数多の世界のヤンデレ親友とのバッドエンドを見届けた俺、全ての記憶を引き継いでもう一週……え?!バッドエンドの方の親友達も記憶引き継いでるんですか?!     作:ハンノーナシ

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バッドエンドと言うよか、ビターエンドやね。
この子はヤンデレじゃないのに、次の二週目世界でヤンデレになります。
かわいそうだね。


親友『勇者ケイン・ニア』の場合

 

──────……

 

鼻歌が聞こえる俺の隣。

桃色の髪が風に揺れる、水色の瞳が街を見つめている。

俺の隣に居るのは『勇者』であり『親友』だ。

この女の子の名前はケイン・ニア。

平凡な俺を半ば無理矢理勇者パーティの一員にした挙句、死地に送り込みまくる傍若無人なヤツ……でも、ケインが強いから何だかんだ毎回生き残れてる。

 

「……今回の魔王の軍勢の迎撃が終わったらさ」

 

「ん?なんだよ、急に」

 

「急でも良いでしょ!……あたしね、君に言いたい事があるの」

 

俺はその言葉を聞いて、心臓が早く脈打つのを感じた。

俺はケインに恋をしているのだろうか、いや……俺とケインは釣り合わないだろう。

俺は何の能力もない平凡な人間で……ケインは勇者に選ばれ、特別な素養を持つ人間。

そんな俺とケインが、付き合える訳がないのに。

というか、親友と付き合う思考が出るなんて言語道断だろ?

 

「今まで、あたしの無茶ぶりに付き合ってくれた感謝を……いっぱい、いーっぱい伝えたいの!仲間の皆は今、ちょっと遠出してるから……集まってからになるだろうけど」

 

「……うん、ありがとな。明日か、魔王が宣告した『終わりの刻』ってヤツ」

 

魔王が宣告した終わりの刻、避けられない全ての死。

そんな未来は決して起きてはならない……それが俺達、勇者と勇者の仲間の使命だ。

ケインは意を決した様な顔をして、街を見つめる。

 

「あたしが守らなきゃ……みんなも、アスラおばちゃんも、防具屋のおじちゃんも、他の人達も、全部」

 

「一人で抱え込むなよ、明日になったらみんな帰ってくる。そしたら、俺達と一緒に未来を作るんだ」

 

ケインは優しい笑みでこちらを見つめると、ゆっくり頷く。

そうして二人の幸せな時間は過ぎ去っていく。

約束の時、全ての終わりに向かって。

 

──────……

 

「王都北部、西部、東部は完全に壊滅……!あとは、北部だけ……魔物がそちらに押し寄せ……っ」

 

無慈悲な通告が俺達二人に伝わる。

俺は悔しさで拳を握りしめ、振り下ろす先を失う。

ケインも同様で悲しみか……怒りか。

そのどちらでもであろうか、鞘を握る手を強く、強く。

 

「仲間は、みんなは……」

 

「……今は生きていることを願うしか、できない」

 

ケインの顔に暗い影が滲む。

俺はその様子を見て、どうにか慰められないかと思いはしたが。

俺も感情の整理が追い付かず、良い言葉が思い浮かばなかった。

 

「来ています、勇者様!!」

 

そんな言葉が後方から聞こえ、俺達は顔を見合わせると急いで第一拠点から急いで王都の中枢へと。

そこには凄惨な光景が広がっていたというのは、誰にでもわかる事だろう。

俺達に良くしてくれた料理屋のおばちゃんも、防具屋のじいちゃんも。

 

全部、全部……燃えていたから。

身が焦げそうな怒りで脳内が支配される。

失った物は取り戻せない、そんな事は自分でも理解している。

どうにも抗いがたい憤怒に身を焦がすことしか出来なかった。

 

「ケイン。仇を、討つぞ」

 

「勿論……そうする」

 

俺達は剣を握り締め、魔物達へと向かう。

剣を振り抜き、小鬼やオーク……果てにはドラゴンまで。

全てを切り裂き、前へと進む。

それか俺達に出来る唯一の事だったから。

 

しかし、果てが見えない。

どれだけ魔物を斬っても果ての見えない途方もない数。

体力が持つ限り俺達は目の前の魔物を切り続けた。

ケインはもはや魔物を切る事に何の抵抗も無くなっていた。

 

切る。

切る。

切る。

切る。

切る。

切る。

 

