「こ、こんにちは。貴方が真白さんね」
七草真由美は、声を震わせながら、その少女を出迎えた。
「? 貴方は……」
「私はこの学園の生徒会長を務めています、七草真由美です」
今、世界で最も身柄を狙われている人物の名を挙げろ、と言われたら、何人かは目の前にいる彼女を挙げるかもしれない。彼女の固有魔法、そしてその優れた頭脳を手に入れるためなら手段を選ばない勢力は、国内外問わず心当たりがあり過ぎる。
だというのに、四葉真白の傍にはボディーガードの一人もいなかった。
真由美は汗が伝うのを感じた。
「生徒会室まで案内します」
今年度の入試主席である彼女は、明後日、入学式で新入生総代として壇上に立つことが決まっている。打ち合わせに当たってこちらから出迎えたのは、彼女ほどの重要人物を一人で歩かせるわけにもいかないと考えたからである。その身に何かあったとしたら、どこにどれだけの責任が飛び火するか分からない。
筆記も実技も1位。実技試験では歴代トップ……どころか異常すぎる結果を叩き出して、不正を疑われた程。筆記に関しては……言うまでもない。
四葉真白。
十師族の一つである、
それだけで、魔法師は畏怖の念を抱くだろう。
だが、こと彼女に至っては、姓よりも名の方が重いかもしれない。
全ての魔法師、そして魔法研究者にとって、彼女の存在はあまりにも大きい。
観測される限り、人類史上初の物質変換魔法の使い手。
そして、その一部である物質生成魔法を確立し、全世界に発表した人物。
『対生成による物質生成魔法』、『物質特性からの構造情報演算』、『イデア通信網と並列演算』、『事象の境界面内のイデア観測における情報限界面』等々。
当時、弱冠15歳にも満たない少女が出した論文に、学会は騒然となった。
特に物質生成魔法は、非魔法師の間でさえ話題になった。論文をしっかり読めば、現状実用的な量の金原子の生成が不可能であることは明白であったが、メディアが書いたセンセーショナルな記事が市場にパニックを齎した。
『マシロショック』と呼ばれる一時的な金価格の大暴落があったくらいには、世界にその名を轟かせたのだ。
……実際の所、魔法式が公開されている物質生成魔法ではなく彼女の固有魔法である『創造』魔法であれば、錬金術が可能であることは魔法研究者達の間では周知の事実だった。
世間の懸念は全くの杞憂というわけではなかったのだ。
そのため彼女だけが使える物質変換魔法も、十師族や政府機関との交渉の末、日本政府の許可なく世界経済を著しく混乱させる量の貴金属の生成を控えるよう契約が交わされたり、法律改正がされたことで、国内での混乱は一応終息した。
それでも金資源の産出量が乏しく都市鉱山に頼ってきた日本としては、彼女の魔法を利用しない手はない。政府が真白から独占的に買い上げることで、日本は世界有数の産金国(魔法で生成するのを産出量に含めるなら、だが)に成りあがっていたりする。
当然そんなことをすれば、世界中から非難が殺到する。政府は国内の金価格の暴落を防ぐためにも市場への流通量は明確な基準を定めて絞っており、世界的な金価格の暴落には繋がらないと説明している。
実際その言葉に嘘はないのだが、非難を続ける諸外国がそれで黙る筈もない。
彼女を手に入れれば、世界の金市場を、あるいは経済さえも掌握できる。
彼女の存在だけで、戦争が起こってもおかしくはないのだ。
そんな彼女が、今―――真由美の目の前で、一人でぽつんと立っている。
はっきり言って、ありえない。
(これがどれだけの心労を招くか、こっちの身にもなってちょうだい!)
とはいえ、あの四葉家のことだ。十中八九どこかから彼女を監視して、警護はしているのだと思いたい。
「……あ、CADだ!」
「ええ、本校では生徒会役員と風紀委員はCADの携行が認められているの」
(本当に、大丈夫よね?)
