カースオブレッシング   作:なとり

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今のとこ二人パーティ。結構不便なことが多いらしい。


あいつらはおかしいと誰かが言った

 うっすらとした雲が北へ北へと流れていく。

 肌に刺さるような冷たい空気は冬の(あかし)

 (すで)に年は越しているとはいえ、春の匂いは遠くにあった。

 だが、夜の熱気はいつの季節も変わらない。

 蒼然(そうぜん)とした闇の下、迷宮都市オラリオは今日も変わらず賑わっていた。本日の仕事を終えた労働者達、神々を招いて盛大な宴を開催する商人、路上で晩酌している自由人達の姿もある。また、酒に酔った鍛冶師が酒場を破壊したり、どこぞの薬師(ハーバリスト)が夜逃げの用意をしていたり、美しい顔の吟遊詩人(バード)が歌いながら踊っていたり。歓楽街と呼ばれる区画では別の意味で娼婦(しょうふ)が踊り、オラリオは色んな光景で溢れていた。

 ある種、節操のない熱気。それが世界の中心と謳われる迷宮都市オラリオの空気であり、人口百万人を超える同都市は、人類最後の砦とも言われている。

 

 

 ──オラリオが滅びれば神も人類もお終いだ。

 

 直下にダンジョンという()()()を有していることもあり、オラリオには強者が多い。外の者達から『魔境』とまで言われるほど、強さのレベルがおかしい場所。今日に至るまで数多くの伝説を紡いできた英雄の都であり、避けられぬ終末を払い除けるためにはオラリオが何とかするしかない。

 終末とは、十七年ほど前に人類最強の軍団を呆気なく全滅させたモンスター、今は北の最果てで眠っている黒き隻眼の竜のことである。

 

 

 ──黒竜。

 

 

 神々も人類も未だかつて勝てたことのない天敵は、いつか目覚めて全てを滅ぼす。そのいつかに備え、あるいはその前に討伐せしめんがために、オラリオの冒険者達は日夜(きば)を研いでいるのだ。

 

 

 

『……?』

 

 彼女はふと右を見た。半身の頭部が消えていた。いや正確には潰れて上体にめり込んでいた。しなやかな手足が不規則な動きで暴れている。

 

『……?』

 

 彼女は次に左を見た。半身の頭部が砕けていた。決して割れない仮面はそのままで、しかし顔は右と左に分かたれており、口から引き裂かれた蛇のように歪な形に変わっている。

 

『……?』

 

 彼女は最後に下を見た。暴風の中で滝が暴れ水晶の道が砕け散り、先程までと風景は変わらず。しかしこざかしい人間達は消えていた。何度切り裂いても何度引き裂いてもしぶとく襲いかかってきた、あのチイサナ人間共。切り刻んで叩き落としてやったから、今度こそ消滅したか。

 

 

 

「──やっと終わりですか! しぶとすぎて嫌になりますね、なんなんですか貴方(あなた)

『……!‍?』

 

 彼女は翼の後ろに気配を感じた。ほぼ同じ時機(タイミング)、頭部を失った二体の半身が落下を始める。

 その時点で既に()()を欠損していた彼女は、あえなく頭部を失った。めり込むでも左右に裂けるでもなく、()()()()()()()。袈裟斬りのように血みどろの杖でぶっ叩かれ、皮が伸びたところに赤い剣でトドメを刺された。

 

 

『ァ ゥ■ソラ  ■ラ ァ□ェ□セ  カ□ガッッ!』

 

 

 褐色の肌がドス黒く変色し、離れた頭部が理解不能な断末魔を叫ぶ。半身達が落下した滝の当たりがおぞましい色に変色した。彼女もまた後を追うように水面に叩きつけられ、漆黒の水しぶきが、上がった。

 そして目をかっ開くのは、堕天使というか闇落ちした女神というか、そんな感じの謎のモンスターをぶっころした冒険者達。二人仲良く白い外套をバサバサいわせながら落ちていく、ベルでありヘイズであった。

 

 

「た、倒したのはいいけどっ、あの黒いとこに落ちるのは、ヤバそうっ」

「生憎と空を走ることはできませんし、どーしましょー」 

 

 

