拝啓、常識が通用する世界で生きる皆様。いかがお過ごしでしょうか。
私は今、常識が通用しない世界におります。
はい、そうです。転生です。
わたくし、現代異能物の世界に転生しました。
しかもSFチックな近未来系、魔法が科学として研究され人類の英知に吸収される世界にございます。
パチパチー。わぁい異能バトル、わたし異能バトル大好き。
そんな私の趣味趣向がどこぞの神様に通じたのか、私の大好きなライトノベル『とある魔術の禁書目録』に登場する学園都市第2位の超能力者、垣根帝督の『
はい、冒頭の伏線を回収しましたね。
ただ、ここは私の愛しの『とある魔術の禁書目録』の世界ではないようで。まあ、ていとくんの成り代わりとか碌なことにならんので寧ろありがたいと思うべきなんだろうけど。そのせいか『
具体的には、本来の『
もっとも、『無から未知の物質を新しく創り出す』というよりは原作で
え、何言ってるか分からん? 要は
ただし何でも創れるというわけでもなく、法則についてある程度厳密な定義を与えてやる必要がある。異界の法則性と、それがこの宇宙に存在するあらゆる従来物質と相互作用した場合に物理法則がどう変わるのかを演算し、矛盾を起こしたり自己崩壊しないよう設計する必要があるのだ。創れても未元物質無しで安定しなきゃ『それ未元物質でよくね?』になって意味がないからね。
というか、科学的に定義された『まだ見つかっていない』とか『理論上存在するかもしれない』物質の方が簡単に創れる。超対称性粒子とかね。
それを踏まえると
私の能力についてはそんな感じ。
で、次にこの世界について。多分なんらかの創作作品の世界だとは思うんだけど、心当たりが無い。知らないのか欠落したのか、原作知識無いんだよね。
まあ、知らないことは気にしたってキリがない。
問題は、転生先の家系がちょっと物騒なこと。身の危険感じるね。親ガチャ失敗か?
でもSF物のディストピアなら倫理観終わってるのなんてあるあるだし、こんな物かもしれない。
しゃあない、切り替えていけ。今世は異能バトルしつつ能力を極めていこう。
実家なんかあてにしちゃだめ。自己防衛、修行、あと海外移住、四葉脱出だよね。
え? させない? ソンナー
姉の深夜が司波龍郎との間の子を身籠ると、四葉真夜は冷凍凍結された自らの卵子を姉の子宮に移植した。
姉に対する復讐であったのか、それとも自らの子が欲しかったのかは誰にも分からない。遺伝子上の夫も不明である。
ともかく、この代理出産によって世界に異物が誕生した。
生まれた双子は、真夜の子である姉には真白、深夜の子である弟には達也と名付けられた。
しかし、彼らには問題があった。
四葉家当主である四葉英作が双子の魔法演算領域を解析したところ、姉には『創造』、弟には『分解』と『再成』という魔法が占めていた。
出産直後、四葉家では彼らの処遇を巡って論争が巻き起こった。
ある者達は、世界に破滅を齎す力を持つ達也を恐れて殺処分するべきと主張した。
ある者達は、世界に混沌を齎す力を持つ真白を恐れて殺処分するべきと主張した。
一方で、達也と真白が同時に生まれたことには意味があるとする主張もあった。
二人の存在は互いに抑止力であり、調和することで完全となり、四葉に繁栄を齎すのだと。
そのような信仰に近い楽観主義は、理解できないものへの現実逃避からくるものだった。
当主の英作をもってしても真白の魔法演算領域は解析不可能な部分が多かった。
それもその筈、『創造』と名付けた彼女の特異魔法は、分かる限りでは物質を生み出したり異なる物質へと変換する魔法だった。これはまさに、現代魔法学では不可能とされている物質変換魔法や元素変換魔法そのものである。ゆえに現代魔法学ではその原理を解析することも、説明づけることも困難であった。
『創造』は原理不明という脅威性よりも、物質変換魔法により齎す恩恵が余りにも大きすぎたため、寧ろ新たな魔法技術の発展可能性を秘めた研究対象として四葉内で歓迎する者は多く、達也よりも肯定的に受け入れられていた。
