【本編完結】転生したらヘラクレスの双子の妹でDie   作:セロ弾きのゴーシュ

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【strange Fake編】第四章 OHANASIが物騒すぎてDie

 アダマンティアという英雄は、ヴァン・ホーエンハイム・パラケルススのように人類史と魔術史の双方で名を残す極めて稀有な存在、と"Fate"では設定されている。

 

 現実においては、ギリシャ神話最強の英雄と謳われるヘラクレスの妹であり、かつ神話随一の賢王とされるミュケナイ王エウリュステウスの妻であることが有名だろう。

 アダマンティアの生涯は兄と共に神霊に振り回され続けた波瀾万丈なものであったが、彼女は最期まで家族への愛情に対して直向きであり、死後に冥府の判官となったあとも家族とミュケナイの民に向けて愛に溢れる言葉を送ったとされる。

 その人気は現代でも衰えておらず、かつてのミュケナイに該当する地域では"我らが母の恥とならない生を"というスローガンを掲げる自治体すら存在するほどだ。

 

 また芸術方面では、賢王エウリュステウスとの結婚に至るまでの恋愛模様がフィーチャーされることが多い。

 理由としてはエウリュステウス・アダマンティア夫妻が、結婚が一族同士の繋がりを示す契約の面が強かった古代ギリシャにおいて、極めて珍しい恋愛結婚であるとされているためだ。

 自らが王に選ばれた経緯に悩む幼きエウリュステウスに対し、友であった男装したアダマンティアが正体を明かした上で『賢王となれ』と鼓舞したという逸話は、現代まであらゆる作品にオマージュされている。

 加えて一説によると、結婚指輪の定番ダイヤモンドの語源はアダマンティアだとされており、"婚姻の女神"ヘラにある意味では勝ったと述べる研究者も存在する。

 

 以上のように様々な語り草となっているアダマンティアであるが、なかにはこのような少年心に溢れたものも。

 それは、"ヘラクレス・アダマンティア兄妹は、真剣勝負ならばどちらが勝るのか"という議題である。

 

 アダマンティアは、狂乱したヘラクレスから義妹たちを守るために応戦した末に、心臓を潰されて亡くなったとされている。

 ヒトの範疇における神話最大の戦いとすら評されることもある一戦だが、この際には兄妹ともに全力を出すことは叶わない状態であった。

 もし互いに全力での戦闘が可能、かつ必要に迫られた場合、どちらが勝利を収めるのか。

 例外と仮定に溢れた疑問ではあるが、それでも考えてしまうのが昔から変わらない人間の性というものである。

 

 その仮定に限りなく近い状況が、"Fate/strange Fake"では描かれている。

 

 

本作品時空の個人サイトより一部引用

 

 

 

 

 

 

 突然の乱入者により、一時の静寂を迎えた渓谷。

 先ほどまで繰り広げられていた無慈悲な破壊の嵐は止み、余韻とでも言うかのように穏やかな自然の風が頬を撫でる。

 

 だが、この静寂へ素直に喜びを表すような鈍い感性しか持ち得ない間抜けは、既に死に絶えて久しい。

 数少ない生き残りは、限界をとうに超えた身体を引きずってでも、一センチでも現世に表出した煉獄から離れんと足掻く。

 今の状況は、さながら台風の目へと入ったに過ぎないのだから。

 

 決して避けられない戦いの気配が渦巻く、究極の緊張状態。

 そのなかで最初に口を開いたのは、やはりと言うべきか、恐るべき傲慢さを誇るギルガメッシュであった。

 

「己が神話において一度のみ力を振るった出不精が、此度は随分と姿を晒すのが早い。貴様にとっての死に場所を、既に見定めでもしたか?」

 

 怒るでも、誹るでもなく、既に面識があるかのような言葉に、ギルガメッシュのマスターであるティーネ・チェルクは驚きを隠せない。

 戦闘に横入りするような者がいれば、興が削がれたと殺意を露わにすることに躊躇がない先程までを考えれば、これは破格の対応と言えるだろう。

 

 一方の侵入者_アダマンティア_は、ギルガメッシュの言葉に対して申し訳なさそうに口に手を当てる。

 警戒や敵意ではない、純粋に困っているような普通が過ぎる反応は、却って彼女自身の異常性を際立たせる結果となっていた。

 

「…見定めるなど、そのような真似はとても。私は己が愛したものを守るために、信じた道を進むしか能のない凡夫ですから」

 

「ハッ、過保護もここまで極まれば痛快よな。我を前にしてなお他に意識を向けようとは、見上げた阿呆よ」

 

 ギルガメッシュから放たれる揶揄にも、アダマンティアは微風を受け流すように笑顔を絶やすことなく語ってみせる。

 だが双方を挟む空間には濃密な神気、及び必殺の力が込められた魔力が常に衝突していることが、どれだけ鈍いものにも察せられるだろう。

 万が一介入するならば己の命を代価にせよと、言葉以上に雄弁な気配が場に満ちている。

 

