ヒロイン矯正!   作:アールエー

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その50 嫌な雰囲気

 

「それで?今度は戦争ゲームしてきたの?ここは乙女ゲームの世界だって言うのに、戦略シミュレーションゲームだったり格闘ゲームだったり…」

 

お嬢様が溜息吐いて、ジト目で私を見る。

 

「次は弓矢を使ったシューティングゲームですかね?」

 

「その前に殿方の前で脱衣ゲームしたんですって!?」

 

はっはっはっ、不可抗力です。

お嬢様は呆れた顔でこっちを見ている。

ただ、そろそろゲームで例えるのは止めた方が良いかな?ゲームは現実の一部を抜き出しただけなんだから。

 

「いいわ、痴女の話は置いといて…」

 

「誰が痴女ですか」

 

「私の目の前にいる、男の前で裸になる侍女の事よ。とにかく、王家の剣の鍵はこれで全て揃ったのよね?」

 

そう、私達が敵兵団を迎撃している間に、グレン様が洞窟の奥にある鍵となる水晶を取ってきたのだ。

原作では今まで集めた3つの鍵、水晶を北の神殿の遺跡に持って行って、王家の剣を取り戻すんでしたっけ。多分、その神殿跡に4つ目の水晶がある様な気がする。

 

「鍵となる水晶は、グレン様が保管しています」

 

「じゃ、後は王家の剣を取りに行くだけね。これは多分、王太子殿下が同行する必要があるけど…」

 

お嬢様が言うには、王家の剣を手にする資格のある人間が、直接行く必要があるらしい。それ以外の人間が行っても王家の剣は出ないし、王子の様に準じた資格の者が行けば、それはそれで問題だ。

 

「フレデリカ様が行ったら女帝誕生の可能性があると」

 

「うーん、表向きの支配者が変わるだけで、どうせ結婚して次の世継ぎが一緒なら、大幅に変わらないかも…?」

 

そのパターン、ちと見たいかも…?

と、ここでノックが。誰何(すいか)して、入ってきたのはアリシアだった。

 

「お嬢様、ハドルド王子殿下が出発の準備ができましたと。お姉様もご用意をお願い致します」

 

「分かったわアリシア。直ぐ行きます」

 

「アリシアも私が留守中、よくお嬢様のお世話をしてくれたわね。ありがとう」

 

「いいえ、お姉様。お役に立てたのなら、私としても大変嬉しゅうございます。それより…」

 

アリシアはずずいっと私に迫る。近いよ、ちょっと、圧が強い!

 

「あの失礼男(アルベルト)の前で服を脱いだって噂、誠でしょうか!?私だって見た事ないのに!」

 

「んな!誰がそんな!脱いだんじゃなくて、焼け落ちたの!事故です!!それに見せません!」

 

多分、舎弟2人だな!あいつら、酒が入ると途端に口が滑らかになるんだよ!!

 

「なんか、アリシアのレイナに対する感情は、悪化の一途を辿っているわね…。横から見る分には良いけど」

 

 

 

王家の剣の鍵も入手したし、もうここには用はない。王子と合流して出発する事になった。

捕まえた子爵家の弟は縛った上で王都へ連行し、子爵家へは正式な詰問状を出していた。

 

気になるのが、外にいて襲って来なかった別働隊だ。流石に王家の馬車隊に奪還をしに来ないとは思うが。来るなら、こちらが帰る時に来るよな。多分、帰ったのだと思うけど。

その場合、襲撃の事実が貴族派閥の過激派に知られている事になるなぁ…。どういう影響があるか、今のところ全く不明である。

 

グレン様とも相談したけど、やはり判断を下すには情報不足。ここは静観しておくしかないと決めた。

 

そんなこんなで王都に到着。

……なんだ?ピリピリしてくる。王都で?

私は嫌な予感がして、ひとまずアルベルトを呼んだ。

 

「レイナもか。んじゃ、間違いねぇな」

 

アルベルトも同じ感想だった。しかし、王都で、何故?

周囲を見回しても、特に大きな変化はない。

 

「なんて言うか、回りを見た感じは変化ないな。だが、(いくさ)前の様な張り付いた雰囲気がある。レイナ、油断だけはするなよ」

 

「貴方もね、アルベルト」

 

私達は王都に入って別れて、アルベルトは宿舎へ、私達は一旦王宮に入って報告だ。

この予感が、的外れになる事を祈りつつも、心構えだけはしておかないとな、と思った。

 

 

ここから雑談、飛ばしても可。

 

「えっ、私が王様になったら!?」

「そうよフレディ。可能性はゼロじゃないじゃん。フレディだったら、どういう政策をする?」

「え、え、ええと…。民主主義を広める…とか?」

「それは、かなり無茶な政策ですね、フレデリカ様」

「えっ?なんで?レイナ」

「うーん、民主主義に移行するには、民衆に政治参加の意思が必要です。例えば、飢えてる時に代わりにケーキを食えと言われて、こりゃ駄目だってなるとか。この話は創作だったそうですが」

「あー日本でOLしてた時も、政治なんて興味なかったしね」

「それは横に置いても、最低限言論の自由と教育が必要なわけです。当たり前ですが政治家を選ぶ民衆が、政策を自由に知らないと選ぶ事ができませんが、文字も読めない計算もできないでは何も判断できません」

「なるほど、マスコミと義務教育が必要と」

「それも読み書きそろばんだけでない、マスコミを騙るアジテーターに踊らされない教養、少なくとも簿記が分かる程度の経済数値の読取り、兵法書を理解するくらいの外交知識が必要です」

「…レイナ、それって日本にいた時でも無理だったんじゃない?」

「まあ、そうですね。ディスカッションの訓練すら中々やりませんから。ただ、それだけの知識を学ぶには10年は勉強しなくてはなりません。しかし国民の大半は農民なのです。子供も大切な労働力なのです。彼等を労働から解放し、学校に行かせなくてはなりません。具体的には機械化とハーバー・ボッシュ法の確立ですね」

「そのハー何とかって何?」

「空気から平時は肥料を、戦時は火薬を産み出す技法です。これで食料の大量生産が可能となり、農民は解放され、大量の失業者、または農奴ができます。これらを国民皆兵制度で雇って、同じくハーバー・ボッシュ法で作った火薬で戦争を仕掛ける。そうすれば皆、戦争で生命の危機に陥るので、それこそ必死に勉強して政治参加しますよ。これにて民主主義の基礎の完成です。…おや、どうしました?」

「どうしたじゃないわよ!なんで後半、どんどん地獄みたいになってるのよ!?もう少し穏やかにできないの!?」

「逆ですよ、産業革命から地獄の様な世界が続いて、産まれたのが民主主義ですから。ここから更に世界大戦や全体主義、ホロコースト等を通して、多大な流血の中で掴み取ったのが人権尊重の民主国家なのです。まあ、時間をかなりかけたら、平和的に…なるかな?人間、痛い目に遭わないと学習しないから…」

「あうう…。とりあえず、私は王様にならないから!シリウス王太子殿下に任せるわ…」

 





後半はたま~にファンタジー世界に民主主義を、って話を聞くので、難しくないかな?って思っただけであります。
政治談義はご容赦のほどを。状況によっては上の雑談を消しちゃいます。
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