インフィニット・ストラトス 受け継がれる光の絆 作:ジーク・フリューゲル
それではどうぞ。
ある日、一夏は学園の海が見えるベンチに座っていた。しかしその顔は暗かった。
「・・・・・」
ふと、一夏は気配を感じ顔を上げた。
「飲むか?」
缶コーヒーを差し出した千冬であった。
「千冬姉・・・」
「此処では織斑先生だ」
一夏が缶コーヒーを受け取ると千冬は隣に座った。
「お前、最近如何したんだ」
「何が・・・?」
「やけにずっと暗い顔をしているからな。あいつ等心配してるぞ」
あいつ等と言うのは箒達の事だろう。
「悩みがあるのなら言ってみろ」
「それは教師としてですか?」
「教師として、家族としてだ」
「・・・・・守れなかったんだ」
一夏は話始めた。
「守るって決めたのに・・・守れなった。大切な人を」
「・・・確かに大切なものを失うのは辛い。だがいつまでもそこに留まってはいかん」
千冬は語り始めた。
「今は辛いだろうが過去に囚われていてはその先には進めない」
「千冬姉・・・」
「だがけして怒りに駆られるな。冷静さを失えば自分が見えなくなってしまうかな」
千冬はそう言うとコーヒーを一気飲みした。
「どうだ。少しは力になれたか?」
「ああ。ありがとう、千冬姉」
「また悩みがあったら言ってみろ。お前は大切な家族なんだからな」
そう言って千冬はその場を去った。
「悩み、か・・・」
一夏は呟くと目を閉じた。
『グアアアアアアアッ!』
『助けて!助けて!』
『僕はお前を許さない!』
一夏は頭を押さえた。脳裏にノスフェルと一人の少女と少年がフラッシュバックした。
「また・・・あの記憶が」
一夏は頭を下げた。それはかつて起きた、消せない記憶であった。
千冬は道を歩いているとその足をとめた。
「そこに隠れてないで出てきたらどうだ?」
千冬は木に向かって言った。
「気付いていたのですか」
木の影からラウラが現れた。
「織斑先生、一夏の様子はどうだったんですか?」
「かなり落ち込んでたみたいだ。悩みを聞いてやったら少しは軽くなったらしい」
「そうですか・・・」
「どうした?」
「いいえ。何も」
千冬はその場を去り、ラウラだけが残った。
(アイツから感じるのは、恋人を失った悲しみだけじゃない・・・)
『・・・俺はただ、大切な物を失って悲しむ人の姿を見たくないんだ』
タッグマッチの時、一夏が言った言葉を思い出した。
「前にも、同じ事が遭ったのか?」
その夜、森の中にフードを被った人物がいた。
「来い、ノスフェル」
ズドオオオオォォォォォ
フードを被った人物が黒い槍を掲げると、地響きと共にノスフェルが現れた。
「グアアアアアアアッ!」
一夏は屋上に出ると、学園に向かってくるノスフェルを見た。
「あいつは・・・」
ノスフェルを見た一夏の脳裏に雪音と一人の少女がフラッシュバックした。そして内側から怒りが溢れてきた。
「お前だけは・・・・絶対に許さねえっ!」
一夏はエボルトラスターを掲げてネクサスに変身。
ネクサスはノスフェルの前に立った。
「シェア!」
ネクサスはノスフェルに突っ込み、タックルを打ち込んだ。が、ノスフェルに跳ね返された。ネクサスはパーティクルフェザーを放つが、ノスフェルは爪で弾くとアームボウル・マキシマムを放ちネクサスに直撃した。
「ジィア!」
ネクサスはすぐに立ち上がり、飛び蹴りを放ちノスフェルの顔面に直撃した。そして掴むと起き上がらせ、膝蹴りを撃ちこんだ。だがノスフェルは振り払い爪にエネルギーを纏わせ、アームボウルでネクサスを攻撃し、直撃した。
「グアァ!」
ネクサスは体制を立て直し、ノスフェルに向かった。
「織斑君、如何したんでしょう?いつもと戦い方が違います」
「・・・・」
モニター室で真耶はネクサスの戦い方に疑問をもった。いつもは冷静に相手の攻撃を防ぎ、避けながら戦うが今回はただ突っ込んで相手の攻撃を受けているだけだった。
(一夏、怒りに駆られるな。冷静さを取り戻せ!)
