【本編完結】転生したらヘラクレスの双子の妹でDie   作:セロ弾きのゴーシュ

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【カルデア編】お悩み相談で不意打ちを受けてDie(前編)

「____アダマンティアと申します。戦い以外のことでしたら大抵のことは熟せますので、どうかご命令を。…戦いは、あまり期待されない方がよろしいかと」

 

 記憶には極僅かだが慣れた召喚の感覚に、何度言ったか分からない口上を述べる。

 今回のマスターこそ、オレをマトモに扱い、願いに耳を傾けてくれる人間であることに賭けて。

 "殺しができない"という致命的な欠陥を抱えている英霊を呼ぶ、奇特すぎるマスターには望みすぎなことだが。

 

 視線を向ければ今生のマスターらしい黒髪の男性と、英霊と人間の合いの子のような眼鏡をかけた女性が。

 第一印象では双方とも善良そうだが、油断はできない。

 善良でも価値観が致命的に狂っているのが魔術師だと、オレは経験として知っている。

 

「オレがここでマスターをやってる、藤丸立香です。よろしくね、アダマンティア!」

 

「マシュ・キリエライトです。これからよろしくお願いしますね!」

 

「はい、よろしくお願いします。…もしや、ここには私のお知り合いでもいらっしゃるのでしょうか?」

 

 召喚してもハズレだと騒がないし、早速令呪を構えたりもしない。

 極めて一般的な対応に、オレはある可能性を挙げてみた。

 もしそうだとしたら、願いは既に半分叶っている。

 

 質問に対して、二人は笑顔で肯定の意を示した。

 次いで召喚室と思しきドアが開けば、そこには懐かしい顔が三つ。

 …三つ?

 

「久しぶりだな、アダマンティア」

 

「…えぇ、生前以来でしょうか、エウリュステウス。それと、こちらは」

 

 幻覚でなければ、アラフォーの夫とアラフィフの夫、そして生前に戦ったときの兄がいる。

 想像してほしい、身内が増殖しているのだ。

 サーヴァントにはクラス違いやオルタという概念があること自体は知っているが、普通は混乱するだろう。

 

 オレが戸惑っているのを察したのだろう、それぞれ紹介をしてくれるようで。

 相変わらず察しがいい、増えてもそこは変わらないな。

 

「お前が困惑するのも無理はない。私がライダーで、年嵩の方がアヴェンジャーの私だ」

 

「そして、此度はバーサーカーとして召喚された義兄殿…ヘラクレス殿だ」

 

「■■■」

 

 なんで復讐者になっているんだとか、なんで礼装を渡しているのに"狂"戦士なんだとか。

 色々と疑問が尽きないが、人間とは単純なもの。

 懐かしい顔ぶれに、安心する自分を隠せない。

 

 これが、カルデアでの最初の記憶。

 あまりにも特殊だが、オレにとっては夢のような時間の始まりだった。

 

 

 

 

 

 

 召喚されてしばらく。

 オレは、マスターである藤丸の自室で部屋の主と向かい合っていた。

 

「どうかな、ここでの生活には慣れた?」

 

「おかげさまで、楽しく過ごせています。マスターには感謝しかありません」

 

 一礼をして、改めて感謝を伝える。

 空を往く船ストームボーダーを拠点に、白紙化地球を救うために働く組織ノウム・カルデア。

 最初はかつてない規模の召喚先にクラクラしたが、住めば都とはこのこと。

 マスターは善良、生前の知り合いもいる、やれることも多いと理想的な場所だ。

 

 おかげでマスターにだけ戦わせるわけにはいかんと、オレにも戦う覚悟ができたくらいだ。

 目的意識を持って臨むと、魔術でもなんでも習得速度が違うんだわ。

 

 魔術の先生は、大体微妙な顔をするのが困りものだが。

 オレが一般的魔術の素人だから、多分困惑されている。

 特に二世先生は、眉間のシワがすごいことになる。

 一般的な魔術を知る上で彼ほど優れた講師は中々いないのだが、何か気に障るようなことでもしたかね。

 

「…それで、本日は何かご用でしょうか?私にできることでしたら、喜んで力になりますとも」

 

 そうやってカルデア生活を満喫していると、マスターからお呼びがかかったのだ。

 別に施設を破壊したわけでもなし、マスターの護衛でもなし。

 疑問を向けてみれば、呼び出した本人は人好きのする笑顔を浮かべた。

 

「用ってほどでもないんだけど…。最近、アダマンティアは困ってることがあるんじゃないかって」

 

「私が、ですか?ここはとても快適ですし、特には…」

 

