【本編完結】転生したらヘラクレスの双子の妹でDie 作:セロ弾きのゴーシュ
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始まりは、奥様連合での寄り合いで。
ブリュンヒルデからの言葉が、ことの発端だった。
「アダマンティア様は、バレンタインをご存知ですか?」
前世ならば「当たり前」、生前なら「なんだそれ」と返すもの。
ならばサーヴァントとなった今のオレは、どうするべきか。
色々と助けられた前世の記憶や知識だが、こういうときは面倒くさい。
結局下手な誤魔化しはいらないと判断し、自然に答える。
「恋人やお世話になった方にチョコレートという菓子を送る日、という知識くらいは。あるのですか、カルデアでは?」
「ある…と申しますか。毎年、バレンタインが近くなると、それに因んだ特異点が発生するのです」
「恒例行事ならぬ、恒例特異点のようなものなんですね」
ソシャゲみてーな習慣ができてんだな、カルデア。
前世で暇潰しとして何個か入れていたゲームを思い返しながら、益体もない感想が浮かぶ。
しかし元はキリスト教の行事だろうに、他宗教入り乱れるカルデアでよく定着したもんだ。
一番揉めそうな暗殺教団のトップらが柔軟だから、他も共存できそうではあるが、それでもである。
「それではお二人とも、この時期はマスターや夫にチョコレートを?」
オレからの問いに、ブリュンヒルデは素直に頷きで応える。
その頬はわかりやすいほどに朱に染められており、仲の良さが窺える。
一方バレンタインの話題が出てから様子見、というより沈黙を貫いていたクリームヒルトは、明らかに身体をビクリと震わせた。
…アンタら、伝説では子どもまで産んだ夫婦でしょうが。
それがこのザマとは、初々しいというか拗れているというか。
こういう如何にもな反応があると、突っつきたくなってしまうのが人情というもの。
標的を定め、追撃を実行することにした。
「相変わらずですね、クリームヒルトさんは。…因みに、どんな贈り物をしてあげたんですか?」
「ハァー!?どうして私が、あんっなトーヘンボクに、ち、ちちチョ、チョコなんか渡さないといけないのかしらぁ!?」
分かりやすいほどの動揺とツンデレっぷりに、思わずニヤけそうになる。
これで召喚された当初はダウナー&ヒステリックだったらしいのだから、復讐の過酷さがどれほど精神を擦り減らしたのかという話だ。
根掘り葉掘り聞こうとするオレと、ムキになって隠そうとするクリームヒルト。
援護射撃は、微笑ましげにオレたちの鍔迫り合いを眺めていたブリュンヒルデから放たれた。
「黒と赤、そして白。三つの色の包装で包んだベイクドチョコレート、ですよね?」
「なーんーでーいーうーのー!?というか、どこで聞いたのよ!?」
動揺が先ほどより五割増しになっているのを見るに、実際に渡したのだろう。
いやはや、色々と言いながらもかなり中々なプレゼントで。
こんな可愛らしい奥様から贈り物を貰えるなんて、それだけでも夫は幸運そのものだと言うのに。
加えて、色まで揃える念の入れようとは。
「おお!自分のイメージカラーで固めた贈り物とは、なんと大胆な。知っていますよ、『プレゼントはワ・タ____」
普段のクリームヒルトの格好は実は喪服らしいのだが、そこら辺は横に置いておこう。
両片想いのラブコメ漫画が如きオモシロ挙動を見せる愉快な婦人が、どストレートな贈り物を渡したというのが面白いのだから。
からかいに対してクリームヒルトは、見事なチョップによるツッコミを敢行。
まるで熟練の芸人のように、立板に水が流れるが如く言葉が溢れ出す。
「そんなことするかーい!貴方、本当にギリシャ出身なのかしら!?マスターと発想がまるっきり同じじゃない!」
いやマスターも同じこと言ってたのかよ、本当にクソ度胸だなあの子。
日本人の魂が性癖じみたもので感じられてしまうとは、何故だか感慨深くも…別にないか。
このときは、別にバレンタインについては一切重く考えてはいなかった。
何気ない会話で、少し話題に上がる程度のもの。
カルデアがいかに魔境であろうとも、どうやら大きな違いはないらしいと。
そんなオレの思い込みは、一瞬で砕かれることになるのだが。
「まいりましたね…。さて、どのようなものがいいのでしょうか」
バレンタイン当日まで、あと十日ほどになったカルデア。
オレは割り当てられたマイルームの一角で、ひたすらに悩んでいた。
悩みの原因は、もう少しに迫っているバレンタインの贈り物。
そんなものチョコレートでいいじゃないか、と言う人もいるだろうが、少し待ってほしい。
(お気楽に考えていた自分が、恨めしいにも程がある。カルデアだぞ!英霊ひしめく人外魔境のイベントが、一つだってマトモだった試しなんぞなかったじゃろがい!)
