ヒロイン矯正!【完結済】   作:アールエー

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最終話となります。


その64 全ては事なきを得て

 

側妃シャーロット視点

 

痛い!起きると身体中に激痛が走った!痛過ぎる!

何よ、何が起きているの!?

妾は、妾はどうなっているの!?声が出ない、目も開かない!

腕、腕が動かない…。ここは何処?

 

妾は、確か(いくさ)に出て…。そう、炎を纏った不可思議な女が、我が軍を無茶苦茶にしていたのは覚えている。何とかしようと、妾はそいつを叩き潰そうと…槍を向けて…。それから、どうなった?

 

「母上」

 

おおっ!この声はハドルド!この母を助けに来てくれたのですね?流石は我が息子!

何とか、薄っすらと目を開けると、そこにはハドルドと、国王陛下が立っておられた。

声を出そうとしたが、やはり出ない。

 

「今の母上の状態からお話しましょう。母上は戦場に立ち、炎の聖女様を討とうとして、逆に討たれました。今の母上は全身大火傷、そして右腕がありません」

 

な…何を…腕が…ない?でも、感覚は…あるのに…。

目を動かして腕を見ると、布団の中に隠れていた。しかし、本当に腕の所に膨らみがない。

 

「か…か…」

 

鏡を見せて、そう言おうと思っても、喋る事ができない。

でも、ハドルドが察してくれたのか、手鏡を見せてくれた。そこに写っていた者は…。

 

ガタガタと身体が震える。あれが、あの顔が!

 

ハドルドと陛下を見ると、悲痛な表情をしている。さっきの姿は、本当の妾…。

 

「母上、治療はできます。聖女様に助けを求めるのです。聖女様は直ぐにでも治療を、と言われました。しかし」

 

「シャーロットよ。そなたは聖女様を偽物として処刑しようとしたそうだな。流石に、その様な者を聖女様に近付けるわけにはいかない」

 

「…治療が終わってからで良いのです。聖女様に、謝罪できますか?」

 

妾は…どうにか、頭を動かして頷く事ができた。

 

「お話、終わりました?直ぐに治療しますね!大丈夫ですよ、もうレイナが大暴れしたから、火傷の治療もかなり慣れましたから。あっという間に良くなりますよ〜」

 

後ろで控えていたのだろう、金髪の聖女が、妾に手をかざして。温かい光が、全身を包みこんで。

妾は、その温かさに涙を流していた。

今まで抱えていた感情が、心の重さが、全て洗い流される様に思え、目の前がぱーっと開けた様な感じがした。

 

「はい、完治しました!でも、私的には謝罪とかしなくて良いんですよ?聖霊様は、何時でも貴女を見守っています!」

 

聖女様が立ち去ろうとし、妾はその袖を掴んでいた。

 

「すまぬ…すみま…ごめん…なさい…ごめんなさい…許して…許して…!」

 

聖女様は私の手を握ってくれた。

 

「大丈夫ですよ。私には何も被害がなかったのですから。聖霊様も、怒ってはいません。シャーロット様の心に、安寧が来ます様に…」

 

妾は、泣き続けるしかなかった…。

 

 

 

フレデリカ視点

 

戦争が終わり、数日ほど時間が過ぎた。

私は終結を聞いて直ぐに王都に向かい、王太子殿下に会って話を聞く事ができた。殿下も王子も、誰も大怪我してなくて良かった!

 

「そりゃフレディ、私がいる限り、死なせるもんですか!」

 

流石は聖女様!心の友よ〜!

 

学園は一時閉鎖されている。貴族派閥軍が壊滅し、貴族編制が大幅に変わったからね。今回の内戦で、当主が亡くなった家や叛乱に加わった貴族家もあり、混乱に陥っているわ。

中には生き残った兵士の証言で、禁止されている奴隷を使っている貴族もいたのよね。これから調査が進むにつれ闇の部分が明らかになるでしょうね…。

そうなると、残念ながら実家が潰れた生徒もいて、人の配置は大きく変わるに従って学園生徒も変わってしまうでしょうね。後ニヶ月は再開できそうにない。

 

「レイナさん!話は聞いたわよ!大勢の人達の前で、結婚の許しを得たんですって!?」

 

「おひっ!」

 

色々と始末しなくてはならない仕事を片付け、王太子殿下の仕事も一段落付いた所で久々にキャシーとレイナさん、アリシアさんに会う事ができた。

 

「け、けこん、けこっけこっ」

 

…あれ?レイナさんの顔がみるみる耳まで真っ赤に。これってもしかして…。

 

「駄目よフレディ。今のレイナにアルベルトの兄ちゃんの話をしちゃ。真っ赤になってフリーズするのよ」

 

「ええっ!?それってつまり…」

 

「どうも、前世(まえ)の意識と女の本能がせめぎ合って、思考停止するみたい。一応、私の治療で治るか試したけど、お医者様でも草津の湯(聖霊様の奇跡)でも、恋の病は治せないみたいよ」