「勘違いならいいんだ。でも、時々エウリュステウスたちの方を見て、思い詰めたような表情をしてたからさ」

 

 正直ビビったね。

 数多の英霊がマスターと慕う時点で、只者ではないと尊敬の念を抱いていた。

 しかし、オレの些細な所作にまで気を配っていたとは、予想以上に傑物なようだ。

 

 実際のところ、悩みはある。

 他人に伝える部類ではないから言わなかったが、見抜かれてなお黙っているのは体裁が悪い。

 藤丸は誰かに他言するような人間でもないし、悩みを吐き出す場も必要かもしれない。

 

「…面白い話でもありませんし、気が滅入るような話です。それでもよろしければ、聞いていただけますか?」

 

「アダマンティアの話が聞きたくて声をかけたからね。どんな話でもドンとこいだよ」

 

 胸を叩いて戯けてみせる様は、まだ青年だろうに一流の度量を感じるもの。

 所作と空気そのものに、彼が歩んだ道筋の過酷さが現れている。

 

 …こんな人にならば、聞かせてもいいかという気持ちが強くなる。

 家族だからこそ言えない話というものも、世の中にはあるものだ。

 オレの繊細なところが、久々に出ている。

 

「私は以前、聖杯の願いについて『ここに召喚された時点で、半分は叶っている』と申しましたね。」

 

「うん、覚えてるよ。ここに来た時点でってことは、家族に関わることなのかなって思ってた」

 

「マスターの察する通りです。正確には『家族に会って、ある質問に答えて欲しい』というのが願いでした」

 

 引っ掛かりを覚えたのか、藤丸は視線を上に向けて思案し始める。

 まぁ、そうだよな、普通はそんな反応になる。

 

 質問したければさっさと聞けばいいし、なんで願いが過去形になっているのか。

 この理由は、ひとえにオレが間抜けだったことに尽きるのだが。

 

「私は、過去に聖杯戦争に参加した記憶があります。そのなかで、霊基に刻まれるほどの一言を受けました」

 

「…うん」

 

「相手は恐らく典型的な魔術師でした。そんな男に聞かれたのです」

 

 オレという存在が抱えた、醜い欠落。

 自己中心的な愚かさが生んだ、最大の矛盾点。

 

 あの魔術師は、オレのことをある意味でオレ以上に理解していた。

 オレという存在を利用し尽くすために、誰よりも。

 その執念には感服するしかない、オレの転生者という境遇も知らないだろうに。

 

「『悲劇を別の悲劇にすり替え、一人満足して勝手に死んだお前の生に、意味などあるのか』と」

 

「なっ…。そんな言い方!」

 

「ありがとうございます、怒っていただいて。…ですが私は、その言葉に反論できなかったのです」

 

 実際、その通りだった。

 改めて聞かれるまで、オレはオレの生に未練などなかった。

 兄の妻子を守り、狂気への対策を生み出した、意義あるものだと。

 

 だが、悲劇の度合いでは大して変わっていない。

 妻子も双子の妹も、自らの手で殺してしまうことは耐え難いほどに苦しい。

 当たり前の事実だ、少し考えれば分かること。

 加えて、だ。

 

「私は大英雄の妹であると同時に、賢王の妻なのです。私の死は、ミュケナイの民を、何より夫を大いに悲しませた。それを失念していたのです」

 

 大切だと散々嘯いておいて、なんて無様だ。

 時間を巻き戻せたなら、満足げに笑っている死にかけのオレに、膝蹴りでもなんでも食らわせてやりたい。

 

 兄と夫がどれだけオレなんかを愛してるのか、民がどれだけオレなんぞを慕っていたか。

 知っていたはずなのに、知識に振り回されて、目の前の現実を見ていなかった。

 悲劇の差異など、アイツらには比べようがないのに。

 

「その先の記憶は曖昧です。恐らくあの魔術師は、私を傀儡にするために隙を作りたかったのでしょう。末路は、言うまでもありません」

 

 能力だけはあるが、戦争に致命的に向かない性根。

 そんなオレを好きに扱えたら、大抵の英霊には勝てるだろうさ。

 …過程で何人傷つけ、何人殺したか、想像すらできない。

 

 もはやオレに、あの家族の前に姿を現す資格などない。

 だと言うのに、オレは往生際がどこまでも悪かった。

 

 騙されて、解剖されて、頭を垂れて、這いつくばって。

 醜態を晒し、多くの者に利用され尽くし、それでも諦められなかった。

 あの人たちに一目あって、確かめたかった。

 

「…だから、家族に聞きたかったんだね。自分には、どんな意味があったのか」

 

