ヒロイン矯正!   作:アールエー

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その8 勧誘

 

「貴女の事、少しだけ調べさせて貰ったわ。ターナー村の村長の娘で、今年で14歳。10歳上の兄と遊び回る中で他の村まで交友関係を広め、この地方発祥とされる手押しポンプの本当の製作者」

 

うーん、この数日で、よく調べている。公爵家の情報収集能力は、矢張り馬鹿にできない。

 

「手押しポンプでピンときたけど、それよりも隠して開発している扇風機型でない風車と、風力ポンプ、それにベアリングの発案…」

 

一つ一つ、指を立てながら数えていくフレデリカ様。色々やらかしたからな。

 

「技術革新はあるのでしょうけど、完成形を見せられて、それを作るのに試行錯誤するのは珍しい筈。そして貴女の武術…騎士や暗殺者、冒険者でも使ってない技術」

 

椅子から立ち上がり、私の前にやってくる。そして私の両手を包み込む様に握り締めた。

 

「私は貴女が欲しい!もちろん手押しポンプの権利や他の利権も保証するし、開発援助もするわ。待遇も今よりずっと良くなるし、村長や男爵への必要な手続きはこちらでやるわ」

 

おおっ!何か好待遇だな!前世でもヘッドハンティングの経験はなかったから、ここまで情熱的に迫られるとグラッときちゃうぜ。

 

だが、まあ、今更あの我儘お嬢様を見捨てる判断はできないよね。

 

「ありがとうございます、フレデリカ様。しかし私の勧誘をする前に、もう一度だけ私のお嬢様(My Fair Lady )に会って話をして頂けないでしょうか」

 

「…あの、ヒロインに?」

 

「はい、左様でございます。あの時は混乱しておりましたが、今は落ち着いて話をすることができます。必ずや、有意義な話になると確信しております」

 

「…悪いけど、そうはならない印象があるのですけど?」

 

「ご心配は御尤もです。ですが大丈夫でございます。お嬢様も現状を理解致しております」

 

フレデリカ様は暫し考え…決断した様だ。

 

「分かったわ…。貴女が其処まで言うのなら、もう一度だけ彼女と話をします。でも、本当に大丈夫なの?聖女認定されて調子に乗っているんじゃない?私と話なんてしないのではなくて?」

 

キャサリンお嬢様、あの短い出会いでかなり警戒されてるな。刃傷沙汰になったし、仕方ないか。

 

「大丈夫です。必ずこちらで話ができる様、説得致します」

 

 

 

宿を出て、男爵邸に戻る。結構遅くなったから怒られるかと思ったが、部屋に伺うとお嬢様は大の字の寝姿で、ゴーゴーとイビキをかいて寝ていた。乙女の尊厳とか色々台無しである。

 

全く…人が危険?な目に遭ってるのに、このお嬢様は…。

そう思いながら、蹴飛ばしている掛布団を掛け直してあげる。正直、前世の娘を思い出す。大きくなっても反抗期はソコソコに、甘えてきた娘達を。

 

時間的に、もう四半刻で起きるだろう。

お茶の準備をしてながら、目を覚ますのを待つ事にしたのだった。

 

 

 

「どーして私が悪役令嬢の所まで出向かなきゃならないのよ。向こうに用事があるなら、こっちに来なさいよ」

 

「お嬢様、あちらの方が遥かに高位の貴族なのですから、こちらが足を運ばないと駄目なのですよ。私が勝手に会って欲しいとお願いしたのは申し訳ないのですが…」

 

私がフレデリカ様と話をした翌日、私とキャサリンお嬢様は、宿へ向かう馬車の中で揺られていた。

フレデリカ様から招待の手紙を頂いて帰宅した私は、先ずは旦那様に手紙を渡して公爵令嬢の話をした。お忍びで来ていたせいか、旦那様は初耳だった様だ。

 

旦那様の男爵家というか、その寄親の伯爵家は王家派閥であり、王太子殿下の派閥に属する。つまり王太子殿下の婚約者であり、将来の王妃でもあるフレデリカ様は、派閥にとって最重要人物であるのだ。

手紙でお忍びだから正体がバレる事がない様、厳に命じて無かったら町を挙げて歓迎していただろう。

 

それでも、フレデリカ様と娘のキャサリンお嬢様が仲良くなれば、聖女認定とも重なり男爵家の将来は安泰、それどころか子爵や、もしかしたら伯爵へ陞爵も夢ではない。

と言う理由で男爵様から私に、必ずフレデリカ様とキャサリンお嬢様との仲を取り持つ様に、と厳命されました。

 

どのみち今回の会見は、私がお嬢様の手綱を握れるかどうかに掛かっている様な気がします。

 

そんな感じで、公爵令嬢の元へ行くことは旦那様の命令でもあるので、私だけが悪いわけではありません。

その日の内に早速先触れを出して、翌日の午後に会見する手筈を整えたのだ。

 

「どうか、喧嘩を売る様なマネだけはしないで下さいね」

 

「分かっているわよ!でも、貴女を勧誘してきたんでしょ!?腹が立つわ!」

 

「勧誘だけで腹を立てていたら、キリがありませんよ、お嬢様。別に受けたわけではないのですから」

 

「それも分かっているわ!分かっているのよ…。本当に大丈夫…?」

 

何やら、あれ以来凄く自信を無くしているなぁ…。安心させる様にニッコリと笑いかける。

 

「大丈夫ですよ。一緒にいると言った舌の根の乾かない内に、離れたり致しませんから」

 

そんな会話をしていると、馬車は公爵令嬢のいる宿へと到着した。さあ、どんな話をするとしましょうか。

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