インフィニット・ストラトス 受け継がれる光の絆 作:ジーク・フリューゲル
二日目。今日は一日中ISの各種装備試運用とデータ取りが行われる。専用機持ちは大量の装備が用意されている。ということで他の一年生の邪魔にならないように、専用機持ちは少し離れた場所に集められていた。
「ふぅ。さて、ようやく全員集まったか。―――おい、遅刻者」
「は、はい」
ラウラが呼ばれた。珍しく遅刻したのだ。
「ISのコア・ネットワークについて説明してみろ」
「は、はい。ISのコアはそれぞれが相互情報交換のためのデータ通信ネットワークを持っています。これは―――(以下IS三巻参照)―――現在も進化の途中であり、全容は掴めてないとのことです」
「今回は免除してやろう。さっさと列に入れ」
「はい」
ラウラは少ししょんぼりしながらも列に入った。
「・・・・・」
「む、おい一夏、どうした?」
「・・・え。あ・・ああ別に何でも」
「あんた今朝から変よ。千冬さんから聞いたけど昨日何処に行ってたのよ?」
「・・・ちょっとな」
一夏は昨日部屋に戻ると千冬に何処に行ってたか聞かれた。一夏はファウストに呼び出されて話をしたと言った。ファウストとの戦いの事は離さなかった。千冬は「無茶をするな」と言ってそれで終わった。
「ではこれよりISの各種装備試験運用を始める。それと篠乃ノ。お前はこっちにこい」
「はい」
「今日からお前は」
千冬が箒に連絡事項を伝えようとした瞬間向こうの砂浜から
凄まじいほどの砂ぼこりをあげて何かがこちらに迫って来ていた。
「ちーちゃ~~~~~~~~~ん!!!」
現れたのは希代の天才、篠ノ之束である。束は勢いを殺さずにそのまま千冬に抱きつこうと飛びかかるが千冬は片手で顔面をキャッチした。
「やあやあ!会いたかったよ、ちーちゃん!さあ、ハグハグしよう!愛を確かめ―――ぐぇっ」
「うるさいぞ、束」
「うぐぐぐ。相変らず容赦のないアイアンクローだねっ」
束は千冬の拘束から抜け出し、箒の方を向く。
「じゃじゃーん!やあ!」
「・・・どうも」
「えっへへ、久しぶりだね。こうして会うのは何年ぶりかなぁ。おっきくなったね、箒ちゃん。特におっぱいが―――ぶっ」
「殴りますよ」
「な、殴ってから言ったぁ。箒ちゃんひどい!」
「それより束。自己紹介しろ」
「オッケー。ええっと、私が天才の篠ノ之束だよ。はい終わり」
『はやっ!?』
その場にいた者達がそう思った。
「やあいっくん、久しぶり」
「お久しぶりです。束さん」
「うんうん久しぶり。見ない内にたくましくなったね」
「まあそう言う者ですよ人は。ところで何しに来たんですか?」
「それは、大空をご覧あれ!」
束が上空を指さすと全員が上を向いた。すると何かが落ちてきた。
ズズーンッ!
「うわっ!?」
落ちてきたのは金属の塊だった。金属の塊は量子変換により消える。中から出てきたのは紅色のISだった。
「じゃじゃーん!これぞ箒ちゃん専用機こと『紅椿』!全スペックが現行ISを上回る束さんお手だよ!さあ!箒ちゃん、今からフィッティングとパーソナライズを始めようか!私が補佐するからすぐに終わるよん!」
それでは、頼みます」
「箒ちゃんのデータはある程度先行して入れてあるから、後は最新データに更新するだけだね」
空中投影のディスプレイを六枚ほど呼び出すと、膨大なデータに目配りをしていく。瞬時に切り替わっていく画面にも全部しっかりと目を通している。
「ほい。フィッティング終了~。超早いね。さすが私」
紅椿に連結されてあったケーブル類が外れていく。
「相変わらず早いですね」
「まあね。そんじゃ、試運転もかねて飛んでみてよ。箒ちゃんのイメージどおりに動くはずだよ」
「ええ。それでは試してみます」
箒は目を閉じて集中するとすごいスピードで上空へと飛翔。そのまま二百メートルほど上空で滑空していた。
「どうどう?箒ちゃんが思った以上に動くでしょ?」
「え、ええ、まあ」
「じゃあ刀使ってみてよー。右のが『雨月』で左のが『空裂』ね。武器特性のデータを送るよー」
箒はデータを見た後に構えをとり、雨月で突きを放った。突きが放たれると同時に、周囲の空間に赤色のレーザが最初は球体として、そして順番に光の弾丸となって漂っていた雲が爆ぜる。
「いいねえいいねえ。それじゃあ次はこれを打ち落としてみてねぇ。はーい!」
束は嬉しそうに言うと十六連装ミサイルポッドを量子変換で呼び出し放った。箒は空裂を振り全部打ち落とした。
「―――やれる!この紅椿なら!」
(これで私も・・・一夏の力になれる・・・)
箒は喜んでいた。自分だけの力が手に入り一夏の力になれる事が。
「・・・よかったな、箒」
一夏は空を飛んでる箒を見ながら呟いた。
『これから貴様に闇の力を見せてやろう』
