hololive Lost Story   作:ダニエルズプラン

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第45話 後輩ジェラシー・放課後は逃がさない

 

 ユウトが、ホロライブのライバーたちと今の自分として向き合っていくことを決めた翌日。

 

 空は、昨日までの嵐が嘘みたいに晴れていた。

 

 オルタナティブシティ近隣の町にある高校にも、雨上がりの光が差し込んでいる。校舎の窓には朝日が反射し、中庭の魔導樹からは水滴がきらきらと落ちていた。

 

 いつもの学校。

 

 いつもの教室。

 

 いつもの朝。

 

 けれど、桜井ユウトだけは少し違っていた。

 

「おはよう」

 

 ユウトが教室に入ると、獣人の少年が真っ先に顔を上げた。

 

「お、ユウト。おはよ……って、ん?」

 

「何?」

 

「いや、なんか今日、顔違くない?」

 

「顔?」

 

 ユウトは自分の頬に手を当てた。

 

「寝癖でもついてる?」

 

「そういう意味じゃねぇよ。なんか、表情が軽い」

 

 悪魔の少年が、机に頬杖をつきながらにやにや笑う。

 

「分かる。ユウト、週末なんかあっただろ」

 

「いろいろあった」

 

「否定しないんだ!?」

 

 獣人の少年が尻尾を揺らす。

 

「前なら『特に何も』とか言って流してたじゃん」

 

「今回は、特に何もとは言えないから」

 

「何それ。めっちゃ気になるんだけど」

 

 エルフの少女も、少し微笑みながらユウトを見る。

 

「でも、いい変化だと思うわ。桜井くん、前より話しかけやすい雰囲気になったもの」

 

「そうかな」

 

「そうよ。前は、ここにいるけれど少し遠いところを見ている感じがしたから」

 

 その言葉に、ユウトは一瞬だけ黙った。

 

 遠いところ。

 

 たしかに、自分はずっと遠くを見ていたのかもしれない。

 

 霧の向こうにある過去。

 

 思い出せない誰か。

 

 胸の奥に空いた穴。

 

 けれど、今は違う。

 

 完全に埋まったわけではない。

 

 記憶も戻りきっていない。

 

 それでも、自分がここにいていいと思える場所が、少しずつ増えていた。

 

「……まあ、少しは変わったのかも」

 

 ユウトがそう言うと、友人たちは顔を見合わせた。

 

「おお」

 

「自覚あり」

 

「これは大事件だな」

 

「何だそれ」

 

「青春だよ青春!」

 

 悪魔の少年が笑う。

 

「ユウトにもついに青春が始まったってことだ」

 

「勝手に始めないでくれ」

 

「もう始まってるって。顔に書いてある」

 

「書いてない」

 

「いや、書いてる。『週末に何かあってちょっと前向きになりました』って」

 

「具体的すぎるだろ」

 

 ユウトは思わず笑った。

 

 その笑みを見て、友人たちはさらに嬉しそうな顔をする。

 

「ほら、今の」

 

「今の笑い方、前より自然」

 

「やっぱ変わったよな」

 

「……そんなに分かりやすい?」

 

「分かりやすい」

 

「めちゃくちゃ」

 

「ユウト本人だけ分かってないやつ」

 

 友人たちの言葉は軽い。

 

 茶化すようで、でも本当に喜んでいる。

 

 それが分かって、ユウトは少しだけ目を伏せた。

 

「心配かけてたなら、ごめん」

 

「そこは謝るとこじゃないって」

 

 獣人の少年が笑う。

 

「まあ、元気そうならいいんじゃね?」

 

「そうそう。細かいことは青春の一言で処理できる」

 

「便利すぎるだろ、その言葉」

 

 そんなふうに、朝の教室はいつも通り賑やかだった。

 

 しかし、その様子を廊下側から見ている三人がいた。

 

 火威青。

 

 音乃瀬奏。

 

 轟はじめ。

 

 ユウトの後輩三人組である。

 

