お嬢様と一緒に、今回の奴隷輸送事件を総主教猊下にお知らせした時は、ちょっとした騒ぎになった。
奴隷制度は王国で20年前に廃止となったが、メキルド神国では元々奴隷を認めて無かったのだ。
王国での廃止にも神国は尽力していたのだが、今回は神国内で起きた事件。しかも子供は神国にある村の子供だった。
総主教猊下を始め、各枢機卿も激怒され、徹底的に真相究明をすると約束してくれた。
生き残った3人(私の治療が間に合った)は厳しい尋問をされるだろう。
「レイナったら、イベントを良く起こすわよね〜。
「
「いや~今回はゲームのイベントでもないし。第一、ゲームじゃ奴隷制度なんて無かったし」
ケラケラ笑うお嬢様。うん、他人事なら私も笑ってたわ。
「それより、アルベルトの兄ちゃんとタンデムデートしてたって!?その報告をなさい!」
「またその話ですか?なーんも、ありません」
「……まあ、いいわ。王都に帰ってフレディと尋問するから」
いや、尋問するな!
この後、アリシアにも詰め寄られ、抱き着いてきた上にドサクサに紛れて胸を揉んできたので、頭を
王都へ出発する前の日、あの時買い物する暇がなかった(憂さ晴らししてた)から、今日中に買わないといけないので、街中に出掛けていた。
何故かアルベルトも横にいたが。買い物の邪魔しなけりゃ、別に構わないけど。つーか、荷物持ちね。
「昨日の犯人達、神都を抜けて北に行くつもりだったな」
奴隷輸送の犯人を捕まえて治療した後、尋問したから行き先は分かった。北の方、王国の、恐らくは貴族派閥の誰かに売るつもりだった様だ。ブローカー経由で売るから、今度はそのブローカーを捕まえなくてはならない…が、恐らく彼等の情報網に掛かって素早く雲隠れする可能性が高いとの事。
今回は突発的な事件で、捕まえた事を隠す事が出来なかったしね。
「神国は奴隷制度を昔から許してないからね。神都であの幌の中を見られたら、それこそ大騒ぎだったでしょうね」
だから神都を迂回して逃げようとした。そんな事をすれば目立つのに。
「そう言えば、奴隷から逃げ出した人達は、神国には行かなかったのかな?」
「俺が生まれる前の事だからな…。聞いた話じゃ、奴隷からは解放されても王国から犯罪者として身柄要求されたらしいぜ。大抵、逃げる時に物を壊したり人を殴ったりしているからな。それに…」
アルベルトは周りを見渡す。何事もない、平和な街並み。
戦闘どころか、暴力沙汰も起こせないだろう。
「神国だと、王国貴族を殴れないじゃないか。特にうちの親父なんかは」
ああ、納得。
私達は、そのまま買い物を続けた。その跡を付ける輩がいる事には、この時は気付かなかった。流石に殺気もなく、人通りが多いとね。
そして神国を出発して、王国へ向かった。
王国まで長い道程、途中まで楽しくお嬢様と楽しく話をしていたハドルド王子様だったけど、窓から入る涼やかな風に、ついうたた寝をしてしまったようだ。
「お嬢様、そう言えば神国で誘惑とか無かったのですか?」
「あったわよ〜。あったと言うより、周りはイケメンだらけだったじゃない」
「はい、なるべく近付けない様にしてましたが、四六時中一緒ではなかったので…」
「レイナが居ない時は、ハドルド様がしっかりガードしていたから、余計にイケメン達は近付けなかったわよ」
「そのお礼にキスされたんですか?」
「ほ、ほっぺにだけよ…あれ?してたところ、見てた?」
「いいえ、初耳です。そうですか、ほっぺにキスされたんですね?ハドルド殿下」
見るとうたた寝…いや、狸寝入りしているハドルド王子が、目を瞑ったまま冷や汗かいていた。
「王太子殿下へ御報告と…」
「いや待ってくれレイナ嬢、あれは偶然というかキャサリン嬢が可愛い過ぎたせいと言うか、その報告は勘弁してくれ」
大慌てで飛び起きるハドルド王子。横に乗っているケリー様はあちゃ~って顔をしている。
「ですからハドルド殿下、殿下はまだお嬢様と婚約してないのです。婚約者に正式に候補にすら上がってない女性に、やるべき行動ではありませんね。御報告させて頂きます!」
村娘に土下座せんばかりに謝る王子殿下達を乗せて、馬車は王都へと向かう。途中で王家の剣の鍵を探索するけど。
王族の馬車隊の後方にて
「隊長、報告です。1時間ほど前に、王子一行の集団がここを通りました。王家の紋章、しかと確認しております」
「ご苦労。この進路では、国境の街に向っているで間違いなさそうだな。援軍はどうだ?」
「はっ、我ら小隊30名に、騎馬分隊が10名、王家の隊列に見つからぬ様、迂回をしておりますが今日中に合流できる予定です」
「うむ。これだけいれば王家の隊列の護衛にも勝てるだろうが…。今までの例から、奴らは少数による王家の剣の探索をしている。次の国境の街では、不自然に2泊すると内部協力者から通報があった。恐らくは…。」
隊長と呼ばれた男は暫く考え、決断した。
「よし、ここで仕掛けよう。間違っていても損は少なく、当たれば大きいからな。先行している分隊に連絡、明日迄に国境の街の周辺を見張れ。動きがあれば即座に伝えろ!俺達は街付近で野営だ」
「はっ!分隊に街周辺警戒を通達、こちらも到着次第野営準備、了解しました!」
矢継ぎ早に伝達する副隊長に満足した顔をしつつ、隊長は歪んだ笑みを浮かべる。
「命令は、相手は貴族の子息、可能な限り傷付けず捕らえて何らかの鍵となる物を奪え。だが…」
隊長は王家の馬車がいる方向を睨む。
「せっかく手に入れようとした奴隷も横取りされたからな。ここらで痛い目に遭って貰うか」