ただ、それだけ。

塵さえ残さない圧倒的なケインの剣戟に圧倒されながらも、勇気付けられる。

しかし……今も西部や東部、北部から数多の魔物が列を成して。

俺達の体力が尽きるのは時間の問題だ。

 

──────……

 

「はぁっ……!はぁ……いつまで、切れば……」

 

「あたし達ならきっと勝てるよ。そう、信じてるから」

 

希望を持たなければ何も始まらないだろう。

例え体力の底が見え始めたとしても、根性……気合い。

その全てを活用して勝ち抜くしかない。

 

「オヤオヤ、可哀想なご様子デ……」

 

「テメェは魔王の幹部……」

 

手を叩きながら現れたのは、ピエロの様な仮面を被った魔王軍幹部。

俺達を見て嘲笑い、哀れみのような目を向ける。

 

「……あたし達に、切られに来たの?」

 

「インヤ?時間を稼ぎに来たんですヨォ……魔王様がもう近々王都に直々に現れて下さる様なのデ……」

 

幹部は指を鳴らすと、空中からボールの様な物が降り注ぐ。

そのボールには棘が張り巡らされ、全て受け止めたらひとたまりもないだろう。

俺達は降り注ぐボールを剣で割る程度しか対処法がなかった。

こんな事を続けられたら、魔王が来るまですぐだろう。

 

「お可哀想ニ……フフ、滑稽ですネェ」

 

そんな事を続けて、十分程度経った頃だろうか。

圧倒的な威圧感が王都の入口から放たれているのを何となく感じた。

このままでは王都諸共、ケインも俺も共倒れだろう。

対処法を考えながらも……凡庸な発想しか思い浮かばない。

 

「来てくださった様なのデ、私の仕事はここマデ……後はお任せしまショ」

 

幹部はそそくさと姿を消すと、魔王は更なる魔物の軍勢を率いながらもこちらに歩く。

アイツの時間稼ぎにまともに付き合ったのが敗因とも言える、かもな。

俺は覚悟を決める、ここから一発逆転、世界を救う方法。

それは……『次に託す』事だろう。

 

俺は掌で魔力を練る、そうして……『ケイン』に放つ。

ケインは泡のような膜に包まれ、魔法陣による『転送』の準備が整う。

 

「ケイン、お前は……この世界の、全ての世界の希望だ、だから……」

 

ケインは泡の膜の中で、泣き叫びながら膜を叩く。

最後まで戦えた事を光栄に思うよ、ケイン。

手を向け、別れの挨拶をする。

……ケインは絶望しきった様な顔で俺を見つめていた。

 

「俺は、せめて……アイツに傷を負わせる。それが、未来のお前の手助けになる事を願うよ」

 

俺は自らの体内の魔力を……砕けさせる。

溢れた魔力は暴走し、爆発する様に動く。

俺は前へ、前へと全力で走る。

 

魔王は何も言わず、俺を見つめる。

魔物を仕向けて自爆を止めさせる事もせず、ただ受け止める余裕を見せつけながら。

 

魔力の暴走が、ゆっくりと俺の今までを思い出させる走馬灯を映し出す。

 

──────……

 

「勇者って言っても、あたしにはそんな自信ないな……」

 

「立派な事だろ?例え荷が重くても、与えられた使命……きっとそれは大切な事だと思うんだ」

 

「そう言われても……あっ、そうだ!!」

 

「うわっ?!急に大声出すなって……どうしたんだ?」

 

「決めた、ライアが一緒に行ってくれるなら、あたし勇者になるよ!」

 

「俺が行ってもなんも出来ないだろ……」

 

「ならなんな〜い!」

 

「……俺が命運を決めてる様なもんじゃねぇか、はぁ……仕方ないな、行ってやるさ!俺だって世界を救いたいし……」

 

……あぁ、ケイン。

お前と、仲間達と……一緒にパーティを開きたかったな。

俺の名前が書かれた旗と、いつもパーティの時はみんな被ってる馬鹿みたいな帽子。

みんなが元気に再会出来ること、祈ってる。

 

俺の魔力は、最後に。

一矢報いる美しい本流を見せてくれる事も祈ってる。

 

──────……

 

そうして、王都は崩壊した。

生き残った勇者は失意の元、失った仲間の追憶を欠かさなかった。

そうして世界はもう一度立ち上がったのだ。

様々な都市が勇者を支援し、勇者のみには抱えさせないと……全ての都市が団結した。

そうして、魔王の魔の統治は終わりを迎えるのは秒読みだろう。

 

しかし、しかし。

勇者の心は未だに……過去に凍りついたままだった。

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