 青は、壁に背を預けながら腕を組んでいた。いつものように外向きの整った立ち姿で、中性的で涼しげな雰囲気をまとっている。近くを通った女子生徒がちらりと見ていくくらいには、相変わらず見栄えがいい。

 

 ただ、奏とはじめは知っている。

 

 この人は、漫画の話になった瞬間、王子様ムーブが崩壊する。

 

 奏は、青の横で少しだけ頬を膨らませていた。

 

 はじめは、教室の中のユウトをじっと見つめている。

 

「……ユウト先輩、変わったっしゅね」

 

 はじめがぽつりと言った。

 

「うん」

 

 奏が頷く。

 

「変わった。絶対変わった」

 

「笑い方、前よりやわらかいっしゅ」

 

「そうだね」

 

 青が静かに言う。

 

「よかった。よかったんだけど」

 

 そこで言葉を切る。

 

 奏は横目で青を見た。

 

「けど?」

 

「悔しいよね」

 

 青は、ユウトの教室の中を見たまま言った。

 

「僕たちだって、先輩のこと見てたじゃん。なんか抱えてるのも、たまに遠いところ見てるのも、ずっと気になってた」

 

「……うん」

 

「でも、先輩をここまで変えたのは、僕たちじゃない」

 

 その言葉に、奏は黙った。

 

 はじめも、少しだけ目を伏せる。

 

 ホロライブ。

 

 青たちは、その名前をもう無視できなくなっていた。

 

 ユウトが最近、オルタナティブシティへよく行っていること。

 

 端末に届く通知を、時々見られない角度で確認していること。

 

 会話の中で「YAGOOさん」という名前が自然に出たこと。

 

 何より、ホロライブの事務所へ行った後のユウトが、少しずつ変わっていたこと。

 

 ただのファンや知り合いではない。

 

 何かがある。

 

 それくらい、三人には分かっていた。

 

 分かっているからこそ、胸がざわざわする。

 

 自分たちは同じ学校にいる。

 

 同じ日常の中にいる。

 

 放課後に声をかけられる。

 

 一緒に遊びにも行ける。

 

 それなのに、ユウトの心の深い場所に触れたのは、自分たちではなかった。

 

 ホロライブだった。

 

 それが、嬉しくて。

 

 悔しくて。

 

 少し寂しかった。

 

「青くん」

 

 奏が静かに言う。

 

「うん?」

 

「嫉妬してる?」

 

「してる」

 

 青は即答した。

 

「だいぶ正直」

 

「ここで格好つけても奏ちゃんにはバレるでしょ」

 

「まあ、バレる」

 

 はじめが、ぎゅっと拳を握った。

 

「はじめも、ちょっともやもやするっしゅ」

 

「だよね、ばんちょう」

 

「ユウト先輩が元気になったのはうれしいっしゅ。でも、はじめたちじゃないのが、ちょっとくやしいっしゅ」

 

 はじめの言葉は、素直だった。

 

 その素直さに、青は少しだけ笑う。

 

「じゃあ、今日はぶつけようか」

 

「ぶつける?」

 

 奏が眉を上げる。

 

「先輩に」

 

「物理?」

 

「いや、まあ、二割くらいは」

 

「二割残さないで」

 

「じゃあ気持ちを」

 

「それならよし」

 

 青は、いつもの王子様めいた笑みを浮かべた。

 

「今日の放課後、先輩を遊びに連行します」

 

「結局、言葉が物理」

 

「青たん、連行って悪いことするみたいっしゅ」

 

「ばんちょう、今日だけはそれくらいの勢いでいいんだよ」

 

 奏は少しだけ考えて、それから頷いた。

 

「いいと思う。ホロライブの人たちにユウト先輩が変えられたなら、私たちは今のユウト先輩を振り回す」

 

「そういうこと」

 

 青は、教室の中で友人たちと話しているユウトを見つめた。

 

「難しい過去とか、ホロライブとの関係とか、そういうのはまだ分からない。でも、今のユウト先輩と放課後に遊ぶことはできる」

 

