国境の街に付いて翌日、お嬢様は教会に赴き治療を行う事になっていた。
私はグレン様、ラクス、アルベルト達を連れて王家の剣の鍵となる水晶の探索に出る。
「ところで、グレン様は神都でなにを?」
「神殿にある図書館に入り浸りになっておりました。見た事のない本が山の様に!幸せな時間でした…」
横でグレン様の護衛をしていたラクスが物凄いウンザリ顔をしていたのと、対称的なグレン様の笑顔でした。
同じ宿に泊まっているアルベルト達に声をかけて、出発の準備をする。目的地はここから馬で三時間程の洞窟にあると言う。
…例え本に書かれていたとしても、原作知識がないと分からなかっただろうな。
「…アルベルト、今回は大槍を持って行くの?」
ふと、アルベルトを見るといつもの短槍ではなく、馬車に積んでいた大槍を出していた。
「…ん?あれ、なんで大槍を持ち出したかな?…おい、レイナ。それ予備の武器や着替えの服が入った袋じゃねーか?今度の場所は近いんだろ?」
「…あれ…なんか無意識に」
私とアルベルトは顔を見合わせた。なにか、おかしいが準備はそのままにした。
横を見ると、ラクスも剣やナイフを吟味している。私も予備のワンピースナイフを全て身に付け、アルベルト達は武具まで付けていた。
あ、そうだ!ちょっと重たいけど、あれを持って行こう!
「…皆さん、戦争にでも行くつもりですか?」
後から来たグレン様が、呆れた様に私達を見て言った。それでも、何故かその準備を止めるつもりになれなかった。
街を出発して2時間くらい。今回は私もズボンを履いて、単独で馬に乗っている。そうそう、アルベルトとタンデムはしないのだ。
最初の内は和気あいあいと進んでいたが、この頃になるとピリピリした空気に変わっていた。
「ちっ!俺の馬が苛立ってやがる。こりゃ、破落戸程度の相手じゃねーな。レイナ、何か感知できるか?」
「……無理ね。かなり距離を取ってると思う。ただ、進むにつれ殺気が高まっているから、まず間違いなく近付いているわね。場所がバレてないなら、先行して何処かで見張りをしてるんじゃないかな?こちらが目的地に着いた後に包囲すると思う」
「この感じから、ラクスに援軍を呼びに行かせるのは不味いですね」
「そう思います、グレン様。少数側が更に分離すれば、後方の敵本体から各個撃破されるだけです」
このプレッシャー、確実に相手の方が数が多い。そして手練れだと感じる。
アルベルトを見ると真剣な眼差しをしつつ、口の端を上げて笑っていた。
舎弟2人は気炎を上げている。身体から湯気が立たんばかりに燃えているようだ。
何となく、隣国の兵士、反乱軍の兵がこちらの兵士三人分と言う意味が分かる様な気がした。戦闘意欲がまるで違う。
やがて目的地の洞窟に着いた。
元々、神殿か何かが建っていた廃墟っぽい所で、あちこちに遺跡みたいな石柱があった。
「ここが最後の鍵がある洞窟、ですか」
正確にはここまでで発見した3つの水晶を、北の神殿跡地に持って行ったら4つ目の水晶が現れて、王家の剣をアポートするらしい、原作では。
「グレン様。ラクスを護衛に水晶の確保をお願いします。アルベルトは…」
「馬は俺の軍馬が引き連れて外に出している。俺達はこの洞窟入口で籠城戦かね。この入口なら少数で防衛できるか?」
「うーん、矢を避ける盾があると心強かったけど、無いものは仕方ない。まあ、この広さだとせいぜい三人くらいしか入れないから、何とかなるかな」
「上出来だ。俺達がここで防ぎ
「多分、王国の兵士程度だったら大丈夫だけど。
「レイナに比べたら簡単だ。つーか、そのスパルタンってなんなんだ?」
「最強の兵士。ある意味、私が目指しているところ」
「…俺も負けられねぇな…」
敵が密集隊形で押してくるなら、それを崩せば一気に弱まる。
しかし、敵の歩兵の練度にも寄るんだよな。まあ私が本気で闘った場合、近くに味方がいると困るから敵中単独突撃は理に適っているんだけど。
ついでに、洞窟がかなり奥まである事は原作知識で知っているから、入口付近に罠を仕掛けておくか…。
私は、お嬢様を護れる武人になろう。聖霊様の御意志でもあるしね。
洞窟から約500メートル離れた地点
貴族派閥から派遣されてきた軍は、斥候分隊を先行させ、残り三分隊を休憩させていた。
「隊長、斥候隊より標的がこの先の洞窟に入った事を確認、馬は外部に逃走との報告が」
「洞窟?他に出口があるのか、分かるか?」
「はい、いいえ不明であります!」
「仕方あるまい。斥候隊は洞窟入口を離れ、他に出口がないか探索、騎馬分隊は遊撃と援軍を警戒、残り二分隊は槍隊を前方、弓隊を後方として前進!」
彼等は進む。作戦成功の為に進む。命令に従い、油断せず、戦理に忠実に、陣形を保って。
普通なら勝てた。相手は高々6人だ。こっちは40人。完全武装の40人だ。それが集団で戦うのだ。負ける道理がない。
相手が普通の人間ならば。