問題は、真白が達也と同様に魔法演算領域を『創造』に圧迫されて通常の魔法を使えないことである。このせいで、真白は世界を破壊する力を持つ達也を抑え込む『誓約』の術者―――深夜の後継にはなれない。
『創造』だけでは達也の力に対する不安と恐怖を払拭できない四葉一族の声は大きく、結局、双子の出産から11か月後には『完全調整体』となる深雪が産まれることになった。
そして二人の誕生から6年。通常の魔法を扱う魔法演算領域のない真白と達也に対し、「強い情動を司る部分」を消去し人工魔法演算領域を植え付ける人造魔法師実験が行われた。
しかし達也に対しては成功したその施術は、真白に対しては効かなかった。深夜の精神構造干渉魔法が、何故か弾かれたのである。術式解体のような派手な衝撃もなく魔法式が謎の干渉を受けて崩壊し、意味のないサイオン情報体となって不発に終わった。何度試みても失敗するため、止むを得ず真白に対する施術は断念された。
以後、魔法師になれなかった真白はその利用価値たる『創造』魔法を研究するためだけに生かされることになる。一方で優れた魔法力を持ち、達也に対しての抑止力となる『誓約』の素質が期待される深雪は次期四葉家当主の最有力候補となった。
真白と達也二人の誕生当初は双子の相互補完論を唱える一部の者達によって達也を真白のガーディアンとする案が提示されていたが、それも人造魔法師実験の失敗がトドメとなり完全に途絶えた。
それから、深雪が生み出された目的と彼女が次期当主最有力候補であることを考えれば、達也が深雪のガーディアンになるのは自然の流れであった。
私は生まれついて、『未元物質』という超能力とその応用兼副産物として生えてきた『創造』魔法しか使えなかった。
私としては別にそれで満足だし、何かおまけもついてきたのでやったーって感じなんだけど……固有魔法だけで一般的な魔法を使えないと、魔法師として世間にお出しすることはできないらしい。
双子の弟の達也くんと揃ってその欠陥があり、手術で無理矢理なんとかしようとしたけど失敗。多分『未元物質』のオート防御に弾かれたんだと思う。まだ自分でも制御できんかったんや、すまんな。
成功した弟は何とか最低限の人権を得られたけど、私の魔法師としての道は完全に見限られた。
魔法は有用だけど世間には見せられないということで、一生軟禁状態。魔法師として欠陥があるからというより、固有魔法が前代未聞すぎて秘匿したい気持ちの方が強かったみたいだけど。
資質が貴重すぎてモルモット―――というほど雑な扱いは受けなかったが、私生活まで管理されるのは流石にストレスがマッハ。
「私、大きくなったら実家を出て独り立ちするんだ……」という考えが透けていたのか、度々釘を刺される始末。遺伝子上の母である真夜様がそれを見かねて不満を汲んでくれたおかげで、私のために造られた専用の研究施設の中にプライベートルームが貰えたり、自分でやりたい実験もできるようになった。まあ、既にこそこそやってはいたんですけどね。それでも実験設備使えるのは嬉しい。
そうそう、『未元物質』のことは四葉家にも隠している。そんじょそこらの創作世界では再現できないヤバすぎる代物なのでね。家の人達が知ったら何するかちょっと想像できんし……。
彼らも『創造』魔法という表面上の力しか見えていないし、それだけでも十分摩訶不思議すぎて解明の目途が立っていないので、そうそうバレることはない。
ちなみに、四葉の人達は毎日興奮しながら研究してる。私も彼らに混ざって研究してるけど、脇から見てると「んほ~この魔法式たまんねえ~!」って感じ。
楽しそうでよかった。
さて、『創造』魔法は私も興味深々な研究対象ではあるのだけど、本命は別。
『未元物質』を使いこなせるようにならなくては。
というわけで、まずは白垣根くん目指してイクゾー! デッデッデデデデ!(カーン)
はい。
苦節10年弱の修行パートを全編カットし、見事、弱点を克服しました。
そうです。『未元物質』で人体を補完し、自分の複製体を作りだす無限増殖を身に付けました。
私は人間をやめたぞ! ジョジョーーッ!!
