数多の世界のヤンデレ親友とのバッドエンドを見届けた俺、全ての記憶を引き継いでもう一週……え?!バッドエンドの方の親友達も記憶引き継いでるんですか?! 作:ハンノーナシ
剣聖『モーリス・ラインハルト』の場合
──俺は故郷を失った。
愛する親友と共に、全てが塵へと消えてしまった。
覚えているのは……手を伸ばしても届かない、絶望のみ。
俺は必死に逃げた、傷だらけの体で……とめどなく溢れる血を眺め、抜けていく力に意識を委ねながら。
そうして、倒れる。
このまま誰にも見つけられず死に至るのならば……親友達と同じ場所に行けるだろうか。
そんな考えばかりが脳裏に浮かぶ。
死を目前とした人間は、本当に生の未練を無くすのだろう。
「──この子は、一体……」
──────……
「……ありがとう、ございます」
応急手当を処され、俺は一命を取り留めた。
場所は王都の外ののどかな森の中の家。
俺は何とか、人に見つかった様だった。
「その傷、どうした」
「……村を襲われました、魔物と……謎の奴に」
「……家族は?」
「多分、もう居ません」
その発言を聞いた女性は、少し寂しそうな顔をする。
同情はごめんだ……同情されるほど、抵抗をしたわけでもない。
ただ、逃げ遅れて『死』を目の当たりにしただけ。
「……しばらく、面倒を見てもいいか?」
「大丈夫、です……迷惑かけれませんから」
「ここでお前を見殺しにして、私が情のない怪我人を追い出した外道にされる方が迷惑だ」
そう言われると、少し心が痛むな。
──母さんがよく言っていた、人の好意は素直に受け取れと。
捻くれている俺には縁のない言葉だと思っていた。
けれど、今は……人の温かみを、感じる程の余裕は無かった。
「飯を作ってやる、好きな物は何だ?」
「好みなら……肉類が好きです」
しばらくした後、その女性の名前を聞いた。
名をモーリスさんと言うらしい。
腕の立つ人らしく、スレンダーな体型に浮かび上がる程の腹筋と。
傷だらけの腕が特徴的だった。
どうやら、巷では有名な人らしく……知らない人の方が少ないと。
田舎育ちな事を悔やむが、知らない物は仕方ない。
「出来たぞ。私は煮込みと焼きしか出来ないが……狼の肉だ、味は保証する、吐くほどでは無い」
「……いただきます」
モーリスさんとの付き合いが何処まで続くかは分からない。
けれど、御恩に甘えるのも人の生き方として正しい筈だ、と。
甘い汁を吸うだけの虫にはなってはならない……少しは、恩を返さなきゃ。
狼の肉は柔らかく蕩けていて、食べやすい。
折れた歯でも易々と食べれるくらいには。
「美味しいです、凄く」
「……なら良かった」
モーリスさんは俺の食べる姿を黙って見つめていた。
腹の減っていた俺は、その視線にあまり気付かなかったが。
がっついていた時に思わず目が合って恥ずかしくなってしまった。
「よく食べるんだな」
「母さんが、料理を大量に作ってましたから」
──────……
「ライア、今日の調子は?」
「健康で何の問題も。モーリスさん、今日は出張依頼とかは無いんですね」
俺はしばらくして、モーリスさんと一緒にしばらく住むことになった。
住む契約の中身は……モーリスさんが苦手な家事の手伝いと、剣の稽古相手になること。
剣を握ったこともない俺は、モーリスさんに剣を教えられる事になった。
「体の芯を真っ直ぐにして……剣を振るう時は、鈍りなく一直線に。剣筋に歪みがあったら、中途半端に切るだけ……鈍い痛みを与えるのには適しているが、介錯や速戦即決には向かない」
「こ、こうですか……?」
「そうだ、筋が良い」
毎日、剣の稽古をして。
毎日一緒にご飯を作って、家事をして。
時折依頼を受けて外出をするモーリスさんを見送って。
モーリスさんは毎度血みどろになって帰ってくるから……お風呂の用意もした方がいい。
毎日、稽古を付けられるうち。
俺の剣の腕前はメキメキと上達して行った。
モーリスさんの教える腕が良くて、俺は何もしてない様な物だが。
「ライア……」
「なんですか?」
モーリスさんは時折、少し寂しそうな瞳で俺を見つめる。
同情にも似た何かの感情を俺に向けている……のか?