 今日も今日とてバーサーカーな二人。

 派閥内外から一定の評価を得ている童顔(ベビーフェイス)なベルと、白衣の天使とか堕天使とか魔女とか呼ばれているヘイズは、仲良くモンスターを惨殺撲殺しまくっていた。キャッキャウフフと戦利品(ドロップアイテム)やら経験値(エクセリア)やらを稼いでいたのだが、この滝と水晶の領域で見たこともないモンスターを発見。これは倒して試すしかないと襲いかかり、見事にぶちのめした。イマココ。

 

「こ、攻撃魔法で反動をっ」

「ビームとか出せたら楽しそうですよねー、今度発現してみてくださーい。ボルトファイアイグニスボルト! なんちゃってー」

  

 ヘイズは謎の呪文名を唱えたが、なにもおこらなかった。そしてグングン落下していく二人の体。このままでは劇毒というか呪いがかかっているようにしか見えない水の中に一直線。

 二人は困った。

 即死はないにしても命に関わる呪いは困る。周りには助けてくれる他の冒険者とかいないし、もし解呪できなかったらアウトだ。

 

「仕方ありませんねー、ベル、()()()()()()()()()()()()()

「! 前にやったことのあるやつですね! それならちゃんと二人とも吹きとべますし!」

 

 ヘイズの提案を受けて、ベルは即座に剣を鞘におさめた。その後はタイミングを合わせてドカン! お互いの体を剣と杖でぶん殴りあって、二人は狙い通りに吹っ飛んだ。

 

「っっっ、ぐうっ!‍?」

「あひゃふぅー」

 

 見事、呪いの泉への落下を回避して、「グハァッッ」「あはんっ」とその辺の壁に着弾して、そのままめり込んだのだった。

 滅茶苦茶(メチャクチャ)である。

 そんな様子を物陰から見ていた都市最強の男、オッタルは、威容のある低い声を漏らした。

 

 

「……今のモンスターは、まるで三相の女神のようだったが……新種か……フレイヤ様に報告を」

 

 オッタルは獣耳を揺らすと、力強い足取りで通路の奥へと消えて行った。目的は果たせなかったが、まあいい。更なる戦いを求めてダンジョンを進んでいたら、たまたま二人を見つけたので、この際だから例のことを謝罪しておこうと思ったのだが、忙しそうだしまたの機会とした。

 例のこととは、ヘイズとベルが連れてきた助っ人を()()()()()()()()()()()()()()ことだ。洗礼の蘇生作業を手伝ってくれていたのだが、衝撃派みたいなやつで意識を刈り取ってしまった。しかし大きな問題ではないだろう。命に別状はないのだから。

 

「……うむ」

 

 オッタルは早足で先に進んでいく。

 モンスター共は見瞬殺滅。今回はどこまで行けるか。それはわからないが、前回の記録は必ず更新する。オッタルは戦意をみなぎらせた。女神への手土産も前回と同じではいけないから、なにか探さなければいけないし、やることは多い。とりあえず怪物の臓腑はなしで。それ以外で考えてみようと思った。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 ベルは神妙な顔で「うーん」と唸った。

 えっちな格好の女体型モンスターだった。

 それも三匹まとめてセットで。だからって誘惑されたりはしないが、あの肉感は凄まじいものがあった。フレイヤが巨大化したらあんな感じだろうか。ちょっと違うような気がした。

 

「なんだったんですかねー、コレ」

「わかんないですけど、この黒い水は持って帰りましょう。聖女様(アミッドさん)に渡せば分析してくれると思いますし」

「そーですね。押し付けちゃいましょー。私も専門分野ではありますが、チマチマ調べてる時間があるなら、お金と経験値が欲しいのでー」

 

 ヘイズは「ちゅろろー」と、回復薬(ポーション)の空き瓶に黒い水を汲み上げた。いつものことながらズタボロである。安くない装備は破れる・裂ける・穴だらけのオンパレードだ。半分くらい意味のなくなっているタイツが眩しい。

 

「そういえば、なんか喋ってましたよね」

「あのモンスターですか? たしかに喋ってましたけど、聞き取れました? 僕は無理だったんですけど……」

「私も無理でしたよ。耳を澄ませるとウエってなる感じで、なんだったんですかねー」

 

 魅了(チャーム)や呪詛といった精神攻撃の類かとも思ったが、体に異常はなかった。時間差で何か起こるのかもしれないから気は抜けないが、今のところは二人仲良く元気である。まあ、主に血が足りていないせいで顔色は悪いが。途中で腕がなくなったり片足がもげかけたりしたから、傷は治っても血液の生成が追いついていないのだ。

