ヒロイン矯正!   作:アールエー

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その37 炭焼き小屋で

 

緑に継ぐ緑を切り拓き、漸く目的の家に近付いたのは日がかなり傾き始めた頃だった。途中、剣への加護の強化も上手くできる様になり、スパスパ草木を切る事ができたが、それでも時間がかかった。それに、とにかく虫が多過ぎた。夏だもんなぁ…。

間違えて蜂の巣がある枝を切って蜂の群れに襲われた時は、どこの漫画の修行かと言うくらい蜂を斬りまくった。

 

虫にはお嬢様も諦め顔だったが、とうとうハドルド王子と手をつないで、2人の身体の表面だけにバリアを張るという高等技を身に付けていた。必要は発明の母と言うか。

昼間だから目立ちませんが、二人でピカピカ光ってます。

 

…夜になったら、バリアの周りを虫の大群に囲まれる地獄が待ってる気がする…。

 

私は電撃殺虫器の如く、近付いた小虫を次々と焼き殺してしまいました…。

 

ちょっと臭い(泣)

 

着いた所は、炭焼きの小屋だった。煙は炭焼きの煙だったのかな?助かる事に人の気配がする。炭焼きの期間は大体夏で、こちらでは大きな窯を作って炭焼きするのではなく、その場で灰や土を使って小規模な窯を作って蒸し焼きにしている。その窯がいくつか並んでいた。

小屋は拾い集めた木々を一時保管し、森で寝泊まりする場所なのだろう。

 

…なんか、頭の後がピリピリする…。なんだろ…?

 

小屋におかしな所はない。ボロだけど作りはしっかりしている。窯も普通に見るし、周りの森も違和感はない。

 

「…王子、どんな方がいるか分かりません。私がまず交渉しますので、下がって頂けますでしょうか」

 

「…いや、ここは私が出よう。私の安全を考えての事だと思うが、これで御婦人のスカートに隠れていたと思われては、流石に矜持に関わる」

 

ああ、うん。聖女様もいるし、男の子だからね。とりあえず直ぐ後ろに付いて、緊急事態に対処できる体制だけ整えておくか。

 

王子が意を決して小屋のドアをノックする。

暫くして、中から中年の男が出てきた。

 

「…なんでぇ…?こんな山奥に子供がいるんだぁ?」

 

「突然申し訳ない。理由(わけ)あって川に流されてしまったのだ。報酬は与えるから、一晩の宿と食事、帰りまでの道案内を頼めないだろうか?」

 

出たきた男は訝しげな顔をしていたが、王子の口調と服を見て、貴族だと思ったのだろう。少し態度が改まった。

 

「へえ…。どうぞ、お入り下させぇ…」

 

「すまない、恩に着る」

 

うう…やっぱりピリピリくる。なんか変だ。

 

「王子…はっきりと言えないのですが、胸騒ぎがします。一応、お気を付けを」

 

「分かった。忠告、心に留めておく」

 

中に入ると、閑散とした部屋の隅に暖炉があり、鍋が掛けれられていた。暖炉の横には薪が重ねてあり、中央にはテーブル。このくらいの家具しかない、生活感ゼロの部屋だ。

 

「今、鍋を作っとります。貴族様のお口に合うか分かりませんが、今日兎と山鳥が罠にかかっとりましたんで、お出しします…」

 

頼む、と一言だけ応えて、王子は椅子に座り込んだ。お嬢様も、その横に座り込む。御加護のお陰で体力の消耗や怪我はないけど、精神的に参っていると思う。

しかし、さっきから来ているピリピリ感、油断するなと言われているみたいで、緊張感が走る。

王子様やお嬢様が油断するのは良い。私がするのは許されない。

 

「お手伝い致します。兎の解体ですね?」

 

「あ、いや、貴族様にそんな事…」

 

「ご安心下さい。私は貴族ではありませんので」

 

そう言って兎を素早く手に取り、解体を始める。おっ!血抜きはやってるな。皮剥ぎをするか。内臓が臭いから気を付けないとな〜。

フッフッフッ、村娘を舐めるなよ?数少ない肉類を食う機会を逃さない為に、年齢一桁から解体は野郎共としているのだ。皮は売れるしね。

 

解体しながらも、男の動向は見逃さない。

料理に変なものを入れられても困る。手元もしっかり見つめる。

…何か…違和感があるな…。なんだろう?とりあえず、変な小瓶とか持ってないな。ちゃんと洗っている綺麗な手だ。

まあ鍋が出来たら、皿についだ料理を男に真っ先に渡して、その時の反応でも分かるかも知れない。

 

できた料理は、根菜と骨付肉を塩で煮込んだものだったけど、これが空腹に良く効く。

王子様には先に毒見を…と言ったのだけど、流石にそこまで疑う必要はない、と食べ始めた。

多分、空腹に勝てなかったのだと思う。

男も特に変化がなかったし、考え過ぎかなぁ…。

 

あっという間に平らげた鍋。ごちそうさまでした。

 

男はこの居間に寝るから、貴族様は奥の寝室を使ってくれと通された場所には、当然の如く藁か何かの草で作られたベッドが一つ。

 

「あ、あの、王子様が使って下さい…」

 

「何を言う、女性を床に寝かせるなど、あり得ない。私が床で寝よう」

 

もちろん、一緒に寝るのは駄目です。断固として駄目です。そもそも同じ部屋で寝るのが駄目駄目です。

 

「レ、レイナ〜。どうしよ…」

 

うーん。こればかりは…。

 

「王子様、ベッドで寝て下さい。ここは聖女様を護る為の体力温存だと考えて下さい。お嬢様は私が枕になりますので、ここで寝て下さい」

 

せめてもの布団代わりに、私が着ていた服を敷いてドアを背に座りました。上はキャミソールと下着だけ。この世界は乙女ゲームのせいなのかどうか、ブラやパンツ等の女性用下着は充実しているんですよね〜。ついでに生理用品も。

 

あ、スカートに仕込んでいたワンピースナイフは、王子様に預けました。いざという時の為の武器として。

 

なんだかんだ、横になると寝息を立てる御二人。疲れていたんだろうな…。

私は、ワンピースブレードを抱く様に寝ました。

今宵の虎徹は血に飢えている…。なんて事にならなきゃ良いけど。

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