【本編完結】転生したらヘラクレスの双子の妹でDie   作:セロ弾きのゴーシュ

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【カルデア編】バレンタインは修羅場でDie(中編①)

 マスターに渡すプレゼントが定まり、やる気十分。

 だが気力だけ十全でも意味がない、事業を成すためには必要なことが多くあると、オレは王妃時代に学んでいる。

 

 細かく挙げだすとキリがないが、要は金と時間、そして人だ。

 金は、英霊の今は魔力リソースとも言えるな。

 この三つ、それぞれ全然足りていない。

 

 まず、魔力リソース。

 オレが召喚されてからコツコツ培養してきたテオス・クリロノミアが生産する魔力は、既に売るくらいには余っている。

 というか実際に売ってるんだけどね、QPが欲しいときとか結構あるし。

 だが建造物の規模を考えれば、全く不足していると言えるだろう。

 

 次に時間も、やっぱり足りない。

 ゼウス真体を以前興味本位でカルデアのデータベースで確認しているが、訳が分からんくらいデカい。

 星間航行すら叶う船団のリーダーだったのだから当然ではあるのだが、それでも大きい。

 これを再現しようと言うのならば、少なくとも十日は短すぎる。

 

 最後に人だが、足りるわけがない。

 一人でできるわけがないだろうが、こんなもの。

 確かに納期が無限にあるのならいつかは独力でも完成するかもしれないが、現実的ではない仮定だ。

 

 見事なまでにナイナイ尽くし、最早笑うしかない。

 だが、諦めるという選択肢はオレにはない。

 『できないからやめる』などというお行儀のいい思考を持っていたら、神の権能を再現するなどできはしないのだから。

 

「…それに、三つを一気に解決する方法があります。ここではね」

 

 カルデアにとって、最も馴染み深いとすら言えるかもしれない解決手段。

 足りないものを列挙し始めたときには、すぐに脳裏にあったものだ。

 

 なっちゃえばいいんだよね、微小特異点の黒幕枠。

 

 オレの行動は速かった、それはもう爆速だった。

 溜め込んだ魔力を使って聖杯を鋳造し、数多の先人たちが残したデータから特異点を構築。

 内部の時間経過を限りなく遅くした状態に定め、まずは時間の問題を解決した。

 

 聖杯を特異点の中心であるゼウス真体(予定の偽装用高層ビル)にセットし、次は魔力だ。

 真体を構築する莫大な魔力を賄うためには、多くの人たちの力が必要となる。

 しかし、馬鹿正直に目的を伝えたところで、誰も来はしないだろう。

 そんなことは分かりきっていたため、オレはバレンタインに因んでこんな宣伝を方々に撒いてみた。

 

来たれ、一流ショコラティエ&ショコラティエール!

この特異点で、世界一の職人の座を手に入れろ!

勝利の条件は一つ、人気チョコレート店になれ!

優勝者には、特異点の中心たる聖杯を贈呈!

主催者:アダマンティア

 

 コミックマーケットすらある特異点なのだから、菓子職人が腕前を競う特異点があったっておかしくはない。

 他者が何を考えたのかは正確には分からないが、釣られた奴らは実に多かった。

 最初は小規模な市場のようだった店舗群は、人口が加速度的に増えていくに連れて拡大。

 最終的に中心部は、高層ビルが乱立する一大スイーツシティと相成った。

 

 …因みにだが、最初に多くきたのはミュケナイ出身の民であった。

 『王妃の呼びかけならば、我らはいつでも馳せ参じます!』と、やる気十分なのは嬉しいのだが。

 目的が目的なだけに、目を逸らしそうになったことは言うまでもない。

 いやオレ、恩人にプレゼントあげたいだけなんすよ。

 

 中心部が大都会の様相を呈するのはいいが、全部がそれだと味気ない。

 加えて、より効率よく盛り上がりを作るためには、色々と仕込みがあってもいい。

 そこで、オレはコッソリとカルデアの知人に声をかけ、特異点の一部を管理者として任せることにした。

 

第一エリア管理者∶ブーディカ

第二エリア管理者∶ブリュンヒルデ

第三エリア管理者∶クリームヒルト

第四エリア管理者∶メディア&メディア・リリィ

 

 管理者のテーマに沿ったチョコレートを作り、全てのエリアで成績上位の売上を収める。

 継続的に売上を出せない場合は、降格もあり得る。

 完全実力主義の厳しい審査を潜り抜けて初めて中心部に店を構え、聖杯を求める土俵に上がることができるわけだな。

 