あれからオレは、プレゼントの参考に他の英霊が渡したものを調査していた。
兄や夫は当然のこと、マスターは俺にとって大恩人だ。
渡すというのならば、それこそ全力で。
そう思っての行動だったわけだが、結果は酷いもの。
出るわ出るわ、常識外のプレゼントたち。
(小島一つの大きさに相当する巨大チョコ、肉体と一体化した鎧の一部で作ったアクセサリーに、極めつけは不老不死を叶える伝説の仙丹ときた。これが、カルデアのバレンタインなのかよ…)
プレゼントに貴賤はないとは言うが、上が此処まで強いと話は別だ。
最早目が肥えるというレベルではないほどに様々な極上の品々を見てきたマスターに、オレの感謝を十二分に伝えるには。
難問が過ぎる、一向に答えが出てこない。
こういうときこそ、カルデア所属の大先輩たる夫や兄の力を借りるべきかという案が浮かぶが、爆速で却下する。
享年の時点で既にアラフォーだと言うのに、バレンタインのプレゼントを家族に相談するなど恥ずかしいにも程があるという話だ。
「何より、今回の贈り物は恩人への礼という意味があるんですから。結果的に不格好なものになろうとも、私自身が考えることに意味がある類の催事と言えるでしょう」
などとご立派なことは言ったところで、いい考えが浮かばなければ情けないだけの話。
スタート地点に戻った悩みに、オレはグルグルと部屋を歩きながら同時に思考を回す。
(マスターへの感謝が伝わって、それなり以上に豪華で、オレらしさが伝わる。何よりマスターが喜んでくれるもの)
最後の条件が最も重要にして、最も難しい。
現代の若い男の子が喜ぶプレゼントってなんなんだよ、おじさん&おばさんのオレには皆目見当がつかんよ。
子どもも七歳くらいまでしか世話できてないよ、仕方ないじゃん死んじゃったんだから!
別にマスターなら、相手が心を込めた贈り物なら喜んではくれるだろうさ。
あの子はプレゼントに込められた相手の思い、真心を心の底から喜べるタイプのまっすぐな善人なのだから。
そういう人間でなければ、数百騎の英霊が寄り集まったカルデアで生きてマスターなんてやってられない。
しかしだ、どうせ送るならプレゼント自体にも相応の喜びがあって欲しい。
そう考えながら、思いつく限りのマスターの嗜好を列挙する。
(食べ物で好き嫌いは、特にないはず。キッチン組の料理、どれも美味いからな。…やはり、食品での勝負は分が悪い。他に、マスターの好きなものは____)
記憶を漁って発見した、一筋の光。
浮力を発見した偉大なる賢者のように、オレは叫ぶ。
「…そうです。確かマスターは、ロボットが大層お好きでした!」
少年心を忘れない実によい趣味だと、聞いたときは思ったものだが。
これは、オレが本領を発揮することができる領域ではなかろうか。
何せオリュンポス十二神は、元が機械船団。
そしてオレの身体には、ゼウスとヘラの真体を構成するテオス・クリロノミアが根付いている。
そもそも死後に冥府へと匿われたのも、真体を再現できるかもしれない技術がみだりに利用されることを危ぶまれたが故だ。
だが今やオリュンポス十二神は英霊としてあるのみで、全員が世界に溶けてしまった。
最早、オレを縛るものは何もない。
拳を握りしめ、オレは決意する。
「私はこの大事業をやり遂げ、必ずやマスターを大喜びさせてみせます。名付けて____
DX超合金オリュンポス十二神
です!」
◯アダマンティア(無敵)
悩みもなくなった結果、死後のテンションが継続している
善意で魔女の力を振るいまくり、周囲の胃を破壊する
見た目はお淑やかだが、内実は行動指針が善の両津勘吉
◯ヘラクレス
我が妹はどこだ!!
◯エウリュステウス
我が妻アダマンティアはどこだ!!
モチベーションになりますので、感想等お待ちしています