ヒロイン矯正!   作:アールエー

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その59 戦闘開始!

 

騎士団長視点

 

「城門が閉じました!敵総数は目測で約3300!こちらの掴んでいる、ほぼ全軍だと思われます!」

 

副官の報告に、シリウス王太子は頷いて指令を下す。

 

「まだ展開は終わってないな!?こちらは既に王宮を占拠されている!宣戦布告は無用、第一、第二騎馬隊は敵左翼を掠める様に突撃、外周から削るぞ!!」

 

そう言うなり自ら騎馬を率いて前面に躍り出た。第一騎馬隊の面々も慌てて追い掛ける。

城門から出て、後ろに押される様に展開した歩兵隊に対し、機動力を活かして回り込んだ王太子の第一騎馬隊が、側面から襲いかかった。

まだ槍を構えるどころか、隊列すら組んでない歩兵隊に取って騎馬隊の突撃は致命打となる。

 

「くそっ!こっちはまだ移動し終わってないのに、卑怯な!おい、いいから槍を構えろ!殺されるぞ!」

 

しかし、そこへアーサー率いる第二騎馬隊が突撃してくる。散発的に槍を構えたり、矢を放つが騎馬隊にダメージを与えられない。何十人もの兵士が突き殺されていく。

 

「混乱しておるな!弓騎兵、斉射三連!」

 

トドメとばかり、我が第三弓騎兵からの弓が振り注ぐ。槍だ弓だと騒いでいて盾を構えてなかった歩兵隊や弓兵に、大きなダメージを負わせる事ができた。そして、そこへまた第一騎馬隊が突撃する。混乱が混乱を生み、敵の左翼は大混乱となった。

 

第三弓騎兵を率いる私は、やや後方から全軍の動きを把握しようと試みた。

 

「うーむ、後2回は攻撃可能か?歩兵隊の混乱が治まり、隊列を組み槍を構え出したら騎馬隊では危なくなる。それまで、どれだけ敵兵力を削る事ができるか…んっ、あれは!?」

 

混乱している左翼を余所に、隊列を組んでいた中央部隊が突如としてバラける。全く違う方向に突撃しつつ、てんでバラバラに弓隊が矢を放っている。向こうに何かあるのか!?

敵が弓を放っている先を見ると2騎の騎兵が走ってこっちに向っている。そして何故かピカピカ光っている…もしかして聖女様か!

 

こちらが指示する前に、第一騎馬隊、王太子殿下が聖女様の元へ向かう。こちらも向って援護せねば!

 

弓騎兵を走らせ、矢を放つ中央部隊にこちらも矢を射って牽制しつつ、第一騎馬隊と敵兵力の間に第二騎馬隊と共に入る事で盾になる。その瞬間、王太子殿下の元から眩い光の柱が生まれた!これは、噂に聞いた聖霊様の光柱!?聖女様の奇跡の技か!

 

それと同時に門の付近より炎の柱が上がり、更に敵の反対側、右翼方面から凄まじい怒声が響き渡った!何だ!?一体、何が起こっているんだ!?

 

 

 

貴族派閥軍中央部隊にて

 

妾が騎馬にて戦場を眺めていると、王太子の騎馬隊が左翼の部隊に突入していくのが見えた。続いて別の騎馬隊が突入し、何人も討ち取られていっておる!

おのれ、小賢しい王太子が!左翼の部隊も不甲斐ない、命を捨てて馬に体当たりして挑めば、勝てるではないか!

やはり、筆頭侯爵めの言う事など当てにならぬ。数を揃えても烏合の衆か。

 

「おい!馬に乗ってウロウロするな!邪魔なんだよ!」

 

「なんじゃと!?妾を誰だと思っておる!アルヘルム王国の正統なる王妃、シャーロットなるぞ!頭が高いわ!!」

 

「…えっ!?側妃のシャーロット!?」

 

「誰が側妃かぁ!!処刑するぞえ!」

 

その瞬間、シャーロットの周囲からざざっと人が引いた。ポッカリ穴が開いたかの様だ。黒騎士の顔、確かに見た事ある様な顔だ!

 

「ふん!下賤の者が。妾の号令で王太子の小僧を…おん!?」

 

シャーロットがふと後方を見ると、3騎の騎馬隊がそれぞれメイドを乗せて走っている?脱走兵か!?

その時、メイドが被っていた帽子が取れた。たなびく金髪、美しい顔。あれは、あれは間違いなく捕らえた筈の聖女ではないか!!

 

「な、何故聖女が!馬鹿な、侯爵め逃がしたか!おい、貴様ら、あの騎馬隊を撃て!取り逃すな!!」

 

「お、おいどうする?」

 

「どうするも何も、侯爵閣下の、さらに上からの命令だぜ?逆らえるか?」

 

「…無理だ!命令通りにするぞ!」

 

中央の後方部隊は、シャーロットの指令通りに騎馬隊を追跡、弓兵は走りながら次々と矢を放った!

やがて一騎が脱落、残り二騎に集中豪雨の如く矢を降らすも、何故か光の壁が騎馬の回りに出て矢が当たらない!

とうとう二騎は走り去り、王太子殿下の騎馬隊に合流した。

 

「おのれ!おのれ偽聖女がぁ!またもや妖術で誑かしおったわ!!」

 

シャーロットがそう叫んだ瞬間、王太子の騎馬隊から眩い光の柱が立ち、先程脱落した騎馬の方から炎の柱が生まれ、更に後方から凄まじい叫び声が聞こえてきた!

 

貴族派閥軍は、混乱の渦に飲み込まれてしまった。

 

 

貴族派閥軍右翼から少し離れた丘の上にて

 

戦況を見渡せる丘の上、そこに20騎ほどの騎馬隊が集結していた。中央、先頭に立つ騎馬の男は、騎馬の上にも関わらず巨体である事が分かり、その顔には無数の傷が存在して凄惨な過去が伺い知れる。

男達は黙って戦場を眺めていたが、やがて戦場の反対側に光と炎の柱が立ち上がった。

 

「ゆくぞぉ!!」

 

先頭の男の怒号が戦場全体に響き、20騎の騎馬隊は一斉に目の前にいる軍勢に突撃していくのだった。





貴族同士の戦争について。
一応、この物語の世界での慣習という前提ですが。
貴族同士が戦争をする場合は、お互いに整列を組み、宣戦布告をして身代金の取決めや一般市民の保護などを約束した上で行うものでした。戦争形態ですが、一種の決闘だったわけです。
相手側の筆頭侯爵も、その前提が頭にありました。
しかし作中では、王太子がそもそも宣戦布告無しに王宮占領したのは貴族派側という理由で、相手の展開を待たずに攻撃を仕掛けたのです。
筆頭侯爵からすれば、コイントスして落ちたら撃ち合うつもりだったのが、コインを持った瞬間に乱射された感じですね。
もし整列されて戦争開始となると、盾と槍衾で構えられ、後方から弓隊の攻撃が加わり、騎馬隊はかなり苦戦したと思われます。
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