ヒロイン矯正!   作:アールエー

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その46 反乱軍

 

奴隷制度だけど、20年前くらいに廃止されたのは話したと思う。

実の所、貴族派閥の力の一つが奴隷による軍隊の設立だったという。それもマムルーク(イスラムの奴隷軍人、騎馬に長けた精鋭だった)の様な屈強な奴隷兵士ではなく、督戦隊(後方において前線の兵が逃げない様に見張る部隊)を用いた突撃部隊として使われたらしい。

 

碌に装備も整えない奴隷兵士を使った戦法は、当然の様に消耗が激しかった。

貴族はそれを補う為に、奴隷を掻き集めた。

そう、例えば村一つを山賊に襲わせ、全員奴隷にするとか。

自分の領地でやると反乱が起きるから、他の領地にて行い、その際に領主と話を付けて自分の領地の村を相手に襲わせて相殺していた。

 

まあ実際には、こんな消耗戦は滅多に起きなかったけど。奴隷はそれ以外に使い道があるからね。

 

こんなタコが自分の手足を食うが如くのやり方に、待ったをかけたのが王族だった。

長い時間をかけ、賛成を引き出し、漸く奴隷制度を廃止したのが20年前だった。

 

「ていうか、そんな滅茶苦茶なやり方で、よく反乱とか起きなかったね」

 

「起きてるじゃねーか。今でも」

 

「えっ!?本当?アルベルト。何処で?」

 

「俺達」

 

「……はぁ!?いや、ちょっと、えっ!?」

 

すまん、アルベルト!過去一驚いているんだが!お前ら、侵略軍じゃなくて反乱軍だったの!?

 

「この国に来て、最初に俺達の事を調べたんだが、本当に隣国って書いてあってびっくりしたぜ」

 

「確かに隣国って書いてあるけど、それはアルベルト達が部族の集合体で国としての名前がないからだと…」

 

「部族ってか、氏族みたいな感じで分裂はしてるが、本当はこの王国民だからな。王子にも聞いたが、王族すら知らんみたいだし、かなり前から反乱は無かった事にされてた様だな。笑っちまうぜ!」

 

確かに二正面戦争してるのに、こっちとの戦争を止めないのは不思議に思ったけど。蛮族だからと思っていたら、実は反乱だったと。なんじゃそりゃ!

 

「それじゃ、今回停戦したのは…」

 

「聖女が出現したからな。親父が奪還に失敗したから、今度は様子見しようと部族間会議で決まったんだ。聖女、或いは聖女に認められた聖王が出現すれば、この反乱を止める事ができると言い伝えられているんだ。親父すらそれを信じて、俺を聖王にするつもりで聖女奪還に動いた理由だし。だから5年は様子見で、俺はせいぜい聖女と仲良くやれって事だろうな」

 

「聖王とかって、初耳よ…。いや、そでもその奴隷持ってた貴族に接触してた奴もいたでしょ?」

 

「別に部族も一枚岩じゃないんだって。搦め手使う奴もいれば、前の主人に取り入って交渉を持ち掛ける奴もいるんだ」

 

「おう…。コペルニクス的転換で頭が付いていけないわ…」

 

「コペ…?まあ兎に角、そう言うわけで奴隷は許せない訳だ」

 

唐突な証言に頭が混乱するが、奴隷が許せないのは納得した。私も許せんし、そもそも違法だし。

 

「なんで今まで黙ってたの?」

 

「もう王国の歴史になっているのに、今更騒いだって無駄だろ?今も流れで言っちまったけど、レイナにも話すつもりは無かったんだよ」

 

そう言うと、アルベルトはトホホって感じで笑った。彼にしては珍しく、諦念の気持ちが混じっていた様に思えた。

 

 

 

そんな話の後幌馬車に近付き、まずは本当に奴隷か確認する事にした。

 

「こーんにちはー!」

 

なるべく朗らかに、元気に明るく話し掛ける。

奴隷と思わしき荷物を運ぶ幌馬車に近付くのに、侍女服を着た私がデートの最中に馬車を追い抜く感じでいく事にした。

 

油断すればラッキー!

真逆、女連れで二人乗りの馬から襲われるとは思うまい。

 

…向こうから襲って来たら?ラッキー!反撃を開始する。

 

「おい、女連れの兄ちゃん!あんまり近付くんじゃねーぜ。そのハンサムな顔が腫れ上がったところ、彼女に見られたくないだろう?」

 

「いやん!怖いわ、おじ様!脅かさないで」

 

ぷっとアルベルトが吹き出す。我慢しなさい!こっちだって耐えているんだから。

 

幸い、幌馬車の護衛の破落戸達は笑ってこっちを見てる。幌馬車と並んだ。もう少し。

 

アルベルトの軍馬が横跳ねして一気に馬車に近付く、私は馬の首にしがみついて頭を下げる。

その上を通過して、アルベルトの短槍がブンっと幌を薙ぎ払った。

バッサリと切られた幌。中には木製の牢と、入れらてた年齢一桁の5人の子供。ビンゴ!他には見張りとか居ない!

 

「くそっ奴隷を見られた!貴様ら!構わん、殺せ!!」

 

護衛の隊長らしき男が叫ぶ。

 

「レイナ!」

 

「任せて!」

 

いきり立つ幌馬車の護衛を余所に、馬から飛び降りて走り出す。御加護の力で大地を蹴って、幌馬車の御者席に飛び込んだ。

呆気に取られた顔の御者を蹴り落として、馬車の手綱を握った。

あ、蹴り落とした御者が護衛の馬にぶつかって、馬ごと転んだ!…死んでなければ良いな。

 

「オオオオオォッ!!」

 

私が馬車を操作している間、アルベルトが雄叫びを上げ、先回りしていた舎弟2人と共に容赦なく護衛の破落戸共を薙ぎ倒す!強い!

なんで槍を振るう度に人が飛んでいくんですかね!?舎弟2人も破落戸相手に無双ゲームをやっている。

あ、1人くらい事情を聞きたいから…と思っていたら、最後の1人が飛んでいった。

 

1人くらい、生きていれば良いけど。

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