 競争システムを形成し、独自の通貨を流通させ、経済活動を特異点内で完結。

 諸々で生み出される魔力は、特異点に満ちたテオス・クリロノミアが回収していく。

 回収された魔力は中心部でチョコレートや素材へと変換され、店舗へと卸したあとの余剰は真体を構成する材料となる仕組みだ。

 

「私、自身に経営の才能があるとは思いませんでした。やってみれば人間、大体なんとかなるものなのですね」

 

 特異点の中心部、高層ビルの社長室で、オレは魔法陣を描きながらひとりごちる。

 元気があればなんでもできる、とは誰の言葉だったか。

 曲がりなりにも神代の魔女が気力十分で力を振るえば、都市を運営することくらいは叶うらしい。

 

 三つのうち二つが解決し、残るは人。

 既に管理者を任用し、雑務を大量生産したチョコ使い魔に任せはしているが、最後に欲しい人材がある。

 そんな存在を確保するために、オレは完成したばかりの魔法陣へと手を翳した。

 

「____素に銀と鉄、礎に石と契約の大公」

 

 喚び出すのは、オレの秘書であり、カルデアを支える役目を負うナビゲーター。

 今回の特異点、マスターには正道で人気店の店主になってもらいたい。

 だからこそ、道行をサポートする優秀な人が必要だ。

 

「繰り返す都度に五度。ただ、満たされる刻を破却する」 

 

 と言っても、別にそんなことせずともカルデアは勝てるだろうけどね。

 菓子の大量生産に一家言あるマスターだけでなく、どうしてパティシエールでないのか甚だ疑問なマシュちゃん、どうして一流料理人でなく魔術師なのか理解ができないゴルドルフさん。

 

「誓いを此処に」

 

 その他キッチン組といった腕利きが集えば、勝利は確実。

 プレゼントを渡すために、超有利な条件で特異点のルールを定めた甲斐がある。

 …別にイカサマじゃないよ?

 

「我は常世全ての善と成る者」

 

 故に、求めるのはオレと報連相がキッチリできて、カルデアに好意的で、事務も上手い英霊。

 地味に難しい条件だが、英霊というのは千差万別だからな。

 一騎くらいは求める人材がいても、バチは当たるまい。

 

「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ____!」

 

 辺りに吹き荒れていた魔力風と閃光が収まり、ビルの一室には魔力反応がオレ以外に一つ。

 確かに召喚には成功したらしいと安堵し、応じてくれた英霊を見やる。

 

 オレより頭一個分は大きい女性で、とんでもない美人、もしくは姉御とでも言うべき顔立ちだ。

 烏の濡羽色と表現されるだろう艶やかな長髪は、ただ在るだけで輝いている。

 

(…ん?)

 

 だが、オレには僅かな引っ掛かりがあった。

 こんな美女を忘れるはずはないので、初対面であるはずだ。

 はずなのだが、間違いなく見覚えがある。

 

 知らないはずなのに、知っている。

 まるで、人物のある一部分しか知らないが故に、判別がついていないような感覚。

 そこまで考えて、思考が凍る。

 

(そんな感覚を覚える相手を、私は一人しか知らない。だが、まさか)

 

 もし、この直感じみた考えが正しいのならば。

 これ以上に嬉しいことなど、早々あってたまるものか。

 マジで、ここで出会えてしまうのか?

 

 確かめなければいけない、彼女の正体を。

 唇をバカみたいに震わせながら、半信半疑で名を呼ぶ。

 

「…アド、メーテー?」

 

 オレが産んだ、六人の子どもたち。

 その内、五人の息子とは死後にて再会し、言葉を交わすことができた。

 どれも愛おしく、決して忘れることはない記憶。

 

 だが、ただ一人だけ、長女だけは。

 アドメーテーだけは、冥府で一目会うことは叶わなかった。

 兄や夫と同じように、天へと昇ってしまったがために。

 

「っ!!」

 

 私の言葉を受けた美女__アドメーテー__は、涙と共に顔をくしゃりと歪める。

 ふらふら、ふらふらと、迷子の子どものように。

 しかし向かう先を間違うことなどないようにという、執念すら感じさせる足取りを刻む。

 