「うち、くれーぷ食べたいっしゅ」

 

「いいね、ばんちょう。ゲームセンターも行こう」

 

「ショッピングモールも」

 

 奏が言う。

 

「駅前のところなら、放課後でも間に合う」

 

「決まりだね」

 

 青は小さく笑った。

 

「先輩、今日は覚悟してください」

 

 その声は、楽しそうで。

 

 少しだけ拗ねていて。

 

 それでも、ちゃんと後輩らしいわがままに満ちていた。

 

 ~~~~~~~~

 

 放課後。

 

 授業が終わり、教室がいつものざわめきに包まれた。

 

 部活へ向かう者。

 

 魔導端末で予定を確認する者。

 

 友人と遊びに行く相談をする者。

 

 すぐに帰る者。

 

 ユウトは鞄を整理しながら、今日の予定を考えていた。

 

 特に用事はない。

 

 ホロライブの誰かから連絡が来るかもしれないが、今日は早めに帰って休むつもりだった。

 

 あまりにも週末が濃すぎた。

 

 デンライナー。

 

 ゼロライナー。

 

 過去。

 

 未来。

 

 屋上の歌。

 

 大会議場での挨拶。

 

 体よりも心が疲れている。

 

 だから、今日は静かに帰ろう。

 

 そう思っていた。

 

「先輩」

 

 背後から声がした。

 

 振り返ると、青がいた。

 

 その横に奏。

 

 そして、はじめ。

 

 三人とも、妙に真剣な顔をしている。

 

「青、奏、はじめ。どうした?」

 

「捕獲です」

 

「え?」

 

 青がユウトの鞄の取っ手を掴んだ。

 

 奏が反対側に回り込む。

 

 はじめが正面に立つ。

 

 退路が消えた。

 

「……何をしてるんだ」

 

「先輩を捕まえてます」

 

「見れば分かる」

 

 ユウトは青を見る。

 

「理由を聞いてる」

 

「今日、先輩は僕たちと遊びます」

 

「急だな」

 

「急です」

 

 奏が頷く。

 

「でも決定事項です」

 

「僕の予定は?」

 

「確認します」

 

 青が人差し指を立てる。

 

「今日このあと、外せない予定ありますか?」

 

「……ないけど」

 

「じゃあ決定です」

 

「早い」

 

 はじめが、ぱっと顔を明るくした。

 

「ユウト先輩、きょうは、はじめたちとあしょぶ日っしゅ!」

 

「遊ぶ日」

 

「そうっしゅ!」

 

「いや、気持ちは嬉しいけど、三人にも予定があるんじゃないのか?」

 

「空けました」

 

 青が言う。

 

「空けたのか」

 

「はい」

 

 奏も頷く。

 

「ユウト先輩を連れ回すために」

 

「連れ回すって言い方」

 

「じゃあ、付き合ってもらうために」

 

「意味はあまり変わってないな」

 

 青は、少しだけ笑った。

 

 いつもの整った笑顔。

 

 でも、目の奥に拗ねた色がある。

 

「先輩」

 

「何?」

 

「最近、ホロライブの人たちといろいろありましたよね」

 

 ユウトは一瞬だけ黙った。

 

 青は、それを見逃さない。

 

「やっぱり」

 

「……」

 

「今は、詳しく聞きません」

 

 青は、少しだけ目を伏せた。

 

「でも、先輩が変わったのは分かります」

 

 奏が続ける。

 

「前より、ちゃんとここにいる感じがします」

 

 はじめも頷いた。

 

「うれしいっしゅ。でも、ちょっと、もやもやするっしゅ」

 

「もやもや?」

 

「はいっしゅ」

 

 はじめは、自分の胸に手を当てた。

 

「はじめたちも、ユウト先輩のこと、しんぱいしてたっしゅ。でも、ユウト先輩をらくにしたのは、はじめたちじゃなかったっしゅ」

 

 その言葉は、まっすぐだった。

 

 ユウトは、返す言葉を探して止まる。

 