「はい。あの魔術師以上に私を知る家族から、答えを得たいと思いました。それも、ここに来て無駄だと悟りましたが」

 

「…理由を聞いてもいいかな」

 

 ここまでで十分に嫌になる話だろうに、藤丸は真摯にオレを見つめ、向き合おうとしてくれる。

 それに安心する己の弱さが、所詮オレが英雄や賢母ではない何よりの証明。

 

 あぁ、本当に嫌になる。

 一度話し始めると止まらないくらい、情けない奴だったのか。

 

「考えてみてください。ヘラクレスやエウリュステウスが、『お前の人生に意味などない』だなんて、冗談でも言うと思いますか?」

 

「言わないよ。言うわけがない」

 

「えぇ、言うまでもないことです」

 

 やっぱり二人は、ここでも変わっていない。

 些細な事実が何よりも嬉しくて、だからこそオレの間抜けさを際立たせる。

 

 こんな自明の理に、どうして気づけなかったのか。

 いや、気づかないふりをしていたのか。

 少し考えて分かった、分かってしまった、分かりたくなかった。

 

「きっと私は、家族という裏切らないと思える存在に、縋っていたのです」

 

「それは、悪いことじゃないよ。辛いときに家族が支えになるなんて、当然のことだと思う」

 

「ですが、私の場合は自業自得の末路です。態とケガをして家族の気を引く、そんな幼児のようなことをしていたんです」

 

 オレからの反論に、藤丸は言葉を詰まらせる。

 反論ができないから、ではないだろう。

 目の前の存在が、自分の考えを一切変えるつもりがないことに気づいたからだ。

 

 本当に、ごめんな。

 まだ二十歳になるかならないかだろうに、大人の見てられない駄々に付き合わされてさ。

 お詫びにもならないだろうけど、もう二度と言わないから。

 

「これが、私の悩みです。本当に辛気臭い話だったでしょう?」

 

「…ううん。聞かせてくれてありがとう、アダマンティア」

 

「マスターは、本当によい方ですね。…言うまでもないですが、私の家族には、先ほどの話は内密にお願いしますね」

 

 こんなつまらない話に、家族を巻き込みたくはない。

 アイツらには、こんなことよりももっと耳を傾けるべきことがあるし、やるべきことがある。

 

 オレからの念押しに、藤丸は後ろ髪を掻いて目を右往左往しだす。

 おや?

 …なんだろう、猛烈にイヤな予感がしてきたぞ。

 多分、すぐにでも逃げないとヤバいヤツだ。

 

「で、では失礼します。今回のお礼の品は、近く届けさせていただきますね!」

 

「あ、ちょっと…!」

 

 藤丸からの制止を聞かず、オレは部屋を荒らさない最速で出口まで到達。

 素早くドアを解錠し、間からすり抜けるように退室を図る。

 

 しかしオレの英霊生でも屈指の動きは、唐突に壁によって止められる。

 堅いのに安心できる、けれど今だけは一番会いたくなかった気配が、なぜか三つも鎮座してやがった。

 

「「どこへ行く気だ(い)、わが妻よ?」」

 

「■■、■■■■」

 

 オレ、もう一回死んだんじゃないか?




◯ヘラクレス
礼装の影響で、ある程度理性を残している
技をあんまり忘れておらず、ステータスがバカ高い

◯エウリュステウス(ライダー)
アラフォーの方の夫、主人公が見慣れている方
容姿イメージは◯アヌ・リ◯ブス

◯エウリュステウス(アヴェンジャー)
アラフィフの方の夫、貫禄が更についた
容姿イメージはキ◯ヌ+桐生◯馬

◯アダマンティア
死後に魔術師の非人間性を叩き込まれた
世間知らずなところが、全力で悪い方に働いている

◯アダマンティア令呪三画クッキング
『慕った者たちを思い出せ』
『悲しませた者たちを思い出せ』

「あれ…?元の神話より悲しむ人増えてね…?」
と、主人公は強制的に気付かされて鬱になります

『存在意義から、逃げるな』

「じゃあ、オレが生きた意味ってなんだったんだ?」
「オレの意思は、本当に必要なものだったのか?」
考え果たした末に、自己嫌悪で自ら意思を消去します
後は好きに使い潰して、聖杯戦争を勝ち抜こう!

ヘラクレス、エウリュステウス、ミュケナイの皆さん
「「「殺す」」」


エウリュステウスの詳細ステータスなどは、また次回以降
モチベーションになりますので、感想等お待ちしています

次に書くお話として、どちらがいいかお答えください

  • 女神ヘラのお節介がない世界線 ※鬱注意
  • 娘目線から見た生前エウリュステウス夫妻
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