 

「はい、採取かんりょー! 新種の呪いでやばいやつだったら怖いので、今日のところは帰りましょうか」

「そうですね……前は急に踊り出すやつとかありましたし、あれは時間差10時間くらいでしたよね」

「そうですよ。ですので油断は禁物なのです。いくら即死がないとはいえ、階層主の前で踊ることしかできなくなったりしたらオシマイですから」

 

 その呪いは頭をぶん殴るだけで治る簡単なやつだったが、二人パーティでどっちも使いものにならなくなるとオシマイである。まあ、その出来事をきっかけにして対精神攻撃用の防具をつけるようにしたから、今はホイホイ呪われたりはしないだろうが。

 冒険者にとって状態異常への対策は大切である。

 耐異常(たいいじょう)という状態異常に強くなるアビリティはあるが、それで全てを防げる訳ではないし、ベルに関しては耐異常すらないし。

 

 

「では地上に向かってしゅっぱーつ!」

「はーい。新種のモンスターを倒したことですし、うっかりランクアップしてたりしませんかね……」

「それは【ステイタス】更新してみないことにはなんとも。ですが、肌感覚的に今回も無理そうですねー」

「ですよね。僕もそう思います」

 

 会話しながら薄暗い通路を走り、モンスターは()()して駆け抜ける。倒してしまうと()()()が必要になるからだ。

 モンスターの胸に埋まっている『魔石』。

 ギルドで換金できる収入源だが、残念ながらこれ以上は荷物が持てない。だからって倒したまま放置するのはいけないことだ。他のモンスターが死体の魔石を取り込んだ場合、強化されてしまうからだ。

 たまにガンガン魔石を喰って超強化されるモンスターが現れることがあるが、そういった場合は高確率で死人が出る。

 倒した後は放置ダメ、絶対、である。

 

 

「荷物すてていきたいですねー、その辺の横穴にぽいぽいぽーいって。走るのに邪魔です」

「そろそろサポーターとか雇います? 前も話したことありましたけど……」

「そうですねー。私達のペースについてこれる人ならいいんですけどねー、そういう方々がフリーでいるとも思えませんし、上手くいかないものですねー」

 

 ちなみに、主に荷物の運搬をサポートしてくれる職業で『サポーター』というものがある。

 どれだけ強い冒険者でも持てる荷物は限られているので、いてくれるとすごく助かる存在だ。ダンジョン探索系の派閥(ファミリア)は自前で見繕っていることが多いが、【フレイヤ・ファミリア】の主戦場はフォールクヴァング。そもそもが人格破綻者の巣窟で、協力プレイできる人間が少なすぎるという事情もある。

 

「あ、酒場から誰か連れてくるとか」

「ナシで。私達がそんなことをしたら、法外なお金を要求されますよ。店主から」

 

 豊穣の女主人という酒場がある。

 そこの店員はLv.4が何人かいるから、荷物持ちだけならついてこれるとは思う……というか普通に戦力になってくれるだろう。だが、何日も借りたりしたら店主から金を要求されること間違いなし。

 女将のドワーフは唯我独尊な暴君で、特に【フレイヤ・ファミリア】に当たりが強い。

 

「もし奇跡的に良さげな人がいたら、相談して決めましょー」

「はい。そうしましょう」

 

 二人がサポーターを手に入れることのできる日は訪れるのだろうか。ちなみに金ははずむ。常人の倍以上のペースでモンスターを狩りまくっているので、散財しつつも金はどんどん増えていくのだ。

 現在の貯金は合算で120000000くらい。

 二年ほどで稼いだ額は倍以上だが、冒険にかかる経費と浪費で結構消えた。かなり無駄遣いもしているのだが、いつ死ぬかわからない職業だからオールオッケー。ただしえっちなお店は禁止だと、ベルはかなり強めに言われている。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 以下、現時点でベルが組んでる基本パーティ。

 

 

 ベル・クラネル

 16歳

 ヒューマン、男

 所属【フレイヤ・ファミリア】

 Lv.3

 