 奏が小さく息を吐く。

 

「だから、ちょっと悔しいです」

 

 青が、正面からユウトを見た。

 

「嫉妬してます」

 

「嫉妬」

 

「はい」

 

 青は隠さなかった。

 

「先輩にというより、ホロライブの人たちに。先輩をそんな顔にした時間に。僕たちの知らないところで、先輩の心に触れた人たちに」

 

「……青」

 

「重いこと言ってる自覚はあります」

 

「あるんだ」

 

「あります。でも、今日はそれを言う日なので」

 

 奏が少しだけ笑った。

 

「青くん、開き直った」

 

「奏ちゃんも同じ気持ちでしょ」

 

「否定はしない」

 

 はじめが元気よく手を上げる。

 

「はじめもっしゅ!」

 

「だから、今日は私たちのわがままを聞いてください」

 

 青は言った。

 

「難しい過去の話はなし。ホロライブの話も、今はなし」

 

 奏が指を立てる。

 

「今日のユウト先輩は、私たちの放課後に付き合う先輩です」

 

 はじめがにこっと笑う。

 

「いっぱい、ふりまわしましゅ!」

 

「宣言するんだな」

 

「しましゅ!」

 

 ユウトは、三人を見た。

 

 ホロライブのライバーたちとは違う。

 

 前の世界の記憶を持っていない後輩たち。

 

 ゼロノスも、デンライナーも、桜井ユウトが消えたことも知らない。

 

 だからこそ、今の自分だけを見ている。

 

 今の自分が変わったことに置いていかれたような寂しさを、正直にぶつけてきている。

 

 困る。

 

 少し照れる。

 

 でも、嫌ではなかった。

 

「……分かった」

 

 三人の表情が一斉に明るくなる。

 

「本当ですか?」

 

 奏が確認する。

 

「うん。ただし、あまり遅くならない範囲でな」

 

「やった」

 

 青が小さくガッツポーズをした。

 

 はじめはぴょんと跳ねる。

 

「やったっしゅ! ユウト先輩げっとっしゅ!」

 

「捕まえられたんだな、僕」

 

「はいっしゅ!」

 

 ユウトは苦笑した。

 

「で、どこへ行くんだ?」

 

 青が胸を張る。

 

「まずは駅前のショッピングモール」

 

 奏が続ける。

 

「それからゲームセンター」

 

 はじめが手を上げる。

 

「それから、くれーぷっしゅ!」

 

「結構しっかり連れ回す予定だな」

 

「はい」

 

「はい」

 

「はいっしゅ」

 

 三人の返事は揃っていた。

 

 ユウトは鞄を持ち直す。

 

「じゃあ、行くか」

 

 その瞬間、青がユウトの腕を軽く引いた。

 

「では、先輩はこっちです」

 

「歩ける」

 

「知ってます。でも引きます」

 

「なぜ」

 

「嫉妬してるので」

 

「便利な理由だな」

 

「今日は万能です」

 

 奏が反対側からユウトの袖を掴む。

 

「私も今日は遠慮しません」

 

「奏まで」

 

「青くんだけに任せると、かっこつけて変な方向に行くので」

 

「奏ちゃん、ひどくない?」

 

「実績に基づいています」

 

「今日その言葉、強いな」

 

 はじめは、ユウトの前を歩きながら振り返った。

 

「ユウト先輩、はやくはやくっしゅ!」

 

「分かった、分かった」

 

 ユウトは思わずそう返していた。

 

 その口調が、ホロライブのライバーたち相手より少し砕けていることに、自分でも気づいた。

 

 三人の後輩に挟まれるようにして、ユウトは教室を出る。

 

 廊下にいた友人たちが、その様子を見てにやにやした。

 

「おー、ユウト、連行されてる」

 

「完全に捕まってんじゃん」

 

「青春だな!」

 

「だから何でも青春で片づけるな」

 

 ユウトが言うと、獣人の少年が親指を立てた。

 

「がんばれ。あの三人、目が本気だ」

 

