数多の世界のヤンデレ親友とのバッドエンドを見届けた俺、全ての記憶を引き継いでもう一週……え?!バッドエンドの方の親友達も記憶引き継いでるんですか?! 作:ハンノーナシ
えっちぬきの異世界ファンタジー系も描きたかったんやで。
これは俺の何処かの次元の、平行世界のお話。
俺が見た夢であり、確かな記憶。
それはより鮮明に映り出した。
──────
「やっと、お前と顔を合わせて話せる」
俺は魔の『王』となった親友『アルカ・レディア』に目を向ける。
アルカは余裕綽々と言った笑みで俺を見る。
魔王城までの道のりは苦楽の連続であった。
仲間と手を取り合い、助け合い。
とある『親友』の肩書きであった『勇者』を継いだ俺の日常は。
そんな小説のテンプレートのような友情物語が続いていた。
しかし、いつの日からだろう。
魔物達に仲間達は倒れ、光となり消えゆく。
「ライア……はぁ、ははっ。君は本当に……可愛らしい♡」
「……煽りか?」
「ん?本心だよ、勿論……僕の心の底からの、ね」
魔王であるアルカはその薄い青色の長髪を揺らしながら、深紅の瞳をこちらに向ける。
どうにも言い難い、圧倒的な威圧感に姿勢が崩れそうだ。
アルカとは、子供の時の幼馴染だった。
いつか二人で冒険者となり……『プラチナ級』になるのが夢だった。
そうしてふたりで冒険者となった時、アルカと俺には明確な『差』が産まれた。
天性の戦闘センスと人当たりの良さでアルカは次々と試練を乗り越えていく。
平凡であった俺は地道に薬草を狩り、小鬼を狩り、アルカに追いつく事に必死になった。
階級の差のある物はパーティを組むことが出来ないという原則から、俺とアルカの交流は段々と減って行った。
そして、いつの日だろうか。
アルカのパーティはプラチナ級に到達し『ギルドの顔』として言われる様な冒険者になった。
その頃俺はシルバー級……アルカとの差と『幼馴染』であると言う所から、ギルドの者達に些細な『弄り』や『貶し』を食らう。
「お前、アルカ様と幼馴染なの?万年シルバー野郎がアルカ様の顔に泥塗るなよな」
「アルカと幼馴染ってだけしかない癖に、いきがらないで?」
──────
ある日、俺はアルカの姿を見た。
仲間と笑い合い、共に飯を食べていた。
そんな時、さっき思い出したヤツらのクソみたいな貶し文句を……アルカに聞かれたんだ。
そんな時……アルカと目が合った。
アルカはやけに焦った様な顔をして……絶望をした、とも言える表情をした。
俺はアルカと目が合った瞬間、話しかける度胸も交友の深さもとうになかった。
俺はその場から逃げた。
恥ずかしさと自分の弱さに失望し切った。
家に篭もり、ベッドに包まる。
涙を流した、男だと言うのに……みすぼらしい格好で泣き喚いた。
次の日、俺はギルドを辞めた、冒険者を辞めた。
未練も無い、受付嬢に顔さえ覚えられていないだろうから。
他の親友達とは未だに交流があったので、とある親友の仕事を手伝うと言う約束をした。
地元に帰ってゆっくり自分のできる事をしよう。
予約していた馬車に乗り込む為、馬車の停留所に足を動かす。
そんな時だった。
「……ライア」
後ろから聞き覚えのあるが、少し低くなった声を聞く。
振り向くと、そこにはアルカが居た。
似合わない悲しそうな顔をしながら……拳を握りしめて。
「……アルカ、どうした?」
「ボク、全部聞いたよ。君がずっとバカにされてる事も、他の……酷い目に遭った事も」
「……今のお前には関係のない話だろ?他人の情に動かされんなって、今のお前はギルドのか……」
「関係あるよ!!!!!!」
アルカの怒号が辺りに響く。
人通りのない裏路地を通っているからか、あまり人の目はなかったが。
俺はその声を聞いて、少し足が震える。
「関係あるに決まってるじゃないか……ボク達はずっと親友で、同じ夢を見た同志なのに。君がいつも、頑張っている姿をずっと隣で見つめ続けていたかったんだよ……」