 弱いままでいることに焦りを感じる十六歳。

 もっとやらなきゃヤバいと思っている反面、たまに無気力かつ消えたい衝動に襲われることがある。

 人当たりは良い方で普段の思考回路はかなり善人。

 しかし戦いすぎで頭のネジを何本か無くしており、そのせいもあってか奇行が多い。

 善人だが堕落気味(意味深)でバーサーカー。

 その歪さが呼び寄せるのは、同じくらいかそれ以上に頭のネジが外れた異性である。なお、ベルの祖父は『気立ての良い普通の村娘がお似合い』だと言っていたらしいが、普通の娘と結婚したりしたら泡を吹いて倒れる。妻の方が。

 血みどろで笑いながら戦うヘイズを見ていたら、限界突破して戦うことのできるスキルが出た。そのせいで思っくそ人生が狂っていることに、本人は気づいていない。

 

 

以下、【ステイタス】

 

 

Lv.3

力:S999 耐久:SS1072 器用:A887 敏捷:SS1099 魔力:S999

灼壮:H 蕩走:I

 

《魔法》

【カースオブレッシング】

呪詛(カース)

・対象者と全スキル効果を共有。

・共闘時のみ効果永続。

損傷(ダメージ)分担、即死不可。

堕落(だらく)の丈に応じて自動回復付与。

堕落(だらく)度不足の場合は失敗(ファンブル)

 

《スキル》

 

不朽拒眠(フォース・リブート)

任意発動(アクティブ・トリガー)

・継戦能力超強化。

・必要休息の大幅削減。

・推奨、週休半日。

 

失争求譚(オブリオン・サーガ)

・肉体の損傷度に応じた『逆境』効果。

・連戦時、発展アビリティ『進境』の一時発現。

連続撃破(チェイン)数に応じた経験値(エクセリア)獲得効率上方補正。

 

 

 

 

 ヘイズ・ベルベット

 20歳

 ヒューマン、女

 所属【フレイヤ・ファミリア】

 Lv.3

 

 

 主神のようになりたい、というかフレイヤそのものになりたいと夢見ていたが無理だった。後から入ってきたヘルンとかいうヘルンがフレイヤになれる魔法を発現した時は、世界の滅びを祈った。でも世界が滅びたら愛する主神が困るからやっぱりダメ。

 それならばせめて、主神のために永遠に戦い続けられる戦士になりたいと願っている。でもそれもムリそうだったから内心で発狂していたら、ベルが素敵な魔法とかスキルを発現してくれたのでハッピーになった。

 ある時、治療魔法の才能が開花したが、団員共を癒したい願望などない。あくまでヘイズは撲殺する側の人間である。だが、溢れんばかりの治療の才能が認められてしまい、洗礼で蘇生役に徹しろとか言われて何回かブチ切れたことがあった。しばらくは我慢していたが、最近はダンジョンすることにした。完全に責任放棄するのは良くないので、大金とレアドロップ素材を報酬にして代わりの人物に手伝わせている。  

 

 

 

以下、【ステイタス】

 

 

Lv.3

力:S999 耐久:SS1099 器用:A899 敏捷:S999 魔力:SS1111

治療:H 不滅:I

 

《好感度》

 

∞∞∞∞∞ だんちょー

SSSSS きちくえるふ

SSSS  にゃーにゃーさま、おなじかおのこびと

SSS   くそみたいなかみがみ

SS    くそざこもーどのヘルン

S     よいやみのだーくないと

A     ぼぶ・あんだーそん

????? べる

 

※ランクとイライラ度は連動している。

 ∞∞∞∞∞は限界突破ということ。

 

 

《魔法》

【アース・グルヴェイグ】

・おーとひーる。

・ほかのひとにもかけれる。

・きらきらする。

 

【ゼオ・グルヴェイグ】

・だいたいみんなかいふくする。

・きらきらする。

 

《スキル》

 

黄金忠心(マルディ・タース)

・とってもきらきらする。

・かなりきらきらする。

 

金領光域(フレア・フリームニル)

・まりょくムキムキ。

・こーいきかくだい。

 

戦野構築(ライフ・フォールクヴァング)

・めんどいからじこかいふくきょうか。

・けつえきじぶんでつくらせる。

・ぼうふてきしょち。

 

楽園構築(アヘア・フォールクヴァング)

・ちょうかいふく。

・りらくぜーしょんふぁいあー。

・ぽーしょんせいせい。

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