ヒロイン矯正!   作:アールエー

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その61 人外の戦争

 

シリウス王太子視点

 

「急げ!聖女様を救出しろ!」

 

「敵の中央部隊が突出している!第二騎馬隊は頭を叩け!深追いはするなよ」

 

軍を動かし、敵の左翼部隊を混乱させ、突出した中央部隊の出鼻を挫く事で時間を稼いだ。その間に聖女キャサリン嬢を確保する。

騎馬二騎に乗って、メイド服でここまで来たキャサリン嬢。何度も矢を射たれていたが、全くの無傷なのは流石といったところか。

 

「キャサリン嬢!聖女様、ご無事で何よりです!ところで、レイナ嬢は…?」

 

「レイナは後方です、王太子殿下。さあ、王家の剣を。その剣を掲げて、戦争を終わらせるのです!」

 

私は腰に身に付けていた、錆び付いた王家の剣を馬上から聖女様に渡す。聖女様は馬から降り、王家の剣を握り締め刀身に指先を当てて祈りだした。

刀身が徐々に、徐々に光だし、錆など元々無かったのかの様に輝き出した。

 

「おおっ…!これが…王家の剣の本当の姿!真に聖剣の名に相応しい…!」

 

完全に輝きを取り戻した聖剣を持ち、聖女キャサリン嬢は宣言した。

 

(ひざまず)きなさい、王太子シリウス。聖霊様の名代として、再びアルヘルム家に聖剣を捧げます」

 

「…!ははっ!」

 

急いで馬から降り、その場に跪く。周りの、警戒している騎馬隊を除いて、全員同じく跪いた。

 

「シリウスよ。この聖剣は戦う手段を持たぬ聖女のため、授けられた物である」

 

キャサリン嬢は私の肩に聖剣を載せ、この世の者とは思えぬ神聖さに包まれて私に語り掛けてきた。まるで聖霊様…いや、本当に聖霊様の意思がキャサリン嬢を通じて語り掛けているのだろう。

 

「かつて醜い争いを繰り返し、血に汚れた剣を、我は一時は取り上げた…」

 

これは…戦争の中で紛失したのではなく、こちらの態度に呆れて自ら消えた、と言う事か…。

 

「この剣は聖女の意志、聖霊の意志である。シリウスよ、汝にその意志に従い、遂行する覚悟はあるや?」

 

「あります!この身に代えても、必ずや御意志に従い敢行しましょう!」

 

剣の輝きが、目が開けられない程に強くなり、その光の柱の中で、私は聖女様より剣を授かった。見るとあちらで炎の柱が立ち昇り、遠くで咆哮が響き渡る。

 

「シリウス王太子殿下。どうか、戦争を終わらせて下さい…」

 

「聖女様の御心のままに!」

 

私は馬に飛び乗り聖剣を高く掲げ、着いて行ける者だけを連れて、敵の中に飛び込んでいくのだった!!

 

 

 

レイナ視点

 

身体が軽い!当たり前だ、素っ裸なんだから!

炎のドレスを身に纏っているけど!見た目はドレスを着ているけど!重さゼロ締め付けゼロの自分的には素っ裸状態だ。ブラがないからバヨンボヨンして痛い!

 

は、恥ずかしい〜!!

 

しかも、周りは武装した男の集団だ。

野獣みたいな野郎共の中に全裸でいる感覚だ。感覚じゃなくて現実だ。なんて不安なんだ!え~い、お前ら近付くな!

 

「熱い!く、くるな、グワーッ」

 

「ちくしょう、こっちくるぞ!や、槍を向けろ…ひぎぃ!」

 

「おい!弓矢、矢を射てよ、こんなの剣や槍じゃ無理いあ、あちぃー!!」

 

「か、母ちゃん、燃える、服の火が消えない…」

 

…あの、本当、近付かないで?なんでこっちの進行方向に逃げるの?

 

ごめんなさい!そりゃ炎にまかれたら、そうなるよね。でも今更解除できないのよ、防御力ゼロと言うか、身動き取れないマイナスになるから。

 

向こうから、激し過ぎる怒号が轟いてくる。この声、間違いなくマイヤー将軍!?

こっちはこっちで、なんでいるのよ!?

 

「弓隊、構え!射て!!」

 

「うわ、不味い!」

 

数十メートル離れた場所から、弓隊が私に攻撃してくる!私はむしろ走って近付く。身体強化で、馬より速く走る!矢は真っ直ぐじゃなく、曲射してくるから、異常なスピードで動き回る私を捉えるのは困難なのよ。

そして、一気に飛び込んで、斬る!斬った端から燃え出す兵士!本当、ゴメン!

戦争だから手加減なしの覚悟はあったけど、これは何か違うっ!

 

とはいえ、構ってる余裕がない!気の利いた奴は遠距離攻撃に切り替えて次々に撃ってくる。中には剣や槍を投げてくる奴もいる。

当てるのは困難と言ったけど、これだけ射たれたら何本か矢は刺さった。直ぐに燃やして治療するけど(自動で矢尻を排出してくれるのが助かる!)、即死クラスの場所や、気を失う所に受けると危ない!

なんか山中で蜂の大群に襲われた事を思い出すわ。何の経験が役に立つか分からない!

 

とうとう、敵さんが逃げ出したわ…。でも追い掛けない。必要ないってか、逃げるなら逃げて欲しいってか、そもそも靴も無いのよ!裸足で追いたくない。

もうこの技、絶対に使わないわ!!

