【本編完結】転生したらヘラクレスの双子の妹でDie   作:セロ弾きのゴーシュ

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【strange Fake編】第六章 異次元な命の授業でDie(前編)

 兄との喧嘩への乱入者_推定真キャスター_は、土地と霊脈すら騙す幻術を用いながら仲裁を頑張っていた。

 横入りは気に入らないが、頃合いとして丁度いい。

 懐かしい気配もするし、多分同郷だから尊重しとくか。

 

 真キャスター迫真の説得?のおかげで、スーパー半神半人大戦はお開きの雰囲気で。

 ギルガメッシュの言葉を受けて、今は幻術で雪山となった地に他の同郷の皆の真名が轟く。

 

「我が名はアルケイデス。アムピトリュオンとアルクメネの子にして、ミュケナイ王家の血を引く者なり。金色の王よ、そして神殺しの魔女よ。次こそは、貴様らの最奥に潜む神の力、蹂躙してくれようぞ」

 

「我が名は、ヒッポリュテ。戦神アレスと、アルテミスの巫女たるオトレーレの間に生まれし子。誇り高き部族、アマゾネスの戦士長である!金色の王とその家臣よ、また相見えようぞ!」

 

 名乗りを終えたヒッポリュテが視線を向けてきたと思えば、こちらに使い魔が飛んでくる。

 受け取ってみれば、ある座標が頭に響く。

 なるほど、ここで話を聞くってことね。

 

 しかし促す方も促す方だが、言う方も言う方だ。

 真名は秘中の秘、知られたら不利になるというのに。

 

 いや言いますけどね流れ的に、別に隠してないし。

 オレはケルベロスから降り、神気を放ちながら毅然と名乗る。

 

「我が名はアダマンティア!大神ゼウスが一子にして、此度は冥府の判官として現界せし者!我が道を阻むものは、最後には魔犬の供物となると心得よ!」

 

 真名が判明することで生じるリスクは、主に二つ。

 一つ目は弱点がバレる点だが、神話から分かるオレの明確な弱点は"英雄に相当する存在に心臓を潰されること"だ。

 そんなん大体は死ぬっちゅうねん、故に無問題。

 

 二つ目は逸話から宝具やスキルといった情報を推測される点だが、そこも今のオレには無意味。

 だってカルデアの記録から、色々と知識・スキルを持ってるからね!

 相手がオレやケルベロスを調べ尽くして対策を練ったとしても、そこに固執した際に生じる隙を突けばいい話である。

 

 序でに言えば、本命のペイルライダーに他が辿り着かないよう、オレが目立っていた方が都合がいい。

 他マスターからすれば、まさに悪夢のような話だ。

 オレについて色々と調べて仮に追い詰めたとしても、背後から黙示録の四騎士が飛び出してくるわけだ。

 

 本当の本当にヤバくなったら、『四騎士のうち最後に顕現すべき一騎が、既に現世に召喚されている』という因果を利用して、残りの"支配"、"戦争"、"飢餓"を連鎖召喚させる準備も一応整えてあるしな!

 成功確率は低く、ほぼ自爆戦法のような一手であるが故に、地球の危機レベルじゃないと考慮にも値しない選択肢だが。

 

 いよいよ脱線を始めた考えを打ち切り、オレはギルガメッシュとそのマスターたる少女へと身体を向けた。

 

「では、本日はお暇させていただきますね。偉大なる英雄王と、土地守のマスターさん?」

 

 最後に残っている一騎と一人に挨拶を済ませ、夢と現実の境界を再び壊す。

 するとオレは主従の縁によって引き寄せられ、速やかに夢の世界へ帰還した。

 

 無事が確認できた途端に力が抜ける感覚に逆らえず、大地にしゃがみこむ。

 心配して覗き込んでくるケルベロスに対し、オレは笑顔を向けた。

 多分、あんまり上手くはできていないだろうが。

 

「ありがとうございます、ケルベロス。貴方がいなければ、兄さまと渡り合うなんてできませんでした」

 

