ヒロイン矯正!   作:アールエー

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その7 呼び出し

 

「ところで、他の攻略相手の情報ってないのですか?王太子殿下と…あの暗殺者は別としても」

 

王太子とかは無理としても、他の候補者はまだいけるかも知れない。

 

「うー、他の攻略相手は学園に入ってから会うのよね。1人は王太子にガッツリ関わるけど、他の2人は直接王太子のイベントに関係するフラグは無かった筈…でも間接的に影響ある…?」

 

ウンウン頭を悩ませながら、答えを探し出す。

 

「私から言っておいて何ですが、もうイベントとかフラグとか、参考程度にした方が良くないですか?」

 

「…えっ…?」

 

「そもそも、お嬢様はゲームの通り進めてますか?ゲームの主人公と勉強の進み具合やマナーの身に付け方は、原作と全く同じですか?」

 

「えっえっ!?」

 

「例えば攻略相手に微笑むシーンで、口の上がり方一つ、首の角度一つで印象が変わりませんか?媒体がスマホかパソコンか本か分かりませんが、原作に全く忠実に再現してますか?」

 

「いや…それは…」

 

ゲームの様に選択肢1と2に分かれているなら良い、だけど現実ではゲームの通りに進む訳ではない。言ってしまえば、選択肢1.1や1.01なんて微修正なものもあるかも知れない。

 

「んじゃ、どうすれば良いのよ!私、シナリオ通りに進めば幸せに成れると思っていたのに、それじゃどうしようもないわ!!」

 

「現実で考えて下さい。お嬢様の武器は何ですか?まずはその美貌があります。勉強はかなり頑張りました。上級クラスとは言えませんが、マナーもそこそこ身に付いています。そして何より、聖女としての力がある。これらを武器に使い、ゲームを参考にすれば、落とせない男は少ないと思います!」

 

いや、マジでそう思う。男としての感覚で見たら、多少性格がアレでもコロッといくだけの容姿してるし。それで聖女の癒しのパワーがあれば鬼に金棒じゃん。

 

「…ちょっと、聞こえているわよ。性格がアレって何よ」

 

おっと、声に出てた?

 

「まあ、アレはアレって事で。とにかく、お嬢様の表向きの能力は素晴らしいのですから、正攻法でほとんどの男はイチコロなのです。そもそも、攻略対象に拘る必要すらないくらいに。他の男も引く手あまたですよ〜」

 

「だからアレって…まあ良いわ。言いたい事は理解したから。それに……それよりも…」

 

おや?なんか、お嬢様が言い辛そうにしてる?

 

「ねえレイナ…。あなた、もしかして、転生者?」

 

「え?そうですよ」

 

「は、はぁああぁあ!?な、な、何で黙ってたのよ!?」

 

「はあ、聞かれませんでしたので。そもそも、パソコンやスマホの話が通じてる時点で、分かってくれると思ったのですが。転生って概念も、仏教の輪廻転生等から来てますし。気付くのに、実に2年もかかりましたね。ぶふっ!」

 

「わ、笑い事じゃないわよ!ほ、他に隠し事はないわよね!?」

 

「えーっと、私も聖霊様の加護を受けた事とかですか?それとも拳法が使える事とか?ボールベアリングの開発に力を入れている事も…」

 

お嬢様は最早、声にならない叫び声を上げていた。合掌。

 

いや、話さない私が悪いんですが。

 

 

 

午前中の授業と教会への奉仕(怪我人の治療)を終え、お嬢様が読書等で午後の時間を過ごしている頃、私は必要な買い物をしに町へ出ていた。

茶葉と茶菓子に使う食材、それと猟師に頼んでいた蜂蜜(まだ養蜂はない…いつかやってみるかな)を購入し、帰途に着く。

 

(誰か付けてきている?)

 

どうにも、後ろに気配を僅かに感じる。

こんなに気配に敏感になるなんて。これも、聖霊様の加護の影響なのか。

そうだ、昔からアニメなんかでやっていた、あれをやろう!

 

私は態と、人気の少ない裏路地に入る。この辺りは2年も住んでいるから、裏道まで把握している。

路地に入り素早く角を曲って、待ち伏せだ!

 

「こそこそ付けてきているのは分かってる。大人しく出てきなさい!」

 

果たして…出てきたのは、攻略対象の暗殺者、名前は…名前……何だっけ?

ああ、顎に包帯巻いて、痛々しい。事情を知らなければ顔を隠した暗殺者なんだけど。

 

「お嬢様が…お呼びだ…。大人しく…するなら…五体満足で…帰れる」

 

うん、恐怖を与える為にゆっくり話しているのか、ただ単に顎が痛いのか、ちょっと分からないな。しかし…。

私は一瞬膝の力を抜き、重心をずらしながら一気に距離を詰める縮地法を用いて、暗殺者の目の前に移動する。スカートだと動きが分かり難いのが良いよね。

ちなみに、暗殺者側もビビっているけど、私も自分の出したスピードにビビってます。未だに加護の影響を使い熟せてない。

 

「良いでしょう。案内しなさい」

 

しかしながら顔には出さず、そう命令するのだった。

 

町にある高級、と言っても大きな街のホテルとは比較にはならないが、町一番の高級宿で数人の侍女と警護の騎士達に囲まれてフレデリカ様は待っていた。

しかし、武器も持ってない、か弱い侍女を1人招くだけで厳戒態勢も良い所だ。直ぐ後ろでは、例の暗殺者がナイフを手にピッタリ着いているし。私を何だと思っているんだ?

 

「お久しぶりね、レイナさん。今日は貴女に聞きたい事があって、お呼びしたの」

 

フレデリカ様は、私も初めて入る宿一番のスイートルームのラウンジで、優雅にお茶を飲みながら私に聞いてきた。

 

「単刀直入に聞くわ。貴女、何者なの?」

 

「自分が何者かとか哲学な話ですね。自分が自分を思うから自分ではないかと」

 

いつか、キャサリンお嬢様に問われて答えたセリフと全く同じセリフを、こちらでも言ってみる。

 

「そう、我思う、故に我あり…デカルトね。この国では哲学は、近代や現代哲学の様に体系だって学問として確立してないの。貴女、転生者ね」

 

おおっ!少なくとも、フレデリカ様はキャサリンお嬢様より頭は良さそう!

条件は違うけどね。他の転生者の存在なんて頭にない時と、いるかもと疑っている時と。

そんな事を考えていると、フレデリカ様は突然、侍女や護衛を下げさせた。暗殺者も渋っていたが強引に下げさせ、二人きりになるとこんな事を言い出した。

 

「ねえレイナさん。貴女、こっちに着く気がないかしら?」

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