そんな、遅めの反抗期…遅くもないか。おいグレン、どうだ?」

 

「どうだと言われても…。国境付近は民家も少ないため治安も悪く、暗殺の可能性はもちろん事故のリスクもあるので、二人一組で行動する事で警護兵を減らすのは厳しいでしょう。いきなり二人まとめて倒れたら事ですので。道中は騎士団を増員しての警護が必要かと。神国は…婚約者でもない聖女様と常に一緒は、流石に不味いのでは?」

 

「婚約者になれば良い。直ぐに婚約だ!警護は騎士団長に頼もう!父上に奏上を!!」

 

「だからハドルド!そんなに簡単に王族の婚約が進むものか!お前、キャサリン嬢と一緒にいたいだけだろう!!」

 

 

そんなこんなで、3日も経たない内に婚約は流石に無理だったけど、王子の同行は決まったよ…。大丈夫か、この国!?






「それで?ほっぺにキスの報酬を払って貰おうかな」

「そうよレイナ、約束したなら果たさなきゃ!」

「仕方ないわね、私達が証人になってあげるから。早ぅ早ぅ!」

「うぐぐ…。なんでお嬢様とフレデリカ様が証人なんですかねぇ?」

頭を並べる様に身を屈めるアルベルト。
ギンギラギンの目で見つめる二人のゲームオタク。
何なんですかね、この状況!!

仕方あるまい。前世では嫁さんに散々ブチュっとやったんだ。
ほっぺにくらい、どうって事…。

アルベルトに近付くレイナ。ほっぺに触れる瞬間、アルベルトはレイナを抱き締めた。ブチュ!

「………!?、!!、!!!!」

「おっ、抱き着いてキスをするとは情熱的だな。何なら口にキスをしても良いんだぜ?」

注:勿論この時代、みだりに婚約者でもない男女が抱き着くのはご法度である

「ア、ア、アルベルトのボケ!バカ!タンショーホーケードーテー!!!!」

「…レイナさん、ものすごいセリフ叫んで逃げたわ…」

「え?私、分かんない。兄ちゃん、詳しく説明して?キュピッ」

「聖女さん、知ってて言ってるだろ…」

「とりあえず、後で土下座して謝罪する事ね。とにかく男女交際については、この国は厳しいんだから」

「あ、ああ…。謝っておくとするよ…。覚悟がいるか…」

後日、パンチ一発(加護無し)と次も警護する約束で許して貰いました。
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