 これで二度目だが、やはり戦いは怖い。

 しかも生前の兄は狂乱した状態で、今回は歪んではいるが明確に殺意を向けてきている。

 おかげで未だに震えが止まらない、普通に泣きそうだ。

 こんな情けない姿は、椿ちゃんには見せられない。

 

 身を寄せてくるケルベロスの厚意に甘え、オレはその身体を抱きしめる。

 兄も夫も死後は天へと昇り、メガラちゃんは冥府で登用されることはなかった。

 生前と死後を含めれば最も長く隣にあった友の毛並みは、いつも美しく、そして温かい。

 

ルル……」

 

「ええ、一度目とは違います。今は可愛いマスターに頼りになる協働者…何より貴方がいますから。なら、心臓を潰されたりはしません」

 

 震えが止まるまでのはずが、気付けば時間は夕方。

 …初戦でこれとは、本当に先が思いやられる。

 

「帰りましょうか、我らがマスターの元へ。何か変わったことは起こっていないでしょうか」

 

 ペイルライダーが連絡を寄越さないのなら、別に緊急事態の類は起こっていないのだろう。

 判断しつつも監視網で走査させると、椿ちゃんの他に人の反応が一つ。

 まさかとは思うが、うっかり迷い込んだ?

 

 戻った先では、椿ちゃんが白髪の少年と談笑中。

 少年(ソレ)は一見ただの人間だったが、直に見れば僅かな違和感があった。

 何より、オレにはその姿に見覚えがある。

 

「あっ、おかえりなさい、魔女さん。ちょっとおそかった?」

 

「少し用ができまして。…こちらの男の子は?」

 

「ジェスターくんだよ!さっきね、お友だちになったんだ」

 

 オレが視線を移せば、ジェスターと呼ばれた少年は驚きを隠せない表情を晒していた。

 なんで驚いとんねん、驚きたいのはこっちだが?

 

 椿ちゃんの傍らで、ペイルライダーは対応に困ったようにウニョウニョと動く。

 なるほど、確かにコイツみたいな輩への対処は教えていなかった。

 存在そのものは無力な少年としか言えないから、警報の類も反応しなかったわけか。

 

「…私も、少しジェスター君とお話がしたいです。帰ってきてすぐすみませんが、もう少し待っていてくれますか?」

 

「?うん、いいよ。まっくろさんと一緒に、いい子で待ってるね!」

 

「えらい子ですね、椿ちゃんは。戻ってきたら、お土産もありますからね」

 

 オレの言葉を聞いて「おみやげ!」と弾んだ声を上げた椿ちゃんは、モヤで形作られた手を取って意気揚々と家へと戻っていく。

 ペイルライダーと共に土産の中身を話し合う様子は、まるで仲睦まじい姉弟のよう。

 

 こんな可愛らしい子を企みに利用しようとは、ずいぶんとふてぇ野郎もいたもんだぜ。

 一人場に残されたジェスター君へ、オレは綺麗な微笑みを浮かべてみせる。

 

子どもを誑かしやがって、ロリコン吸血鬼が(少しだけ、お話よろしいでしょうか)

 

「あ、あはは…。お手柔らかにしてくれると、嬉しいかな…」

 

 その言葉が終わらない内に、オレはジェスターを魂ごと縛り付けた。

 

 

 

 

 茜色に染まる高層ビルの一室で、ジェスターを分析した結果を検分する。

 場所を移しているのは、万が一にでも椿ちゃんには見せないようにするためだ。

 

「私は、椿ちゃんにとって優しい魔女さんですから。分かっていただけますよね?」

 

 目の前には、オレが行使する魔術で幾重にも縛り付けられ、真っ直ぐに寝かされたジェスターが鎮座している。

 現在はこちらが生命活動すべてを掌握している状態のため、当然返事はない。

 

 前世にも生前にも見たことはない生命だが、死徒の知識自体は既に備えている。

 危険な存在であることは重々承知である以上、これくらい厳重に対策して当然というものだ。

 

「死徒としての名はジェスター・カルトゥーレ、本名はドロテア。胸の弾倉を動かし、魂すら異なる六種類の肉体を使い分ける。あの少年形態は、死徒としての気配すら消す代わりに能力をほぼ喪失するもの、と」

 

「____!」

 