 数秒か、数十秒か。

 只人では呼吸すら許されない一触即発の時間は、兆候なくフッと霧散する。

 張本人であるギルガメッシュは、どこか呆れたように裁定を告げた。

 

「よい、許す。道化どもの茶番を眺めるのも、また一興としておいてやる」

 

「感謝いたします、慈悲深き王よ。この礼は、またいずれ」

 

 不要とばかりに腕を組み直したギルガメッシュに対し、アダマンティアは地上に降り立ち深い礼を一つ。

 次いで身構えたまま困惑を隠せないヒッポリュテの下へ、無邪気さすら感じさせるほど無防備に近づいていく。

 

 ほんの十数秒前の出来事から警戒を外すことができない心情を知ってかしらずか、アダマンティアは柔らかな振る舞いを伴いながら再び礼を行う。

 その様子には彼女の普段を知る者から見れば、ありったけの親しみが込められていることが明らかであった。

 

「お会いできて光栄です、ライダー様。生前は色々と、兄さまのお仲間がご迷惑をおかけしたようで」

 

「…!やはり、あの己を偽る復讐者に縁ある者か」

 

 纏う神気や服装を見れば、起源を同じくする英雄であることは分かっていた。

 更に与えられた言葉による情報から、ヒッポリュテは目の前にいる存在が、自身が目の敵にしていた復讐者の縁者であることにまで考えが及んだ。

 そこまで分かってしまえば、真名などはもはや火を見るより明らかである。

 

 聖杯戦争における秘中の秘すら隠さず、敵意を欠片すらも見せない穏やかさは、先ほどまでギルガメッシュと睨み合っていた姿とは似ても似つかない。

 しかし緩いとすら形容できる空気は、ある一点を見やった瞬間に切り替わる。

 

「貴方の出自を思えば、今からお願いすることは無粋に過ぎることは承知しています。ですが、こちらも色々と事情がありまして。もしよろしければ、あの復讐者への問いかけは、私に任せていただけませんか」

 

「…ああ、構わない。君が私の思い至る者であるとすれば、私以上にあの男には言いたいことがあるだろうからな」

 

「ありがとうございます!それと、もしこの場を双方が生き残ることが叶ったならば、私からお話がありますので。そこだけ覚えていてくだされば!」

 

 複数の敵陣営を目の前にして堂々とやり取りを交わす二騎の騎兵を、愚かと嗤う者はいない。

 額面上は何一つ変わらない緩さのなかに、これまで以上に神気が練り合わされた魔力を充溢させていたがために。

 

 そして遂にと言うべきか、アダマンティアは本命である復讐者_アルケイデス_を正面から見据える。

 散々に渓谷にて大立ち回りを演じ、神々と神々に連なる者への憎悪を滾らせていた姿はどこに消えてしまったのか。

 これまで不自然に、敵意の一つすら表出させてはいなかったアルケイデス。

 蛮勇を極めた者がいれば、『真名を隠すつもりがあるのか?』と質問でもしていただろう有様である。

 

「久しぶりですね、兄さま。我が友を連れていくために、冥府へと降りてきて以来でしょうか。…いえ、あの時も兄さまは顔を合わせてくれなかったのですけど」

 

「……」

 

「『神の力は、己の身に宿すものではない』。『ねじ伏せ、踏み躙り、人の腕で支配すべきものだ』と、先ほどの戦いでは言ってましたけど。…もしかして、私から今の技法を思い付いたのでしょうか?」

 

「………」

 

「あ、私も召喚されてから色々ありまして____」

 

 どこまでも無言を貫くアルケイデスと、一切頓着することなく生前と何も変わらないのであろう調子で言の葉を投げつけ続けるアダマンティア。

 心臓に毛が生えているどころの話ではない根気強さは、憐れみを通り越して感嘆すら思い起こさせるほどで。

 ギルガメッシュに至っては、喜劇の批評家の如く薄く口元を緩ませてすらいた。

 

「…なぜ、召喚に応じた」

 

 ある種の微笑ましさすら感じさせる我慢比べに対し、最初に根をあげたのはアルケイデスであった。

 絞り出すように発された言葉には、内心の葛藤というべきものがこれでもかと滲んでいる。

 

 アルケイデスの葛藤は、当然のことだろう。

 ギリシャ神話に名を轟かせる大英雄が復讐者に堕ちるとするのならば、最も大きな要因など想像に容易い。

 このように縁者、どころか本人が何ら変わることないやり取りを向けてくれば、苦しみは如何程か。

 

 兄の情動に対して、アダマンティアは十二分に承知の上で踏み込む。

 

「兄さまなら、分かっているでしょう?私が戦うときは、いつだって愛するもの…家族と幼児のためです」

 

「愚かな。どれほど力を蓄えようと、貴様の本質は戦士ではあるまい」

 