お上りさんのようにキラキラした目であちこちに視線を飛ばす真白を見ていると、少し不安になってきた。
結果として、入学式は恙なく進行し、大したトラブルを招く事は無かった。
「まずは、第一高校の教職員の皆様、そして先輩方にご挨拶申し上げます」
新入生代表として壇上に立った真白は、うやうやしく一礼した。
「……魔法は、百年前まではオカルトに過ぎませんでした。しかし今では、私達はそれを技術として体系化し、科学的見地の上で探求することが叶いました。共に入学される新入生の皆さん。その当たり前に感謝を込め、先人達への敬意を忘れず、魔法を学んでいきましょう。そして、各人が全力を振るって知識と技術を競い合えることを期待します」
百歩譲って魔法実技ならともかく、智慧や知識でこの少女と競い合える人間が全国の高校生にいるのだろうか……。聞いていた生徒全員の顔が引き攣っていた。
最後の1年の学校生活、生徒会長としてこの怪物後輩を御しきれるのか、不安は依然として残ったままだった。
■
「初めまして、真白さん。私は司波深雪と申します」
「これはどうも。四葉真白です」
教室の空気が凍った。
できるだけ波風立てず、露骨に腫れ物扱いしている感じにはならないよう、四葉真白には必要な時以外は関わらない。そういう暗黙の了解ができつつある中で、深雪ちゃんから突然の挨拶。
血縁上従姉妹にあたる関係だし、お互いのことは知っている。ただ、深雪ちゃんと直接顔を合わせるのはこれが初めて。
喜ばしい邂逅だけど、深雪ちゃんと達也君は素性を隠している身。四葉としての身分を公にしている私と近づくのは、あまりよろしくない。だからどう接するべきか掴みかねていたんだけど……どうやら、深雪ちゃんは私と仲良くなりたいらしい。結構人懐っこいというか、寂しがり屋なのかな。
幸い、私の容姿は深雪ちゃんよりも分家の亜夜子ちゃんに似ている。私は亜夜子ちゃんをより大人っぽくした感じだと思っているが、葉山さんには若かりし頃の御母様に似ていると言われた。そう言われると、二人の中間と表現するのがぴったりだ。おかげで、どちらかといえば今は亡き深夜様に似ている深雪ちゃんとは血縁関係を一目で見抜かれる心配はない。
それにわざわざ同じ学校に入学させた以上、御母様も考えあってのことだろう。接触禁止なんてことは無い筈。
考えてみれば、これまでまともに無かった従姉妹の仲を育むチャンスかもしれない。
「自分から話しかけるなんて……深雪はやっぱり凄い」
落ち着いた声音の少女と、オドオドした少女が深雪ちゃんの後ろに立っていた。
「雫、それは真白さんに対して少し失礼ではないかしら」
「……ごめんなさい」
このダウナー系?の子は雫と言うらしい。
「そんなこと気にしないよ。私だって同じ立場ならそう思っただろうし」
うちはサイバーパンク物の漆黒メガコーポばりの倫理観だからな……。やってることは秘匿されてるけど、どうせ裏で色々やってるのは十師族共通だし、悪名は轟いている。
というかまさに、この状況が全てを物語っているし。
「正直な人は好きだし。よろしく、雫さん」
「私は北山雫。よろしく、真白さん」
「あ、あの! 私は光井ほのかです!」
「よろしく、ほのかさん」
うん、いいね。なんか感動しちゃう。
あ、やっと……ぼっちが終わったんやなって……
「早速友達が3人もできちゃったね。いやぁ、これも深雪さんの度胸のおかげかな。ありがとう」
「やめてください、まるで私が図太いみたいではないですか」
と、まあいい感じに友達を作れて、入学二日目までは平穏な学生生活を過ごしていた。
少なくとも私の視点では。
そして、三日目。
しゅいーん。すー。
しゅいーん。すー。
これ何の音か分かる? これね、ミ〇プルーンの苗木。
嘘です。四角いロボット掃除器みてえなやつが魔法で動く音です。
今は、据え置き型教育用CADを使って台車を往復させる実習の最中。
1-Aで仲良くなった深雪ちゃんと雫さん、あとほのかさんの4人で固まって、一つのCADを使ってる。
1-Aは皆優秀なので、先生が使い方を教えるまでもない。入学試験にもあったし。そういうわけで慣らしもほどほどに、タイム計測会と化していた。別にこのタイムが成績に記録されるわけじゃないけど、先生が見て回って改善点を指導してくれる。
「れ、0.1秒……!?」
ほのかさんが私の記録を見て驚く。
やろうと思えばもっと早くできるけど、あんまり早くしすぎるとシステムが不正を疑う。
教育用CADを使うという制限がない何でもありのフルパワーでやれば、さらに早い。CAD側の一連の処理の方が遅すぎるという逆転現象が起こるので、理論上の頭打ちがあるのだ。
「私の半分以下の時間で発動してしまうなんて、流石は真白さんですね」
深雪がニコニコと笑顔を向けてくる。
とはいえ、この実習は発動速度だけが全てじゃない。これは、全工程通しての速さ―――つまり加減速における加速度の大きさなど総合的な魔法力を計測するものだ。
だから展開速度だけが全てじゃないと謙遜しようとしたが……すぐにやめた。全行程時間は最速だったからね。これで謙遜したら嫌味でしかない。
「一応、十師族だしね」
開き直って、胸を張ってみる。
「……」
あれ、空気固まってない?
