ヒロイン矯正!   作:アールエー

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昨日から1日2回、12時と18時に投稿をしております。


その45 方向が決まれば

 

メキルド神国に着いて3日が経った。

この間全く神都から、と言うより神殿から移動してない。毎日、聖女を拝もう、病気を治して貰おうと大盛況だったからだ。

朝から晩まで行列が絶えず、治しても治しても終わらなかった。

 

流石にこれはマズいと、私は神殿側に最大人数の制限と、トリアージをお願いした。判断は神殿側だ。

とにかく、重病人と緊急患者、そして取り返しのつかない怪我人だけにしてくれとお願いしたのだ。

それで漸く多少落ち着いた。

 

王都の時は、ここまで激しくなかったのだけど…。信仰心の違いか、聖女の力がそれだけ広まった為か。

お嬢様が治療している間、私はお嬢様の言葉をメモしていった。お嬢様が治療する時に頭に浮かぶ身体の構造や病気の原因を、確実に記録するためだ。他の人にお願いしたくても、ウイルスの概念や、臓器の名前すら分からないでは話にならなかった。いや、私も素人なんだが、一般的な知識はあるからね。

ここで専属侍女として練習してきた、高速目隠しメモ技術が役に立つとは思わなんだ。

 

しかし最近、こうしてお嬢様の手伝いをしていても、何か心に引っ掛かっている感覚がする。どこかモヤモヤするものがある。

それはそれとして、仕事だけはキチンと片付けた。

 

そんなこんなで3日ぶりに外出して買い物している。神国に滞在予定は5日間。出発後の事を考え、そろそろ化粧水とかの消耗品を補充しておかないと…。

 

なんて事を考えていると、ばったり会うもので。

 

「おっ!レイナ!やっと解放されたのか!?」

 

馬に乗って舎弟2人連れた、アルベルトと出会ってしまった。

 

「アルベルト、久し振り。スッキリした顔してるね。3人で花街通いかな?不潔!いやっ近寄らないで!!」

 

自分の身体を抱き締めて後退(あとずさ)る私。

 

「いや行ってねぇって!こいつら2人はともかく」

 

「そんな兄貴!裏切る気ですかい!?」

 

「うるせぇ!お前ら2人揃って、夜中に宿から出掛けたの、知ってるんだぜ!」

 

相変わらず、仲が良い事で。しかし、本当に花街行ってないのかな?アルベルトの奴、モテそうだしな。

……なんか、本気でムカムカしてきた。ええい!アルベルトの事でムカつくとか健康に悪い!

 

「アルベルト、ちょっと馬で遠出しよう!連れてって!」

 

「馬って、レイナは歩きじゃねーか」

 

「良いから前に乗せな!!」

 

 

 

神都を出て、野外を駆けていく。夏の日差しが容赦なく照り付けるが、鍔広の帽子を被っているせいか、そうでもなかった。アルベルトは少し邪魔くさそうにしていたが。

 

「聖女さん、すっごい人気だな。長い行列が出来ていたぜ」

 

「そうだね…。忙しく働いていたよ」

 

アルベルトが軽快に軍馬を走らせ、私はアルベルトの前に乗り風を受けていた。

馬を走らせたら、少しは心のモヤモヤが取れるかと思ったが、今一つの様だな。

 

「……何か、言いたい事があるようだな。今、言っちまいな。何も出来んかも知れんが、すっきりするかもな」

 

アルベルトが、ふとそんな事を言う。

楽しそうな顔をしてないのがバレたか。

この男は、大雑把でデリカシーゼロだが、妙に心の機微に敏感だ。どういう性格してるんだか。

 

「あ〜。うーん。そうだね。何ていうか、私が聖霊様の御加護を得ている事を、上にバレているのは知ってるよね」

 

「そうだな」

 

「でも、お嬢様が忙しそうに治療をしていても、私に手伝えとは言わない。お嬢様も、もくもくとやるべき事をして、私には言わない。私も手伝えば、多少なりとも違うのに」

 

「レイナは、聖女として活動したいのか?」

 

「…いいえ。そのつもりはないし、能力的にも無理。私の治療はせいぜい怪我を治す程度だし。なんか戦闘用なのよね、武術の聖霊様だから当たり前だけど」

 

「暖房には困らないけどな。いつか、鍛冶をしてみるとか言って、焼けた鉄を直に握ってハンマーで叩いていたのはびっくりしたが」

 

「ほっとけ。ただ、お嬢様は成長された。私が思っていたより、ずっとずっと聖女とし成長されてしまった。私なんかより先に。翻って、私はどうだ?前から、ずっと前世(まえ)から変わってないんじゃないか?このままで良いのかってね…」

 

「なるほどな」

 

言いたい事を言って、何となく落ち着いた。

私は、前でもここまで自分の弱さを話した事があったかなと、疑問に思う。

…結婚して、家庭を持ったからな。家族に責任を持つ身になると、弱さなんて妻や子供に見せられない。

つまりまあ、私は本当に久し振りに、友に弱音を吐いてしまったのだろう。

 

「何となく思うんだが…レイナは聖女の嬢ちゃんに置いていかれたと思っているのか?」

 

……ちょっと考えてみる。置いていかれる。確かにそうだ、お嬢様は成長し、私は変わらない。

だけど、それが悔しいか?いや、嬉しい。子供の成長を見る様に、お嬢様の成長を見るのは嬉しい。だが、それは親目線だ。

私は、お嬢様と共に歩いていきたい。

 

「私はお嬢様と一緒にいたい。だけど能力の方向性が違う」

 

「そりゃそうさ。違う人間だからな。なんて言うか、馬乗りみたいだな。馬は何処までも連れて走ってくれるが、乗り手が迷っていたら足踏みし続けるぜ」

 

うーん、私が変わらないのは、方向を迷っているからか。ならば…。

 

「よし分かったわ!決めた!ありがとう、アルベルト!」

 

「ん、なんか知らんが、決めたんなら良い。即決即断即実行はレイナの特徴だな!」

 

まあ、迷う時は迷えば良いが、決まれば後は走り出すだけだからな。

……アルベルトには貸しができたなぁ…。返せるんだろうか。まあ、こいつは貸し借りなんて思ってないだろうけどね。

 

 

 

「兄貴!姐さん!少し、向こうを見て下さい!」

 

突然、舎弟の2人(ブルーノとダニエルってそこそこカッコいい名前だったか)が指差した。

そっちには幌馬車が走っているのだが、何故か周りに不自然に護衛っぽい破落戸がいる。

幌の中に何か重要な物でも隠しているのか?

 

その時、一陣の風が吹いて、幌の一部がめくれた。一瞬、ホンの一瞬だけど、幌の中に牢があり、鎖でつながれた子供の姿が…。

 

「おいレイナ。神国じゃ奴隷制度は認められているんだっけ?」

 

「いいえ、神国は奴隷制度を昔から認めて無かったし、王国は20年も前に奴隷制度を廃止しているわ。違法よ」

 

「よし、ぶちのめそう!」

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