直接ではありませんが、戦闘の描写があります。
「弓隊、火矢を射掛けろ!」
隊長らしき男が、そう叫ぶと洞窟の入口に一斉に火矢が飛んできた。しかし、洞窟の入口は岩をくり抜いた様な状況、火が着く事はない。
燻し出すぞという、脅しなんだと思う。
見た所、20名くらいかなぁ。今まで相手にしてきた破落戸と違って、鎧兜で武装した集団は迫力が違う。
特に複数の隊列を組んで、槍と盾を構え歩調を合わせて来た時の恐ろしさは、映画なんかで見た以上の恐怖を受ける。
こいつらが来る少し前から、気配探知にビンビン引っ掛かっていた。何人かは散って行った様だけど、20名以上が固まって進軍してきた。
そして唐突に警告なく攻撃してきた。
「俺達は王太子殿下の命令で探索をしている!それ以上の攻撃は王家への反乱とみなす!!」
アルベルトが戦場を制する程の大声で叫ぶ。まともな軍隊なら、これで何らかのリアクションをすると思うが…。
返ってきたのは再びの火矢だった。
「あの人達、何考えているんだろう?本気で王家に歯向かうの!?」
「多分、王家を騙る偽物だと思ったとか何とかで、俺達を片付ける気かもな」
アルベルトは大槍を持ち直す。そもそも、彼に取って王家の命令なんてクソみたいなものだ。
分かり易く戦闘できる方が嬉しいのだろう。
「とりあえず、いきなり攻撃してきて、こちらからの話し合いにも応じないと。もう反撃しても良いよね」
洞窟入口の陰からそっと見る。距離、約30メートル。普通ならナイフの投擲には距離があるが…。
「ふんっ!!」
熱したワンピースナイフをぶん投げる!!
刺さらなくて良いつもりで投げたけど、盾の隙間に入って刺さった!
肉が焼ける音、燃え出す衣服、泣き叫ぶ兵士。
ありゃ…。阿鼻叫喚の地獄絵図。
いや、そっちだっていきなり火矢を射ってきたのに、やられて泣くなよ。泣きたいのはこっちだ。
もう一本投げちゃお、えい!命中!!
「相変わらず滅茶苦茶な攻撃だな、それは」
「投擲する度にナイフが失くなるのが辛いけど。結構高いのよ」
そんな事を言い合っていると、痺れを切らした隊長が叫んだ。
「くそっ、歩兵隊、前へ!」
「来たわよ、後は任せた」
そう言うと、私は洞窟の天井に貼り付いた。忍者みたい!って言いたいけど、丁度良い窪みがあって隠れる事ができたのよね。ちなみに、同じく天井に罠も仕掛けたわ。
相手は盾と短槍を構え、三列縦隊で侵入。無言で奥へと進もうとしていた。続いて弓隊、その中にひときわ目立つ格好をした隊長がいる。
……あれ、貴族派閥の子爵家の男じゃね?確か、当主の弟だった記憶がある。こいつは生かして証人になって貰うか…。
全軍隊が洞窟に入ったところで、アルベルトが攻撃を仕掛ける!3人揃って大槍を握り締め、戦闘の兵士に突きかける!
「ぬううぅぅん!!」
アルベルト達が歩兵隊の槍を弾き、更に鉄製のはずの盾を貫いた!アルベルト達の持つ乗馬用の大槍は3メートル。歩兵隊は2.5メートルの歩兵用片手槍だ。体格差によるリーチもあり、ここで0.5メートルの違いはかなりのアドバンテージになる。
「嫌な予感に従って、クソ重たい大槍を持って来て良かったぜぇ!」
ガンガン盾を叩いて貫いて、ビビった先頭集団が完全に足を止めた。
「な、なんだ、あいつら!弓隊、構わんから弓を放て!」
隊長が命令を下すが、弓隊は躊躇する。当たり前で、狭い洞窟内で前は歩兵隊で相手が見えず、曲射する程天井は高くない、というか距離が近過ぎて曲射できない。
それを見定めて、私は罠に結んだロープを引く。天井に仕掛けた油の入った瓶が、バラバラと振り注ぐ。これも重かったんだよな。
ガシャンガシャンと割れて振り注ぐ油。兜を被っているから瓶は致命打にならないが、ここで私が混乱した隊列の真ん中に降り立つ。
「ヒートボディ!」
一瞬だけど御加護の力を使い、一気に着火点まで温度を上げる!
撒いた油の量は大した事なかったから、死ぬほどの事はないけど、火が付けば火傷は負う。生きていたら聖女様に治して貰うからね。生きていたら。
燃え盛る炎の中、弓兵達の弓を腕ごと引き裂いて、狙うは隊長ただ1人!弓隊の隙間をすり抜け隊長の懐に飛び込んで、混乱してろくに反撃もできない隊長に崩拳を撃ち込んで沈めた。
燃えて飛び散った油は、あちこちの隊員の服に付いて着火、悲鳴が響き渡る。
「武器を捨てて!捨てた者だけ助けます!」
そう叫べば指揮者の居ない小隊員、次々と捨てられる武器。武装解除した兵士の油が付いた場所の火を消すか、ナイフで燃えている箇所を切り取った。
「よし!一件落着!」
「落着じゃねーよ!燃えてるぞレイナ!」
ふと下を見ると、確かに飛んできた油が私の服に付着し引火していた。それ以前に、さっきのヒートボディで私の服の繊維は燻っている。
慌ててバサバサと消すが、最早衣服はボロボロだった。ハラハラと崩れ落ちる。
「ちょっ!おまっ!!見える!貴様ら見るな阿呆!!」
「あ〜大丈夫でしょ。こういう時は、大事な所は最後まで残るのがお約束…」
胸の大事な部分がハラリと落ちるのと、アルベルトのマントが被さるのは同時であった。
「レイナ気を付けろよ、見えたらどうするんだ!?」
「まあ良いでしょ、減るもんじゃないし」
「減る!色々と減る!!」
「「姐さん、ごちそうさまです!」」
「お前ら…記憶が失くなるまで殴れば良いか!?」