「驚きましたか?神霊に比べれば死徒一匹の魂を丸裸にする程度、片手間でできるという話です」

 

 取得した情報を口に出せば、魂の深層が"驚愕"と言うべき変化を示す。

 どうやら調べ上げた情報は合っているらしい、オレは当人の反応からそう判断した。

 どれだけ姿形を変えようと、魂の根は誤魔化せない究極の尋問法である。

 

 その上で、ジェスターが夢の世界に紛れ込むまでの過程の確認も欠かさない。

 以前のオレならば死徒であろうと躊躇した行いだが、こちらも成さねばならないことがある以上は容赦なしだ。

 

「なるほど。ペイルライダーの気配を追って、病院に目を付けたわけですか。私を見て驚いたのは、二騎と契約しているとは予想していなかったため、ですね」

 

 なんというか、コイツはコイツで不憫な経緯である。

 オレが不在であるなかで偶然侵入してしまったと言う、すれ違いが発生していたわけだ。

 

 潜伏という理由もあって子どもの姿で夢の世界へ侵入してくれたから容易く拘束できたが、そうでなければ少し手間だったかもしれない。

 夕方まで帰るのが遅れたことが功を奏するとは、人生何が起こるか分からないものだ。

 必要な情報はすべて絞り終えたため、オレは今後の対応を思案する。

 

「…さて、どうしましょうか。ペイルライダーまで辿り着いてしまった以上、一片も残さず処分するのが手っ取り早いのですが」

 

 ただ、椿ちゃんは悲しんでしまうだろう。

 初めてできた男友だちがいつの間にか消えていただなんて、とてもショックな話だ。

 …そういう経験をさせるのは、嫌だな。

 

 ジェスターも友情を感じていること自体は本当みたいなんだよな、魂が少年に引っ張られている影響だろうか。

 それはそれとして、邪悪であることは疑いようがないために色々と困っているのだが。

 本人から吸い取った記憶から、目的に該当する部分を抽出する。

 

『それにしても、人を蝕む病魔の呪いの大本を辿ってみたら、まさかこんな妙な気配をした女の子がマスターだなんてね』

 

『ああ、僕の大好きなアサシンのお姉ちゃんがこの子のことを知ったらどうするかな?この子が生きてるだけで、なにもしてない街の人達が死ぬかもしれないって解ったら……ハハッ』

 

『上手くこの子を使えば……アサシンのお姉ちゃんが泣く顔とか見られるかもね!』

 

 うーん、やっぱり殺した方が世のためか?

 カチリと切り替わりかけるスイッチに、理性がストップをかける。

 今は猫の手すら奪い取りたい状況だぞ、わかっているのか、と。

 

 とは言え強力な戦力であることは確かだが、どのように活用したものか。

 傀儡にするだけなら、資源は必要だが使い魔でいい。

 椿ちゃんのためにもなる、そんな使い道は____。

 

「なら、こうしましょう。…ちょっとした"教材"として、貴方には椿ちゃんの役に立ってもらいますよ?」

 

 魔術師たるもの、使えるものは有効活用。

 手段など選んでいられないし、外道相手ならば選ぶ気もそこまでない。

 

 …とりあえずは、教会にいるであろう神父さんに挨拶と相談に行くか。

 聖杯戦争の監督役たる存在に話を通しておくのは、椿ちゃんの身の安全のためにもどの道必要なのだから。

 二世先生への仲介が叶わなかった場合に備えて、聖堂教会という道も残しておくべきだしな。

 

 方針を固めたオレは、ジェスターを近くにあった大きめのバッグへと乱雑に詰め込む。

 そして、そのまま現実のスノーフィールドへと蜻蛉返りを敢行した。




◯アダマンティア
表は余裕そうに見せているが、戦闘二回目の素人
殺意マックスの兄は怖いし、戦場は好きじゃない

◯ケルベロス
なんでお前が友を怖がらせるんだ、と内心キレている
なんで重要なときにいないんだ、と夫にもキレている

◯ジェスター・カルトゥーレ
すれ違いで侵入した結果、とんでもない目に遭った死徒
これからもとんでもない目に遭う


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