「助けてくれないのか」

 

「無理。俺たちには荷が重い」

 

 悪魔の少年が笑う。

 

「ユウト、骨は拾ってやるよ」

 

「遊びに行くだけでそこまで行くのか」

 

 エルフの少女が、くすっと笑った。

 

「桜井くん、楽しんできて。たぶん今のあなたには、そういう時間も必要だから」

 

 ユウトは少しだけ驚いて、それから頷いた。

 

「……そうだな」

 

 青が、その返事に少しだけ満足そうに笑う。

 

「さあ、行きますよ。今日は遠慮しませんから」

 

「ほどほどにしてくれ」

 

「ほどほどにはしません」

 

 奏が言う。

 

「でも、楽しくします」

 

 はじめが両手を上げる。

 

「ぜったい、たのしくしましゅ!」

 

 ユウトは、少しだけ肩の力を抜いた。

 

「じゃあ、よろしく」

 

「そこは」

 

 青が振り返る。

 

「『今日は付き合ってやるよ』くらいでいいんですよ、先輩」

 

「僕には難しい」

 

「じゃあ練習です」

 

「練習?」

 

「放課後の先輩ムーブ練習」

 

「また変な課題が増えたな」

 

 奏が笑う。

 

「ユウト先輩、課題多いですね」

 

「多すぎる」

 

 はじめがにこにこしながら言う。

 

「でも、はじめたちがてつだいましゅ」

 

 ユウトは、三人を見る。

 

「……ありがとう」

 

 青が一瞬だけ照れたように顔を逸らした。

 

「そういうところですよ」

 

「何が?」

 

「すぐ真面目にありがとうって言うところ」

 

 奏が頷く。

 

「でも、そこがユウト先輩っぽいです」

 

 はじめも嬉しそうに言った。

 

「ユウト先輩は、ユウト先輩っしゅ」

 

 その言葉に、ユウトは一瞬だけ足を止めそうになった。

 

 ユウト先輩は、ユウト先輩。

 

 前の自分でもなく。

 

 誰かの記憶の中にいる存在でもなく。

 

 今ここにいる自分として。

 

 後輩たちは、そう呼んでくれている。

 

 ユウトは、小さく笑った。

 

「そうだな」

 

「はい?」

 

 奏が振り向く。

 

「いや。何でもない」

 

「気になります」

 

「内緒」

 

「うわ、ユウト先輩が内緒って言った」

 

 青が少し驚いた顔をする。

 

「成長ですね」

 

「何の?」

 

「後輩を振り回す力」

 

「身につけていい力なのか、それ」

 

 はじめが元気よく言う。

 

「いいっしゅ!」

 

 奏が笑った。

 

「はじめがいいって言ってるので、いいです」

 

「奏まで」

 

 青が、ユウトの腕を引く。

 

「さあ、行きますよ。まずはショッピングモールです」

 

「はいはい」

 

「そのあとはゲームセンター」

 

「分かった」

 

「最後はクレープ」

 

「覚えた」

 

「そしてユウト先輩には、私たち全員のおすすめを一口ずつ食べてもらいます」

 

「急に重い予定が追加されたな」

 

「嫉妬してるので」

 

「本当に万能だな、その理由」

 

「今日は万能です」

 

 ユウトは、三人に連れられて学校を出た。

 

 夕方の街には、雨上がりの名残が残っていた。

 

 水たまりが空の色を映し、魔導ネオンが少し早めに灯り始めている。

 

 ホロライブ事務所での大きな時間から一夜。

 

 今度は、学校の後輩たちとの小さな放課後が始まる。

 

 過去を見たユウト。

 

 未来を見たユウト。

 

 そして今、青、奏、はじめに振り回されるユウト。

 

 それもまた、桜井ユウトの新しい時間だった。

 

 放課後の騒がしい列車は、切符も改札もなく、三人の後輩によって強制的に出発した。

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