「ほのか、ここは多分笑顔で拍手するところだと思う」
「ええっ!?」
流石雫さんはいいとこのお嬢さん、世渡りが上手い。
これに比べると真白さんのはカスや。
―――なんてこともあって、午前中最後の授業が終わった。
これまで研究の時間を取るために帰宅RTAを決め込んでいた私だが、そろそろ生徒会長の『お話』の催促から逃げ切れなくなってきた。家の用事と誤魔化すのも限度がある。
生徒会に興味はない。学園異能物的展開は歓迎だけど、雑務は勘弁。研究に集中したい。
と、いうわけで。
「深雪さん、生徒会に興味ないです?」
「私が、ですか?」
身代わりになる人を連れて行けば、会長も引き下がってくれるかもしれない。入試次席だった深雪ちゃんなら、生徒会として申し分ないだろう。
深雪様ぁ、ここはなにとぞ身代わりになっていただけないでしょうか。四葉の次期後継者筆頭候補として、七草先輩のような十師族と交流を持っておくのは将来きっと役に立つんじゃないでしょうか~?
と、この場では口に出せない意図を、片目ウィンクに乗せて伝えてみる。
「……」
絶望的に下手なウィンクでは伝わらなかったらしい。深雪ちゃんは困ったように愛想笑いを浮かべている。
「私と一緒に生徒会室に行ってくれないかな? まずは会長から話を聞くだけでもいいからさ」
「そこまで仰るなら、断るのも忍びないですね。お兄様と一緒であれば構いませんよ」
「たt」
言葉を遮るように、深雪さんが私の口に指を添えた。
小首を傾げながら、ニコリと微笑んでいる。
「……深雪さんってお兄さんいたんだーへー」
危ねーッ!
そうだそうだ、達也くんのこと知ってたらおかしいよね。まじ有難う深雪ちゃん、いや深雪様!
「はい。是非真白さんにもご紹介させていただきたく」
はっ! もしかしてそっちが本命か。私と達也くんに顔合わせさせるために。
正直、達也くんには合わせる顔が無いんだよね。あの非人道的な人造魔法師実験で殆どの感情を失った彼と、免れた私。別に私が悪いわけじゃなくても、気まずさはある。
同じ高校に通う以上、逃げ続けていたところでいずれは遭遇するだろう。仕方無いか。
達也くんを呼びにいった深雪さんと、生徒会室の前で合流することにした。
「紹介するわ、真白さん。こちらが私のお兄様です」
「!?」
達也くんが、何かに驚くように大きく目を見開いて、こちらを凝視してくる。
かと思えば、次の瞬間には険しい表情で睨みつけてきた。
顔こっわ。これ、やっぱり恨み抱かれてるやつ?
