ヒロイン矯正!【完結済】   作:アールエー

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その63 戦争終結

 

「おおりゃああ!」

 

アルベルトが槍を振るい、マイヤー伯に何度も突きかかる。物凄い迫力なのだが、マイヤー伯はほとんど見ずに躱したり大剣で受け止めた。

あのアルベルトが、子供扱いである。

その受け止めた剣の軌道のまま、こちらにも斬りつけるのだから、その技量が伺い知れるというものだ。

こちらもワンピースブレードを振るって懐に飛び込もうとするが、どっちかと言えばアルベルトより私を見ていて、隙がないのだ!

 

「アルベルト!お前はまだ、そんな大振りをしておるのか!大木を切り裂く強さを保ちつつ、走る馬の目を突くほど繊細に大槍を使うのだ!」

 

ぬん!とマイヤー伯はアルベルトに肉薄し、大剣で斬り上げる!

アルベルトは慌てて槍を前面に持っていき防御しつつ、後方へ飛び退いた。

 

「馬鹿者!そんな大袈裟に避ける奴があるか!軌道を見極め、薄皮一枚残して躱すのだ!炎の精霊(イフリート)を見よ!常に軸を残して最小限の回避をしながら反撃までするわ!」

 

いや、そうなんですが!多分、足捌きが違うのと、余り大きく動くと慣性に置いていかれるブルンブルンするモノがあるんで、動けないのよ!色々言われるけど、運動する時はすっごい邪魔!

そして比較して褒めてくれるのは良いけど、後一歩が遠い!

 

もはや親子喧嘩から単なる出稽古になってるわ。周りの兵士と言うかギャラリーから、おおっと感心した声が。

本当に戦争は終結しているみたい。何故なら、レイナやっちゃえ!お姉様頑張れ〜って声が聞こえる。お嬢様、ここまで来たんだ。

チラリと見ると、行列を作った重傷者を片っ端から治療しながら応援している。なんて器用になったんだ!?

 

「お前程度の男に炎の精霊(イフリート)は似合わん!儂が妾で貰い受けるか!?」

 

「こ…の、クソ親父がぁーッ!!レイナは誰にも渡さん!」

 

アルベルトが奮起して槍を構える。ヤバい、ちょっと嬉しい。顔がニヤけるのを抑える。

たが、この調子では悪魔将軍に勝てない。強過ぎるんだよ、この御仁!

 

私はアルベルトとマイヤー伯の間に入った。

 

「お、おいレイナ…」

 

「教えたでしょ!(ラン)(ナー)(チャー)!(外払い、内払い、突き、中国武術の槍術、六合大槍の基本技)基本にして奥義、アルベルトがずっと練習していたのは知ってるんだから!」

 

そして私はアルベルトに近付き、共に構える。

 

「1秒でいいから、隙を作って。螺旋を描き、鋭く穿(うが)て」

 

「…任せろ!」

 

アルベルトが吠えた。マイヤー伯にも負けない、凄まじい咆哮だった。彼の視線は一点に集中し、マイヤー伯を睨みながら一気に駆ける。

私もその突撃に食らいついて共に駆ける。

 

マイヤー伯は大剣を穂先に添え、弾こうと試みるが、その瞬間穂先がグルっと螺旋状に動いた。僅かに大剣が弾かれ、大槍が滑る様に突き抜ける!

 

「ぬうっ!」

 

マイヤー伯はほとんど無意識に力を加え、穂先の行く先をずらした。その一瞬の間で私が箭疾歩(せんしっぽ)(飛び込む歩法)でマイヤー伯に肉薄!

 

加護を解除したワンピースブレードでマイヤー伯の顔面へ斬りつけた。が、彼はそれにすら対応してワンピースブレードを斬り…手応えなく真っ二つにした。僅かにマイヤー伯の重心が崩れ、隙ができる!

強化の加護を切ったワンピースブレードは、高温化していたのでほとんど溶けていたのだ。

 

「ふん!」

 

後一歩、踏み出した私はマイヤー伯にくっつく様に…貼山靠(てつざんこう)(体当たり)を食らわせた!

 

「ぐっはああぁぁ!!」

 

それは、数十キロの溶岩の塊に突撃された様なものだった。熱波に包まれ、吹き飛ばされたマイヤー伯は、大剣を手放しドサンっと倒れた。

 

 

 

「た、倒したのか?」

 

おい、それはフラグでは?とか思いつつ、マイヤー伯に近付く。肉が焦げた臭いがするが、本人は笑っていた。

 

「グッハハハ!面白い技があるものだ。」

 

そして徐ろに立ち上がる。いや、身体の前面が大火傷、だよね??なんで何でもない様に立てるの!?

 

「アルベルト!今回はお前の勝利だ!その大槍はやる!炎の精霊(イフリート)を嫁に貰う事を認めようぞ!!」

 

それは敗北宣言だった。そして、周りから大歓声が響き渡る。

漸く…戦争が終わったのだ。

 

 

 

「レイナ!怪我はない?何よそのドレス…炎でできてるの!?」

 

お嬢様が駆け寄ってくる。あ、触らないでね、熱いから。

 

「私は大丈夫です、お嬢様。そちらのマイヤー伯を治療して下さいませ」

 

分かったわ!と言って治療を開始する。あっという間に火傷が治ると、マイヤー伯は跪いた。

 

「金髪の小娘…いや、今世の聖女よ、感謝いたす。儂にできる事があれば教えて欲しい」

 

「…それでは、5年と言わず戦争を止めて下さい」

 

「分かった。儂の目の黒い内は決してこちらから攻め込まぬ事を誓おう。どのみち、聖女が誕生した以上、様子見をする方に傾いておったからのう。我々には神国にて匿って頂き、逃がして貰った者が多数おるのだ。王国が考えているよりも、聖霊様への信仰は深いのだよ」

 

「貴方もそうでしたか?マイヤー卿」

 

横から声をかけられ、見るとそこには総主教猊下が、枢機卿と武装神官達と共に立っていた。その更に横には王太子殿下。

 

「む…総主教か。儂は聖霊様を敬いはするが信仰はせん!傷を治して貰った恩を返すだけだ」

 

「ふふふ…。聖霊様に敬意を払って貰えたなら、構いませんよ、マイヤー卿」

 

そして総主教猊下は、私達の元へやってきた。

 

「お疲れ様でした、光の聖女様、そして炎の聖女様。あちらにそれぞれの保護テントを建てております。光の聖女様、重傷者を戦場のあちこちより連れて来ている最中です。どうかお慈悲をお願い申し上げます。炎の聖女様には、着替えを用意致しております」

 

確かに、いつの間にかテントが二基、建てられていた。助かる、そろそろ炎のドレスも限界だったんよね…。

 

「皆の者、よく聞け!此度の戦争は、二人の聖女様のお力により、早期終結した!!そして、これにて双方の蟠りは無いものとする!皆で力を出し合い、あのテントへ負傷者を運ぶのだ!」

 

王太子殿下の号令により、皆は一斉に動き出す。疲れた、早い所着替えよう…。





「大体、親父!何しに来たんだよ!?」

「王国で反逆が起きて、お前の嫁がピンチと知らせがきたからの。助けるついでに攫ってお前の嫁にしてやろうかと…」

「その助ける相手のレイナと闘ったのは、どういう事だ!?」

「武人の血が騒いだ!」

「うわ…アルベルトそっくり。親子だね〜」

「ウッソだろ、レイナ!?」
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