ヒロイン矯正!【完結済】   作:アールエー

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完結後もお気に入りが増えて評価して頂きましたので、蛇足としてその後のお話を…。


おまけの1 レイナの苦悩

 

「恥だ!恥さらしだ!!」

 

私はそう叫びつつ、剣を振るう。用意した木の束に、何度も木剣を打ち下ろす。

もう日は傾いていて、間もなく夜の帳が下りるというのに、私の心はかき乱れたままだった。

 

今日、私は大失態をやらかしたのだ。

 

それは本日の昼前の事。王都の戦争終結から10日余り経ち、漸く精神的に落ち着いた私はアルベルトと久し振りに会う事にした。

 

…実はその前にも会おうとしていたのだが、姿を見ると硬直してしまい…。遠目で見ながら少しづつ近付くという、何と言うか野良猫がジワジワ寄ってくる様な感じで訓練?修行?をして心を慣らしていったのだ。

 

正直、炎の聖霊様の御加護が強過ぎる。カッとなる癖はかなり改善したのだけど、お嬢様曰く恋の炎とやらは容易に消えず…。

 

こんな副作用があるから、聖霊様の御加護を次の世代に、なんて思えず空白の数十年とか数百年間とかできるんじゃないかなぁ!?

 

とにかく慣らして慣らして、これなら大丈夫かと、何とかお嬢様とフレデリカ様の認可を貰い、漸くアルベルトと会ったのだ。

それまでは会うと私が心神喪失するからと、二人に止められていたりする。

 

「アルベルト〜久し振り〜」

 

王宮の外に出ると、会う約束をしていたアルベルトが舎弟達と門の近くに立っていた。

彼は少し驚いた顔をして、それからニヤリと笑って応える。その顔もかっこよく見えるな。

 

「おおっ、聖女さんから御加護の副作用が酷いって聞いたが、大丈夫なのかレイナ!」

 

「はっはっはっ!大丈夫だよ、心配かけたね!」

 

私は自然と笑顔になり、スキップする様にアルベルトに駆け寄って、全く無意識に抱き着いてキスをした。

 

 

 

キスをした。

 

 

 

唇を重ねた状態で、アルベルトと目が合った。ポカンとしていた。

横を見ると、舎弟共が口を開けて私を見ていた。

少し彼から離れて、後ろを見ると呆れた顔のお嬢様とフレデリカ様と、ついでに驚愕顔のアリシアと視線が交わった。

人通りは多かった。皆、見てた様に思えた。

 

 

 

「ち、違っ、これは違う!!うぎゃー!!!!」

 

私は逃げ出した。逃げざるを得なかった。他に選択肢など、この時は無かったのだ…。

 

 

 

で、今に至る。

お気に入りのワンピースブレードは悪魔将軍たるマイヤー伯の手によって真っ二つにされたので、木製の練習用の剣を握り締め、御加護の力で頭に浮かぶ剣術の修行方法を元に、ひたすら剣を振るった。

今度のワンピースブレードは日本刀の形にしたから、拳法の刀法より日本の剣術を選んだ。

御加護は頭にやり方が浮かぶけど、武術は身体で覚えさせないとね。こうして修行をしている間は、妄想から離れる事ができた。

 

「レイナがキスしたのは、妄想でも何でもないけどね」

 

「言わないで下さい、お嬢様…」

 

流石にゼーハーと息が切れた身体を回復させながら、お嬢様の元に行く。あれだけ剣を振るったのに、御加護の力で手に豆一つできてないのは便利なのか卑怯なのか。

 

「私も光の聖霊様の御加護に感情を引っ張られている認識はあるけど、そこまで極端じゃないのよね〜」

 

「元々、お嬢様の性質と合っていたのでしょうか。私と出会った当初は我儘やってましたが、性根は優しい性格でしたから。それとも、聖霊様の心に沿った性質の人が、聖女に選ばれるとか…」

 

「レイナは性質が合ってないの?」

 

私は少し考える。炎と武術の聖霊様の御心に、私は合わないのか…?いや、違う様な気がするな。

 

「性質は合ってると思います。前世(まえ)の時も、女房と出会って半年で結婚までいったのですが、そのまま歳取って死ぬまで愛してましたし」

 

「あら、情熱的ね。でも確かに、炎の様に熱烈な恋だったのかしら?それじゃ、理性的に反発しているとか?」

 

「…いえ、頭では何か納得しているんです。アルベルトの子供産んでも良いかな〜くらいは」

 

「あらま」

 

「逆に前世(まえ)の感情が邪魔している様な…うーん…」

 

「何にせよ、私は応援してるわよ!レイナが結婚して私の元から離れるのは嫌だけど…」

 

「どのみち、もう少し先の話ですね、そういう事は」

 

 

 

あくる日、悩んでも仕方ないし、一つ馬を飛ばしてみる事にした。隣には護衛代りのアルベルトも一緒だ。舎弟共は置いてきた。つーか、昨日の事が頭にあるのか、遠慮してきた。

ちなみに、今日は感情に負けない様に気合い入れてきたから、無様に抱き着いたりしてないぞ?

それと、勿論それぞれの馬に乗っている。二人乗りはしない。断固としてしない!

 

「そろそろ、残暑も越えてきたな!雲が秋雲になってやがるぜ」

 

アルベルトがそう言うので上を見ると、確かに空が高くなっている。遠くに入道雲が見えているが、上空にあるのはひつじ雲だ。

風も涼やかに駆け抜けて、もう少し経てば軽い上衣が必要になるかも知れない。

 

「それで?レイナが馬で外に乗り出す時は、大抵悩みがある時だ」

 

アルベルトは笑いかけてくるが、今回はコイツが悩みの種、むしろ元凶だ。

ジトリとアルベルトを睨むが、本人は分かってない。溜息が出そう。…出た。

 

結局のところ、私はコイツが好きなのだろう。

理性的には分かるし、正直身体が疼く。身体の芯から、御加護の後援も受けて抱かれたいと訴えている様だ。マジか。

感情だけが付いていけない。普通、感情が先だろう!?また溜息が出る。

 

「溜息が止まらんみたいだな!いっそ、ぶっちゃけて仕舞えば良いんじゃないか!?」

 

また元凶が言う。私がこんなに悩んでいるのに、元凶は脳天気に笑ってやがる。なんか、ムカついてきた!

 

このまま告白したら、勝負に負けた気がする。前世の経験が、恋に駆け引きはあっても勝ち負けはない、あえて言うならコイツを他の女に取られたら負けだ。と囁いてくるが、知るもんか!

 

「アルベルトは、私の事をどう思っているの!?」

 

「ああ、愛しているぜ、レイナ!」

 

負けた!!

なんか、負けた!完敗だ!!カウンター喰らって脳天まで打ち抜かれた気がする!

 

私は黙って手綱を手放し、アルベルトに向って両手を広げた。彼は私の馬と近付いて並走し、その大きな腕で私を抱き上げ自分の前に乗せた。いつもながら、見事な馬上でのバランス感覚だ。普通、真似できない。

そして私達は少しだけ見つめ合い。

 

「私も愛してる」

 

ただ、一言、そう応えた。

アルベルトは私を抱き締め、私は初めて自分の意思で、彼の求愛を受け入れた。

 

 

 

「こらぁ!!唇は許したけど、胸は揉むなぁ!そっちはまだ駄目!!」

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