<宇宙恐竜:ゼットン>
<宇宙ロボット:キングジョー>
初投稿です。お手柔らかにお願いします
連邦生徒会長の失踪から数週間。キヴォトスは秩序、災害、犯罪の3つに分かれ、混沌としていた。
「あの、隣の・・・その、どなたですか?」
「私たちは連邦生徒会長に会いに来たのですが・・・」
そんな状況を憂いた生徒たちに詰め寄られる、連邦生徒会主席行政官である七神リン。しかし、その隣にいる無機質で異様な人物に、全員は唖然としていた。
「ここに皆さんが訪ねてきた理由はよくわかっています。しかし、この現状には私たちも手をこまねいています。そのため、こちらの先生をお呼びしました」
「・・・この方がですか?」
正義実現委員会副委員長の羽川ハスミも、訝しげにその先生に視線を向けた。と言うよりも、全員信じられないと言った様子でリンと先生を見つめている。
「こちら、ゼットン先生。失踪してしまった連邦生徒会会長が、特別に指名した人物です」
「ゼェットン・・・」
シャーレ所属、宇宙恐竜 ゼットン先生。かの伝説のウルトラマンを倒したとされる先生であることを、まだ誰も知らない。
シャーレ内部室にパタパタと軽快な足音が近づいている。先生は動かしていた手をパッと止め、座っている椅子を扉の方へ向け、体ごと振り向いた。
「先生、ちょっとお時間いただけますか!?」
「先生、お邪魔しますよ」
元気な登場をしたのはゲヘナ学園万魔殿所属、元宮チアキ。その後ろからひょっこり顔を出した棗イロハだった。チアキはメモとペンを両手に目を輝かせ、先生に詰め寄っていた。
「週刊万魔殿!その先生特集です!えへへ、インタビューを受けていただいてありがとうございます!」
「プライベートな事も聞いちゃいますけど、答えていただける範囲で大丈夫ですから」
「ピポポポポポ・・・」
先生がキヴォトスへの着任当初、私こと棗イロハは、上司より先生を探ってこいと言われていた。謎多き人物として話題になっており、個人的にだが元々気になってはいた。
私たちからすれば先生は仕事人間なイメージがあり、私生活が全く想像できないのだ。そんな折に、チアキが先生の独占インタビューを実施するというので、何となく着いてきていたのだった。
先生は無口だ。何を話しても頷いたり、こちらをじっと見るばかりで返答はない。しかし、何か問題があれば解決まで静かに寄り添ってくれる先生を、私は気に入っていた。
「では先生!まずはキヴォトスの外からやって来たとの話しですが、先生の出身はどちらなのでしょうか!!」
「ピポポポポポ・・・」
先生は喋らない。小さく体を揺らすばかりで、私は相変わらずだと小さく笑った。
「チアキ、そもそも先生は・・・」
「なるほど宇宙ですか!」
「うえっ?」
同僚の言葉にバッと振り返った。
「普段は何をして過ごされているんですか?」
「ピポポポポポ・・・」
「なるほど、野球観戦や筋トレが趣味なんですね!」
何故か普通に会話している。なんだ、私がおかしいのだろうか。
「チ、チアキ?先生の言っている事がわかるんですか・・・?」
「え、うん。ちょっと言葉が昔の言い回しみたいで難しいけど、イブキちゃんと先生もお話し大好きだし、イロハちゃんもそうだと思ってたんだけど」
そう言えばイブキも先生にはよく懐いていたが、まさか分からないのは私だけ?思考がグルグルと渦巻くなか、チアキは溌溂とインタビューを続けていた。
「シャーレ就任時に、襲ってきた戦車をひっくり返したというのも本当ですか!?」
「ゼットォン・・・」
「きゃー!すごい!!」
なおこの先生、シッテムの箱というタブレットからバリアを張ることが出来るという。それによってキヴォトスでは当たり前である銃撃戦から身を守り、有事の際は自ら問題解決に乗り出している。たまにシッテムの箱無しでもバリアを張っている様子が見られるが、その原理については私もよくわかっていない。
「先生の好きな食べ物はなんですか?」
「・・・・」
「なるほど、カレーライスですか」
・・・・カレー食べるんですか?