 

 

 

ハドルド王子視点

 

「急いで門を開けろ!味方を引き入れるんだ!」

 

僕は貴族派閥軍のほとんどが出撃したのを見計らい、配下になった部隊を用いて王宮を再制圧、父上達や捕らわれていた近衛兵達をも助け出し、まだ残っていた配下になってない部隊に降伏、またはこちらに味方しないか説得した。

 

残っていた半分以上が王族側となった事で、大きな戦闘もなく再制圧は完了。

現在、王宮の事は父上と救出した近衛兵に任せて、城門に来て味方を招いている所だ。

僕は城門の上に乗り、眼下を見下ろしながら味方部隊に合図を送っている。ここから戦場の様子が手に取る様に分かった。

 

三軍に分けて進軍しようとした貴族派閥軍だが、まだ配置が整わない内に王族軍の騎馬隊が左翼を攻撃、三隊に分けて何度も突撃を繰り返して完全に左翼を混乱状態に落とし入れた。

流石は兄上、私も王族の男として演習には何度か参加したが、あそこまで上手く指揮はできない。

やがて唐突に中央軍後方部隊が左翼に向って崩れ、王族軍の騎馬隊により混乱に陥り、そして…。

王族軍騎馬隊に光柱が、貴族派閥軍後方から炎柱が、そして無傷の右翼軍の方角から咆哮が鳴り響き…。光が、炎が、異様な小規模騎馬軍が三方から貴族派閥軍を攻め立てた。

 

光は、恐らく兄上だろう。あの光が王家の剣なのか。騎馬の迫力もあるのだろうが、恐らく聖霊様の威光が周辺へ広く伝わっているのだろう。かなり離れた城門の上にも伝わってきそうだ。

敵兵は単発的に向って倒されるか、その場でひれ伏すか、両極端に別れている。む?あの鎧は…筆頭侯爵ではないか!?真っ先に降伏しているじゃないか!

 

炎はレイナ嬢か!

こちらは凄まじい勢いで、次々と敵を斬り捨てている。

剣や槍も、彼女へ届く事はない。可憐に、ダンスを舞う様に向かう敵を倒していく。

これは…剣のダンス…そう、紅蓮舞刃(ぐれんぶじん)というべきか!

飛ぶように、舞いながら敵陣を切り裂く鋭い牙を持った火蜥蜴(サラマンダー)、それとも隣国で言われている炎の精霊(イフリート)の名が相応しいか?そんな考えすら頭に浮かんでくる。

今度は弓隊が攻撃…いや!恐ろしいスピードで近付いて…まるで火の玉、炎の塊が突撃してくる様だ!弓隊は逃げ惑っている。

もはや敵部隊は、集団としての行動など全く取れてない。余りのレイナ嬢の武に、(はかな)い抵抗をして斬られ燃え尽きるか、ひたすら逃げ回るだけか。

ああ、また黒衣の騎士が単独で斬り掛かって、反撃されて燃えながら落馬した。なんて無謀なんだ…。

 

そして、無人の野を行くが如き小規模の騎馬隊。無傷だった右翼軍の真ん中を突っ切り、槍を振るう度に複数の兵士が空中に舞い上がる。

…あれは、人間なのか!?

いや、あれこそ噂に聞く、悪魔将軍なのか!何故、彼がここにいるんだ!?

怒号を響かせ、当たるを幸いに片っ端から薙ぎ払いながら、次々と兵士を飛ばしつつ、真っ直ぐレイナ嬢の元へ突っ込んでいく!

とうとう、レイナ嬢と激突した!!

そこへ兄上も向っている。敵陣はズタズタで、既に戦になってない。一体、どうなるんだ!?

 

「失礼します!ハドルド殿下、味方軍の500名の収容が終了しました!各部隊は王都の守護の任務に着いております!」

 

「む、ご苦労ハミルトン。王宮はどうだ?」

 

「はっ、現在のところ異常の報告はありません!」

 

「よし。こっちは上手くいってますよ、兄上…。しかし、そちらは…」

 

「…なんか、人間の戦争ではありませんな。上から覗くと」

 

「その通りだハミルトン。安全な上から見れば分かるが、敵陣は三方からズタズタに切り裂かれ、人が近付く事すら困難な勢力に翻弄されているだけだ。これは戦争ではない」

 

「…私は、殿下に着く判断をした自分を褒めているところですよ」

 

王子と兵士は、再び戦場を見渡して頭が痛くなるのだった。





物語の設定として、聖女と聖王の組合せを持っているのは、光の聖霊のみとなります。
何故なら、四大元素の聖霊や闇の聖霊は、自分自身に攻撃手段があるからです。
光の聖霊は防御しかできない為、聖剣を渡して攻撃する者を選ばせました。聖王というのは人間が付けた名前であって、聖霊からすれば攻撃用オプションなわけです。
オプションが勝手な事をすれば、つながりを解除するわけです。

という事で、キャサリン以外の聖女(他の聖霊は聖人の場合もある)は聖王を選べません。

他の聖霊の聖女達は物語に出ないのか?
物語の王国はフランスより少し小さい国土としてます。
そして世界は広いので、聖剣があるが故に王国に限定される光の聖女の所に、他の聖女が現れるのは非常に稀となります。
(最も聖女は1人と限らないので、天文学的確率とかではありません)
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