「!!」
一夏は後ろを振り向いたが誰もいなかった。
「一夏さん。どうしたんですの?」
「・・・いや、何でもない」
セシリアの問いに一夏はそう答えた。
「たっ、た、大変です!お、おお、織斑先生っ!」
山田先生が慌ててやって来た。
「どうした?」
「こっ、これをっ!」
山田先生が千冬に小型の端末を渡して何かのデータが表示される。
「特命任務レベルA、現時刻より対策をはじめられたし・・・テスト稼動は中止だ。お前達にやってもらいことがある」
千冬は専用機持ちにそう言った。
「では、現状を説明する」
旅館の宴会用の大座敷に専用機持ちと教師陣は集められた。証明を落とした部屋は薄暗く、大型の空中ディスプレイははっきりと見える。
「二時間前、ハワイ沖で試験稼動にあったアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代型の軍用IS『銀の福音』―――通称福音が制御下を離れて暴走。監視区域より離脱したとの連絡があった」
千冬が淡々と説明していく。一夏以外の全員が真剣な顔で説明を聞いている。
「その後、衛星による追跡の結果、福音はここから二キロ先の空域を通過することがわかった。時間にして五十分後。学園上層部からの通達により、我々がこの事態に対処することになった。教員は学園の訓練機を使用して空域及び海域の封鎖を行う。よって、本作戦の要は専用機持ちに担当してもらう。それでは作戦会議をはじめる。意見があるものは挙手するように」
「はい。目標ISの詳細なスペックデータを要求します」
最初に発言したのはセシリアだった。
「わかった。ただし、これは二ヵ国の最高重要軍事機密だ。けして口外はするな。情報が漏洩した場合、諸君には査問委員会による裁判と最低でも二年の監視がつけられる」
「了解しました」
全員の目の前に福音のデータが表示された。
「広域殲滅を目的とした特殊射撃型・・・・・・わたくしのISと同じオールレンジ攻撃を行えるようですわね」
「攻撃と機動の両方を特化した機体ね。厄介だわ。しかも、スペック上ではあたしの甲龍を上回ってるから、向こうのほうが有利・・・・・・」
「この特殊武装が曲者って感じはするね。ちょうど本国からリヴァイブ用の防御パッケージが来てるけど、連続しての防御は難しい気がするよ」
「しかも、このデータでは格闘性能が未知数だ。持っているスキルもわからん。偵察は行えないのですか」
「無理だな。この機体は現在も超音速飛行を続けている。最高速度は時速二四五〇キロを超えるとある。アプローチは一回が限界だろう」
「一回きりのチャンス・・・・・・ということはやはり、一撃必殺の攻撃力を持った機体で当たるしかありませんね」
全員が一夏の方を向いた。
「俺、ですか・・・」
「そうだ。白式の零落白夜の一撃で仕留めるんだ」
「ただ、アプローチに成功しても長期戦を想定するとエネルギーは余り使わない方がいいと思います」
「では誰かが織斑をそこまで運ぶと言う事だ」
「わ、私が――――」
「ちょーと待ったー!」
どこからか束が入ってきた。
「ちーちゃん。もっともいい作戦が私の頭の中にナウ・プリンティング!」
「・・・出て行け」
「聞いて聞いて!ここは断・然!紅椿の出番なんだよっ!」
「なに?」
「紅椿のスペックを見て!展開装甲を調整してホラ!」
「あの・・・展開装甲てなんですか?」
鈴が束に聞いた。
「展開装甲というのわね、この天才の束さんが作った第四世代型ISの装備なんだよー」
「第・・・四」
「各国でやっと第三世代型の試験機ができた段階ですわよ?」
「なのに、もう・・・」
その場にいた全員が驚いた。
「そこはほれ。天才束さんだからー。はーい。ここで心優しい束さんの解説開始~。まず、第一世代というのは―――(IS三巻参照)―――現在絶賛机上の空論中のもの。展開装甲は白式の《雪片弐型》にも使用されてまーす。試しに私が突っ込んだ~」
「つまり束さん、紅椿の全身が展開装甲?」
「うん。無茶苦茶強いね。一言でいうと最強」
再び全員が黙り込んだ。
「でも束もちょっと気になる事があるんだよね」
「何がだ?」
「白式だよ。私が設計した姿じゃないし。いっくん何かした?」
「いえ。何も」
「・・・束。それについてはこの件が終わったらゆっくり話してやる」
「本当!!サンキューちーちゃん!」
「では今回の作戦は織斑、篠ノ之の二名で行う」
「「はい!!」」
「各自、作戦開始まで待機!」
「箒」
「ん。どうした一夏?」
「もしも危ないと感じたら逃げろ」
「?何故だ」
「お前は専用機を貰ったばっかで経験が少ない。だから危ないと感じたら逃げろ」
「・・・わかった」
「それに」
「・・・・?」
「不穏な空気を感じるんだ」