 ついに、すぐ前に辿り着いたアドメーテーは、そこでピタリと身体を止める。

 どうして止まったのかなど、分かりようがない。

 ただ、今度はこちらが歩み寄るべきだと確信した。

 

 オレは、数千年の時を超えて再会した娘に、手を伸ばす。

 最期に認めた姿はあんなに小さかったというのに、こんなにも大きくなった。

 余りにも大きな感慨すら、一片だって取りこぼすことなどないように、オレは思い切り抱きしめた。

 

「____がんばりましたね、アドメーテー」

 

 身長が低いオレ側からの抱擁で、アドメーテーは少し不恰好な姿勢をしていて。

 瑣末なことなど知ったことかと、オレにしがみつく。

 そのまま、あらゆる感情を全て押し出すように涙をこぼし始めた。

 

 涙滴が床へと落下する音と、洩れ続ける嗚咽。

 

 二つだけが響く世界で、オレは感動から引っ張り上げられる。

 余りにも場違い、しかし無視できない事実に気づいたからだ。

 

(…あらやだ。この子、クラスがバーサーカーなんですけれども)

 

 アドメーテーの生涯を考えれば、心当たりなど一つしか思いつかず。

 ただ今回ばかりは、とんでもなく気まずい。

 

 つまり、オレは今からこの子に言わなければいけないわけだ。

 家族を頼るのは恥ずかしい、とかほざいた口で。

 

『マスターへの恩返しのために、原寸大ゼウス真体ロボを作りたいの。だからお願い、手伝って♡』

 

 オレ、死んだんじゃないか?

 

 

 

 

 

 

 アタシは、生涯で二度、神に母を奪われた。

 

 一度目は、七歳のとき。

 

 いつもは共に行く叔父の家に、母は一人で向かう。

 

 行きたいと駄々をこねても、珍しく頷いてくれない。

 

 「また今度ですね」と頭を撫でて、優しく微笑んだ。

 

 約束が、守られることはなかった。

 

 狂奔した叔父が殺したというが、分かっていた。

 

 神が殺した、国を照らした太陽を、下らない感情で。

 

 あの日、ミュケナイは確かに死んだ。

 

 みんな、どう生きていけばいいか分からなくなった。

 

 母の死で沈んだ国を甦らせたのも、また母だった。

 

 未来に目を向けて生きてと、いつものように笑う。

 

 優しいようで何より厳しい教えを、アタシは守った。

 

 魔術を探究し、武術を練磨し、国一番の将になった。

 

 国を愛し、夫を愛し、子を愛し、慈母と称えられた。

 

 全ては冥府の母に胸を張って再会する、そのために。

 

 それは、叶わなかったけれど。

 

 二度目は、死んだとき。

 

 魂に響く、不快な雑音が囀る。

 

 お前の魂は天に昇り、神として召し上げられる、と。

 

 人間如きには過ぎた栄誉だと、言外に語る傲慢。

 

 ____ふざけるな。

 

 ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな!!

 

 神などになるために、天などに昇るために!

 

 アタシは、胸を張って生きてきたんじゃない!!

 

 …それでも、逆らうことなどできはしない。

 

 アタシが独りで罰を受けるならば、まだいい。

 

 けれど、父や叔父にも責が及んでしまえば。

 

 何より、母に罰が及ぶようなことがあれば。

 

 唇を噛んで、受け入れるしかなかった。

 

 

 

 

 最初の生は、屈辱に塗れていた。

 

 だからこそ、この生において誓う。

 

 母のために働き、母のために裏切ろう。

 

 母のために殺し、母のために助けよう

 

 母のために生き、母のために死のう。

 

 我が信仰に、神などという蒙昧の席はなく。

 

 ただ一人、あの陽だまりへ捧げるものなれば。




◯ショコラフェスティバル特異点
メタ的には、システムは"ぶっちぎり茶の湯バトル"に近い
各種"チョコスイーツ"を作成し、別口で素材を獲得できる

◯アドメーテー
イメージ:黒髪のバラライカ(ブラックラグーン)
本イベントでの星5サーヴァント枠
主人公の魔術師としての才能、それを最も濃く継いだ長女
その上で、叔父の特訓を姉弟で唯一最後まで踏破した怪物
魔術戦士の極北にして、巨人殺しのアドメーテー

◯ヘラクレス&エウリュステウス
微小特異点発生の報を聞き、大原部長化が深刻な状態に
アダマンティアのバカはどこだ!!でてこい!!


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