何か気がかりでもあるのだろうか……。
「お前は家族や親友が恋しいか?」
「……当たり前ですよ、今まで……ずっと一緒に暮らしてきたんですから」
モーリスさんはその言葉を聞くと、俺を優しく抱き締める。
俺より遥かに大きい身長で抱き締められると、少し……複雑な感情を覚えてしまう。
モーリスさんが心配する事じゃないのに……この人は少し、優し過ぎる。
「……私が、お前の家族の代わりになれるのなら。いくらでも、空いた穴を埋められるまで……共に居る」
「やだなぁ……モーリスさんがそこまでしてくれなくとも。俺の問題ですから」
「お前の問題は私の問題も同然だ。あの時拾った日から……何処か、運命を感じていたんだ」
小っ恥ずかしいセリフに、思わず顔が赤くなる。
……今は抱き締められていよう。モーリスさんが満足するまで。
────────……
「我が愛弟子、準備は整っているか?」
「勿論。魔王の本城に突入するなんて……夢にも思ってませんでした」
出会いから、三年程度……経った頃か。
俺達人間は魔界と呼ばれる場所の魔王の城を特定し……反撃に移った。
後は人間界で最も強い剣聖と、その弟子の俺に託されていた。
勇者は今も街で魔王の攻勢から住民を守っている。
速戦即決、すぐにでも。
──────……
「師匠……!ぐっ……!」
「あまり動くな!!傷跡を抑えろ!!」
魔王と師匠の鍔迫り合いは最終局面に到達した。
攻撃のタイミングを見間違えた俺は、俺はただの足手まといになっていた。
未熟過ぎた、あまりにも。
『……まだ、その軟弱者を庇うか』
「──ッ!!ライアを軟弱だと?違う、違う……ッ!!アイツはッ……!」
「師匠!!怒りに惑わされたらダメです!!俺なんかの為に、怒らないでください!!ぎっ……」
思わぬ大声を出して、傷跡が痛む。我ながらアホだ。
モーリスさんは愛する隣人達を尽く痛め付けられ、怒りが我慢の限界に到達していた。
こんな些細な俺の事でも、怒りをむき出しにする位には。
何でもいい、俺に出来ること。
師匠を守る為の、最後の手段。
──俺は傷跡をさらけ出したまま走り出す、悪しき魔王に剣を突き刺す為に。
そうして鍔迫り合いを演じていた魔王に、俺は……剣を突き刺した。
俺の心臓にも、突き刺さった剣と共に。
「がッ……!!ハァッ……」
『……哀れだな、自滅特攻とは』
「ライ、ア……ライア!!!!!」
「テメェをぶちのめすのは、師匠だからな……!俺なんか、邪魔にしかなんねぇんだよ……ッ!だったら……最後に、一矢報いる位してやんだよッ!!」
心臓の鼓動が段々と小さくなる。
俺の命を代償に、剣を更に深く突き刺していく。
目が段々と閉じていく、魔王に振り払われる。
──結局、何も出来なかった。
そうして、最後に見たのは……顔を影で真っ黒に染めた師匠の姿だった。
──────……
モーリス・ラインハルトは魔王を打ち倒した。
大いなる悪の討伐には犠牲は付き物だ、彼女の愛弟子は無念の死を遂げた。
しかし、彼の死は彼女の怒りに火を付け……『魔力装甲』を目覚めさせた。
怒りが魔力と感情の同期を早め、体内に眠る筈の魔力を己の殻として、最大限魔力と自らの体を融合させたのだ。
魔王は呆気なく敗れた、モーリスの目覚めた圧倒的な力の前には無力であった。
そうして、時間は過ぎ去っていく。
街は平穏を取り戻し、皆が何もなかったかのようにいつも通りの生活に戻っていく。
モーリスも……強い剣聖様ならば弟子の死など軽く乗り越えると、そう思われていた。
モーリスに残されたのは、少し狭いいつもの家と……地面に落ちている『家族』との写真立てだけだった。
剣聖様のライアの接し方は?
-
めちゃくちゃでれでれ愛弟子コンプレックス
-
激重執着加湿器モード
-
ライアの守護者。近付く者全員シバキ回す。