本日、1回目の投稿です。
夕方にもう1回投稿します。
ローランドの街で待っていると、漸くハドルド王子殿下がやって来た。グレン様とラクスを連れて。
行きは王都に寄らずに直接来たけど、帰りは王家の剣の鍵を取りに行かないとね。
それは良いんだけど。
何故にアルベルト、お前がここにいるの!?
夏季休暇で故郷に帰ったのでは!?
「王太子と聖女が水害に巻き込まれたって話を聞いてよ、レイナが心配なのと親父の命もあって駆け付けたんだ。着いたら、聖女は既に神国に向っていて、王子も今から行くって言うじゃねーか。ついでに俺等もお邪魔したんだよ」
いや何か、簡単に言ってるけど、いくら隣国の留学生扱いとはいえ、王子殿下に気軽に近付いて仲良くなって一緒に同行するとか、無茶苦茶なんですよ!
物凄いコミュ強で、いつの間にか相手の内に入って家族同然で過ごす、言わばぬらりひょんみたいな奴なのだ。本人も、赤心を推して人の腹中に置く(嘘偽りのない真心をもって接する)を実践している上に、性質は朗らかで明るいから相手も簡単に信用するんだよな…。
「これから神国とやらに行くんだろ?俺も着いて行こう、お前が無茶しないか心配だしな。また俺の馬に乗るか?」
しかし、ここに立ち向かう戦士が1人!
「貴方は隣国の留学生でしたね?お姉様は私と一緒に馬車に乗ります。とっととお下がりなさい!」
アリシア様…もといアリシアだった。
身分も歳もアリシアが上なのだけど、侍女の後輩だから呼び捨てしろと強要してきたのだ。
その後にはアリシアの更に侍女のミリーもいる。
「おいレイナ、このちんちくりんは何だ?」
「ちんちくりんとは失礼な!」
まあ、私とアルベルトの背が高いだけで、平均身長はあるよね。私はとりあえず、アリシアを紹介してあげた。
アルベルトの反応は「ほーん」。どういう反応なのか判断に困る。
アリシアはフシャーっと逆立つ猫みたいで、ちょっと可愛い。
と思ったら、私のお姉様なんだから!と抱き着いてきた。いや、抱き着くのはいいが、胸に顔をうずめるな!
ま、いいからアルベルトは1人で馬に乗りな。今回はお嬢様がいるから私は馬車に乗るのだ。
「別に、アルベルトさんとタンデムしても良かったんだよ?」
馬車に乗り込んで出発した後、お嬢様はニヤニヤしながら言い出した。何故かハドルド王子もウンウン頷く。
「アルベルト殿とは少し話をしたが、なかなか良い男ではないか?そっちに行っても不思議ではあるまい」
だがしかし、私は王子の瞳の奥に、邪な光を見た!
「駄目です。私がいなくなれば王子殿下はお嬢様に、まだやっちゃイケナイ事までやりそうです。決して許されません」
「な、それは横暴だ!よし、王子命令だ、レイナ嬢は別の馬車に移動と言う事で…」
「王太子殿下の正式な命令状です。もちろんサイン付きの。それに反する命令は拒否します」
「兄上〜!大体、兄上はフレデリカ義姉上と同じ歳だから卒業したら解禁だが、キャサリン嬢は一つ下だから1年待たないと駄目ではないか!?」
うーん、まあ、あれだ。
大体、まだ2人共婚約すらしてないでしょ!
メキルド神国という国は、初めて聖女が降臨した伝説のある国だ。
伝説といっても、この国の中では歴とした事実で、歴史書の一番最初のページにくる項目でもある。
そして、その聖女の再臨とも言えるお嬢様が来たと言う事は…。
歴史上の偉人が来たのと同じ扱いを受けるのだ。すなわち、パレードである。
大歓迎の国民が両脇に大勢押し掛けた大通りを、態々オープンタイプの馬車に乗り換えて手を振ってにこやかに笑顔を振りまくお嬢様とハドルド王子様。
こちらは後方の馬車に乗って、窓から眺めていた。オープンタイプだと不埒な真似もできないしね。
それに、王子との仲を見せ付けるのも今回の目的だし。
パレードの後は総主教猊下との対面。
と言っても王宮で王様と会うみたいに、玉座に座った王様にひれ伏すとかではなく、少し大き目の応接間みたいな所で総主教猊下と枢機卿の代表の方が1人、後に神官様が数人控えている所で対面した。
聖女のお嬢様とハドルド王子様が椅子に座り、私とアリシア、グレン様とケリー様が後に控えた。アルベルトは堅苦しいのはゴメンだと神都を
総主教猊下は70歳を過ぎたお婆ちゃんで、名前はメリッサ総主教。神国の大司教以上の神官は、国に仕える為に名字を捨てる戒律があるのでメリッサだけが名前になっている。
彼女はニコニコ笑って応対してくれた。
「メキルド神国へようこそいらっしゃいました、聖女様。聖女認定式以来ね、また会えて嬉しいわ」
「総主教猊下もお元気そうでなによりです」
にこやかに雑談から始めた対談だったけど、やはり勧誘は始まったようだ。
「道中で見て頂いたと思うけど、この国の方々も歓迎してくれていますわ。どうですか?この国に移住されてみては…」
「お待ち下さい猊下、聖女様は我が国の民であり宝でもある。神国といえどそう簡単に移住等と言われては…」
「ですがハドルド王子。神国は未成年の女性を戦場に送ったりはしませんよ?」
むぐっと口を閉じるハドルド王子。確かに未成年を戦場に送るのは非常識なのだ。
「神国ならば、安全を保証できますよ、聖女様。聖女様のお力になれると、お約束します」
総主教猊下は、純度100%といった顔で勧める。しかし、お嬢様は答えた。
「ありがとうございます猊下。しかし、私はあの地で多くの事を学ばせて頂きました。それまで私は、聖霊様から精進が足らないと言われておりました。そして聖霊様の教え通り治療を続け、あの地にて沢山の人と出会い、経験し、時には別れていきました」
まるで、噛み締める様に目を瞑り、一時口を閉じるお嬢様。私も、その経験を思い出す。大変で、命懸けで、掛け替えのない経験だった。
他の人に経験させたいとは思えないけれど。
「その経験があるからこそ、今の私があるのです。それに、王国には家族が、友人が、そして好きな人がいます。それに王国でやりたい事もできました。…移住のお話は嬉しいのですが、御断りさせて下さいませ…」
何となく、私は感動していた。今この時、お嬢様の成長をここまで感じた事はなかった。自分の言葉で、自分の意思ではっきりと総主教に話す姿は、成熟した大人へ足を踏み出した様に思えたのだ。
「…分かりました。この話はこれまでと致しましょう。神国は、聖女様の
王子様は幾分、ほっとした表情をし、ついで顔を赤くした。好きな人とは僕の事かな!?とか思っているんだろう。多分そうだけど。
「さあ、お話はこれまでにして、そろそろお休みできる御部屋へ案内させましょう。長旅でお疲れでしょうし。ただ、その前に…」
総主教猊下はちらっと私を見た。なんだ?
「聖女様の侍女殿に、ホンの少しだけ聞きたい事があるのです。お手間は取らせません、残って頂けませんか?」
え?私?村娘の侍女に、猊下が何の用?