今回は暴力表現があります。
見たくない方は、レイナが敵をやっつけた!で構いませんので、中央部分は飛ばして下さい。
夜も更けた炭焼き小屋。
久し振りの雲のない空で、顔を出す半月がそれなりに明るく照らす夜。
幾人もの男達が、炭焼き小屋に集合していた。
「おい、貴族の坊っちゃん、嬢ちゃんが泊まっているって?」
「へえ!あっしも何かの間違いだと思ったんですがね。間違いありやせん」
「全く、態々俺等を呼びやがって。ガキ三人くらい、自分で何とかしろよ」
「へへへ…。すいやせん。あっしは腕っぷしはからっきしでして。貴族の坊っちゃんは剣とか使えるんでしょ?」
「仕方ねぇな。上流の街が、水害でひでー目に遭ってるってよ。多分、そこから逃げ出した貴族かね?」
「どうでも良いさ。女も2人いるんだ、高く売れるぞ?」
「お、お頭…。片方は平民って言うじゃね〜ですか。ひ、1人くらいは…」
「駄目だ。商品価値が下がるだろうが!欲しけりゃ買え。おい、ドアを開けろ!」
う~む、どうしてこう、男って発想が同じなんだ?いや、私も元々男だから、考えは分かる…やっぱり分からん。性癖の違いだな。可哀想なのは駄目だ。
野郎共が集まってくる少し前、ウトウトしながら深くは眠らず(と言うか座った格好は中々寝れない)、気配探知をしていた。
…ビンゴ!当たって欲しくない予感が当たってしまった。
出迎えてくれた男の手に違和感がずっとあったけど、良く考えたら手が綺麗だったんだよ。炭焼きを生業としている男が、あんなに綺麗なもんかい!
人数は18…19人?小規模な盗賊団かな?もしかしたら奴隷商かも。
まあ、山賊だか盗賊だかはどうでもいい。問題は相手の人数と、目的が誘拐だと言う事か。
もしかしたら、既に誘拐された人がいるかも。
ちなみに、この国では奴隷は厳に禁じられている。禁止されたのは約20年前くらいだけど、犯罪者の強制労働以外は表向きは存在しない(借金が返せなくて、花街に行かされるのは同じ事かも知れないけど)。また未成年の強制労働も禁止事項だ。
「と言う事ですね。御二人共、脱出の準備を」
もちろん、あいつらが集まりだした時点で、王子とお嬢様は起こした。疲れは取れてないだろうけど、数時間は寝てる。逃げる元気はあるだろう。
「…すまない…。私がここに泊まると決めたばかりに…。何とか、私が血路を開くから、2人は逃げてくれないか…」
「ハドルド様…。いいえ、ハドルド様は悪くありません…。私達の為に、必死に動いてくれたではありませんか…!」
ハドルド王子が真っ青になって、崩れ落ちている。責任を感じているんだろう。
敵は20名近くの破落戸、味方は女2人。本当なら、ここで詰みだよな。
私は王子にそっと近付く。部屋の入口は、ベッドで塞いでいるから、もう少し保つ筈だ。
「王子殿下、責任を感じておられるのは立派だと思います。しかし、まだ絶望をしてはいけません。ここに、臣下が2人もいるのです。立ちましょう。立って、最後まで足掻くのです」
ハドルド王子は、青い顔を上げて私を見る。
この子も、まだ16歳のガキなんだよな。どんなに教育したって、無理なものは無理だよな。
「レ、レイナ〜。何とかして…」
お嬢様も青い顔でこちらを見る。
私は、もちろんニッコリと笑う。
「大丈夫ですよ、お嬢様。さぁ王子、立ちましょう。そして笑って下さい。笑って、私に御命令を。御二人の剣として、道を切り拓けと」
王子は…立ち上がった。お嬢様がそっと支える。何かもう、2人共夫婦みたいな感じだな。
顔はまだ青いし震えもしているが、しっかりと私を見た。
「いける…のかレイナ嬢…。分かった。ハドルド・アルヘルムの名に置いて命ずる。道を切り拓け!!」
「了解しました。お嬢様、バリアで自分達を護って下さい。少し、暴れてきます」
よし、これで良い。敵はこの前ぶった斬った人数の2倍ちょい。味方はなし。アルベルトがどれだけ心強かったか、よく分かるね。
ガタガタと揺れるドア。ベッドもそんなに重くないから、揺れる度に移動している。もうすぐ開くか…開いた!
「ヤクザキィーック!!」
なんの変哲も無い中段蹴り。しかし御加護の力をたらふく溜めて、躍り出た先頭の男の胸に炸裂!
骨が砕け、肉が弾け飛ぶ手応え…足応えを感じ、数人を巻き込んで吹き飛ばす。
賊共が呆気に取られている間に、居間に飛び込んで所狭しと突っ立っている破落戸共の急所を斬る!力は要らない、鞭を振るう様に、首筋、手首、足の付け根、肘内。
忽ち7人の動脈を切り裂き、遅れて鮮血が飛び散る。先に蹴った奴らを含めたら、数が半減した。
「貴様ら、どけぃ!!」
騒ぎに関わらず、後方の壁に寄り掛かっていた男が前に出る。用心棒か何かか!?
大剣を振るい薙ぎ払ってくるが、逆に距離を詰め剣で受け流す。そして震脚と同時に頂心肘(飛び込み肘打ち)を叩き込む!ガハッと血の混じった息を吐く男の顔を掴み、そのまま私の膝に頭を叩き付けた!
鼻骨が陥没する嫌な感触が足から伝わるが、無視する。まだ敵はいるのだ。
…が、残りの敵は慌てて武器を落として、両手を上げた。決断が早い!?
「レイナ、凄すぎよ。10秒くらいで終わっちゃった…」
呆れた顔で、お嬢様がこちらを見ていた。
私が警戒し、申し訳ないけど王子様にロープで縛って貰った。用心棒っぽい男を含め、幾人かは生きていたので、お嬢様に治療して貰った。
「あ…あの…そちらの方は、聖女様…ですか?」
「あ、はい。そう呼ばれております」
「そ、そ、それじゃ、そっちの赤毛の方は…もしや
久し振りに聞いたな、その呼び名。
「ああ…アルベルトが言ってたっけ?」
「や、やはり…!敵う訳がなかった…!!こんな事に加担した、罰が当たったんだ……」
この男、元々隣国の兵士で、戦争が止まったから王国に出稼ぎに来ていたらしい。
何でも、英雄にして最強と呼び名も高いマイヤー伯から、正面切って戦って大事な大槍まで奪った
………当の本人が知らないんですけど。
そんなこんなで、私が実力者だと知られたせいか、洗いざらい吐いてくれた。用心棒の隣国の男は、えらく反省していたが。そんなに反省するなら、何故に誘拐なんて加担したのか。
犯人達の供述によると、誘拐したのは子供が3人。この小屋の地下室にいたよ…。
一昨日から何も食べさせてないとかで、衰弱しきっていた。なんて事を!どおりで気配探知に掛からない訳だ、死にかけて気配が無いんだから。
お嬢様の治療とパン粥を少し食べさせて、何とか生命を繋いだ。
良かった…。
最後まで最初の攻撃は、ヤクザキックじゃなくて
クロスオーバータグないしなぁ。付けたくないし。