自立して勝手に主導権握られないように制限を掛けているので、安心安全。まあその分、手動で命令下さないといけなかったり、私が直接操作しないと複雑すぎる行動はできないんだけど。でも凍結されたバックアップを複数用意しているので、万が一私の精神体が破壊されても無問題。不死性は健在だ。
しかも原作の垣根くんが示唆するだけでついぞ至らなかった『
固有魔法の性質上ついてきた『
……で、そこまでは良かったのですが。
未元物質に限らず、異能大好きな私のことです。
調子に乗って好き放題使いまくっていたら、四葉の人に見られました。
これには当然、四葉家発狂。
しかし案ずることはない。私は既にアルティメットシィング真白。
生まれたばかりの未元物質オート防御だけならワンチャンあったかもしれんが、白垣根モードに突入した今、四葉など敵ではない。残機無限と化した私を止められる者などおらんわフハハ。
「『
でも社会的地位はどうにもならんのよね、はい。
この十数年で分かりました。魔法師は出国制限が掛かってるし、亡命してもまともな扱いを受けるとは限らない。というか私の能力を知ったら絶対ろくなことにならないし、四葉を出ようが出まいが変わらない。
身を隠すこともできるが、家出=社会性を捨てるということ。他人に成りすますくらい造作もないが、そうすると表立って活動できなくなる。今世でドはまりしてしまった魔法研究ができなくなるし、いずれはしようと思っている論文発表もできない。
異能力というロマンは、誰しもが享受できるべきだ。科学は、開かれているべきだ。
もはや私が四葉を離れるデメリットはメリットを凌駕している。
だから、もう洗いざらい吐くことにした。ここまで来たら四葉は脅威ではない。
「自分を複製して魔法演算領域を拡張……ですか」
目の前に立つ
「ええ、四葉らしいわね」
真夜様が凄く満足気な笑みを浮かべている。
確かにこれって、セルフ調整体&セルフ人造魔法師実験みたいなものかも。
「あの、真夜様」
「お母さん、でいいのよ?」
「……御母様」
この人には何故か頭が上がらない。
遺伝子上の実母というのもあるけど、カリスマ美魔女なのがね。
なんというか、キャラクターとしての格が違うのよ。
「怒りはしないのですか?」
「真白さんが何か隠しているのは分かっていたわ。隠し事が下手だもの」
「うっ」
そんなに顔や態度に出てる?
「真白さんの周囲では魔法式の作用が狂ってしまうのは分かっていた事ですし、『創造』魔法の先に私達が知らない何かがあるのは明白よ」
流石に四葉も馬鹿ではなかった、ということか。
「恐れながら、真白様。身内であっても切り札を隠すのは、魔法師にとっておかしなことではありません」
「えっ」
「ふふ、魔法師としての常識を知らないのは、これまでの教育の弊害ね」
自意識過剰ってこと? 何それ恥ずかし。
「常識は通用しねぇ」って、そういう意味じゃねえから!
「そうだわ。そこまで罰が欲しいと言うなら、私のお願いを聞いてくれるかしら」
そして1年後、私は外にいます。
シャバの空気が美味いぜ……。
まさかこのような日がくるとは。
国立魔法大学付属第一高校。
私は、その敷地内に立っている。
学校とか、今世では自分とは縁のない世界だと思っていたけど……いざ前にすると、なんかこう、来るものがあるよね。
私は涙を拭った。
―――私の人生は学園異能物だったんだ……!