「それで?今度は戦争ゲームしてきたの?ここは乙女ゲームの世界だって言うのに、戦略シミュレーションゲームだったり格闘ゲームだったり…」
お嬢様が溜息吐いて、ジト目で私を見る。
「次は弓矢を使ったシューティングゲームですかね?」
「その前に殿方の前で脱衣ゲームしたんですって!?」
はっはっはっ、不可抗力です。
お嬢様は呆れた顔でこっちを見ている。
ただ、そろそろゲームで例えるのは止めた方が良いかな?ゲームは現実の一部を抜き出しただけなんだから。
「いいわ、痴女の話は置いといて…」
「誰が痴女ですか」
「私の目の前にいる、男の前で裸になる侍女の事よ。とにかく、王家の剣の鍵はこれで全て揃ったのよね?」
そう、私達が敵兵団を迎撃している間に、グレン様が洞窟の奥にある鍵となる水晶を取ってきたのだ。
原作では今まで集めた3つの鍵、水晶を北の神殿の遺跡に持って行って、王家の剣を取り戻すんでしたっけ。多分、その神殿跡に4つ目の水晶がある様な気がする。
「鍵となる水晶は、グレン様が保管しています」
「じゃ、後は王家の剣を取りに行くだけね。これは多分、王太子殿下が同行する必要があるけど…」
お嬢様が言うには、王家の剣を手にする資格のある人間が、直接行く必要があるらしい。それ以外の人間が行っても王家の剣は出ないし、王子の様に準じた資格の者が行けば、それはそれで問題だ。
「フレデリカ様が行ったら女帝誕生の可能性があると」
「うーん、表向きの支配者が変わるだけで、どうせ結婚して次の世継ぎが一緒なら、大幅に変わらないかも…?」
そのパターン、ちと見たいかも…?
と、ここでノックが。
「お嬢様、ハドルド王子殿下が出発の準備ができましたと。お姉様もご用意をお願い致します」
「分かったわアリシア。直ぐ行きます」
「アリシアも私が留守中、よくお嬢様のお世話をしてくれたわね。ありがとう」
「いいえ、お姉様。お役に立てたのなら、私としても大変嬉しゅうございます。それより…」
アリシアはずずいっと私に迫る。近いよ、ちょっと、圧が強い!
「あの
「んな!誰がそんな!脱いだんじゃなくて、焼け落ちたの!事故です!!それに見せません!」
多分、舎弟2人だな!あいつら、酒が入ると途端に口が滑らかになるんだよ!!
「なんか、アリシアのレイナに対する感情は、悪化の一途を辿っているわね…。横から見る分には良いけど」
王家の剣の鍵も入手したし、もうここには用はない。王子と合流して出発する事になった。
捕まえた子爵家の弟は縛った上で王都へ連行し、子爵家へは正式な詰問状を出していた。
気になるのが、外にいて襲って来なかった別働隊だ。流石に王家の馬車隊に奪還をしに来ないとは思うが。来るなら、こちらが帰る時に来るよな。多分、帰ったのだと思うけど。
その場合、襲撃の事実が貴族派閥の過激派に知られている事になるなぁ…。どういう影響があるか、今のところ全く不明である。
グレン様とも相談したけど、やはり判断を下すには情報不足。ここは静観しておくしかないと決めた。
そんなこんなで王都に到着。
……なんだ?ピリピリしてくる。王都で?
私は嫌な予感がして、ひとまずアルベルトを呼んだ。
「レイナもか。んじゃ、間違いねぇな」
アルベルトも同じ感想だった。しかし、王都で、何故?
周囲を見回しても、特に大きな変化はない。
「なんて言うか、回りを見た感じは変化ないな。だが、
「貴方もね、アルベルト」
私達は王都に入って別れて、アルベルトは宿舎へ、私達は一旦王宮に入って報告だ。
この予感が、的外れになる事を祈りつつも、心構えだけはしておかないとな、と思った。
ここから雑談、飛ばしても可。
「えっ、私が王様になったら!?」
「そうよフレディ。可能性はゼロじゃないじゃん。フレディだったら、どういう政策をする?」
「え、え、ええと…。民主主義を広める…とか?」
「それは、かなり無茶な政策ですね、フレデリカ様」
「えっ?なんで?レイナ」
「うーん、民主主義に移行するには、民衆に政治参加の意思が必要です。例えば、飢えてる時に代わりにケーキを食えと言われて、こりゃ駄目だってなるとか。この話は創作だったそうですが」
「あー日本でOLしてた時も、政治なんて興味なかったしね」
「それは横に置いても、最低限言論の自由と教育が必要なわけです。当たり前ですが政治家を選ぶ民衆が、政策を自由に知らないと選ぶ事ができませんが、文字も読めない計算もできないでは何も判断できません」
「なるほど、マスコミと義務教育が必要と」
「それも読み書きそろばんだけでない、マスコミを騙るアジテーターに踊らされない教養、少なくとも簿記が分かる程度の経済数値の読取り、兵法書を理解するくらいの外交知識が必要です」
「…レイナ、それって日本にいた時でも無理だったんじゃない?」
「まあ、そうですね。ディスカッションの訓練すら中々やりませんから。ただ、それだけの知識を学ぶには10年は勉強しなくてはなりません。しかし国民の大半は農民なのです。子供も大切な労働力なのです。彼等を労働から解放し、学校に行かせなくてはなりません。具体的には機械化とハーバー・ボッシュ法の確立ですね」
「そのハー何とかって何?」
「空気から平時は肥料を、戦時は火薬を産み出す技法です。これで食料の大量生産が可能となり、農民は解放され、大量の失業者、または農奴ができます。これらを国民皆兵制度で雇って、同じくハーバー・ボッシュ法で作った火薬で戦争を仕掛ける。そうすれば皆、戦争で生命の危機に陥るので、それこそ必死に勉強して政治参加しますよ。これにて民主主義の基礎の完成です。…おや、どうしました?」
「どうしたじゃないわよ!なんで後半、どんどん地獄みたいになってるのよ!?もう少し穏やかにできないの!?」
「逆ですよ、産業革命から地獄の様な世界が続いて、産まれたのが民主主義ですから。ここから更に世界大戦や全体主義、ホロコースト等を通して、多大な流血の中で掴み取ったのが人権尊重の民主国家なのです。まあ、時間をかなりかけたら、平和的に…なるかな?人間、痛い目に遭わないと学習しないから…」
「あうう…。とりあえず、私は王様にならないから!シリウス王太子殿下に任せるわ…」
後半はたま~にファンタジー世界に民主主義を、って話を聞くので、難しくないかな?って思っただけであります。
政治談義はご容赦のほどを。状況によっては上の雑談を消しちゃいます。