「ですが戦士ではなくとも、人間は生きている限り戦い続けるもの。今はその舞台が、ほんの少し変わっただけですよ」

 

 半神半人すら超えた神性の化身とも言える怨敵に近い存在に、アルケイデスは警告じみた言葉を投げかける。

 決して長くはない侮蔑の言葉の内には、『お前と戦うことは望まない』という本音が透けて見えていた。

 証拠に放つ殺意や禍々しい力にも、迫力とでも言うべきものが何処か欠けている。

 

 常ならばあり得ない懇願じみた警鐘を過つことなく受け取ってもなお、アダマンティアの対応に変化はない。

 それどころか、花が咲き誇るかのような、戦場ではあり得ない日常の象徴の如き笑顔を浮かべてみせた。

 

「…ですが、安心しました。どれだけ歪もうとも、兄さまはやはり変わらないのですね」

 

 瞬間、両者の間に横たわる空間が軋む。

 

 たとえ最愛の存在から贈られたものであろうと、聞き逃がせない言葉はある。

 そう言わんばかりに空気そのものが凍りつくような錯覚を起こさせる殺意を浴びせ、アルケイデスは問い詰める。

 

「耽楽に塗れた暴君どもに迎合し、その代償として炎と雷のなかで地上の衣(人の魂)を末期に焼き捨てた、あの愚物と…?その言葉、己が魂をかけた放言であると判断しようぞ」

 

 魂すら視線一つでひしゃげさせる、大英雄の凄み。

 英雄の心胆すら寒からしめる激昂ぶりは、今のアルケイデスにとって"ヘラの栄光"を意味する己自身がどれほど忌々しいかを示している。

 

 だが、アダマンティアは小揺るぎもしない。

 むしろその殺意こそを求めていた、と言わんばかりに言葉を続ける。

 

「ええ、変わりません。決めた道を歩み切るために、どのような苦難をも乗り越えるという覚悟のほどは」

 

「ッ……」

 

「今だって、いざとなれば私を殺す覚悟でいますね?私は、その強い覚悟こそが何よりも好ましいと思っています。ですが…」

 

 アダマンティアは、再び己が裡に巡る神気を束ねあげ、周囲に向けて無差別に叩きつける。

 ただそれだけで周囲に散らばっていた雑多な使い魔は無惨にも砕け散り、残る眼は英霊三騎とギルガメッシュのマスター、夢の世界より見守る己のマスターと協働者のみとなった。

 

 ここから先は無粋な野次馬は不要、と言わんばかりに。

 

「____その強固な決意ゆえに、私たちが戦う定めは避けられません…アーチャー。神々を弑すると大言を吐くのであれば、半神半人の魔女程度、容易く射殺せずしていかがします!」

 

 大英雄を喝破せんと放たれた言葉は、叱咤激励と決別の意思が重ねられていて。

 兄の覚悟に敬意を抱いた上で打倒してみせるという、アダマンティアなりの宣戦布告であった。

 

 己が最愛の心意気を受け取ったのか、アルケイデスは弓を番えた。

 迷いすら撃ち放たれる矢の力にせんと、この一時のみ英雄としての眼力を蘇らせる。

 

「これまでの無様を謝罪し、そして誓おう。お前は、この戦において踏み越えるべき最大の試練であり怨敵。故に、私が手ずから縊り殺すと」

 

「…そうこなくては、聖杯戦争ですものね。ああ、ですが一つ忠告を」

 

 アダマンティアが、おもむろに視線を地へと向ける。

 臨戦態勢をとった弓兵を前によそ見など、本来ならば自殺行為以外の何ものでもない。

 

 しかし、この場に集った一騎当千の英雄たちは、例外なく肌が粟立つような感覚を味わっていた。

 そして、その正体は刹那の内に現世へと顕れる。

 

()()()()()()、限定解除____管理せよ:

          ハデス・クリロノミア・レプリカ

 

 大地そのものが、アルケイデスを無防備となる空中へと跳ね飛ばした。

 

「____私は、戦士ではありませんから。正々堂々、最期まで初見殺させていただきます!」




◯アダマンティア
上司兼推しの神性をコッソリ解析した、究極の罰当たり女
真名を隠さないのは、バレても問題ないと考えているから
「英雄に霊核を潰されたら死ぬ…誰でも死ぬでしょう?」

◯ハデス・クリロノミア・レプリカ
効果は、"霊脈を通じた大地の操作"
対象が自分自身でないため、予め大地への浸透が必要
一度励起するまで、土地守であろうと感知は不可能である

◯ギルガメッシュ
英雄王が冬の北風ならば、神殺しの魔女は春の太陽
人間へのスタンスは致命的に合わないが、評価はしている
加えて、見た目がストライクど真ん中である


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次に書くお話として、どちらがいいかお答えください

  • 女神ヘラのお節介がない世界線 ※鬱注意
  • 娘目線から見た生前エウリュステウス夫妻
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