んー、でも何をそんなに驚いてるんだろうか。御母様の方から、私が同じ学校に通うことは知らされていた筈。深雪ちゃんも別に驚いてはいなかったし。
「どうされました、お兄様?」
「……いや、何でもないよ深雪。深雪の兄の司波達也だ、よろしく」
「深雪さんのクラスメイトの四葉真白です。真白でいいですよ。上で呼ぶと周囲がざわつくので」
「なら、俺のことも達也でいい」
「んー、異性を呼び捨てするのはなんか恥ずかしいんですよね。同性でも呼び捨てはしませんし。達也くんで」
挨拶を交わすと達也くんの表情は戻ったが、明らかに警戒は解けていない。さりげなく深雪ちゃんと私の間に立ち位置変えたし。
「えっと……じゃあ、早速お邪魔しましょうか」
気まずい空気を振り払うように、ドアホンを鳴らす。
七草先輩の嬉しそうな声と共にロックが解除され、中に入る。
「来てくれたのね、真白さん。でも、深雪さんと達也くんまで?」
「えっ、ご存じなんですか? もしかしてお知り合い?」
「入学してくる前から、将来有望そうな子には目をつけていますから。顔を合わせるという意味なら、入学式の時に」
「私は、昨日の件で初めてだ」
風紀委員長の、ちょっと男勝りな先輩が含みを持たせた笑みを浮かべた。
「昨日の件?」
「先輩、あまり吹聴するようなことでは……」
「いいじゃないか、達也くん。生徒会に入るのなら、この学校で起きているトラブルについて知っておくべきだ」
まるで、それを聞いてしまうと入らなければいけないみたいだ。断るつもりで来た私にとってちょっと気まずいが、二人を連れて来た時点で断られる可能性を察して外堀から埋めてこようとしているのだろうか。
ともかくその先輩、摩利先輩から自己紹介をされ、他にも書記の中条あずさ先輩、会計の市原鈴音先輩とも挨拶を交わした。
そして私達は、食事をしながら昨日の件について簡潔に聞いた。
何でも1年生の一科生と二科生の間で、深雪ちゃんを巡って争いがあったようだ。CADまで持ち出して一触即発だったところ、七草先輩達が止めに入った。その時、達也くんが展開中の起動式を読み取って、生徒達が危険な魔法は使っていないと弁護したらしい。
「何それ羨ましい! 私も見たかった!」
おいおいおい、私抜きで随分楽しそうなことしてるじゃあないか達也くんよォ~~?
私も仲間に入れてくれよ~。
「ま、真白さん? 喜ぶべきことではありませんよ? 生徒間での暴行事件になるところだったのですから」
「でも致死性は無かったんでしょう? どうせ魔法師を兵器扱いするなら、バカスカ魔法撃ちあって切磋琢磨させた方が良いと思うんですが」
「……今のは聞かなかったことにするわ」
七草先輩が頭を抱える。と、そこで摩利先輩が口を挟む。
「いや、魔法訓練の推奨自体は間違いではないだろう。ただ、突発的な諍いで魔法を行使するのは危険だし、私怨が籠ると行き過ぎてしまうこともある。そのために模擬戦がある。基本的には生徒会長の宣言と風紀委員長の認可で行われている」
へー。
「でもそれって、揉め事があった時に模擬戦で解決するという生徒間での習慣や文化がないと、無許可での魔法戦闘を抑止する効果は薄いですよね?」
「……たしかに、一理あるな」
「実際に争い事を解決するために模擬戦をしたいと言ってきた生徒はどれくらいいるんですか?」
「まあ、私が風紀委員長になってから増えはしたが……」
「それでも、今回みたいな問題は起きるわけですよね? 特に新入生ではそういう制度を知らない人もいるでしょうし」
実際、私がそうだった。
―――真白に電流走る。
「あ、そうだ。私が生徒会長になったら、
「……は?」
「何だと?」
「え、えええええ!?!?」
七草先輩が青い顔で、摩利先輩が耳を疑うように、市原先輩が静かに目を開いて、そして中条先輩が大きな声で驚く。
「まず、生徒は入学試験や制度導入時の成績でランキング化して上位半分を一科生とします。自分よりランキングが上位の生徒の言うことは、法と校則が許す限り絶対であり従わなければなりません。従わなかった場合は警告のち除籍処分です。全校生徒は学期ごとに最低一度は模擬戦を行わなければならず、挑まれた模擬戦は必ず受けなければならない。そして、模擬戦の結果で互いの順位を入れ替えることにしましょう! つまり、一科生が模擬戦で二科生に敗北したら二科生と入れ替わります。そしたら一科生も二科生も必死になりますよね! これならあらゆる争いごとは全て模擬戦で解決させて私的な争いを阻止できます! あと、生徒会長も立候補者同士での模擬戦で決めましょう! うわあめっちゃ楽しそう!」
こんなこと思いつくとか私天才か?