「……俺の事はもう良いんだよ、アルカ。俺には俺の、お前にはお前の道があって、その道はもう交われない……ただそれだけなんだ」
突き放す様にそう伝える。
あまりに無情で、酷い扱いをしたとは思っている。
けれど……アルカと俺の差は歴然で、俺に構うほどアルカの評判も下がっていきそうだったから。
俺が未だに心の片隅にいるのなら、忘れて欲しかった。
最後までアルカがギルドの顔としてこれからの安泰で幸せな未来を過ごすなら。
過去の要らない物は捨てるべきだろうから。
……そう告げると、アルカは空っぽの何かを失ったような顔をして。
こちらに歩み寄る。
歩く事が不慣れになってしまったかの様な足取りで。
「君が、いるから……ボクは冒険者になって、冒険者を続けていたのに……その『君』を失ったら……ボクの羅針盤は、何処に……」
「……もうその羅針盤って奴は、お前を迷わせる壊れた物に過ぎないんだ。お前には海の波に耐える大きな船も、風を見る仲間もいるだろ」
「は、ははっ……そうか。あんなに夢を見て、将来を輝かしい目で眺めていた君は、もう居ないのか。君をそこまで、悲観的で……絶望させたのは、何だ?」
その返答を出来る自信はなかった。
様々な事が絡み合った結果がこれだろうから。
強いて言うなら『俺』や、俺を蔑んだ奴ら。
それを纏めて言うのなら。
「人、だろうな」
──────……
「アルカ……ッ!目ぇ、覚ませ!!」
剣を振るう、目の前の魔王に。
アルカは剣を軽く剣身で受け止め、受け流す。
俺の顔を優しい顔付きで見つめながら。
ギリギリ、と剣が火花を散らす。
「君に、夢を与えたかった」
「与えてくれたよ、テメェの目を覚ますってな!!」
「……それなら、良かったかもね」
力任せに剣を振り下ろし続ける。
怒りで目が眩んでいるのは重々承知だ。
けれど、その怒りは……自らの無力と選択の後悔に対しての怒り。
「お前を魔王にさせたのは……俺の失態は自分で拭かなきゃなんないだろ……俺の、親友の苦痛も。あんなに幸せな未来を得ていた、お前が……何で……」
「違うよ、ボクを魔王にしたのは……君じゃない。『人』だろうね」
そっくりそのまま返される『あの時』の返答。
俺はアルカに弾き返され、距離を取る。
そうして、もう一度剣を構える。
「『勇者』は俺に言った、親友を取り戻せって。だから……お前を絶対に取り戻す。そして、罪を償って……もう一度、やり直すんだ」
「そうか、なら、ボクにも目標があるんだ」
アルカは俺に向かって手を向けると、俺の魔力を……奪った。
「……はっ。こんな事が出来るなら、最初からすりゃあ良かったのに」
「……君が感情的になった所が見たかったんだ。あの時別れてから……君の心を見たかった」
アルカはこちらに歩み寄ると、俺の顎を撫でる。
魔力を失った俺は必死に息をする事しか出来なかった。
「本当に可愛い……♡ボクの夢は、君ともう一度……夢を見る事なんだ。一緒に」
「……お前が昔の頃に戻ってくれたら、何度でも見てやるってんだよ」
「もう遅いよ、そして……君に選択肢は無いし、断る事は出来ないよ、ライア♡」
アルカは俺の頭に触れると、思考を奪う。
考えも、夢も、愛憎も、希望も。
全てを奪い去った暁に……こう言った。
「全てを失った君に、原初の希望を。良いかい?『ボクらは共に立ったプラチナ級冒険者……人間という敵を前にして、団結し……共に世界を救う』んだ」
洗脳、支配。
俺の思考が掻き消えていく、そして……目の前には『友』であり『冒険者』であり……『愛する者』であるアルカが居る。
何も考えられなくなっていく……最後に見えたのは。
俺とアルカが一緒に夢を語り合った空き地だった。
──────……
そうして俺は、一つの世界を救った。
仲間である『アルカ』と共に。
平行世界とか、違う次元の自分とか同一人物とか大好物なタイプのオタク、ハンノーナシと申します。