ヒロイン矯正!   作:アールエー

41 / 41
その41 悪役令嬢

 

「あんたは、聖女キャサリン!なんでここに…神国に行ってるんじゃないの!?」

 

アリシア様は激高して叫んだ。

そう言えば、ここローランドの街は、アリシア・ローランド伯爵令嬢の領地だったか、失念していた。

 

「あ、あの…アリシア様?」

 

「あんたに名前を呼ばれる筋合いなんてないわよ!」

 

「も、申し訳ありません、ローランド様…」

 

お、おう…。余りの迫力に、お嬢様もタジタジだ…。

 

「アリシアお嬢様…おち、落ち着いて…」

 

お付きの侍女も止めようと必死だが、そんな事では止まらない。

 

「落ち着いてなんていられないわ!キャサリン!あんた、私を笑いにきたの!?そうなのね!?」

 

いや、本当に落ち着け!笑いに来て、なんで湖の上で落ち合うんだよ?しかも、そっちからぶつかってきて。

その内、アリシア様はボートの縁で泣き始めた。私はお嬢様に言われたので、ボートを並行に並べるとお嬢様はアリシア様の肩を撫で、事情を聞き始めた。

 

ポツリポツリと話すアリシア様の話をまとめるとこうだ。

 

元々、ハドルド王子の婚約者候補の中でも、アリシア様は下位の部類に入っていた。

しかし流行り病が上位の候補者の生命を奪い、または上の兄弟を亡くして次の跡継ぎになるか、婿入りする人を求めて帰っていった。

 

そうして残ったアリシア様だが、王宮では針の筵だった。側妃様は見向きもしない、王子は婚約者候補として相手にしてくれない、后教育は厳しい上に、両親は嫁入りするまで帰るなと言う。

それでも、私は后になるんだと思い頑張っていたところで、聖女が現れて王子の心を簡単に奪っていった。

 

せめてもの反撃で、聖女様の持ち物を壊したりして退学しないかと画策したけれど。

王家と公爵家から正式な抗議がローランド伯爵家に来て、アリシア様は呼び戻された。

寄子の娘達もついて行けないと、次々と離れてしまった。

 

しかも王宮を離れたら、いつの間にかアリシア様が婚約者だと、名前だけ使われて国中に噂が回り、いよいよ以て立ち行かなくなった。

 

王子は聖女に夢中で、側妃は利用するだけして捨てるつもり。周囲から見放され、結婚しようにも王子の相手と思われ、聖女派の貴族派閥からは邪魔するなと嫌われて。

とうとう、両親も勘当して修道院に送るかと話し合っている。

これも、これも悪いのは…!

 

「あんたが、あんたが来るから…!あんたがいなければ…!!」

 

ギリギリと歯を食いしばり、憎しみと哀しみを込めて睨み付けるアリシア様。

そして、お嬢様は…とても、とても悲しそうな目をしていた。ボート越しにアリシア様の手を握ると、ボロボロと涙を流した。

 

「な、なにを…」

 

「分かる…分かるよ。頑張ってきたんだもんね…。誰も見てくれないのに、頑張ったんだもんね。でも、もう頑張れなくなったんだよね…!」

 

もう、お嬢様は涙で顔がぐしゃぐしゃになり、肩は震え手には力が籠った。

 

「あなたに…何が分かるのよ…。そんなに沢山持って、幸せになって…。あなたに、何が、分かるのよ!!」

 

「貴女の本当の気持ちは分からない。けど、なんとなく分かるの。私も前世(まえ )はそうだったから…!」

 

「ま、前…聖女になる、前…。毒親だったって…」

 

「努力してないわけじゃないの。頑張ってるの。頑張って、頑張って、やっと出来ても、出来て当たり前と言われるの」

 

それは…慟哭なのかも知れない。

私はお嬢様の前世(まえ )を詳しく知らない。お嬢様も話したがらない。

ただ、虐めにあって、家を追い出されたとは聞いた。虐めた方ならともかく、何故に被害者が追い出されるのか、全く理解不能だったが。

 

「出来たら出来たで、今度は嫉妬されて。お前なんかに出来る筈がない、ズルだインチキだって…。足掻いても、何をしても認められなくて」

 

とうとう、お嬢様はアリシア様を抱き締める。

グラグラとボートが揺れるが、根性で姿勢制御する。

 