天才だったわ。中学生でトップカンファレンスのベストペーパーに選ばれてたわ。
「じょ、冗談よね?」
「いえ本気ですよ? 私は生徒会長の権限と四葉家の影響力、そして『四葉真白』個人の財産と影響力の全てを使って、学校の内外に働きかけ、このマニフェストを全力で実行します」
「……」
「あわわわわ……」
四葉の名を出すと、七草先輩はあまりに完璧な計画にぐうの音もでなくなったのか、閉口した。
中条先輩は私の天才的な発想に感涙にむせびながら慌てふためいている。
「いや待て、生徒会選挙のルールは校則で決まっている。変えるには―――」
「あ、どうせなら一高だけじゃなくて魔法科高校全部に導入しましょう! 総理大臣や国会議員達にもロビー活動して動いてもらいましょう! 国が動けば学校側が校則ごと変えてくれますよね!」
「」
「せ、せんぱーい!? 息をしてくださーい!!」
私の影響力があれば、国は余程論外な要求でなければ断れない。そもそもここまで魔法師の兵器化を推してきたのは国だし、前向きな国会議員はいる。諸手を挙げて賛同してくれるだろう。
そして七草先輩は、それができかねない力があることを理解していると見える。
「さあ、七草先輩! 私を生徒会に入れてください!」
「……!」
「まさか君は……これが狙いか?」
そう。全ては私が生徒会に入ったら、という前提だ。
「う~ん……七草先輩の顔的にはあまり歓迎されてないみたいですね。うわー困ったなー主席が生徒会に入らないなら誰が入るんだー」
「深雪さんを連れて来たのはそういう意味?」
「真白さん、私に擦り付けるつもりだったのですか?」
「擦り付けるだなんてそんな。私は入りたいのになー! 七草先輩がなー!」
―――数分後。
深雪ちゃんが 生徒会の 仲間になった!
あとついでに達也くんが風紀委員になる流れになってる。なんでや達也くん関係ないやろ!
「ふ、君がこんな面白い人間だとは思わなかった。まさか真由美の方から勧誘をやめさせるとはな。君があの四葉ということもあって、絶対入らせてみせると意気込んでいたんだぞ? 冗談がうまいな」
「そうですね」
「『そうですね』? ……本当に面白い奴だ」
入ったらマジでやるつもりだったんだけどなあ、残念。
……いや。思いつきにしては面白そうだし、入らなくてもやろうかな?
「もう昼休みも終わりそうだし、一旦お開きにしましょうか。ただ、真白さん。生徒会の勧誘は諦めたけど……たまにでいいから、できれば生徒会に顔を出して欲しいの。貴女を勧誘したのは四葉家の人間ということを抜きにしても、生徒会の目の届く範囲に居て貰った方が安心だからよ」
「生徒会だけでなく、風紀委員側としてもだ」
「恐らくは学校や国としても、ね。校外では四葉の人達が貴女を警護しているんでしょうけれど、校内のトラブルは別。ほら、何かあった時、誰が責任を……ってことよ」
「最近は何かとトラブルも多いようだしな」
ちらり、と摩利先輩が深雪と達也の方へ視線をやる。達也がばつが悪そうに、咳払いをした。
「それなら大丈夫ですよ。深雪ちゃんとは同じクラスですし、一緒に行動することも多いので生徒会の目の届く範囲でしょう?」
「そこまで織り込み済みか?」
「まさか。深雪ちゃんを連れて来たのは私ですし、その責任もあります。仰る通り、生徒会にたまに顔を出すくらいはしますよ。手が空いていれば、手伝いくらいはできます」
「いいのか? 君はてっきり生徒会と関わるのが嫌なのだと思っていたが」
「嫌というか、面倒なだけです。研究で忙しいので」
そういう訳で、無事私の帰宅部継続が決定した。
ところで、さっきから達也くんの視線が痛い。また警戒度が上がってないかコレ?