その頃、現場に箒達が到着した。
「皆、援護するぞ!」
「「「「了解!」」」」
箒達はディバイトランチャーでノスフェルに攻撃した。ネクサスはパーティクルフェザーを連射して放った。
「「「「「なっ!?」」」」」」
しかし援護している箒達に関係無く放った。箒達は急上昇して逃れた。
「ちょっと一夏!私達まで巻き込む気!?」
鈴は文句を言ったがネクサス突っ込みノスフェルの顔面に連続でパンチや蹴りを撃ちこんだ。ノスフェルは振り払い、アームボウルを放った。ネクサスはそれを喰らい、吹っ飛ばされた。
「グ・・・グア・・」
ピコン、ピコン、ピコン
倒れたネクサスのエナジーコアが点滅を始めた。ノスフェルは近づいてきた。
「させん!」
箒がクロムレイを持ちノスフェルの前に出た。
「ストライクバニッシャー、発射!」
箒はストライクバニッシャー撃ち、ノスフェルの眼に直撃した。
「グアアアア!」
目をやられ悲鳴を上げるノスフェル。ネクサスは立ち上がった。
「シュアアァァァ・・・ヘァ!」
ネクサスはクロスレイ・シュトロームをノスフェルに向けて放った。しかしその弾道上には箒がいた。
「っ!」
箒は後ろを振り向いたがクロスレイ・シュトロームはそこまで迫っていた。
「箒さん!」
その時、セシリアが飛んで来て箒を突き飛ばした。クロスレイ・シュトロームが後ろを通った。
「きゃあああああああああっ!!」
クロスレイ・シュトロームが通った余波を喰らいセシリアが墜落した。
「セシリアアアアアアァァァァ!!」
箒は叫んだ。クロスレイ・シュトロームはそのままノスフェルに直撃したが、ノスフェルは耐えきった。
「グアアアアア」
ノスフェルは後ろへさがると消えた。ネクサスは光に包まれ消えた。
パンッ
部屋の中に乾いた音が響いた。千冬が一夏の頬を叩いた音だ。部屋には二人を含め、箒達四人と真耶を入れて七人がいた。
「何だあの無様な姿は。何だ戦い方は!」
「お、織斑先生落ち着いてください!」
怒鳴る千冬を真耶が押さえた。
「援護してる篠ノ之達を無視し、挙句の果てにオルコットに重傷を負わせたんだぞ!」
セシリアはクロスレイ・シュトロームの余波を受けて重傷を負って、現在はメディカルルームで治療を受けていた。ブルー・ティアーズはダメージレベルCにいっており、現在整備科の生徒達が必死に修理していた。しかし破損している部分が酷かった為、イギリスから機材を発注しなければならない。どちらにしろ次の戦闘には参加出来ない。
「自分が何をしたか判っているのか!」
「・・・・」
千冬が怒鳴っても一夏は黙ったままだった。
「そんなにも憎いか?」
「・・・・・」
「そんなにも恋人を殺したあのビーストが憎いか!その為なら仲間を犠牲にしていいのか!?」
千冬は一夏の胸倉を掴み殴ろうとしたが箒や真耶達が止めて、一夏を放した。
「・・・にが・・・・判る・・」
その時、一夏が呟いた。
「い、一夏・・・?」
「お前たちに目の前で大切な者を失って悲しむ人の何が判るんだ!!」
一夏はそう言って部屋を飛び出した。
次回、彼女が一夏を引っぱたく