「ずばり、好きな子のタイプは!?」
「・・・・」
「うふふ、ちょっと恥ずかしいですねぇ」
そこから数回の質問の後、少し休憩することとなった。
いそいそと席を立った先生は、ほんわり湯気の立つコーヒーを私たちへ差し出した。そして自分のデスクに戻り、再度パソコンへ向き直る。
ゼットン先生はどんなに激務の中でも呼ばれたら断ることはない。そのためかキヴォトス各地で目撃談があり、レッドウィンターで雪かきしているところを見たと思えば、その10分後にワイルドハントの魔法陣の上で佇んでいた何て話しもある。一体いつ休んでいるのだろう。
「すみません先生、お時間よろしいでしょうか?」
ぼんやり先生を眺めていると、カツカツとリン行政官がシャーレへとやってきた。
どうやら御呼ばれされたらしい。ミレニアムで暴走したロボットが生徒含むセキュリティロボットと交戦中とのことで、援護と鎮圧をお願いしたいとのことだ。
「ピポポポポポ・・・」
「え、私たちもですか?」
「私たちが居て、お邪魔になりませんか?」
大きく頷く先生。意外とノリがいい。先生が私たち二人を抱き寄せると、シャーレのオフィスから、近未来な建物が並ぶ屋外へと、一瞬にして目の前の景色が変わったのだ。
この瞬間移動は音もなく急に後ろに現れたり、前に現れたりと、使われた側の心臓に悪い。この前はマコト先輩の後ろに突然現れ、驚いた先輩は机の角に頭をぶつけていた。
鎮圧の手伝いとしてやってきたミレニアムだったが、何やら学園内が少し騒がしい。私たち3人は逃げる人の流れに逆らい、騒動の中心へと向かった。
「あ、アレですか。ミレニアム製にしては、かなり無骨な・・・」
「アレは確か聞いたことがありますよ。何でしたっけ、アヴァンギャルド君でしたっけ。でもあんなにキンピカだったかな」
頭にアンテナ、淡く極彩色に発行する腹部。ごんぶとい手足。何人かの生徒がグレネード弾や銃で応戦するも、それをすべて跳ね除け全く動きを止める様子がない。
「あ、先生!起動実験中のロボットがシステムエラーで暴走しちゃったんです!!」
「だから発掘したロボットなんか動かすんじゃないって言ったじゃん!」
「うるせえ!あんなロボット触らない方が失礼だろ!!みなよウチのロボットの腰回り、頑丈な寸胴ボデー!!失礼ですが使用用途は侵略兵器か何かで?」
「あんな変な武装ついてるんだから制圧用ロボットでしょ!!」
わーわーぎゃーぎゃー。こんな時でも元気な人たちだ。
先生は
「あはは。凄い混沌としてますねぇ。じゃあ先生、バシッとやっちゃってください!」
「私たちも援護しますので」
チアキと私で銃を構える。先生はそれに答えるかのようにシッテムの箱を構え、静かに頷いた。
ゼットンとロボットが睨み合う。先に動いたのはロボットだった。ゼットンとほぼ同じの大きさの鉄塊が、こちらを押しつぶさんと迫りくる。
『先生、サポートはお任せください!』
「ゼットォン・・・」
シッテムの箱から、アロナがそう叫んだ。ゼットンはアロナと後ろの生徒たちにチラリと視線を向け、静かに闘志を燃やす。生徒の手におえない時。ギリギリまで頑張って、ギリギリまで踏ん張って、どうにもこうにも、どうにもならない。そんな時に先生がいる。
『グワッシ、グワッシ』
「・・・・」
先生もその突進をボディタックルで強引に押し返す。バランスを崩したロボットにすかさず腹部、頭部と打撃を揮う。やや怯むロボット。しかし次の瞬間には何事もないかのようにゼットンの方へ向き直り、腕全体で払いのけるようにゼットンを弾き飛ばした。