「辛かったよね、苦しかったよね、私は今世(こっち)に来て、護ってくれるたった1人の家族と会って救われたの。アリシア様、貴女には誰もいない?」

 

「わ…私は…」

 

アリシア様はふと横を見る。彼女が連れていた、ミリーと呼ばれていた10代前半くらいの侍女を。

ミリーは、お嬢様…と言ってうんうんと頷く。

 

「ち…違う…私は…聖女様とは違う…!貴女みたいに綺麗じゃない!違うのよぉ!!」

 

キャサリン様を振り解いたアリシア様は、逃げる様に立ち上がり、そして湖に転落した。お嬢様を支えながら揺れるボートを押さえつけ、水中を見る。もう、アリシア様は見えない!思ったより濁ってる!

 

「レ、レイナ!!」

 

「大丈夫です、任せて!」

 

お嬢様を座らせると、私も湖に飛び込むのだった。






聖霊様の御加護がない良い子の皆!
思わぬ二次被害に遭うかも知れないから、溺れてる人を見たら飛び込むんじゃなくて、浮く物を投げて助けよう!
そして即座に119番で救援要請だ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

産廃スキル『性転換』で魔法少女になったら戻れなくなった(作者:ぷに凝)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

 スキルが一人につき一つしかない世界で、小林大翔が引き当てたのは『性転換』。▼ 性別を変えるだけの戦闘向きではない産廃スキル――のはずだった。▼ だが、女性専用装備『魔法少女のドレス』との組み合わせにより、その常識は覆る。▼ ドレスの力で圧倒的な戦闘能力を手に入れた大翔は、正体を隠したまま謎の魔法少女『プリムノヴァ』として活動を開始。▼ 少女の体と魔法少女の…


総合評価:527/評価:7.56/連載:25話/更新日時:2026年06月23日(火) 18:00 小説情報

TSして魔法少女になったら頭が可笑しい奴しかいないんだが(作者:つる植物)(オリジナル現代/戦記)

 TS転生した先は魔法少女が異形の魔物と戦う世界だった。▼ 孤児だった俺に魔法少女の適正があったので魔法少女になった。▼ しかもなんか魔物を適当に斬っていたらSクラスの1位になっちゃった。▼ 同期の2位は俺を殺しに掛かってくるし、他のSランク頭の可笑しい奴らばかり。▼ 一般人の俺は今日も魔物をたたっ斬るのであった。▼ 


総合評価:1300/評価:8.32/連載:13話/更新日時:2026年06月23日(火) 15:00 小説情報

英雄に殺された俺が聖女として転生したら、討伐対象が自分でした(作者:TSメス堕ちいいよね…)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

かつて勇者に討たれた魔王軍幹部。▼転生したら聖女になっていた。▼しかもコンビを組むのは、自分を殺した勇者アルフレッド。▼彼は知らない。▼隣で微笑む聖女が昔、自分に「おのれぇ!」とか叫んでいた魔族だということを。▼バレたら終わり。▼だがなぜか勇者からの好感度は上昇中。▼――待て。なんでだ。▼元ラスボス系幹部が、必死に聖女を演じながら世界を救う(?)話。


総合評価:441/評価:7.7/連載:6話/更新日時:2026年03月08日(日) 02:36 小説情報

TS転生美少女が男友達ムーブして幼馴染の情緒を破壊する話(作者:寿司鮓)(オリジナル現代/恋愛)

男友達だと思ってた幼馴染が実は女の子で再開したら美少女になってたムーブを自然にしてたTS転生者ちゃんさぁ。


総合評価:2262/評価:8.44/連載:6話/更新日時:2026年03月13日(金) 07:16 小説情報

壊れかけの聖女に俺がインストールされたらしい(作者:あまぐりムリーパー)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

聖女ちゃんが、心を閉ざして動かなくなっちゃった、どうしよう!?▼せや、適当にそこら辺の魂突っ込んどけばええやろ!▼それで、俺が選ばれたってわけ▼んで、死なない体で化け物退治とかさせられてたんだけど、なんか聖女も狂信者も神官くんも、様子がおかしくない?▼※不定期更新▼カクヨムにもマルチで投稿始めました


総合評価:3148/評価:8.2/連載:56話/更新日時:2026年06月24日(水) 07:03 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>