 

「あら〜。アルベルトさんには会ったの?あれから」

 

「さあ。戦争の時は興奮状態だったのか、普通に動いていたんだけどね。一晩経ってからアルベルトの兄ちゃんに会おうとすると、固まってしまう様になったからねぇ」

 

「ううう…。お姉様がメスの顔に…」

 

「レイナったらモブだったのに、すっかり主人公(ヒロイン)に矯正されちゃったわね〜」

 

私はレイナさんの耳元に近付いて、そっと囁いた。

 

「ふぅ~ん。レイナさん?アルベルトさんの事、好き好き(だ〜いすき♡)なんだ…?」

 

「ひうっ!ちがっ!友です!刎頸(ふんけい)の友ってやつで!」

 

「何よ刎頸の友って」

 

「古代中国の故事ね。お互いの首を斬られても構わない、深い友情を指すの。でも、男同士ならともかく、男女で言えば相手の為に死んでも構わないって、物凄く深い愛情を指すんじゃ…」

 

「あわ、あわわわわ…」

 

「ああ、レイナったら戦場でお互いの命を預けあったらしいから」

 

「うー。もう、二人の仲は裂けないの?…いや、私が失礼男(アルベルト)の妾になれば三人で…ウヒヒっ」

 

「アリシアは、いい加減諦めなさい!」

 

「そうね…。まあ、平和な話ができて良かったんじゃないの?」

 

「ひとまず、どっちかにバランスが傾くのを待つしかないわねぇ。何となく、女の本能に傾きそうだけど…って、レイナ!体温上げ過ぎよ!また服が燃えちゃうじゃない、この痴女!アルベルトさんに嫌われるわよ!」

 

シュ〜……………。

 

「あ、鎮火した。レイナの顔、真っ青だわ。ウソウソ、そんな事でアルベルトさん、嫌いにならないって!」

 

「これって、お姉様の御加護も影響してませんか?燃え上がる恋って、炎の聖霊様の好きそうな言葉ですし」

 

「「それだわ!」」

 

 

 

そんなこんなで王都は今、戦争の興奮が過ぎて次の話題、王位継承と二人の聖女に移っている。

二人の聖女様に認められ、聖霊様の力を授かりし王家の剣を持つシリウス王太子殿下が、いつ王位を継ぐか。

 

もう、学園を卒業したら速攻継承するのよね。

今の国王陛下は、今回の内戦の責任を取って早目に辞めないといけなくなったし。

次いで私との結婚式。準備はしていたけれど、卒業してから1年くらいハネムーン期間として遊ぶつもりだったから、もう大慌てよ。王族の結婚式が、あと半年しかないんだし。

 

ついで、ハドルド王子殿下が大公として隣国との国境沿いの地方都市、あの水害に遭った都市に赴く。彼も復興に全力を注いで、住民に人気があるから。その時には側妃殿下も一緒ね。

側妃殿下は内乱の罪に問われたけど、筆頭侯爵に利用されただけとなったわ。側妃殿下を罪人にしたら、あれだけ活躍したハドルド王子も罪に問われるからね…。その代わり、生涯幽閉だけど。

 

ハドルド王子の役割は、大公として隣国…私だけシリウス様に教えて貰ったけど、反乱軍との和解と緩衝地帯の調整も兼ねているわ。

東側の都市で少しづつ馴染ませながら、こちらでは徹底的に奴隷制度を潰す。その両輪を持って和平につなげたいのよね。

長い時間をかけると、王太子殿下は言っていたわ。多分、半世紀ほど時間を経て世代交代を2回くらいやれば、一つの国としてやれる可能性が出るかなって。

 

キャシーは学園卒業をしたらハドルド王子について行くのかな?まだ婚約の準備ができていないけど、ハドルド王子が手放さないわよね〜。国王陛下もシリウス様もそうだけど、この国の王族は独占欲が強いのよね…。時々疲れるくらい。

幸せと言えば、幸せだけど!

向こうに行ったら、医学の学園を設立するのかな?こちらも援助をしないといけないわね。

 

問題はレイナさんよね…。

一番しっかりしていた筈が、あの様子じゃ…。

アルベルトさんに誘われたらフラフラっとついて行って、そのまま拐われて気が付いたら隣国で子供10人くらい居ましたって言われても、全く不思議に思わないわ。見張っておかなきゃ!

 

これで、乙女ゲームのストーリーはおしまい。

続編はあったけど、私もキャシーも知らないし、考えたって無駄ね。多分、大きく変わっているだろうし。日本で生きていた時と同じく、先が見えないけど自分ができる事をやるしかないのよ!

 

明日からまた、頑張ろう!!





これにて本編は終了となります。
主人公がバグったので、フレデリカ様に締めて頂きました。

ここまで読んで頂いて、誠にありがとうございます。
ご感想もありがとうございました。
また、アイデアが思い付きましたら、お会いしましょう。
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