すかさずロボットはゼットンにとびかかった。倒れこんだゼットンはロボットに馬乗りにされ、重々しい音とともに激しいチョップが繰り出される。ゼットンは何とか跳ね除けようとするが、上手く身動きが取れないようだった。
「先生から離れなさい!!」
チアキがフルオートでロボットの体を打ち抜くが、カンカンカンと軽い音と共に弾かれてしまう。しかしイロハは見逃さなかった。狙いを定め、ロボットが両腕を叩きつけようと体を反らした瞬間、3タップでトリガーを引いた。
「ッ」
「ロボットが止まった!?」
「先生による腹部の攻撃で怯んでいたから。あそこなら私たちの攻撃も有効みたい」
先生はロボットを跳ね除け、一度距離を取った。
『先生、相手はメタル属性の重装甲の様です。ここはビリビリっとした電撃が有効です!』
「大人のカード」を取り出す。
『作戦コマンド発令。エレキングの「超帯電」発動です!戦闘中はものすごい雷属性を付与します!!』
再度立ちあがったロボットと、ゼットンがまたぶつかりあった。
しかし先ほどと違うのは、ロボットがその突進受け、嫌がるように怯んだのだ。更に追い打ちに二人が腹部へ銃弾を撃ち込む。
「私たちの攻撃も効いてるみたい」
「なるほど、先生の力は強力ですね」
トドメだ。そうゼットンが腕を振り上げた瞬間、ロボットが目の前から姿を消した。
「先生、上です!!」
イロハが叫んだ。次の瞬間、4つの砲門からレーザー光線が先生に向かって放たれた。
「ゼッ・・・」
軽い爆発が起き、ゼットンが地面へと叩きつけられた。ゼットンの打撃の瞬間、ロボットは4つパーツに分離し、宙へ舞い上がったのだ。
そしてその無慈悲な砲門が、今度はゲヘナの2人をロックしていた。
「あわわわわ、い、イロハちゃん!」
「くっ、銃弾もかわされてる。分離して身軽になったってこと・・・」
万事休すか・・・そう思われた瞬間、ボンと破裂したような音と共に、突然ロボットの上空から電磁ネットがかぶさった。
捕獲されたのは腰のパーツだけだが、腰のパーツはコアの部分だ。それが妨害されたことにより、他のパーツも力が抜けたように落下した。
「よっしゃー!こんなこともあろうかと作ってたジャミングネットォ!!」
「先生と当番の人もごめん!ちょっと遅くなった!!」
ふたりが後ろを振り向くと、迫撃砲の様なものを引っ張ってきたミレニアム生たちが、こちら大きく手を振って駆け寄って来た。
「先生が圧されるなんて、あのロボットあんなに強いんだね。また直すから、遠慮なくぶっ壊しちゃって!」
先生が立ち上がり、コアパーツに向かって両手を合わせた。それはみるみると先生の顔前に、熱球が形成され始めた。
「す、凄い熱量」
「離れていてもまるですぐそばに火がある様な感覚ですね・・・」
「あれが先生の必殺技!?初めて見た!!いったい何GJのエネルギーなんだろう!!!」
解き放たれた火球は、コアパーツに着弾し、火花を散らした。超高温により内部の電子パーツがショートを起こし、ロボットは完全に鎮圧されたのだった。
「ありがとうございました先生!」
片付けを手伝い、シャーレお茶を飲み、すっかり日が暮れてしまった。チアキの独占インタビューはこれで終了だ。色々な写真と、先生の戦闘シーンまで撮れてホクホク顔だった。
「早速帰って記事にしちゃおー!」
「送ってもらってありがとうございました、先生」
「ピポポポポポ・・・」
先生は私たちに小さく手を振ってから、姿を消した。シャーレに帰ったのだろうか、それともまた別の厄介ごとに顔を出しているのだろうか。
しかしそれでも、私たちを支えてくれる、頼りがいのある人であることに間違いない。
私たちは今日の出来事を話し合いながら、自分たちの家へ戻るのだった。